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数字だけ高スペックでも実際の充電は遅い! EVの進化についていけない急速充電器の現状


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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200kW級でも実際はその半分の90kWでしか充電できないという問題

日本の急速充電サービスプロバイダー最大手のイーモビリティパワーが、最大150kW新型急速充電器を発表しました。日本全土に広がっていく新型急速充電器の詳細内容、そして今後の急速充電器設置に必要となるポイントも含めて解説します。

まず今回取り上げていきたいのが、日本最大の充電サービスプロバイダーであるイーモビリティパワー、通称「eMP」の存在です。このeMPは、EV普及黎明期から充電サービスを展開していた日本充電サービスから事業を受け継ぐ形で設立された会社であることから、国内のほとんどの急速充電器を管理するという急速充電プロバイダー最大手です。

日本充電サービスからイーモビリティパワーへの事業継承

実際に、現在eMPが管理・提携する急速充電ネットワークは、2023年度末の段階で9103口と、2022年度と比較して1223口も増加しています。これまでの設置数から考えても、この1年間で急速に充電器のストール数が増加している様子が見て取れるでしょう。

イーモビリティパワーのネットワーク

そして、このeMPの設置している200kW級急速充電器に関しては、世間でいわれているほど高スペックな充電器ではないという点を、私自身、繰り返し批判してきました。

・確かに200kW級とはいわれているものの、実際に1台あたりの出力については最大でも90kWに制限されてしまう
・その90kWが、そのEVの充電性能の許す限り持続するのではなく、最高でも15分しか持続することができずに、その後は最大50kW程度に強制的に制限されてしまう
・6口合計した最高出力が200kWであることによって、仮に3台目のEVが充電をスタートすると、場合によっては1台目の充電出力が50kWに制限されてしまう
・4台目のEVがきてしまえば、なんと1台目のEVは25kWしか許容することができなくなる可能性もある

つまり、6台同時に充電可能な200kW級急速充電器の実態というのは、最大90kWが15分しか持続しない、かつ複数台のEVが充電している場合、その90kWすら発揮することができないということなのです。

イーモビリティパワーのパワーシェアリング

ちなみに、駿河湾沼津と浜松、および湾岸長島SAについては、最大150kW級を発揮可能な最新型の急速充電器が設置されたものの、そのスペックに関してもまったく同様に、

・150kWという出力については最大でも15分しか持続させることができない
・2台同時充電ができる仕様であるものの、2台目のEVが充電をスタートすると、最低70-80kW程度という充電出力に制限

また、その200kW急速充電器のスペックの低さを知っていて、かつ充電性能の高いEVを所有するユーザーは、150kW級の急速充電器を優先して使用するはずであり、すると多くの場合において2台同時充電の機会が多くなり、実質的に150kW級という充電出力を発揮することはできないわけです。

イーモビリティパワーの急速充電器

※一番右のオレンジの充電器が150kW級急速充電器

 

そして、2024年現時点において発売されている新型EVのスペックを見ると、たとえば日産アリアについては最大130kW、トヨタbZ4Xやスバルソルテラについても最大150kW、メルセデス・ベンツEQAやEQBについても100kW、EQE、EQSであれば150kW、アウディQ4 e-tronやフォルクスワーゲンID.4についても94kW、Q8 e -tronやe-tron GTについては150kW、BMW i4やiX、i5は150kW、iX1についても130kW、ポルシェ・タイカンも150kW、ボルボEX30も150kWなど、すでに現時点においても、150kW級の充電性能を有するEVが数多く存在しています。

充電中のメルセデス・ベンツEQS

※EQSは最大150kWもの充電出力に対応

 

また、これらの充電器の耐用年数は8年から10年程度であるということを踏まえれば、日本のEVユーザーは、2030年になってもこの200kW急速充電器を使用することが求められます。

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