インタビュー
share:

「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの


TEXT:小川フミオ PHOTO:ボルボ・カー・ジャパン
TAG:

ボルボ初のコンパクトBEV(バッテリー駆動のピュアEV)「EX30」が好評だ。シンプル&モダンなデザインに、コンパクトなサイズ、スムーズで扱いやすい。このモデルは、2025年までに新車販売台数の50%をBEVへと掲げるボルボにとっての戦略が秘められている。テクニカルリーダーに、小川フミオが訊き出す。

初のコンパクトBEVは、フレキシブルなプラットフォームで

EX30は、ボルボが初めてゼロから手がけるBEV専用モデル。乗ると、スムーズで、扱いやすいサイズ感でもって、印象がよい。

もうひとつ、EX30の特徴として挙げられるのが、プラットフォーム。「サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー(SAE)」と名づけられており、ジーリー(Geely)との共同開発だ。

EX30の”姉妹”車は、ジーリーの新エネルギー車プレミアムブランドZeekrの「X」と、ジーリーがダイムラー(現メルセデス・ベンツ)と合弁で設立したスマートの「#1」。すべてBEV。

といっても、フレキシブルプラットフォームなので、ホイールベースなど異なる。基本プラットフォームが完成したあとは、ボルボはスウェーデン・ヨーテボリの自社でEX30を完成させた。

ボルボはどんなふうに独自のEVを作りあげたかったのか。

EX30の”味付け”を担当したのは、動的性能におけるテクニカルリーダーの肩書きをもつベテラン、エグベルト・バッカー(Egbert Bakker)氏。

2023年10月、EX30の国際試乗会が開催されたスペイン・バルセロナで、あまり表に出てこない開発ストーリーを聞いたのが、このインタビューである。

39年間ボルボを見渡し、Nedcarの共同開発も経験してきた

ーー最初に、経歴について少し教えていただけますか。ボルボ・カーが用意したあなたの経歴をみると、さまざまなモデルにかかわっていらっしゃいますね。

「なにしろ39年間、ボルボで働いていますから。私はオランダ人で、デルフト工科大学を卒業したあと、1984年にヨーテボリのボルボ本社で働きはじめました。10年間、そこにいてから、オランダへ移り、三菱自動車との共同開発プロジェクトであるネッドカー Nedcarで、「S40」と「V40」(三菱版は「カリスマ」として95年から2004年にかけて生産)の開発に携わりました。本社に戻ってからは、フォード、マツダ、ジャガー、ランドローバー、それにピニンファリーナの仕事を手掛けていました」

ーーフォード・モーターカンパニーが1999年に、高級自動車ブランドを束ねて1999年に作ったPAG(プレミアオートモーティブグループ)ですね。ほかにアストンマーティンやリンカーン、マーキュリーなどが入っていて、ボルボも参加していましたね。

「私は、『850』(1991年)にはじまり、『V70』(96年)、『C70』(97年)、『S80』(98年)などにかかわってきました。いまはジーリーとの協業を担当しています」

EX30を起点にして、ラインナップが広がっていく

ーー開発については、最初、プラットフォームの計画があって、それがほぼ完成してから、ボルボではそこからEX30というコンパクトなクルマを作ろうと決めたという説もあります。つまり当初は、コンパクトなBEVなんて、中長期計画に入っていなかったとか。

「そんなことないですよ。当初からEX30になるコンパクトBEVのベースを共同開発しようというプロジェクトでした。ジーリーが基本プラットフォームとサスペンションシステムを開発することが決まっていたので、私たちは、自分たちが欲しいスペックスを渡しました。それが2年半前です。そして、出来上がったものを、ヨーテボリに引き上げたのが1年半前でした」

ーーボルボではBEVはリアエンジンで後輪駆動が基本ですね。「XC40 Recharge」や「C40 Recharge」も、2019年の発表時はフロントモーターの前輪駆動でしたが、23年にモーター搭載位置をリアに移すとともに駆動方式も変更するという大胆な変更を行いました。

「ひとことで言うとパワーのためです。前輪駆動ではもちこたえられない、という判断です。XC40などはこのとき、いまのEX30や(これから発売される)『EX90』と共通の、パワフルで航続距離も長いモーターに変更しました。パワフルなモーターは後輪駆動でないと。ツインモーターは、これに加えて、ちょっと小さなモーターをフロントにも追加した仕様です」

ーージーリーのZeekr Xには、315kWバージョンがあって、静止から時速100キロまでを3秒で加速する、史上最速のコンパクトカーと標榜しているようです。EX30にも、同様のモデルが追加されますか。

「(笑)それはここでは言えません。出るか出ないか。もし出るとしたら、あなたたちジャーナリストが、まっさきにそのニュースを知ることになるでしょう。いまはそれしか言えません」

派生車種についていうと、次は「クロスカントリー」が予定されている(これは決定ずみ)。EX30はさまざまな可能性を秘めた車種なのだ。

<Vol.2へ続く>

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開
東京都に住むEVオーナーは注目!  最新設備の「アウディ・チャージング・ハブ 紀尾井町」の150kWh超急速充電を30分無料開放
EVの充電がプラグを接続するだけに! Terra Chargeがプラグアンドチャージ対応EV充電器を2025年度から設置開始
more
コラム
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている
まだ多くの日本人が知らないEVの「走る以外」のメリット! 東京都なら実質約3万円で設置できる「VtoH」とは
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
more
イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択