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TEXT:小川 フミオ
[レクサスRZ450e]尖っていないナチュラルなデザインが魅力[試乗記:その3]

開発陣の言う通りの「ナチュラル」なクルマに仕上がっているRZ450eに、あえて自動車ジャーナリスト・小川フミオ氏が指摘した点とは。 凝ったデザインをみたい 「クルマの機能をひけらかすのでなく、(運転する)ひとに寄り添うように走ることを目指しました」 レクサスRZシリーズの開発を指揮した渡辺 剛・製品企画主幹の言葉だ。 たしかにRZ450eの走りっぷりは、「ドライバーの意図に沿った気持ちよい走り」とか「操作に対して車両が素直に応える乗り味」とレクサスの開発者が言うとおりのものだ。 さきの渡辺主幹は「ナチュラル」と、RZでめざす走りを表現している。運転してみると、その言葉どおりに仕上がっていると思う。 ステアリングホイールの操舵感をはじめ、車両の反応、乗り心地、ブレーキのフィール、それに減速時のコントロール性、さらに音や振動など、クルマの印象を左右する要素どれをとっても、ザラついたところがない。 ドライバーズシートに腰をおちつけても、やはり、すっと落ち着く。意匠(デザイン)的には驚くような要素は少ない。 強いていえば、円筒形のシフターとか、エアコンなどほぼすべてのコントローラーがタッチ式になったことぐらいか。メーターナセルの意匠は、姉妹車ともいえるトヨタbZ4Xのほうがトンガっている。 ただし、ゆるやかな驚き(へんな表現だけれど)としては、アニマルフリー化を進めているレクサスによる、スエード調の人工皮革の雰囲気や、黄みがかったベージュとブルーグレイの組合せによる内装色などがあげられる。 平板な言葉を使うと、いいかんじ、なのだ。デザインがとんがっていないぶん、抵抗感なく落ち着ける。 それでも、もうすこしレンジローバー的に、意匠に凝るのもいいんじゃないかなーと思うのも事実。あちらは、すでに早くからウールや天然繊維を使ったシート地を採用しているのである。 クルマを全体として「ナチュラル」に仕上げていこうという開発陣の考えかたには、賛同できる余地がおおいにある。なので、あえて上記のようなことも書いてみたくなってしまうのだ。 BEVを、地球環境保全という意味でサステナブルな道具ととらえるなら、さまざまな部分で、レクサスのデザインチームのこだわりを見てみたい。 レクサスRZ450e version L 全長:4,805mm 全幅:1,895mm 全高:1,635mm ホイールベース:2,850mm 車両重量:2,110kg 前後重量配分:前1,130kg、後980kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:147Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:494km(WLTCモード) 最高出力:前150kW(203.9ps)、後80kW(109ps) 最大トルク:266Nm(27.1kgm)、後169Nm(17.2kgm) バッテリー総電力量:71.4kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:eAxle(1速固定) 駆動方式:AWD フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式 リアサスペンション:ダブルウィッシュボーン式 フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 最小回転半径:5.6m 荷室容量:522L 車両本体価格:880万円

TAG: #RZ450e #インテリア
TEXT:小川 フミオ
[レクサスRZ450e]あえて重め、かつしっかりとした操舵感[試乗記:その2]

開発中のRZ450eに乗っているからこそ気付いた市販バージョンに施された味付けとは。自動車ジャーナリスト・小川フミオ氏によるレポートです。 操舵感と車体の動きのマッチング RZ450eバージョンLを公道で乗ったとき、まず驚いたのは、操舵感。しっかりとしているが、重い。 さいきんのレクサス車やトヨタ車(の一部)に共通する“味つけ”で、ダイレクトな操縦感覚を重視するレクサス(トヨタ)ゆえの選択と聞く。 もう1台のBEVであるUX300eではデビューのときから何度も乗っていただけに、23年3月のマイナーチェンジでは、操舵感がうんと重くなったように感じられて、びっくりした。 RZ450eも、テストコースで乗っていたときより、あきらかに操舵感がしっかりした。操舵感をあえて軽くしているクルマもあるので、そういうのに馴れているひとはとまどうかもしれない。 私はこの感覚が嫌いでない。というか、すぐ馴れて、これはいいって思うようになる。 なぜかというと、クルマとドライバーの一体感のために、全体としてよく作りこまれていて、ステアリングホイールを操作する腕の動きに対する車体の反応が、感覚的にうまくマッチしているからだ。 準備中(のはず)の「ステアバイワイヤ」(航空機を思わせるハンドルを左右150度動かすだけで操舵できるシステム)採用モデルでは、もっとスポーティに振ってくることを期待するが、バージョンLなら、これでいいと納得の仕上がりだ。

TAG: #BEV #RZ450e #UX300e
TEXT:小川フミオ
[レクサスRZ450e]e-TNGAとDIRECT4による「走り」[試乗記:その1]

2035年にラインナップ全てをBEV(バッテリー電気自動車)にするとの目標を掲げるレクサスより、ブランド初のBEV専用モデルのRZ450eがデビューした。公道でのテストドライブがかなった自動車ジャーナリスト・小川フミオ氏による試乗記をお届けする。 待ちに待ったRZ450eの発売 ゼロからBEV専用モデルとして設計された、レクサスRZ450eが2023年3月30日に発売された。 じつは私、何度かテストコースで乗る機会に恵まれていたので、本心、“ようやくか”という思いが強かった。 東京都内で乗れたのは、「version L」。発売とともに設定された特別仕様車「First Edition」は限定モデルで、ほんらいのRZは、RZ450eバージョンLのモノグレード(いまのところ)。 全長4805mmの車体を、2850mmのホイールベースをもつシャシーに載せている。トヨタbZ4Xとホイールベースは同一で、全長は115mm長く、全幅も35mm広い。全高だけは15mm低い。 タイヤは前が235/50R20、後ろが255/50R20。偏平率が低くなるいっぽうの昨今ではめずらしい厚めのタイヤだ。 そのせいか、路面の凹凸を感じる場面は少ないようにかんじられたし、いっぽう、タイヤのふんばり感はしっかりある。 バッテリー駆動のピュアEV専用の「e-TNGA」なるプラットフォームを用い、「軽量かつ高剛性なボディにより基本性能を大幅に進化させた」とレクサスは謳う。 大きな特徴は、「DIRECT4(ダイレクトフォー)」なる4輪の駆動力制御。減速、加速、操舵をシームレスにつなげる技術だ。 車輪速度センサー、加速度センサー、舵角センサーなどを用いて、前後輪の駆動力を制御する。これに、前後のモーター出力を制御する「eAxle(イーアクスル)」の組み合わせだ。 たとえば、カーブを曲がるとき、「DIRECT4」システムが働く。ステアリングホイールを切り始めたときは前モーターを重視した駆動力配分(割合ではフロント75対リア25から50対50のあいだ)。 カーブを抜けたときは、駆動力配分は50対50から20対80まで変化。これで、車両を後ろから押しだすような加速感を与えてくれるという。運転すると、じっさい、そのとおりの印象だ。

TAG: #BEV #RZ450e
TEXT:田中 誠司
「i4の使い勝手、◯と✕」BMW伝統の後輪駆動スポーツセダン「i4」試乗記 その3

キャビンはクーペ的にコンパクト、ラゲッジルームは意外な使い勝手の良さ パッケージングと実用性についても述べておきたい。身長172cmのドライバーが適切な運転ポジションを選び、その背後に移った状況において、後席頭上の余裕は3cmほど。あくまでグランクーペの一員として割り切っているi4では、座高の高い人なら頭がルーフラインに触れてしまうだろう。膝前に生まれる空間も18cmほどと、それほど大きな余裕はない。 一方、オートマチック・テールゲートが備わるラゲッジスペースはフラットな床面を持ち、奥行きの最大値が98cm、幅の最大値が132cm、トノカバーまでの高さ47cm、幅の狭い部分でも89cmが確保されていた(以上、すべて編集部による実測値)。ラゲッジルーム容量はカタログ値で470L、後席を折りたためば1290Lまで拡大可能だ。グランクーペのよいところは、テールゲートがガバっと大きく開くうえに、床面が低いので荷室の奥のほうまで容易に手が届くところだ。 今回、東京都心から伊豆半島南部まで、半分高速道路を利用しておよそ400kmの往復で電費は6.6km/kWhであった。途中ほんの少し急速充電で注ぎ足したため余裕はあったが、伊豆のワインディングロードで思う存分340psを解き放とう、という心の余裕はなかった。エンジン車で残りが100km、というのと、電気自動車で残りが100km、というのは心理的な切迫感がずいぶん違うものだ。

TAG: #i4 #クーペ
TEXT:嶋田 智之
「らしさ」に溢れるフィアットの走りは健在![フィアット500e試乗記:その5(最終回)]

前回に続く、フィアット500eの試乗記もいよいよ最終回。’70年式のチンクエチェントを普段アシとして乗っているモータージャーナリスト嶋田智之氏は、500eにも連綿と受け継がれるfunな乗り味を感じるという。 70年代のチンクエチェントから受け継ぐ乗り味 ここまであれこれ書き連ねておいて何だが、僕は日頃、1970年式フィアット500L、つまり2代目500をアシにしている。そのクルマもそうなのだけど、2代目500はステアリングを操作して前輪が反応した瞬間に後輪まで反応して、全身で旋回に入っていくかのような、曲がる楽しさを持っている。タイヤは糸のように細いしサスペンションもヤワといえばヤワだから、コツを要するのも確かだけど、とにかく楽しい。普通の感覚からすれば目が醒めるほど遅いのだけど、意外やスポーティなところがあるのだ。 そのおもしろさは3代目500、つまり現行の内燃エンジンの500にもちゃんと受け継がれていて、エンジンの搭載位置も駆動レイアウトもサスペンション形式も変わっているにも関わらず、さらに爽快なコーナリングを楽しむことができる。いうまでもなく現代的に進化してるしコツを要するクセなども綺麗に払拭されてるから、それを誰もが味わえる。 BEV版の500eもその3代目と同じように、長きにわたって愛された2代目500のテイストをちゃんと受け継いでいるのだ。それも、さらにいいかたちで。ここが鈍いと“らしさ”に欠けるよな、なんて500ファンの一人として思っていたのだけど、いやいや、とんでもない。最初にコーナーを曲がった瞬間からその“らしさ”がちゃんと感じられて、思わずニンマリした。 しかもバッテリーをフロアに敷いたことによる重心の低さがしっかり活かされていて、そのコーナリングの感覚、コーナリングスピードともに間違いなく歴代ナンバーワン、と断言してもいいくらい。BEVであることが、ここでも大きなメリットになってるのである。そういえば直進安定性も乗り心地のよさもエンジン版をしのいでると感じられたものだが、それはエンジン版より300kg+α余分に重いことを見事に活かしたシャシーのチューニングが行われてるからにほかならない。 >>>次ページ 充電環境さえあれば真剣に欲しい

TAG: #500e #BEV #フィアット
TEXT:田中 誠司
「見た目以上に重厚な乗り心地」BMW伝統の後輪駆動スポーツセダン「i4」試乗記 その2

車重とボディサイズにふさわしい重厚なラグジュアリー・ライド サッシュレスの重いドアを開けてドライバー・シートに乗り込むと、ここからの風景もほとんどエンジン車と変わらない。湾曲した巨大なスクリーンが視覚的にかなりのボリュームを占めている。音楽やエアコンや外部機器接続の選択が中央の画面からできるようになっているのだが、BMWといえばドライビング・ポジションを低めに決めて運転に没入したいオールド・ファンの私には画面のあまりの大きさがちょっと目障りであることも否定しない。 全幅が1,850mmに達するボディにあってコクピットはかなりゆったりした印象で、自分がしばらく乗っていた先代6シリーズ・クーペのラグジュアリー感を思い出す。シンセティックなサウンドとともに起動し、しずしずと走り出しても思い出すのは6シリーズの重厚感だ。実際、車重は最終型の640iクーペより200kgも重い。幹線道路や高速道路の巡航スピードに乗ってしまえば、リアにエアスプリングを備えるこのi4は実にゆったりと上品に走る。電動パワートレインの静けさと相まって、どこまででも走れてしまいそうだ。

TAG: #i4 #セダン #試乗
TEXT:嶋田 智之
気持ちいい。速さで攻めるのでなく、情感に訴える走りっぷり。[フィアット500e試乗記:その4]

前回までで500eのデザインや歴代から受け継いだヘリテージなどを紹介したが、このクルマの最大の魅力は走りかもしれない。驚くような速さではないのに、運転がとても楽しいのだ。モータージャーナリスト嶋田智之氏がレポート。 ボディが小さく、何より軽い 見てニンマリ、室内に収まってみてニンマリ。だけど走り出してみると、もっとニンマリしてしまう。フィアット500eは、2代目や3代目と同じく、そういうキャラクターを持ったバッテリーEV(BEV)だった。 このクルマは御先祖さまが庶民の日常を支えるシティカーとしての要素が強いクルマであったように、僕たちのような“普通の人”の新しい日常を見据えて作られたクルマなのだと思う。それは成り立ちからも一目瞭然だ。車体をもっとググッと大きく設計してバッテリーの搭載スペースを広く採れば航続距離もさらに稼げるだろうけど、それをしてはいない。 42kWhのバッテリーをフロア下に敷きつめ、118ps(87kW)と220Nmを発揮するモーターでフロントタイヤを駆動するレイアウトだが、機構図を見ると、この車体にシステム全体を収めるのはそう容易なことじゃなかったということが察せられる。 全長3630mm×全幅1685mm×全高1530mm。姉妹ブランドとなったプジョーのe-208よりも、キャラクターが近いといえば近いホンダeよりもコンパクトなのだ。サイズには徹底的にこだわってる。それに500eは軽い。プジョーe-208が1490〜1510kg、ホンダeが1540kg。対する500eはクローズドルーフが1320〜1330kg、オープントップで1360kgに過ぎないのだ。 その小ささと軽さは、あらゆる場面で活きてくる。走りはじめた直後から“楽しいな”、“気持ちいいな”と感じられるのだ。BEVによくあるいきなりドーン! とトルクを立ち上げるような制御はしてないようだが、ゼロ発進から高速道路の巡航まで、パワーとトルクのデリバリーが絶妙に行き届いていて、微速域でも高速域でも扱いやすい。いかなるときも滑らかだし、反応も素直。そして何よりクルマが伝えてくるフィーリングが、軽やかでとってもいい。 おもしろいのは走行モードを切り換えることで、クルマが激変といえるくらい変わること。「ノーマル」モードでは内燃エンジン版の現行チンクエチェントを走らせてるのと同じように、加減速も含めてとても自然な感覚で走れる。アクセルペダルをオフにしても、BEVっぽい減速感はほとんどやってこない。BEVっぽさが苦手な人にはこのモードはものすごく有効だし、高速道路などをクルーズするときにはこれを選ぶ方が疲れも少ないだろう。 「レンジ」モードに切り換えると、アクセルペダルだけで発進から停止までをまかなえるようになる。より強力な回生を得ることができるようになり、一気に“BEVに乗ってる”という感覚が強くなる。慣れてしまうとペダルひとつ、右足ひとつで走るこのモードが楽しくなって、こればかりを多用するようになる人が多いようだ。何人かの500eオーナーさんに訊ねてみたが、皆一様に同じ見解を語ってくださった。僕も高速巡航以外はずっとレンジモードに入れっぱなしだった。内燃エンジンのクルマでは決して味わうことのできない、BEVならではのドライビングプレジャーといっていいだろう。 >>>次ページ 0-100km/h加速は歴代チンクチェントで最速

TAG: #500e #BEV #フィアット
TEXT:田中 誠司
「EVで味わうBMW伝統の後輪駆動スポーツセダン i4」試乗記 その1

エンジン車と同じフォルム、同じ駆動方式 BMW伝統の低いフォルムを備えたスポーツセダンで、ディーゼル/ガソリン車と同じフォルムの後輪駆動。こんな、ごく普通のスタイルでBEV(バッテリー電気自動車)バージョンの4シリーズが登場したと聞いて、「ああ、やっと電気自動車は自動車産業の中でスタンダードな存在になったのだな」と、安堵の混ざった感慨を覚えた。 2013年にBMWがはじめて量産電気自動車として「i3」を投入したとき、それは専用のオールアルミ・シャシーをカーボンFRPボディで包み、エネルギー消費を徹底的に抑えるためのパッケージングを与えたきわめて特殊なクルマだった。そのようにアイコニックであることが、当時マイナーもマイナーだったEVをマーケティング上成り立たせるためにも不可欠なのだった。 しかしさらに大幅に時代を遡ると、1972年ミュンヘン・オリンピックの折に大会オフィシャルカーとしてBMWが送り出した「BMW 1602 エレクトリック」は量産のBMWセダンと何も変わらない外観に、350kgの鉛バッテリーを搭載し、航続距離わずか60kmというプロトタイプだった。フルマラソンの先導がようやく果たせるか、というレンジである。時代は第一次オイルショックの直前、環境保護に対する注目も高まりつつある時期だった。BMWには「人々が自由に選べ、活用できるモビリティの選択肢を提供する」という強い意思が昔からある。BMWのユーザーは内燃機関と並んで公平に電気自動車を選べなければならない、という意図がこのプロトタイプには込められていたのだろう。

TAG: #i4 #セダン #試乗
TEXT:嶋田 智之
モダンでありながら、ノスタルジーをくすぐるディテール。老若男女を問わない500eはインテリアがいい[フィアット500e試乗記:その3]

フィアット500eは、親しみ感のある外観に負けないほど、インテリアもいい。ただオシャレなだけでなく、’50年代に誕生した2代目500を知る人をも納得させる、チンクエチェントらしいデザインが採用されているのだ。 2代目を知る人ならピンとくるデザイン 500eのインテリアは、これもまた歴史的名車のイメージを巧みに織り込みながら、完全に新しくデザインされている。過去の作品を再解釈したところはあっても、コピーしたところはない。 例えば水平方向に長い楕円を描き中央下側にトレイを配したダッシュパネルのアウトラインや、単眼の丸いメーターナセル。これらは2代目500の鉄板剝き出しのダッシュパネルのまろやかな形状とその下に設けられた棚方のトレイ、目覚まし時計のような独立型スピードメーターの雰囲気を象徴的に描き出したものといえるだろう。またフロントシート間のアームレストの先端には2つのローラー式スイッチが平行に並べられているが、2代目500はそこにスターターとチョークのレバーが配されていた。 では、同じ場所に配される500eのオーディオボリュームスイッチやEVモードセレクターは、2代目の時代には存在しなかった現代ならではのもの。丸いメーターナセル内の7インチフルデジタル式メーターには、スピードのほかパワー/チャージ、バッテリー残量、航続可能距離、ADASのカメラが読み取った道路標識の情報などが表示される。 ダッシュ中央には横に長い10.25インチのディスプレイが配置され、ナビやオーディオなどがタッチ操作できる。その下のトレイは、上位グレードではスマートフォンの非接触型充電を行うための場所。その上部にはエアコン類の物理スイッチ、その下には左からP、R、N、Dのシフトセレクターボタンがレイアウトされている。 実際に使ってみた印象では、メーター類の視認性はいいし、情報量も少なすぎず過剰でもなく、ちょうどいい。スイッチ類はよく使うものが、慣れればブラインドタッチできる物理スイッチとされていて、操作性も良好。インターフェイスはよく考えられてるな、と感じた。 >>>次ページ 細部にまでこだわったクオリティ

TAG: #500e #BEV #フィアット
TEXT:嶋田 智之
コピー&ペーストじゃないのに従来モデルにソックリ。スタイリングは芸術の極み[フィアット500e試乗記:その2]

フィアット500eの大きな魅力はそのデザイン。1950年代のチンクエチェントから続くフォルムを踏襲しながら、コピーは一切なしの新規に描かれたスタイリングをまとう。フィアット・チェントロ・スティーレの卓越したデザインノウハウを、モータージャーナリスト嶋田智之氏が解説。 96%が新設計のブランニューEV 現在のフィアット500のラインナップには、バッテリーEV(BEV)であるこの500eと並んで、内燃エンジンを積む500が存在している。歴史上では3代目となる内燃エンジンの方の500は、2007年のデビュー。トリノで行われたその発表会と試乗会で、2代目500の持つキャラクターや世界観を根本的なところから解釈しなおして時代にマッチした新世代のフィアット500像を入念に創造した、と聞かされた。そして15年以上が経過して今でもフルモデルチェンジなしに生産され、世界中で愛されている。 内燃エンジン版の500とBEVの500eのスタイリングは、たしかによく似てる。なので内燃エンジン版をベースに開発されたBEVモデルだと見られることもあるようだが、それはぜんぜん違う。3代目のときと同じように、1950年代の当時まで遡って、長く愛される新たなBEV版フィアット500というものを模索した結果、生まれてきたクルマだ。 なので、500eはほとんどすべてが新しい。パワートレインはもちろんのこと、プラットフォームもこのために旧FCA時代から着々と開発が進められてきたものだ。全体の96%が新規設計されたもので構成されている。もちろんスタイリングデザインもゼロから線を引き直したもので、フィアット500以外には思えないというのに、かつての名車からそのままコピーしたところはひとつたりとも存在しない。クルマのデザインに従事してる人に訊ねるとほとんどクチを揃えるように似た答えが返ってくるのだが、実はそれ、デザインとしては極めて高度なスキルを要求されるものだったりするそうだ。 全体的にまろやかさを感じられる角のいっさいないフォルム。正面や真後ろから見るとちょっとオニギリっぽい台形のシルエット。1本のラインで車体全体が上下に分割される線構成。どこか笑ってるような顔つき。そのあたりは2代目500も3代目500も、それにこの500eも共通している。 >>>次ページ BEV用プラットフォームだから実現できたデザイン

TAG: #500e #BEV #フィアット

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