試乗
share:

気持ちいい。速さで攻めるのでなく、情感に訴える走りっぷり。[フィアット500e試乗記:その4]


TEXT:嶋田 智之
TAG:

前回までで500eのデザインや歴代から受け継いだヘリテージなどを紹介したが、このクルマの最大の魅力は走りかもしれない。驚くような速さではないのに、運転がとても楽しいのだ。モータージャーナリスト嶋田智之氏がレポート。

ボディが小さく、何より軽い

見てニンマリ、室内に収まってみてニンマリ。だけど走り出してみると、もっとニンマリしてしまう。フィアット500eは、2代目や3代目と同じく、そういうキャラクターを持ったバッテリーEV(BEV)だった。

このクルマは御先祖さまが庶民の日常を支えるシティカーとしての要素が強いクルマであったように、僕たちのような“普通の人”の新しい日常を見据えて作られたクルマなのだと思う。それは成り立ちからも一目瞭然だ。車体をもっとググッと大きく設計してバッテリーの搭載スペースを広く採れば航続距離もさらに稼げるだろうけど、それをしてはいない。

42kWhのバッテリーをフロア下に敷きつめ、118ps(87kW)と220Nmを発揮するモーターでフロントタイヤを駆動するレイアウトだが、機構図を見ると、この車体にシステム全体を収めるのはそう容易なことじゃなかったということが察せられる。

全長3630mm×全幅1685mm×全高1530mm。姉妹ブランドとなったプジョーのe-208よりも、キャラクターが近いといえば近いホンダeよりもコンパクトなのだ。サイズには徹底的にこだわってる。それに500eは軽い。プジョーe-208が1490〜1510kg、ホンダeが1540kg。対する500eはクローズドルーフが1320〜1330kg、オープントップで1360kgに過ぎないのだ。

その小ささと軽さは、あらゆる場面で活きてくる。走りはじめた直後から“楽しいな”、“気持ちいいな”と感じられるのだ。BEVによくあるいきなりドーン! とトルクを立ち上げるような制御はしてないようだが、ゼロ発進から高速道路の巡航まで、パワーとトルクのデリバリーが絶妙に行き届いていて、微速域でも高速域でも扱いやすい。いかなるときも滑らかだし、反応も素直。そして何よりクルマが伝えてくるフィーリングが、軽やかでとってもいい。

おもしろいのは走行モードを切り換えることで、クルマが激変といえるくらい変わること。「ノーマル」モードでは内燃エンジン版の現行チンクエチェントを走らせてるのと同じように、加減速も含めてとても自然な感覚で走れる。アクセルペダルをオフにしても、BEVっぽい減速感はほとんどやってこない。BEVっぽさが苦手な人にはこのモードはものすごく有効だし、高速道路などをクルーズするときにはこれを選ぶ方が疲れも少ないだろう。

「レンジ」モードに切り換えると、アクセルペダルだけで発進から停止までをまかなえるようになる。より強力な回生を得ることができるようになり、一気に“BEVに乗ってる”という感覚が強くなる。慣れてしまうとペダルひとつ、右足ひとつで走るこのモードが楽しくなって、こればかりを多用するようになる人が多いようだ。何人かの500eオーナーさんに訊ねてみたが、皆一様に同じ見解を語ってくださった。僕も高速巡航以外はずっとレンジモードに入れっぱなしだった。内燃エンジンのクルマでは決して味わうことのできない、BEVならではのドライビングプレジャーといっていいだろう。

>>>次ページ 0-100km/h加速は歴代チンクチェントで最速

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
マツダが中国向けに開発した流麗な新型電動車! 「MAZDA EZ-6」と「MAZDA 創 ARATA」を北京モーターショーで初公開
1年以内に発売予定! トヨタが新型BEV「bZ3C」と「bZ3X」を北京モーターショーで世界初公開
1年前のプロトタイプが市販バージョンとなってついに発売! ホンダの中国向け新型EV「e:NP2」と「e:NS2」を北京モーターショーで公開
more
コラム
爆速充電と超豪華な内装を引っ提げたミニバン「MEGA」が爆誕! 驚きの中身とひしめくライバルとの比較
テスラが日本で全車30万円一律値下げ! 補助金が制限されるもお買い得度ではモデルYが圧倒!!
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択