メルセデス・ベンツ 記事一覧

TEXT:TET 編集部
メルセデス・ベンツがPHEV「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」を発売

EVの利便性と内燃機関の安心感を兼ね備えたモデル 2023年11 月29日、メルセデス・ベンツ日本は、「新型 GLC」にプラグインハイブリッドモデル「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」を追加し、販売を開始した。 GLCは2015年にデビューし、全世界での累計販売台数260万台を記録するメルセデスのプレミアムミドルサイズSUV。 新型GLCは、伸びやかで美しいシルエットのなかにスポーティかつ洗練された要素を取り入れたエクステリアと、リアルウッドトリムを採用した質感の高いインテリアを併せ持つSUVとなった。ダイナミックなドライビング特性、サポートの精度を高めた安全運転支援システム、縦型の大型メディアディスプレイなども採用している。 今回追加されたGLC 350eは、最高出力204馬力(150kW)、最大トルク320 N・mを発生する2リッター直列4気筒ターボエンジンに、容量が31.2kWhのリチウムイオンバッテリーと出力136馬力(100kW)、トルク440N・mの電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドモデル。 システム総合の最高出力は313馬力(230kW)、最大トルクが550N・mのパワーユニットを備え、電気モーターのみで140km/hまで走行することができる。走行可能な航続距離は118km。 急速充電器(CHAdeMO)、6.0kW(30A)の交流普通充電の双方に対応している。 「インテリジェントアクセルペダル」の「プレッシャポイント機能」では、EV走行モードの際、これ以上アクセルを踏むとエンジンも使用しなければならないというモーター走行の限界点でアクセルペダルの抵抗を増してドライバーに知らせ、無駄なエネルギーの消費を抑制。 「GLC 350e 4MATIC Sports Edition Star」の価格は税込み998万円。

TAG: #GLC #PHEV #プラグインハイブリッド
TEXT:生方 聡
メルセデス・ベンツが「コンセプトEQG」をジャパンプレミア

メルセデス・ベンツ日本は、10月28日に一般公開が始まる「ジャパンモビリティショー」で「コンセプトEQG」を日本初公開するとともに、最新の電動化モデルを展示する。 メルセデスがジャパンモビリティショーに出展する理由は? ジャパンモビリティショーに出展している輸入乗用車ブランドで、独自のブースを構えているのは「BMW」「BYD」、そして、「メルセデス・ベンツ」の3つだけ。 「2019年の東京モーターショーから今日にいたるまで、世界中でさまざまな環境の変化がありました。自動車業界も大きな変革期のなかで困難がありましたが、こうしてジャパンモビリティショーが開催されることは大変喜ばしいことであり、弊社としては自動車はやはり実際に見ていただくことが大事であると考え、このジャパンモビリティショーでひとりでも多くの方にメルセデス・ベンツに触れてもらいたいという思いから、今回出展しました」と、社長の上野金太郎氏は語る。 今回の同社のブースは「電動化」「デジタル化」「サステナビリティ」をテーマに、展示モデルはすべて電動化モデルとし、また、ブース全体を“空間オーディオ”で包み込む演出としている。展示車両には“ワールドプレミア”こそないものの、日本でもカリスマ的人気を誇る「Gクラス」のEV版である「コンセプトEQG」を日本初公開(ジャパンプレミア)しており、ショーの会期中には注目を集めそうだ。 このコンセプトEQGは今年9月に開催されたIAA(ミュンヘンモーターショー)で公開されたもので、圧倒的な存在感を示すGクラスのイメージを受け継ぎながら、EVならではの要素を加えることでその個性を際だたせている。たとえば、コンセプトEQGのフロントマスクは、ラジエターグリルに代えてスリーポインテッドスターが配されたブラックパネルを採用。周囲を縁取る照明に加えて、ドアミラーカバーに白く光るサークルや、ボディサイドのライトストリップが、エンジン車との違いを明確にしている。

TAG: #SUV #コンセプトEQG #メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツ・トラクス・eアクトロス600(photo=ダイムラー・トラックス)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
トラック野郎も納得の耐久性?……メルセデス・ベンツ、120万km乗れるEVトラックを発表[2023.10.17]

60万km以上走れば収益性を確保できると自信を見せる仕上がり 目先のエコを追いかけただけではない実用性重視の商用EV 【THE 視点】ダイムラー・トラックス傘下のメルセデス・ベンツ・トラックスは10月10日、長距離輸送に対応できるEVトラック「eアクトロス600」を正式発表した。 一度の充電で500kmの航続が可能という。欧州で定められている一日一回の法定休憩時に充電を行なえば、航続距離を1日あたり1,000kmに伸ばすことができる。総重量は44トンで、標準トレーラーでの最大積載量は約22トンとなる。今年中に販売が開始され、2024年末に量産開始予定だ。 モデル名にある「600」の数字は、最大容量600kWhを超えるバッテリー容量が由来。最高出力400kWの急速充電(CCS規格)に対応し、将来的にはメガワット充電 (MCS) も可能になるという。 価格は発表されていない。しかし従来のディーゼルトラックの2〜2.5倍のプライスで購入しても、5年間の保有もしくは走行距離60万kmを経過すれば、ディーゼルよりも高い収益を産むことができるとうたっている。 バッテリーの搭載量の詳細は、最大容量207kWhのバッテリーパックが3つで合計621kWhとなる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)を採用し、耐用年数が長いことが特徴だ。 10年間の稼働で最大120万kmの距離を走行できるよう設計し、この条件下でもバッテリーの劣化状態(SOH)は80%を下回らないという。 その状態の使用済みバッテリーであれば、リユースバッテリーとしても十分に使用可能だ。加えて言うならば、この容量でV2Xに対応できれば、仮想発電所はもちろん災害時の緊急バッテリーとしても頼りになる。 パワートレインは、2つのモーターと4速のトランスミッションを備えた800Vの高電圧の「e-アクスル」(モーター・ギアボックス・インバータ一体型の駆動装置)を新開発した。 モーターは定格出力400kW・最高出力600kWで、高い加速性能と快適性などを実現しているという。 最大容量600kWhのバッテリーで500kmの航続が可能とは、かなりの効率である。高効率のパワートレインだけではなく、エアロダイナミクスの影響も大きいはずだ。 四角いボディではあるが、風洞実験を重ねて空力を検証しており、ボディの周りを空気が綺麗に流れるよう徹底的に検証・デザインをしている。セオリー通りのトラックのフロントフェイスに見えるが、どこかスタイリッシュで先進性を感じるのは、それらの機能性を極限まで追求した結果であろう。 「60万kmの走行距離で収益性が見込める」と、導入・運用コストの目安を示したことも自信の表れだろう。設計上走ることができる120万kmを走行して十分に元がとれるとは頼もしい。一過性の流行やエコの追求で発売したものではないとも受け取れる。 日本のEVトラックも、eアクトロスが示した耐久性に近づくことができれば、一気に普及するのではないだろうか。EVトラックのベンチマークが登場したと言えよう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、JMSに出展するスポーツEVを一部公開 ……スポーツEVのコンセプトモデル「FT-Se」を出展するという。開発はトヨタのスポーツ部門のGazoo Racingが主導したようだ。一部公開された画像には、「GRスープラ」や「GR86」といったスポーツモデルに付くバッジ「GR」がつけられていることが確認できる。また、SUVタイプの「FT-3e」も出展する。 ★DMM、道の駅やガソリンスタンドへの充電器の導入を後押し ……急速充電器を無料で導入できるプラン「急速充電0円プラン」の提供を開始した。事業者向けのプランで、初期費用やサービスの利用料が無料となる。充電器の導入費用を事業者が負担する代わりに販売価格の一部を還元するプランも用意。 ★エネチェンジ、グランキューブ大阪に充電器を設置 ……大阪府立国際会議場「グランキューブ」<大阪市北区>に最高出力6kWタイプの普通充電器を1口導入した。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.17]

TAG: #EVトラック #THE視点 #ニューモデル
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」を含むEQシリーズは現時点で最も秀逸で“ベンツらしい”モデル[メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

西川淳氏による「EQE SUV」のインプレッションも最終回を迎えた。前回に続き高速道路を試乗した。走り終えた西川氏は、クルマ選びのポイントやメーカーの在り方についても想いを馳せる。   “最上級ステータス”以外は全てある  要するに「最上級でなければ嫌だ!」という見栄を張らずともいいという方であれば、セダンにしろSUVにしろ、EQEを選んで間違いはないということ。ステータス性以外、全ての面でそれはEQSに等しいと言っても過言ではないから。昔からEクラス級がメルセデスの乗用車ラインナップにおいて中核であることのそれは証でもあった。 そのことは「EQE 350 SUV」を高速道路へと導くといっそうよく理解できることだろう。力強さと心地よさを高いレベルで両立した走りは「EQS SUV」に比べてなんら劣らない。特にドライバーにとっては、流れる景色と身体に感じるテイストにほとんど違いはない。首都高速の継ぎ目を心地よくいなしつつ、カーヴにおいては些かの不満も感じさせず、リア操舵によって直進安定性は極めて高く、もちろんここイッパツのスムースな加速に不満もない(EVらしい爆発的な加速を望む向きには「AMG53」がオススメ、というのもこれまでと同様だ)。 道中に充電不安の尽きないBEV(バッテリー電気自動車)でありながら、従来のエンジン付きメルセデスと同じくきっと長距離ドライブに最適という予感が生じるのは、これまで試乗した上級のEQシリーズ全てに共通する魅力である。 結局のところ、ICE(内燃機関)だからBEVだから、ではなくて、クルマそのものの魅力がユーザーの期待にどれだけ応えることができるか、どれだけ不安を超える魅力を提案できるか、がクルマ選びの本当のポイントである。筆者のガレージには未だ200V口すらなくてBEVを持つ環境ではないし、またインフラへの不安もまだまだあると思っている方だけれど、それでも欲しいと思えるBEVが昨今ちらほら現れ始めた。クラシックカーやスーパーカーと同様に、買うためのハードルは一般的な乗用車に比べると(個人的には)高いと言わざるを得ないけれど、それを超える魅力が新しいBEVモデルの中に出始めたというわけだ。EQEシリーズなどはその一つである。

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」は空飛ぶクルマに一番近い乗り物だ![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

いよいよEQE SUVを走らせる。メルセデス・ベンツの中核にあたる「EQE SUV」はどんな走りを披露し、何を感じかせてくれるのだろうか。 デザインの統一とHMIの重要さ  「EQSセダン」に始まったメルセデスのBEV(バッテリー電気自動車)専用モデルシリーズ。そのT字型のユニークなコクピットスタイルにもようやく見慣れてきたように思う。異なるモデル間のデザイン的な統一性を嫌う向きもあるが、ジャーマンプレミアムブランドでは特殊なモデルを除き伝統的にインテリアデザインのテーマを世代ごとに共有してきた。ドライバーとの関係性を考えたとき、その時代における最適解を見つけてラインナップへと展開することもまたブランドの個性を固める手段であると彼らは知っているからだ。人とクルマとの接点=広義のヒューマンインターフェイス(HMI)こそがブランドの礎だ。   “重さ”を感じさせないBEVマジック 前輪の存在をステアリングホイールでしっかり感じ取りながら、いつものようにゆっくりと走り出す。圧倒的な静粛性は上級EQシリーズの魅力の一つ。あまりに静かすぎて、路面との関係性がよくわからなくなって不安になることもあるくらいだ。 サウンドエクスペリエンスという“走行音の演出”も悪くない。よくできている。特に三種類あるサウンドのうち、“ロアリング”は嫌いじゃない。けれども驚異的な静かさを味わってしまうと余計なお世話だと思ってしまった。この静けさの中で耳が寂しくなるというのであれば、好きな音楽を掛ける方を筆者は選ぶ。AVサウンドシステムもまた上等であった。 街中での乗り心地は上々だ。とろけるようだった「EQS SUV」の乗り味に感覚的にはかなり近いように思える。大きい方の21インチタイヤ&ホイールを履いていたので多少のコツコツを感じることもあったが気になって仕方ないというほどではない。ゴー&ストップも頻繁な市街地走行でも2.6トン以上という重量をまるで感じさせず、むしろ「GLA」を駆っているのかと思えるほど軽快なあたり、さすがはBEVの力強さというものだ。   何より驚かされたのは、やはりその小回り性だった。試乗途中に狭く入り組んだ路地に入り方向転換を余儀なくされたのだが、これはちょっと厳しいなと思えるようなスペースでも楽々とお尻を入れていけた。否、かえって切れ込みすぎて障害物検知のアラームが鳴ってしまったほど。ミラーを見れば恐ろしいくらい(最大10度)にリアタイヤが曲がっている。とにかくホイールベース3m級のモデルとは思えないほどの扱いやすさである。

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:西川 淳
「EQE SUV」に見る、あくなき航続距離伸長への探究心[メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

メルセデスは、電気自動車ブランド「EQ」にワンボウデザインやポップアップ式アウターハンドルなど空力をよくするためのデザインや技術を投入してきた。その意志はこの「EQE SUV」でよりメカニカルな技術にも発展している。その詳細を西川淳氏に解説してもらった。 航続距離を伸ばすための技術の数々 他の上級EQシリーズと同様、日本導入グレードは「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV」と「メルセデスベンツ EQE350 4MATIC SUV」の2種類とし、まずはローンチエディションから販売されている。今回は試乗が叶った後者(350)を中心にリポートしたい。以下、特に断りのない限り、スペックは350の数値である。 前後アクスルにそれぞれ電動パワートレーン(eATS)を搭載するというシステム構成は既存の上級EQシリーズに準じるもの。前後の駆動力配分はトルクシフト機能によって可変連続的に行われる、というのもご承知の通り。 電動パワートレーンの最高出力は215kW、最大トルクは765Nmだ。肝心のリチウムイオンバッテリーのエネルギー容量は89kWhで、本体及び制御ソフトウェアも全て自社による専用開発品である。パドルシフトを使って三段階のエネルギー回生をセットでき、もちろん回生には最適制御のオートモードも備わる。バッテリーやモーターの排熱を有効活用するヒートポンプ(航続距離を最大10%伸長)も標準で装備。日本仕様専用の機能としては双方向の充電機能があるのも既存モデルと同じだ。カタログスペックの航続可能距離は528km、というから420kmくらいは走ってくれることだろう。 昨今増えつつある150kWタイプの急速充電器を使えば、10%残量から開始して半時間で+47%まで充電できたとの報告があった。通常、高速道路利用における休憩時間は15分程度だろうから、その間だけでも100km走行分に相当する充電が可能ということになる。元々大容量のバッテリーを積んでいるから、ディストネーションチャージさえ確保できるのであれば長距離ドライブでも苦労はない。事実、筆者は東京〜京都間をさまざまなモデルで往復するが、150kW器を静岡あたりで利用できるようなってから、大容量バッテリーEVと内燃機関モデルの所要時間に差が全くなくなった。ちょっとした時間でも繋いでおけば十分足しになるからだ。 EQE SUVには従来のEQシリーズにはない新しいシステムも備わる。ディスコネクトユニット(DCU)だ。これはフロントのeATSにアクチュエーター・クラッチを設け、走行状況に応じフロントモーターを前輪からフリーにしモーターの抵抗を軽減するというもの。クルージング時などにおいて自動的に発動する。ドライバーの意志で切り替えはできない。

TAG: #EQ #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:西川 淳
常識を覆す「EQE SUV」のパッケージングとデザインは要注目![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

日本におけるメルセデス・ベンツの7番目の電気自動車として、8月25日に発売になった「EQE SUV」。いち早くこのモデルに試乗した西川淳氏にレポートしてもらった。上位モデルのEQS SUVも知る西川氏にEQE SUVはどう映ったのだろうか。 定石のモデル展開 「EQE SUV」はプレミアムブランドの上級モデルとして画期的である。商品のコンセプトそのものは、EVというよりもメルセデス・ベンツの乗用車シリーズにあって “予想通り”の展開、つまりは上(Sクラス相当の「EQS SUV」)と下(コンパクトな「EQC」や「EQB」)から攻めて、ブランド的に最もバランスのいいアッパーミドルクラス(Eクラス相当のEQE SUV)で締めくくるという定石に則ったものだ。だから、EQE SUVの登場そのものに驚きはない。パフォーマンスの想像も乗る前からだいたいついた。けれども画期的だと思う。なぜか。 “小さくて広い”からだ。ボディサイズに注目してほしい。なんと全長4.9mを切った。それでいてホイールベースは3m超え。このクラスのSUV(GLE)といえば5m級が当たり前で、それもモデルチェンジごとに大きくなってきた過去がある。たかが10cmの話とはいえ、フル電動化を機にこれまでの成長呪縛から一旦逃れ、BEV(バッテリー電気自動車)のレイアウト自由度を活用して小さく始めたことが画期的だと思ったわけだ。もちろん先にデビューしたEQS SUVも「GLS」に比べて短くなっている。けれどもセダン系はそうでもなかった。 メルセデスベンツは既存のICEラインナップから独立した専用プラットフォームをもつBEVで今後の主力となるはずのSUVシリーズにおいて、新たなボディサイズ戦略を取りはじめたということ。EQE SUV やEQS SUVが次回のモデルチェンジ時に大きくならないことを祈るばかりだけれど。

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:TET 編集部
大型トラックのEV化進む。メルセデスが航続距離500kmの「eアクトロス600」を発表

独メルセデス・ベンツの商用車部門メルセデス・ベンツ・トラック・バスは9月11日、電動大型トラック「eアクトロス」のロングレンジ版として、航続距離500kmを実現した「eアクトロス600」を、10月10日にワールドプレミアすると発表した。 1000kWh充電に対応 メルセデス・ベンツ・トラック・バスは世界で商用車の電動化を進めているが、その中でも大容量の荷物輸送に特化した大型電動トラックシリーズとして展開しているのが「eアクトロス」だ。そのネーミングどおり、かつて日本でも販売されていた内燃機関版の「アクトロス」をベースに、完全電動パワートレーンを与えられた同シリーズは、これまで「eアクトロス300」(112kWhバッテリー3個搭載)および「eアクトロス400」(同4個搭載)が発売済み。これらのモデルは、最大で400kmに達する航続距離を武器に、既に欧州などでは実際のビジネスシーンで活用が始まっている。 今回、そのeアクトロスに新設定されることが判明したeアクトロス600は、数字から分かるように、航続距離をさらに延長。メルセデス・ベンツ・トラック・バスによれば、充電なしで最大500kmの航続距離を達成しているという。さらに、将来的な1000kWh(メガワット)充電にも対応できるよう設計されているとのことだ。 その詳細なスペック等はまだ公表されていないが、昨秋ドイツで開催された「IAAトランスポーテーション2022」にメルセデス・ベンツ・トラック・バスが出展したプロトタイプ「eアクトロス・ロングホール」は、大容量のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを3つ搭載し、600kWh以上の電池容量で約500kmの航続距離を実現していた。明言はされていないものの、航続距離の公表値からして、eアクトロス600がeアクトロス・ロングホールの量産版と考えれば、そのバッテリーは上述のリン酸鉄タイプ3個ということになるのだろう。 また、今回同時に公表されたティザーイメージからは、eアクトロス600がトラクターヘッドであることも判明。もしかすると、これは数あるボディ形状の一つかもしれないが、少なくともメーカーが最も数を売りたいと考えているのは、トラクターヘッドなのだろう。実は、メルセデス・ベンツ・トラック・バスでは牽引されるトレーラーを使って航続距離をさらに伸ばすことも検討中。具体的には、トレーラーにもバッテリーと駆動モーターを搭載することで、航続距離を最大800km程度まで延長できる見通しということだ。 もちろん、これはすぐに市販可能というわけではないだろうが、トラクターヘッドをeアクトロス600のアイコンにすることで今のうちに数を売り、将来的なトレーラーの販拡にもつなげようという狙いかもしれない。 もうひとつ、注目なのはeアクトロス600が既存の300や400とは異なるデザインを採用しているらしいこと。ティザーイメージからは、コクピットが既存モデルより強くスラントしているようにも見え、メルセデス・ベンツ・トラック・バスもエアロダイナミクスを高めた旨発表しているから、トラックとしては異例のスタイリッシュなルックスも期待できそうだ。 世界では大型トラックも着実に電動化が進んでいる。こうした動きが日本にどのような影響を与えるのか、注目していきたい。  

TAG: #メルセデス・ベンツ #商用EV #発売前モデル
TEXT:小川フミオ
「IAAモビリティ」に映えたコンセプト、エレガントなメルセデス「CLA」とアグレッシブなクプラ「ダークレブル」

クプラは「限界を考えずに、ほんとうに乗りたいクルマ」、メルセデス・ベンツは「まもなく生産」とそれぞれの未来像を見せた。 “バットモービル”を思わせる ―クプラ 2023年の「IAAモビリティ」。ほかの記事で紹介してきたように、今回の特徴は、会場を、メッセとミュンヘン市内との2つに分けたことだ。 理由は、メッセ会場が手狭だとか、有料だと入場者をじゅうぶんに集められない(クルマばなれ?)とか、いろいろ取り沙汰されていたが、少なくともオデオンスプラッツなる中心部の広場での、オープンスペースなる各社の特設会場はにぎわっていた。 おおがかりなオープンスペースは、フォルクスワーゲン・グループのクプラだ。日本ではあまりなじみのないこのブランドは、スペインで2018年に立ち上げられた。 当初はスペインのセアトの高性能車のサブブランドだったが、いまは独立性が強くなっている。電動とスポーティさを両輪としたモデル作りを担当。今回は「ダークレブル・コンセプト」を展示した。 「未来のEVはセクシーでエモーショナルになれるということの証明」と、ウェイン・グリフィスCEOの言葉が紹介されているモデル。まるでゲームの世界から飛び出してきたようだ。 「限界を考えずに、ほんとうに乗りたいクルマってなんだ?と考えてデザインしました。デザインを通して、私たちは自分のフィーリングを表現できるし、大胆にもなるんです」 バルセロナでクプラのデザインチームを率いるヘッド・オブ・デザインのホルヘ・ディエス氏は、「フォルクスワーゲングループ・メディアナイト」でダークレブルを紹介しながらそう語っていた。

TAG: #IAA #クプラ #メルセデス・ベンツ
TEXT:小川フミオ
カーボンニュートラルを10年早く実現するにはどうすべきか、メルセデス・ベンツ本社会長の意欲とは

「パリ協定よりも早いカーボンニュートラル化を見据えて、数々の技術を整える」とオラ・ケレニアス取締役会会長は話す。それは先駆者としての矜持からの言葉だった。 2050年より早く メルセデス・ベンツ日本は、2023年8月にBEV「EQE SUV」シリーズを発表・発売。このときドイツの本社から、オラ・ケレニアス取締役会会長が来日した。 2022年2月1日に、これまでのダイムラーから、メルセデス・ベンツ・グループに社名を変更。 そのとき、ケレニアス会長は「電動モビリティと車載ソフトウェアを重視することで、創業者の遺産を継続したいと考えている」と発言したと報じられた。 これからBEV(バッテリー電気自動車)を中心に、カーボンニュートラル化を進めたいとするケレニアス会長による、EQE SUVシリーズ発表会時の発言は下記のとおり。 「私たちは、2050年のカーボンニュートラル化に向けた目標設定をしています。これは(地球温暖化対策の国際的な枠組みである)パリ協定から導き出した目標です」 「もし、化石燃料に依存するプロダクトを手がける企業だとしたら、このような目標設定をする必要があります。私たちのばあいは“Ambition 2039”(バリューチェイン全体でカーボンニュートラル)を設定しました」 「2050年より10年早く脱炭素化をはかりたいというのが、私たちの考えです。そのためには、2020年代にやるべきことが多々あります」 「そこで私たちは、製品ラインナップや、それを支える技術の数かずを整えて、市場に提供しようと考えています。もし市場が受け入れてくれる用意ができたなら、そうします」 「私たちは、2020年代の終わりまでに、すべてのラインナップを電動化します。2023年第2四半期におけるグローバルマーケットでのメルセデス・ベンツのBEVの売り上げは、前年比123パーセント増です」 「23年上半期のBEVのセールスは、つまり、倍になりました。私たちはいまいきおいに乗っているといってもいいでしょう。EQE SUVは、BEV化促進のカギになります」 世界的に追従されるほどに日本法人は革新的 「日本法人がやることは、革新的です。日本で最初に実施された施策が、追って、世界的に実施されることもよくあります。そのひとつが、EQシリーズの専売拠点設置です。ひとつはすでにオープンしていて(横浜)、もうひとつはまもなくオープンの予定です(青山)」 「充電システムの構築についても、私たちは考えています。2030年までに世界の主要市場において、1万基以上の高出力充電器を設置する計画です」 ケレニアス会長がスピーチをした、EQE SUVシリーズ発表会場では、モニターに「日本でもMercedes me Chargeを活用した日本への導入も検討中」と表示された。 「むかしの図式だと、自動車会社が製品を作り、エネルギーはエネルギー会社の担当でした。しかしそれとはちがうプローチをとるのです。私たちは世界規模でインフラ構築に多額の投資を行うと、すでに発表しています」 2023年1月5日に、メルセデス・ベンツは、上記のケレニアス会長の発言にあるように、世界の主要市場にBEV用高圧充電器を整備すると発表。 たとえば北米では、「MN8エナジー」と協力。総投資額10億ユーロ以上を使って、400以上の充電施設を新設し、2500基以上の高圧充電器を設ける計画という。 「日本でのメルセデス・ベンツのオーナーは、私たちがサポートします。日本法人の経営陣と話しをしています。今年(23年)後半により具体的な内容を発表します。充電への投資を開始する予定です」 「何百万台のBEVは、巨大な蓄電池になるととらえることもできます。これを発電や給電のグリッドシステムとして機能させることもできるのではないでしょうか。EQE SUVには、(日本法人からの要求をいれて)給電システムを搭載しました。クルマのなかに小さな発電所があるという考えはおもしろいと思います」 「メルセデス・ベンツ・グループは、太陽光発電の大規模なプログラムにも投資をしています。欧州のいくつかの地域では、風力発電にも投資しています。つまり、私たちはある意味、エネルギーを自給自足できているのです。これまでエネルギーは独占的なものでした(それが変わるのです)」 「古いバッテリーをどうするのか。これも訊ねられる質問です。大きくて、重くて、多くの素材の集合体のバッテリー。使われているニッケルとかマンガンなどは、貴重であり高価です」 メルセデス・ベンツ・グループでは、ドイツにバッテリーリサイクルのためのクッペンハイム工場を作り(2023年内に落成予定)、そこでのリサイクル率は96パーセント以上を目標にすると発表。 「クルマを含めて、ほぼ完全なリサイクル化を確立すべく技術を確立してきました。車両に使う素材を循環経済に組み込むことにも取りこんでいます」 <了>

TAG: #EQE SUV #メルセデス・ベンツ #戦略
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
年間20万台のEVの生産が可能なメガファクトリー! ヒョンデが韓国・蔚山に新EV専用工場を建設
電動水素ターボブロア・プロトタイプ(photo=IHI)
燃料電池(FC)もターボチューン……IHIがFC航空機向け「電動水素ターボブロア」を開発[2023.11.16]
マンの新型EVトラック(photo=マン・トラック&バス)
ドイツで高性能EVトラック続々登場……マン、航続800kmの「eTGX/eTGS」発表[2023.11.15]
more
ニュース
ヒョンデの高性能EV「IONIQ 5 N」が TopGear.comが選ぶ「カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞!
EV超急速充電器「FLASH」が稼働! ガソリンスタンドのような従量課金制を採用
日産「ノート オーラ」で行く“プレミアムでラグジュアリー”なグルメドライブ!
more
コラム
ホンダが「CR-V FCEV」を富士スピードウエイで世界初公開、なぜこのタイミングで世に出たか
電気自動車が「クルマとしての魅力」でガソリン車を上回る時代に突入してきた!
電動化時代にクルマはどうやって作ればいい?まずはプラットフォームを軸に考えてみる
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
ボルボの新型EV「EX30」のツインモーターは強烈な加速力と高い安定性が魅力!
「アウディQ8 e-tron」のブラックマスクは最新EVの証 [Audi Q8 e-tron試乗記]
マイチェンで名前まで変わった「アウディQ8 e-tron」ってどんな車? [Q8 e-tron試乗記]
more
イベント
BYDが「六本木ヒルズ クリスマスマーケット2023」に協賛! EVによるライトアップで街を彩る
主役級の注目度。美しく、しかもロータリーエンジン搭載のアイコニックSPがマツダらし過ぎた
カワサキ・ニンジャe-1(photo=磐城 蟻光)
THE“ローコスト”ナナハンキラー……「カワサキ・ニンジャe-1」はサーキットでこそ輝く
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択