メルセデス・ベンツ 記事一覧

TEXT:TET 編集部
70.5kWhの高電圧バッテリー搭載で一充電走行距離は591kmに延長! メルセデス・ベンツが新型EQAを発売

70.5kWhの高電圧バッテリーを搭載 2024年4月11日(木)、メルセデス・ベンツ日本は電気自動車の新型「EQA」を発表・発売した。 EQAは、全長4465mm、全幅1835mm(AMGラインパッケージを選択した場合は1850mm)、全高1610mm(AMGラインパッケージを選択した場合は1625mm)。曲線を用いたデザインが特徴の都市型SUVだ。 新型はメルセデス・ベンツ電気自動車の最新デザインを取り入れたフロントフェイスや、新たなフロントバンパー、フロントグリル、リヤコンビネーションランプを採用し、よりスタイリッシュな印象となった。 AMGラインパッケージ装着車のホイールアーチは従来のブラックからボディ同色に変更。ボディカラーには新色ハイテックシルバー、スペクトラルブルー、パタゴニアレッドを追加した。 インテリアには新世代のステアリングホイールを採用。ナビゲーション、インストルメントクラスター内の各種設定、ドライビングアシスタンスパッケージの設定を手元で完結できる機能性を有している。 また、リムに静電容量式センサーを備えたパッドを採用。トルクがかからなくてもドライバーがステアリングホイールを握っていることを認識できるようになり、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックの使い勝手が向上した。 走りに関してはフロントアクスルに同期モーターを搭載し、前輪を駆動。最高出力は190馬力、最大トルクは385N・mを発揮する。 今回、容量70.5kWhの高電圧バッテリーに変更することで、WLTC一充電走行距離591kmを実現した。 充電については6.0kWまでの交流普通充電と、100kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応。また、車外へ電力を供給できる双方向充電も可能だ。太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵装置となるほか、停電した場合などに電気を家庭に送る予備電源としても利用できる。 安全装備には「ドライビングアシスタンスパッケージ」を採用。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(再発進機能付)、アクティブエマージェンシーストップアシスト、アクティブブレーキアシスト、緊急回避補助、アクティブレーンキーピングアシスト、ブラインドスポットアシストなどの機能により、ドライバーをサポートする。 EQA 250+の車両本体価格は税込み771万円。 ハード面、およびソフト面の充実により、電気自動車として強く意識することなく、従来と同じような生活スタイルで使用できるようになった新型メルセデス・ベンツEQAに期待したい。

TAG: #SUV #新型
TEXT:高橋 優
巨大マーケットの中国市場で地場メーカーに勝てない! メルセデス・ベンツが2030年の完全EVシフトを辞めた理由

メルセデス・ベンツは2030年完全EVシフトは無理と判断 メルセデス・ベンツがEVシフト減速のために、2030年までに完全EVシフトを行うという当初の目標からトーンダウンして、2030年以降も内燃機関車の販売を続けるという驚きの発表を行いました。メルセデス・ベンツのEVシフト減速の主張に関して解説します。 今回取り上げていきたいのが、ドイツ御三家の一角を構成するメルセデス・ベンツの存在です。 このグラフは、2019年シーズン以降の、メルセデス・ベンツを含めたドイツ御三家、およびテスラやレクサスといった、プレミアムメーカーの世界全体の自動車販売台数を比較したものです。 水色で示されたメルセデス・ベンツについては、2019年以降、断続的に販売台数を落としており、2023年シーズンではBMWに差を明けられてしまいながら、アウディ、さらには急速に販売台数を伸ばしているテスラとも、ほとんど同等の規模感にまで差を縮められてしまっている状況です。 とくにこの2023年シーズンに関しては、半導体不足による生産の制約が解消された1年であったことから、競合が軒並み販売台数を伸ばしているなかにおいて、メルセデス・ベンツだけ、唯一と言ってもいいほど販売台数が伸び悩んでいるということは注目に値するでしょう。 このメルセデス・ベンツについてもっとも重要なポイントというのが、2030年までにメルセデス・ベンツがグローバルで発売するすべてのモデルにおいて、市場が許す限りバッテリーEVのみに移行するという完全EVシフトの方針を打ち出していたという点です。 そして、そのEVシフトに向けてEV専用シリーズであるEQシリーズを立ち上げ、EQA、EQB、EQC、EQE、EQE SUV、EQS、EQS SUV、マイバッハEQS SUV、EQV、EQTなど、多くのセグメントにおいてEVをラインアップし、2030年までの完全EVシフトを進めようとしていたという背景が存在します。 ところが、そのメルセデス・ベンツについて新たに明らかになったのが、掲げていた2030年までの完全EVシフトの目標を事実上撤回するというまさかの発表です。具体的には、2020年後半までにバッテリーEVとともにPHEVも含めた、メルセデス・ベンツ独自の表現方法であるxEVの販売シェア率を最大50%にまで引き上げると説明。つまり、バッテリーEV100%という表現を撤回しながら、そのうえPHEVも含めた販売シェア率を目標にするという、目標をさらに緩和してきた格好です。 いずれにしても2030年以降、メルセデス・ベンツはPHEV、さらには既存の内燃機関を搭載した車両についても販売を継続するという方針転換を行なってきた格好となります。 この方針転換の理由に関して、メルセデス・ベンツは、当初の想定以上にEVのコストを下げることができておらず、さまざまなパワートレインを提供するべきであると主張しており、実際にメルセデス・ベンツの2023年シーズンの決算内容を見ても、とくに乗用車部門の営業利益率は12.6%と、2022年シーズンに記録していた14.6%から低下してしまっています。 メルセデス・ベンツに関しては、どのセグメントにおいても販売台数は横ばいであったものの、唯一バッテリーEVセグメントにおいては前年比で61.3%もの販売台数の増加を記録しており、このことからもバッテリーEVをより多く販売したことがわかりますが、その分の開発コストなどを含めると、全体の販売台数を増やせなかったことも相まって、利益を圧迫してしまったと捉えることも可能です。 したがって、2030年までに持続的な利益を確保しながら、バッテリーEV100%に転換することは無理と判断した格好といえるでしょう。 他方で、今回のメルセデス・ベンツの発表に関しては、その販売データからさらにメルセデス・ベンツの苦しい内情が見え隠れしているという点に極めて注目です。 まず、このグラフは四半期別のパワートレイン別の販売台数、およびそのなかでもバッテリーEVの販売シェア率を示したものです。 このとおり、緑色で示されているバッテリーEVの販売台数が着実に増加していることが見て取れます。一方で、とくに欧州市場における税制優遇措置の変更などによって、水色で示されたPHEVの販売台数が、すでに横ばい状態になっている様子も確認可能です。 ところが、黄色で示されているバッテリーEVの販売シェア率という観点では、直近の2023年第四四半期においても13%弱というシェア率に留まっており、2023年通しでのシェア率も概ね12%程度でした。 メルセデス・ベンツは公式に表明していなかったものの、現地メディアによれば、メルセデス・ベンツ内部の目標値は2023年シーズン通しでバッテリーEVのシェア率20%を掲げていたといいます。問題は、その目標値には遠く及んでいなかったという点です。メルセデス・ベンツが掲げた目標に対して、実際のバッテリーEVの販売台数が大きく乖離してしまっている現状が、2030年までのバッテリーEV100%という目標を大きく引き下げざるを得なかった要因なのです。 次に、このメルセデスの販売戦略を理解するうえでもっとも注目するべきは、そのマーケットごとの販売シェア率という観点です。 このグラフは、2019年以降の四半期別における地域別の販売台数、およびそのなかでも、中国市場の販売シェア率を示したものです。 このグラフのとおり、ドイツに本拠地を構えるメルセデス・ベンツの最大マーケットというのは、単独マーケットではダントツで中国市場であり、販売総数の3分の1以上、4割近い販売シェア率です。これは欧州全体の販売規模と同等のレベルでもあります。 つまり、メルセデス・ベンツの電動化戦略をはじめとする将来の販売戦略については、最大マーケットである中国市場の販売動向に大きく左右されるということなのです。

TAG: #EVシフト #輸入車 #電動化
TEXT:山崎元裕
外出先でもスマホからEVの充電開始・終了時間をコントロール! メルセデス・ベンツが持ち運べるウォールボックス「フレキシブルチャージングシステムPro」を欧州で発売

家でも外出先でもEVの充電プロセスを制御する メルセデス・ベンツから、BEVやPHEVのカスタマーの利便性をさらに高める、「フレキシブルチャージングシステムPro」がリリースされた。 いわばポータブルなウォールボックスと表現してもよいこのシステムは、最大充電容量が22kW。家庭用のコンセントや三相コンセント、公共の充電スタンドなどさまざまな電源に対応する、自己検知式のアダプターで、スマートフォンなどの独自のアプリで充電プロセスを制御。すべての充電機能に関するリアルタイムな情報にアクセスすることも可能としている。 これまでとくにBEVを使用したライフスタイルといえば、基本的に毎日の決まったルーティーンに従って、夜は自宅で、あるいは走行距離によっては昼間に会社などでそれを充電、休日には充電スポットを探しながら旅行を楽しむといったものが一般的だったが、このフレキシブルチャージングシステムProは、いずれのシーンにおいても最適なオールインワンの充電ソリューションだ。 充電スポットの空き状況や車両の装備、またアダプターの種類にもよるものの、前で触れたとおり22kWの最大充電容量に対応し、さらに最適な充電電力の自動検出と調整、温度、センサー、安全機能により、最大限の安全性を提供するという。 付属の各種アダプターを使用すれば、1本の充電ケーブルでヨーロッパのほぼすべてのソケットタイプや、公共の充電ポイントに接続することが可能。さらに、ヨーロッパ圏を離れても、フレキシブルチャージングシステムProによる充電は、じつに簡単にそれを行うことができる。 充電システムは、使用するべきアダプターを自ら検出し、さらには最適な充電電力を設定。セキュリティ面では、盗難防止のために付属の壁掛け用固定具を使って、充電システムを壁に取り付けることもできる。 メルセデス・ベンツのほかのアクセサリーと同様に、このフレキシブルチャージングシステムProもまた、最大限の安全性を追求して設計されている。IP67準拠の短時間の水没でも漏電しない防水構造などはその代表的な例だ。 フレキシブルチャージングシステムProは、メルセデス・ベンツ車のみならず、タイプ2のプラグを持つBEVやPHEVとの互換性を持っている。 最大容量の22kWでの充電のためには車載充電器を車両に取りつける必要があるが、このインターフェイスはWLANを自由に使用できるため、カスタマー自身のネットワークで無線更新を行うこともできる。充電の開始と終了をリモートで制御することなどは、そのもっとも典型的で便利な機能といえるのだろう。 ほかにもカスタマーはさまざまなメリットを、この持ち運び可能なウォールボックスから得ることができる。すべての充電プロセスは、アプリを介して充電目標を設定したり、充電コストを調整したり、また最新情報の確認を行うこともできる。すべての充電プロセスはアプリに保管され、実際のステータスはもちろんグラフィカルなダッシュボードにも表示することができる。それをスマートフォンにエクスポートすることも可能だ。 高品質なメルセデス・ベンツ・デザインのバッグに収納され、常に整理整頓されるフレキシブルチャージングシステムPro。その販売はEU諸国を始め、イギリス、スイスですでに開始されており、今後さらにほかの国へと市場を広めていくことになるという。

TAG: #インフラ #ヨーロッパ #充電
TEXT:TET 編集部
メルセデス・ベンツCクラスにプラグインハイブリッドの「C 350 e スポーツ」を追加

CHAdeMOにも対応したプラグインハイブリッド メルセデス・ベンツがDセグメントに投入しているCクラスは、全車を電動化を果たし、またフラッグシップモデルであるSクラス譲りの新技術を多数採用していることも話題だ。 そんなCクラスに、プラグインハイブリッドの「C 350 e スポーツ」が設定された。 今回追加されることになったC 350 e スポーツは、204馬力(150kW)を発する2リッター直4ターボエンジンに、95kWの電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドモデルとなっている。 C 350 e スポーツは、EV走行航続距離110kmを実現。日常生活ではほとんど電気自動車の感覚で使用することが可能だ。また、遠方へのドライブでは、ガソリンエンジンで充電しながら走行すれば、航続可能距離や充電時間を機にすることなく安心してドライブすることができる。 充電は普通充電と急速充電の両方に対応。とりわけ急速充電は、CHAdeMOに対応したことが大きい。また、車外へ電力を供給できる給電機能(V2H、V2L)も備えている。 メルセデス・ベンツC 350 eスポーツの価格は995万円。

TAG: #PHEV #輸入車
TEXT:TET 編集部
メルセデス・ベンツがPHEV「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」を発売

EVの利便性と内燃機関の安心感を兼ね備えたモデル 2023年11 月29日、メルセデス・ベンツ日本は、「新型 GLC」にプラグインハイブリッドモデル「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」を追加し、販売を開始した。 GLCは2015年にデビューし、全世界での累計販売台数260万台を記録するメルセデスのプレミアムミドルサイズSUV。 新型GLCは、伸びやかで美しいシルエットのなかにスポーティかつ洗練された要素を取り入れたエクステリアと、リアルウッドトリムを採用した質感の高いインテリアを併せ持つSUVとなった。ダイナミックなドライビング特性、サポートの精度を高めた安全運転支援システム、縦型の大型メディアディスプレイなども採用している。 今回追加されたGLC 350eは、最高出力204馬力(150kW)、最大トルク320 N・mを発生する2リッター直列4気筒ターボエンジンに、容量が31.2kWhのリチウムイオンバッテリーと出力136馬力(100kW)、トルク440N・mの電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドモデル。 システム総合の最高出力は313馬力(230kW)、最大トルクが550N・mのパワーユニットを備え、電気モーターのみで140km/hまで走行することができる。走行可能な航続距離は118km。 急速充電器(CHAdeMO)、6.0kW(30A)の交流普通充電の双方に対応している。 「インテリジェントアクセルペダル」の「プレッシャポイント機能」では、EV走行モードの際、これ以上アクセルを踏むとエンジンも使用しなければならないというモーター走行の限界点でアクセルペダルの抵抗を増してドライバーに知らせ、無駄なエネルギーの消費を抑制。 「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」の価格は税込み998万円。

TAG: #GLC #PHEV #プラグインハイブリッド
TEXT:生方 聡
メルセデス・ベンツが「コンセプトEQG」をジャパンプレミア

メルセデス・ベンツ日本は、10月28日に一般公開が始まる「ジャパンモビリティショー」で「コンセプトEQG」を日本初公開するとともに、最新の電動化モデルを展示する。 メルセデスがジャパンモビリティショーに出展する理由は? ジャパンモビリティショーに出展している輸入乗用車ブランドで、独自のブースを構えているのは「BMW」「BYD」、そして、「メルセデス・ベンツ」の3つだけ。 「2019年の東京モーターショーから今日にいたるまで、世界中でさまざまな環境の変化がありました。自動車業界も大きな変革期のなかで困難がありましたが、こうしてジャパンモビリティショーが開催されることは大変喜ばしいことであり、弊社としては自動車はやはり実際に見ていただくことが大事であると考え、このジャパンモビリティショーでひとりでも多くの方にメルセデス・ベンツに触れてもらいたいという思いから、今回出展しました」と、社長の上野金太郎氏は語る。 今回の同社のブースは「電動化」「デジタル化」「サステナビリティ」をテーマに、展示モデルはすべて電動化モデルとし、また、ブース全体を“空間オーディオ”で包み込む演出としている。展示車両には“ワールドプレミア”こそないものの、日本でもカリスマ的人気を誇る「Gクラス」のEV版である「コンセプトEQG」を日本初公開(ジャパンプレミア)しており、ショーの会期中には注目を集めそうだ。 このコンセプトEQGは今年9月に開催されたIAA(ミュンヘンモーターショー)で公開されたもので、圧倒的な存在感を示すGクラスのイメージを受け継ぎながら、EVならではの要素を加えることでその個性を際だたせている。たとえば、コンセプトEQGのフロントマスクは、ラジエターグリルに代えてスリーポインテッドスターが配されたブラックパネルを採用。周囲を縁取る照明に加えて、ドアミラーカバーに白く光るサークルや、ボディサイドのライトストリップが、エンジン車との違いを明確にしている。

TAG: #SUV #コンセプトEQG #メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツ・トラクス・eアクトロス600(photo=ダイムラー・トラックス)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
トラック野郎も納得の耐久性?……メルセデス・ベンツ、120万km乗れるEVトラックを発表[2023.10.17]

60万km以上走れば収益性を確保できると自信を見せる仕上がり 目先のエコを追いかけただけではない実用性重視の商用EV 【THE 視点】ダイムラー・トラックス傘下のメルセデス・ベンツ・トラックスは10月10日、長距離輸送に対応できるEVトラック「eアクトロス600」を正式発表した。 一度の充電で500kmの航続が可能という。欧州で定められている一日一回の法定休憩時に充電を行なえば、航続距離を1日あたり1,000kmに伸ばすことができる。総重量は44トンで、標準トレーラーでの最大積載量は約22トンとなる。今年中に販売が開始され、2024年末に量産開始予定だ。 モデル名にある「600」の数字は、最大容量600kWhを超えるバッテリー容量が由来。最高出力400kWの急速充電(CCS規格)に対応し、将来的にはメガワット充電 (MCS) も可能になるという。 価格は発表されていない。しかし従来のディーゼルトラックの2〜2.5倍のプライスで購入しても、5年間の保有もしくは走行距離60万kmを経過すれば、ディーゼルよりも高い収益を産むことができるとうたっている。 バッテリーの搭載量の詳細は、最大容量207kWhのバッテリーパックが3つで合計621kWhとなる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)を採用し、耐用年数が長いことが特徴だ。 10年間の稼働で最大120万kmの距離を走行できるよう設計し、この条件下でもバッテリーの劣化状態(SOH)は80%を下回らないという。 その状態の使用済みバッテリーであれば、リユースバッテリーとしても十分に使用可能だ。加えて言うならば、この容量でV2Xに対応できれば、仮想発電所はもちろん災害時の緊急バッテリーとしても頼りになる。 パワートレインは、2つのモーターと4速のトランスミッションを備えた800Vの高電圧の「e-アクスル」(モーター・ギアボックス・インバータ一体型の駆動装置)を新開発した。 モーターは定格出力400kW・最高出力600kWで、高い加速性能と快適性などを実現しているという。 最大容量600kWhのバッテリーで500kmの航続が可能とは、かなりの効率である。高効率のパワートレインだけではなく、エアロダイナミクスの影響も大きいはずだ。 四角いボディではあるが、風洞実験を重ねて空力を検証しており、ボディの周りを空気が綺麗に流れるよう徹底的に検証・デザインをしている。セオリー通りのトラックのフロントフェイスに見えるが、どこかスタイリッシュで先進性を感じるのは、それらの機能性を極限まで追求した結果であろう。 「60万kmの走行距離で収益性が見込める」と、導入・運用コストの目安を示したことも自信の表れだろう。設計上走ることができる120万kmを走行して十分に元がとれるとは頼もしい。一過性の流行やエコの追求で発売したものではないとも受け取れる。 日本のEVトラックも、eアクトロスが示した耐久性に近づくことができれば、一気に普及するのではないだろうか。EVトラックのベンチマークが登場したと言えよう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、JMSに出展するスポーツEVを一部公開 ……スポーツEVのコンセプトモデル「FT-Se」を出展するという。開発はトヨタのスポーツ部門のGazoo Racingが主導したようだ。一部公開された画像には、「GRスープラ」や「GR86」といったスポーツモデルに付くバッジ「GR」がつけられていることが確認できる。また、SUVタイプの「FT-3e」も出展する。 ★DMM、道の駅やガソリンスタンドへの充電器の導入を後押し ……急速充電器を無料で導入できるプラン「急速充電0円プラン」の提供を開始した。事業者向けのプランで、初期費用やサービスの利用料が無料となる。充電器の導入費用を事業者が負担する代わりに販売価格の一部を還元するプランも用意。 ★エネチェンジ、グランキューブ大阪に充電器を設置 ……大阪府立国際会議場「グランキューブ」<大阪市北区>に最高出力6kWタイプの普通充電器を1口導入した。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.17]

TAG: #EVトラック #THE視点 #ニューモデル
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」を含むEQシリーズは現時点で最も秀逸で“ベンツらしい”モデル[メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

西川淳氏による「EQE SUV」のインプレッションも最終回を迎えた。前回に続き高速道路を試乗した。走り終えた西川氏は、クルマ選びのポイントやメーカーの在り方についても想いを馳せる。   “最上級ステータス”以外は全てある  要するに「最上級でなければ嫌だ!」という見栄を張らずともいいという方であれば、セダンにしろSUVにしろ、EQEを選んで間違いはないということ。ステータス性以外、全ての面でそれはEQSに等しいと言っても過言ではないから。昔からEクラス級がメルセデスの乗用車ラインナップにおいて中核であることのそれは証でもあった。 そのことは「EQE 350 SUV」を高速道路へと導くといっそうよく理解できることだろう。力強さと心地よさを高いレベルで両立した走りは「EQS SUV」に比べてなんら劣らない。特にドライバーにとっては、流れる景色と身体に感じるテイストにほとんど違いはない。首都高速の継ぎ目を心地よくいなしつつ、カーヴにおいては些かの不満も感じさせず、リア操舵によって直進安定性は極めて高く、もちろんここイッパツのスムースな加速に不満もない(EVらしい爆発的な加速を望む向きには「AMG53」がオススメ、というのもこれまでと同様だ)。 道中に充電不安の尽きないBEV(バッテリー電気自動車)でありながら、従来のエンジン付きメルセデスと同じくきっと長距離ドライブに最適という予感が生じるのは、これまで試乗した上級のEQシリーズ全てに共通する魅力である。 結局のところ、ICE(内燃機関)だからBEVだから、ではなくて、クルマそのものの魅力がユーザーの期待にどれだけ応えることができるか、どれだけ不安を超える魅力を提案できるか、がクルマ選びの本当のポイントである。筆者のガレージには未だ200V口すらなくてBEVを持つ環境ではないし、またインフラへの不安もまだまだあると思っている方だけれど、それでも欲しいと思えるBEVが昨今ちらほら現れ始めた。クラシックカーやスーパーカーと同様に、買うためのハードルは一般的な乗用車に比べると(個人的には)高いと言わざるを得ないけれど、それを超える魅力が新しいBEVモデルの中に出始めたというわけだ。EQEシリーズなどはその一つである。

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」は空飛ぶクルマに一番近い乗り物だ![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

いよいよEQE SUVを走らせる。メルセデス・ベンツの中核にあたる「EQE SUV」はどんな走りを披露し、何を感じかせてくれるのだろうか。 デザインの統一とHMIの重要さ  「EQSセダン」に始まったメルセデスのBEV(バッテリー電気自動車)専用モデルシリーズ。そのT字型のユニークなコクピットスタイルにもようやく見慣れてきたように思う。異なるモデル間のデザイン的な統一性を嫌う向きもあるが、ジャーマンプレミアムブランドでは特殊なモデルを除き伝統的にインテリアデザインのテーマを世代ごとに共有してきた。ドライバーとの関係性を考えたとき、その時代における最適解を見つけてラインナップへと展開することもまたブランドの個性を固める手段であると彼らは知っているからだ。人とクルマとの接点=広義のヒューマンインターフェイス(HMI)こそがブランドの礎だ。   “重さ”を感じさせないBEVマジック 前輪の存在をステアリングホイールでしっかり感じ取りながら、いつものようにゆっくりと走り出す。圧倒的な静粛性は上級EQシリーズの魅力の一つ。あまりに静かすぎて、路面との関係性がよくわからなくなって不安になることもあるくらいだ。 サウンドエクスペリエンスという“走行音の演出”も悪くない。よくできている。特に三種類あるサウンドのうち、“ロアリング”は嫌いじゃない。けれども驚異的な静かさを味わってしまうと余計なお世話だと思ってしまった。この静けさの中で耳が寂しくなるというのであれば、好きな音楽を掛ける方を筆者は選ぶ。AVサウンドシステムもまた上等であった。 街中での乗り心地は上々だ。とろけるようだった「EQS SUV」の乗り味に感覚的にはかなり近いように思える。大きい方の21インチタイヤ&ホイールを履いていたので多少のコツコツを感じることもあったが気になって仕方ないというほどではない。ゴー&ストップも頻繁な市街地走行でも2.6トン以上という重量をまるで感じさせず、むしろ「GLA」を駆っているのかと思えるほど軽快なあたり、さすがはBEVの力強さというものだ。   何より驚かされたのは、やはりその小回り性だった。試乗途中に狭く入り組んだ路地に入り方向転換を余儀なくされたのだが、これはちょっと厳しいなと思えるようなスペースでも楽々とお尻を入れていけた。否、かえって切れ込みすぎて障害物検知のアラームが鳴ってしまったほど。ミラーを見れば恐ろしいくらい(最大10度)にリアタイヤが曲がっている。とにかくホイールベース3m級のモデルとは思えないほどの扱いやすさである。

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」に見る、あくなき航続距離伸長への探究心[メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

メルセデスは、電気自動車ブランド「EQ」にワンボウデザインやポップアップ式アウターハンドルなど空力をよくするためのデザインや技術を投入してきた。その意志はこの「EQE SUV」でよりメカニカルな技術にも発展している。その詳細を西川淳氏に解説してもらった。 航続距離を伸ばすための技術の数々 他の上級EQシリーズと同様、日本導入グレードは「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV」と「メルセデスベンツ EQE350 4MATIC SUV」の2種類とし、まずはローンチエディションから販売されている。今回は試乗が叶った後者(350)を中心にリポートしたい。以下、特に断りのない限り、スペックは350の数値である。 前後アクスルにそれぞれ電動パワートレーン(eATS)を搭載するというシステム構成は既存の上級EQシリーズに準じるもの。前後の駆動力配分はトルクシフト機能によって可変連続的に行われる、というのもご承知の通り。 電動パワートレーンの最高出力は215kW、最大トルクは765Nmだ。肝心のリチウムイオンバッテリーのエネルギー容量は89kWhで、本体及び制御ソフトウェアも全て自社による専用開発品である。パドルシフトを使って三段階のエネルギー回生をセットでき、もちろん回生には最適制御のオートモードも備わる。バッテリーやモーターの排熱を有効活用するヒートポンプ(航続距離を最大10%伸長)も標準で装備。日本仕様専用の機能としては双方向の充電機能があるのも既存モデルと同じだ。カタログスペックの航続可能距離は528km、というから420kmくらいは走ってくれることだろう。 昨今増えつつある150kWタイプの急速充電器を使えば、10%残量から開始して半時間で+47%まで充電できたとの報告があった。通常、高速道路利用における休憩時間は15分程度だろうから、その間だけでも100km走行分に相当する充電が可能ということになる。元々大容量のバッテリーを積んでいるから、ディストネーションチャージさえ確保できるのであれば長距離ドライブでも苦労はない。事実、筆者は東京〜京都間をさまざまなモデルで往復するが、150kW器を静岡あたりで利用できるようなってから、大容量バッテリーEVと内燃機関モデルの所要時間に差が全くなくなった。ちょっとした時間でも繋いでおけば十分足しになるからだ。 EQE SUVには従来のEQシリーズにはない新しいシステムも備わる。ディスコネクトユニット(DCU)だ。これはフロントのeATSにアクチュエーター・クラッチを設け、走行状況に応じフロントモーターを前輪からフリーにしモーターの抵抗を軽減するというもの。クルージング時などにおいて自動的に発動する。ドライバーの意志で切り替えはできない。

TAG: #EQ #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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