メルセデス・ベンツ 記事一覧

TEXT:大内明彦
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?

インドライブ・ブレーキの開発で環境保全に貢献 いまや環境保全は、地球規模での大きな社会問題となっている。こうした意味では、走行によって二酸化炭素を排出する内燃機関使用の自動車は、ほかにも環境汚染に関していくつかの問題を抱えている。ブレーキパッドをローターに圧着して制動力を得るブレーキシステムもそのひとつだ。 強い力で回転するブレーキローターにパッドを圧着し、その摩擦力で制動効果を得るブレーキシステム(ディスクブレーキ)は、ローターに圧着するパッドが削られ細かな粒子となって大気中に放散されている。これが環境汚染の要因となるわけだが、ブレーキダストを放散しない、逆にいえばブレーキパッドの長寿化、交換頻度の極めて低いブレーキシステムを実現すれば、やはり環境保全に貢献することになる。こうした発想で、いわゆるメンテナンスフリーのブレーキシステムをメルセデス・ベンツが発表した。 とりあえず、メカニズムに詳しい方に対して簡潔な説明をしておこう。このシステムは、ブレーキをインボード化しローターとパッド(キャリパー)を完全に覆ってしまう構造だ。ブレーキシステムを完全に密閉し、ブレーキダストが大気中に放散されないようにしたもので、EVが制動に関してメカニカルブレーキに対する依存度が低いことに着目した方式となっている。 では、メカニズムはそれほど詳しくない、という方に対して詳しく説明しよう。通常、自動車のブレーキは、ホイール/タイヤの裏側に設けられ、現在はほとんどの車両がディスクブレーキ(廉価モデルの非駆動輪では一部ドラムブレーキあり)を採用しているが、このディスクブレーキ、ホイール/タイヤと一体に装着された円盤(ブレーキローター)にブレーキパッド(摩擦材)を圧着して制動力を得る仕組みとなっている。しかし、この圧着圧力によってパッドが細かく削られ、それがゴミ(ブレーキダスト)として大気中に放散され、いわゆる環境汚染となっている。 これを防ぐ有効な手立てはないものか、という視点から開発されたEVのブレーキシステムが、メルセデス・ベンツの「インドライブ」機構だ。基本的な考え方はいたってシンプル。ブレーキダストを大気中に放散しなければよいというもので、やむなく発生したブレーキダストは大気中に放散しないで1カ所に溜め置き、長期間の溜め置きに耐えられるよう、ブレーキダストの発生量は極力少ないものにする、という考え方だ。 ポイントは、ホイール/タイヤと一体で装着される通常のブレーキ構造(アウトボード・マウント)では、ブレーキダストが放散しない密封構造とするのはむずかしく、インボードマウントのブレーキ方式に着目した。もちろん、アウトボードマウントのドラムブレーキという選択肢もあり、実際にVWやアウディで採用するモデルもあるが、インボードブレーキにはほかにもメリットがあるということで、メルセデス・ベンツは「インドライブ・ブレーキ」システムを開発した。

TAG: #インドライブ・ブレーキ #ブレーキ
TEXT:山本晋也
モーターの「空回し」はムダな抵抗! メルセデスが採用する電費向上技術「DCU」ってなに?

DCUは「Disconnect Unit」の略称 メルセデス・ベンツのEV(電気自動車)といえば、EQというアルファベットで区別できるようになっているが、そのEQファミリーにおいて「DCU」という独自のメカニズムが拡大しているのにお気づきだろうか。 EQE SUVを皮切りに、EVフラッグシップのEQSシリーズにも採用されている「DCU」は、航続距離を伸ばすことが期待できる革新的かつメルセデス・ベンツのようなプレミアムモデルでないと実装が難しいといえるテクノロジーといえる。 あらためて、DCUとは「Disconnect Unit」の略称。直訳すると「断ち切る装置」といったとこだろうか。特徴としては、前後に駆動モーターを持つ4WDのEVだけが備えるメカニズムとなっている。 EQシリーズにおいても、上級グレードに採用されている印象の強い2モーター式の4WDは、ハイパフォーマンスかつ走行安定性アップを実現するだけではない。EVの場合は4輪で回生ブレーキを利かせることで減速エネルギーを回収できる能力が高まるメリットもある。 唯一といえるウィークポイントは、1モーター駆動で十分に走行できるような状況において、もうひとつのモーターが走行抵抗となってしまうことだ。いわゆるコースティングと呼ばれる惰性で走るような状況において、片方のモーターは“ジャマ”になってしまう。 メルセデス・ベンツの開発した「DCU」は、そうしたウィークポイントを解決するソリューションといえる。このメカニズムを搭載しているモデル(EQEやEQS)はリヤ駆動を基本としているので、低負荷でコースティング的な走行をする際にはリヤモーターだけが駆動していればいいことになる。

TAG: #DCU #EQ #メカニズム
TEXT:高橋 優
新型メルセデス・ベンツEQSをロングランで試した! 日本の急速充電設備だと充電性能はやや不満!!

新型EQSの航続距離&充電性能をテスト! メルセデスのフラグシップEVである新型EQSで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。とくに真冬にどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 ⚫︎主要スペック(※は推定値) ・搭載バッテリー容量(グロス/ネット):※125/118kWh ・日本WLTCモード(WLTCモードクラス2)航続距離:759km ・EPA航続距離:※601km ・最大充電出力/SOC 10-80%充電時間:150kW/53分 ⚫︎装着タイヤ ・255/45/R20 ・Goodyear Eagle F1 Asymmetric 5 MO ・空気圧:2.6(適正値2.6) *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下の通りです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%付近までサービスエリア下り線で充電した後、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%程度以下まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のEQSの場合は21℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で0.7%の下振れ) 結果:蓮田SA下り→福島飯坂IC→蓮田SA上り ・走行距離:495.2km ・消費電力量:97%→8% ・平均電費:5.04km/kWh(198.4Wh/km) ・外気温:-2.5℃〜5℃ 航続距離テストの結果から、充電残量100%状態からSOC0%になるまで、556kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のEQSの場合は21℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で0.7%の下振れ) 結果:蓮田SA下り→佐野藤岡IC→蓮田SA上り ・走行距離:76.6km ・消費電力量:90%→65.5% ・平均電費:4.44km/kWh(225.5Wh/km) ・外気温:0.5℃〜3℃ ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、511kmを走破可能であることが確認できました。 *充電性能テスト ・使用充電器:150kW級急速充電器(ABB製/ブーストモード/空冷ケーブル) ・SOC10%〜80%充電時間:45.5分 ・最大充電出力(SOC):145kW(36%) ・30分回復航続距離(航続距離テストベース):257km

TAG: #充電 #長距離
TEXT:高橋 優
まさかの充電数5回の大誤算!? メルセデス・ベンツ「EQS」で1000kmのロングランに挑戦した

メルセデス・ベンツEQSのEV性能をチェック! メルセデス・ベンツのフラッグシップEVである新型EQSで恒例の1000kmチャレンジを行いました。果たして、テスラを超えて史上最速タイムを更新することはできたのか。途中の電費や充電の様子を詳細リポートします。 まず、1000kmチャレンジの前提条件は以下のとおりです。 *走行ルート 海老名SA下り(神奈川県) ↓ 加古川北IC(兵庫県) ↓ 海老名SA上り(神奈川県) *走行条件 ・途中充電のための停車以外はノンストップで海老名SA上りを目指す ・車内の空調システムはつねにONにして快適な状態をキープ(EQSの場合21℃オートに設定) ・追い越しなど含めて制限速度+10%までは許容 ・渋滞や充電エラー、充電渋滞など、車両の問題以外についてはトータルのタイムから除外 ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離と比較して0.7%の下振れなので、オドメーター上で993kmの段階でゴール) 1)海老名SA→草津PA(90kW級急速充電器) ・走行距離:384.3km ・消費電力量:98%→26% ・平均電費:4.8km/kWh(208.3Wh/km) ・外気温:6℃→3℃ ・充電セッション:26%→62%(31分) まず、この区間で注目するべきは、150kW級急速充電器が設置されている湾岸長島PAをスキップしているという点です。湾岸長島PAで充電しようとしたところ充電できず、90kW級が設置されている草津PAまで走らざるを得なくなってしまったのです。あとで調べてみたところ、充電器検索アプリ上では休止中と表示されていたものの、EQSのディスプレイ上では充電器の休止情報は反映されておらず、気づくことができませんでした。 2)草津PA→加古川北IC→桂川PA(90kW級急速充電器) ・走行距離:218.8km ・消費電力量:62%→19% ・平均電費:4.7km/kWh(212.8Wh/km) ・外気温:3℃→4℃ ・充電セッション:19%→25%(7分) すでに折り返し地点を通過。検証を行った2024年冬では湾岸長島PA以西には150kW級急速充電器が存在せず、90kW級で最小限充電を繋ぐという我慢の時間が続きます。この桂川PAでは150kW級が設置されている湾岸長島PAまで辿り着けるぶんだけ充電。やはり、100kWh級以上の大容量バッテリー搭載EVの場合は150kW級急速充電器がマストであると実感します。 3)桂川PA→湾岸長島PA(150kW級急速充電器) ・走行距離:109.0km ・消費電力量:25%→5% ・平均電費:4.7km/kWh(212.8Wh/km) ・外気温:4℃→2.5℃ ・充電セッション:5%→33%(15分) ようやく初めての150kW級急速充電器で充電です。確かに150kW級が設置されていることで高性能EVの利便性は向上するものの、仮に2台が充電すると、充電出力は最大90kWに制限されてしまい、当初想定していた充電計画が狂ってしまいます。 隣にEVがいない、来ないことを祈るしかできないのが苦しいところです。

TAG: #充電 #長距離
TEXT:桃田健史
メルセデス・ベンツとBYDが中国で合弁事業を解消! 「EVはまだまだこれから」という時期に袂を分かつ理由とは

BYDが騰勢(Denza)を完全子会社化 ドイツのメルセデス・ベンツは中国BYDとの合弁事業を見直す。両社は、BYDの高級ブランド「騰勢(Denza)」を手がける、深圳騰勢新能源汽車を共同で運営してきたが、ここからメルセデス・ベンツが完全に手を引く。 時計の針を戻せば、いまから13年前の2011年、メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が中国の新興勢力であるBYDとEVなどを共同開発するというニュースに、世界の自動車業界関係者は大いに驚いた。当時、BYDはまだ「知る人ぞ知る」といった存在であり、いまのようにグローバルでのEVリーダー的な役目を担うと想像した人はいなかったはずだ。 筆者は、2000年代に入ってから、いわゆるBRICsと呼ばれる新興国での取材活動が増え、そのなかで中国市場についても各方面での現地取材を行うようになっていた。 深圳に本拠を持つBYDについて記事として取り上げることも多かったのだが、まさかメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)がBYDとの事業提携を行うとは予想していなかった。メルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)としては、アメリカでテスラと「スマート」を活用したEV共同開発を行う事例もあった。 つまり、メルセデス・ベンツにとっては、市場拡大が未知数のEVに関して、当時の世界最大自動車市場であったアメリカと、近年中にアメリカに代わって世界最大自動車市場の座につくことが予想された中国において、それぞれの国で将来有望なベンチャーEV企業の「お手並み拝見」といったスタンスだったのかもしれない。 それが2010年代から2020年代にかけて、中国はEV黎明期から一気に世界最大のEV市場へと躍進し、いまやBYDが日本を含むグローバル市場でも注目される存在となっている。 技術面から見れば、メルセデス・ベンツとしては、BYDとのファーストステージを解消する時期だと判断したものであろうし、BYDにとってはメルセデス・ベンツとの協業で十分な知見を得たということであろう。 法律上の観点から見れば、中国政府は2022年に乗用車向けの国内・販売についての外資規制を撤廃したことが、今回の2社の提携解消の背景にあると思われる。 外資が中国市場に参入する際、出資比率は最大で50%とされていた。EVに限れば、この規制は2018年に撤廃されている。メルセデス・ベンツは直近で、出資比率を10%まで下げていたが、これをBYDが買い取る形で、深圳騰勢新能源汽車は100%BYD傘下となったのだ。 メルセデス・ベンツとBYDによる合弁事業の解消は、中国自動車市場が大きな転換期に入ったことを象徴する出来事に思える。

TAG: #中国 #合弁会社 #外資規制
TEXT:高橋 優
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている

高級車セグメントの販売が減少 メルセデス・ベンツの最新の決算内容とEVシフトの進捗動向が判明し、販売台数、収益性、EVシフトという観点で減速が目立つ厳しい動向が判明しました。 まずメルセデス・ベンツは、2024年初めに、当初掲げていた2030年までの完全バッテリーEVシフトの目標を取り下げており、今後どのようなEV戦略を採用するのかに注目が集まっていました。そして、そのような背景のなかで、2024年第三四半期の決算内容が発表されました。まず、メルセデス・ベンツの乗用車セグメントとバンセグメントを合計した、グループ全体のグローバル販売台数は59万4673台を達成。ところが前年同期比で3.4%のマイナス成長と、やはり2024年の後半に突入しても販売ボリュームの減少トレンドが続いています。 さらに問題であるのが、グループ全体の売り上げが第三四半期単体で345億2800万ユーロと、前年同期比で7.2%のマイナス成長に留まっている点です。つまり、販売台数以上に売り上げが減少しており、販売単価の減少が推測可能です。 実際に、Q3でもっとも販売に苦労したのがSクラスやGクラス、AMG、そしてマイバッハが該当する高級車セグメントです。販売台数も6.2万台弱と、前年同期比で12%のマイナスです。さらに、2024年通しの9カ月間で見ると、前年同期比で19%のマイナス成長。2024年に突入してから、メルセデスの収益性を支える高級車の販売状況が芳しくない様子が見て取れます。 次に、メルセデス・ベンツの収益性を詳細に見ていきましょう。まず直近のQ3の粗利益率は17.99%と、2021年以降で最低の四半期となりました。2022年Q3は23.28%、2023年Q3は21.6%、そして今回の18%弱と断続的に粗利が低下しています。おそらく粗利を稼ぎやすい高級車の販売台数が減少していることが影響していると推測できます。 また、販売管理費や研究開発費を除いた営業利益という観点も、Q3は7.29%と、2022年Q3は13.78%、2023年Q3が13.02%であり、急速に収益性が悪化しています。 この営業利益に影響する研究開発費について、売り上げに占める研究開発比率がQ3は4.87%と、この数年間で最高水準を計上しています。他方で、9カ月間通しの研究開発費と比率は、前年と比べて横ばいであり、研究開発費が大幅に増加したことが営業利益を圧迫したとはいえません。 また、販管費はこの9カ月間でわずかに低下しており、これは人件費の削減が理由であると説明されています。つまり、何がいえるのかといえば、今回、なぜ収益性で大きく落ち込んでしまっているのかというと、研究開発費や販管費が大きく増加したことが要因ではなく、やはり販売台数の減少、とくに高級車という利幅の大きいモデルの販売が落ち込んでしまったことが原因なのです。

TAG: #決算 #販売
TEXT:高橋 優
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?

高いオフロード性能を実現! メルセデス・ベンツが日本国内でGクラスのEVバージョンの正式発売をスタート。さらにパワーXとタッグを組んで、日本国内に急速充電ネットワークを整備する方針も表明するなど、メルセデス・ベンツの最新動向を解説します。 まず、今回日本国内でも正式発売がスタートしたGクラスのEVバージョンは、すでにEQGとしてコンセプトモデルが発表されており、市販車バージョンの発売に大きな期待が集まっていたという背景が存在します。 そして今回、日本国内でも、G 580 with EQ Technologyという正式名称で発売がスタートしました。 じつは現在、メルセデス・ベンツはEV販売で失速している状況です。そして、EQシリーズ全体で問題視されていたのが、EQSやEQE SUVなどの命名のせいで、EVであることをユーザーが気にし過ぎてしまって、EQシリーズを購入検討から除外してしまっているのではないかという懸念です。よって、次世代EV専用プラットフォームを採用して開発されるCLAのEVバージョン以降は、EQの名を冠さない別の命名規則を採用する方針を示しています。今回のGクラスのEVも、もともと想定されていたEQGという命名ではなく、G 580 with EQ Technologyと、あくまでもGクラスの1グレードというような命名を行なってきました。 まず、G 580のパワートレインは、すべての駆動輪に対してそれぞれモーターを搭載するというクアッドモーターシステムを採用しています。よって、より緻密な電子制御を行うことが可能となり、タンクターンすらも可能となります。 また、Gクラスのオフロード性能という点で、その最大渡河性能が最大850mmと、ディーゼルモデルのG 450 dの700mmを上まわる走破性能を実現しています。 そして、EV性能については、まずバッテリー容量がグロスで122kWh、ネットで116kWhを搭載しており、航続距離は、日本市場で採用されるWLTCモードクラス2で最大530kmと、オフロード走行車という点を踏まえるとやや物足りない印象です。 ちなみにもっとも厳しいEPA基準の場合、日本国内では導入されない、より電費を稼げる18インチ装着のグレードで386kmです。よって高速道路を巡行する際は、満充電あたり350km走れるかどうかとイメージしておくのがいいでしょう。 また、オフロードSUVとして、車両底面に搭載されるバッテリーパックを守るために、カーボンを含む厚さ26mmの専用素材でアンダーボディを構成。バッテリーに対する物理的な損傷を強固に保護しながら、重さも57.6kgと、スチール性のアンダーカバーと比較しても3分の1という軽量化を実現しています。そして、車両重量が3120kgと、たとえばG 450 dが2560kgであることを踏まえると、内燃機関モデルよりも560kgも重くなっています。 また、車両サイズは、全長4730mm、全幅1985mm、全高1990mm、ホイールベースが2890mmと、内燃機関モデルと大差はありません。

TAG: #G 580 with EQ Technology #Gクラス
TEXT:TET 編集部
メルセデスから新型EQS登場! さらなる装備の充実とバッテリー大型化でEV航続距離最長モデルへ進化

装備充実のEV最強長距離ツアラーに 現在、急速に電動化をすすめるメルセデス・ベンツの100%電気自動車のラインとなるEQシリーズ。そのEQシリーズのフラッグシップモデル「EQS」がマイナーチェンジを実施した。 今回のマイナーチェンジでは、内外装デザインを刷新するとともに、大型バッテリーの採用による航続距離の延長、さらにインフォテインメントシステムなど、装備面がさらに充実したことがトピックとなる。 エクステリアでは、RWDモデルとなる「EQS450+」に、横桟のアクセントが入るクロームルーバーラジエーターグリルと、ボンネットマスコットを新たに装備。 「EQ」シリーズでは、グリル中央に大型のスリーポインテッドスターが配置されることが多いが、この新型EQSでは、グリルのデザインはルーバーだけが廃されたスッキリとしたものになり、メルセデス・ベンツのアイコンたるスリーポインテッドスターはボンネット上にマスコットとして屹立する。 メルセデス・ファンには、この伝統のスタイルを求める者も多いはず。 また、新デザインの21インチAMGアルミホイールが用意されるほか、電動充電フラップを新たに装備することで、EVとしての使い勝手が向上している点にも注目だ。 インテリアでは、映像や音楽といったストリーミングコンテンツを車内で楽しめる「MBUXエンターテインメントパッケージプラス」や、iPhoneに対応したデジタルキーが標準化されたほか、インストゥルメントパネルを埋め尽くす大型スクリーン「MBUXハイパースクリーン」をEQS450+に新たにオプション設定。 また、EQS 450+については、乗員の快適性を高めるオプション「エクスクルーシブパッケージ」選択時にシートの素材がナッパレザーへと変更されるようになったほか、リヤシートの背もたれが最大38度まで倒すことのできる可倒式に。リヤシートから助手席の位置をコントロールすることも可能となり、その豪著な居住空間にはさらなる磨きがかかっている。 パワートレインでは、リチウムイオンバッテリーの容量増大が最大のトピックだろう。EQS450+、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+の両モデルともに従来の107.8kWhから118.0kWhへと増強。 その結果、従来モデルでも700kmを誇っていたEQS450+の一充電走行距離(WLTCモード)は759kmへとさらに延長。この数値は、テスラ・モデル3を抜き去り日本で販売されている電気自動車のなかで最長となる。 大幅改良が施された新型EQSは、EQS 450+が税込1535万円、メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+が2395万円のプライスタグを掲げる。両モデルでハンドル位置は左右から選択可能だ。 贅を尽くした仕立てに、長距離ツアラーとしての適性も備えたほかにない一台。EVを検討される際には、ぜひとも候補に入れてはいかがだろうか。

TAG: #メルセデス・ベンツ #新型車情報 #輸入車
TEXT:伊達軍曹
もっとも長く走れるモデルは東京から青森までノンストップ! いま日本で買える航続距離が長い電気自動車TOP10

最新EVは1回の充電でメッチャ走れる! 2010年12月にデビューした最初期の日産リーフの航続距離は、現代の水準から考えればきわめて短いといえる「200km」でしかありませんでした(しかもWLTCではなくJC08モードで)。しかしその後はさまざまな技術革新に伴い、日産リーフを含む多くのEVが、その一充電走行距離を大幅に延ばしています。 ならばいま、「もっとも一充電走行距離が長いEV」はどれになるのでしょうか? 各モデルが搭載するバッテリー容量の違いなどについてはとりあえず無視し、シンプルなWLTCモード値順による「正規販売車の航続距離ランキング」を見てみましょう。 1位|テスラ・モデル3ロングレンジ:706km 75kWhのバッテリーを搭載し、デュアルモーターの最高出力はフロント158馬力/リヤ208馬力となるテスラ・モデル3ロングレンジ。その一充電走行距離は、2024年11月上旬時点においては正規輸入車中ナンバーワンの706km。WLTCモード値=実際の走行可能距離ではありませんが、もしも706km走れるとしたら、東京から青森県までノンストップで走ることができます。 2位|メルセデス・ベンツ EQS 450+:700km テスラ・モデル3ロングレンジとほぼ同等の航続距離を誇るのが、メルセデス・ベンツの EQS 450+。こちらはリヤにシステム最高出力333馬力のモーターを搭載するRWD車で、リチウムイオンバッテリーの容量は107.8kWh。かなり大きなバッテリーであるため充電には時間がかかりますが、一度満充電にすれば、相当の距離を一気に走ることが可能です。 3位|ポルシェ・タイカン:678km(※WLTPモード値) 2024年2月に予約受注が始まった改良型ポルシェ・タイカンは、先代モデルの出力を最大108馬力上まわる新型リヤアクスルモーターをすべての仕様に搭載。さらに、ソフトウェアを最適化した改良型パルスインバーターや、より強力なバッテリー、サーマルマネジメントの改良、次世代ヒートポンプの搭載、改良型回生システムなど、広範囲な改良が施された結果、一充電走行距離は従来型比で175km増加した最大678km(WLTP値)が実現されています。 4位|BMW i7 eDrive50:652km BMW i7は、BMW 7シリーズのBEVグレード。そのうちeDrive50は、最高出力455馬力/最大トルク650Nmのモーターで後輪を駆動する2WDモデルで、WLTCモードによる一充電走行距離は652kmを実現。仮にWLTCモード値どおりに走るとしたら、途中充電なしで東京から岡山県まで直行可能です。

TAG: #国産車 #航続距離 #輸入車 #電気自動車
TEXT:TET 編集部
メルセデス・ベンツが新会社設立で「EV急速充電ネットワークの整備」を強化! 2026年末までに計100口の設置を目指す

メルセデス・ベンツが充電器を増設へ メルセデス・ベンツは日本で電気自動車(EV)の普及を加速させるべく、11月1日に新会社「メルセデス・ベンツ・ハイパワー・チャージング日本合同会社」の設立を発表した。 新会社は、高出力の急速充電ネットワーク(HPC:High Power Charging Network)の設置を通じて、すべてのEVユーザーにメルセデス・ベンツならではの充電体験を提供することを目的に、急速充電施設の設置及び運営を行う組織として設立された。 高出力の急速充電インフラ(HPC)の整備により、EVの充電時間を短縮し、EVユーザーの利便性向上が見込まれる。また、より急速充電ニーズの高い3大都市圏の周辺を中心に導入を進めることで、長距離移動時や基礎充電設備の不足による充電の不安を解消し、EVの実用性を高めるとしている。 なお、新会社「メルセデス・ベンツ・ハイパワー・チャージング日本」は、HPCの設置および運営事業に関して、大型蓄電池の製造・販売、EVチャージステーションのサービス展開で実績のあるパワーエックス社と事業提携し、共同で協議・検討を進めていくことを発表した。 これにより、充電設備のスペックならびに具体的な設置予定箇所は未公表ながら、2026年末までに25カ所50基、合計100口の急速充電設備を設置していく予定であることも発表。 ドイツのプレミアムブランド各社が急速充電ネットワークの拡充を推し進めるなか、メルセデス・ベンツも追随する姿勢を示したことは、同社のEQシリーズを検討および保有しているユーザーにとっては心強いのではないだろうか。今後の発展に期待したいところだ。

TAG: #パワーエックス #メルセデス・ベンツ #急速充電
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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