V2HならぬV2Vを実現 電気自動車(EV)に特化した関連機器の開発・普及に取り組むベルエナジーは、世界で初めてEV専用充電器の可搬化を実現し、EV向けの出張充電サービスを行なう「電気の宅配便」というユニークなサービスを展開する、2023年創業のスタートアップ企業だ。 そのベルエナジーから、EVからEV(V2V)へ直接急速充電ができるゼロエミッションEV専用急速充電車の「MESTA Pro」が誕生した。 MESTA Proは日産リーフe+の内蔵バッテリーの電力を自身の走行に使用しながら、安全に他車の充電用にも振り向ける機能を追加している。これにはベルエナジーとブルガリアのAmperneX社が共同開発した、DC-AC変換を行なわない日本初のDC入力タイプの大容量急速充電器「Amp 8000 Series」が用いられる。 この充電器を日産リーフe+に搭載することで急速充電車へと変貌させ、62kWhの大容量と最大50kWの高出力を同時に実現した移動式のEV充電ソリューションとしている。 急速充電車の使用が想定されるシーンとは? 使用用途としては、EV利用者が充電スポットに出向く代わりに、急速充電車がユーザーのもとへ出向く出張充電サービス「電気の宅配便」がまず挙げられる。クルマでアクセスすることが求められる野外フェスの駐車場などに出張し、臨時の充電スポットとすれば、車中泊を伴うオールナイトイベントでも電欠の心配が軽減できそうだ。 ほかにも、ビジネスシーンでは自動車関連事業者がEVの開発を行う際のテスト現場や生産工場における完成検査時の、仮設充電設備としての活用を見込んでいるという。 むろん、電欠時のレスキューにも当然の如く使用されることが想定されている。MESTA Proのように大容量化と高出力化を行なった急速充電車であれば、電欠した現場に出向いてその場で必要量の充電を短時間で行なうことができる。これにより牽引車両で充電スポットまで移動させる作業の手間と時間を省くとともに、高速道路上などのリスクを伴う環境からいち早く電欠車両を移動させることが可能となる。 製品化されたMESTA Proから他車への充電方式は、CHAdeMOとCCS1およびCCS2を採用している。いずれの方式でも出力電流は125A、定格出力容量は35〜50kWだ。対象の車両にもよるが、出力電圧範囲だけはCCS1/CCS2がDC150〜1000Vであるのに対し、CHAdeMO方式はDC150~750Vと異なる値が発表されている。 EVの普及には充電設備の増設が不可欠だが、同時にこうした移動式充電車を導入することで、需要に応じた充電スポットの提供も可能となる。MESTA ProはEVをますます便利にする革新的な車両だ。