ホンダ 記事一覧

TEXT:斎藤 充生
見どころはスーパーワンプロトタイプだけじゃない! 全メーカー中でもっともモビリティショーしていたホンダは陸・海・空に加えて宇宙にも進出か【ジャパンモビリティショー2025】

ついに宇宙へ到達したホンダ! モビリティショーという名が表す通り、従来の自動車を中心としたモーターショーから大きく領域を拡大させ、さまざまなモビリティを対象としたショーへと生まれ変わったジャパンモビリティショー。フルサイズで行われるショーとしては2回目となる2025年、ホンダブースはトヨタ、スズキと並び広範囲のモビリティを展開したブースとなった。 もともと四輪だけでなく、二輪や船外機、芝刈り機に代表されるようなホームプロダクトまで網羅するモビリティ企業ではあるが、モーターショーの名を廃することで自社のプロダクトや世界観をもっとも広く表現できるようになったのはホンダではないだろうか。 前回(2023年)は自社開発の航空機「ホンダジェット」を持ち込んで空まで領域を広げたのも束の間、今回はその範囲を宇宙にまで広げてロケットの展示もしたのだから。 とはいえ、もっともブースの目立つ位置に鎮座していたのは、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すホンダにとっての象徴的存在、電気自動車(EV)の新シリーズ「Honda 0 Series(ホンダ・ゼロシリーズ)」であった。 そのホンダ・ゼロシリーズを中心に、別記事で取り上げたN-ONE e:ベースのホットハッチモデル「Super-ONE Prototype」を除く注目の展示車両を紹介したい。 Honda 0 SALOON 本邦初公開となったホンダ・ゼロシリーズ。「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」という独自の開発アプローチで、ゼロから独創的な発想で創り出されたこのシリーズは、スーパーカーと見まごう程ボンネットの先端が低く、全体的にもローフォルムな「Honda 0 SALOON(サルーン)」をフラッグシップに据える。 これまでホンダの広報画像で見るだけにとどまっていたサルーンだが、実車はホンダの言う通りとにかく「薄い」。さぞ、室内はタイトなのだろうと思い見せていただくと、グラスルーフの効果もあるが想像以上に明るく開放的でそのうえ広い。着座位置は確かに低いが、いわゆるスポーツカーのような姿勢を強いるのではなく、サルーンの名の通り十分にくつろげる姿勢になるのだとホンダは説明する。 ハイデッキなリヤスタイルのおかげで後席のヘッドクリアランスと足元スペースも十分。外見から想像するよりはるかに快適そうな空間が創り上げられていた。 EVならでは低重心と着座位置の低さを活かして走りはスポーティに仕上げつつも、ホンダ伝統の基本思想「M・M思想(マンマキシム・メカミニマム)」とホンダ・ゼロシリーズの「薄い」という開発アプローチを掛け合わせ、既存のどのクルマにも当てはまらない、まったく新しいジャンルのクルマになったと見ることができる。 Honda 0 SUV それはホンダ・ゼロシリーズ最初の販売予定モデルとされるミドルサイズSUVのホンダ・ゼロSUVにもいえることで、リヤデザインをサルーンと同意匠としながらも、SUVに求められる力強さや面構成の美しさは独自に表現され、十分な室内空間と開放的な視界を確保している。 どちらのクルマもインパネまわりは大型ディスプレイを中心に設計され、先進性と斬新さが感じられる作りとなっている。これらを司るのはホンダ独自の車載OS「ASIMO(アシモ)OS」で、使えば使うほど所有者の志向に合わせてパーソナライズされるそうだ。しかし、その具体的な機能や得られる体験については検討を深めている最中とのことで、今回のショーで明言されることはなかった。

TAG: #Honda 0 series #JMS2025 #microev #アキュラ #コンセプトカー #ホンダ
TEXT:山本晋也
モニターもなきゃ急速充電もない……がなんの問題もない! N-ONE e:のエントリーグレードは「EVの本質」を追求したクルマだった

N-ONE e:が狙う市場とは 2025年9月12日に発売されたホンダの軽乗用EV「N-ONE e:」が好評だ。 WLTCモードで295kmという一充電走行距離は、現時点で軽乗用EVにおける最大のライバルである日産サクラの180kmを大きく上まわっている。エントリーグレードで269万9400円、コネクテッドナビを標準装備した上級グレードでも319万8800円という価格は、いずれもコストパフォーマンスに優れたEVという評価を得ているようだ。 価格の話を深掘りすると、「サクラのエントリーグレードは259万9300円だから、N-ONE e:は割高に見える」という指摘があるだろう。しかし、N-ONE e:はエントリーグレードを含めた全グレードで渋滞時にも対応したACC機能を含む、先進運転支援システム「ホンダセンシング」を標準装備している。サクラのエントリーグレードは日産の看板機能である「プロパイロット」がメーカーオプションとなっているのに対して、実質的なコスパでは上まわっていると評価できる。 ただし、サクラは全車にCHAdeMO規格の急速充電ポートを備えているが、N-ONE e:のエントリーグレードは急速充電をオプション設定としているという違いがある。そして、N-ONE e:のエントリーグレードが急速充電を標準装備していないというのは、けっして目先のコストダウンを狙ったものではない。そこには、しっかりとしたロジックに基づいた理由がある。 一部で話題になっているように、N-ONE e:のエントリーグレードはモニターレスを前提とした専用のインパネが与えられている。標準装備のオーディオもBluetoothによってスマートフォンとつないで音楽などを楽しむという、非常にシンプルな仕様だ。 「いまどきナビのないインパネなんてあり得ない」と思うかもしれないが、こうした仕様は合理的な考えから生まれている。自宅周辺の近距離エリアを、通勤など、ルーティン的に走っているのであればナビは不要。それであれば、ディスプレイのない状態で成立するクルマに仕上げることは自然な判断だ。 主に自宅周辺を走るのであれば、急速充電(≒経路充電)を考慮する必要もない。シンプルに普通充電にだけ対応しておけば問題ないのだ。それでも、普通充電は6kWまで対応している。これにより、充電警告灯が点いてから満充電までわずか4.5時間で済んでしまうという。1時間も繋げば、だいたい65km相当の充電が可能になるのだから、近距離ユースで考えれば急速充電が不要というのも納得だ。

TAG: #ホンダ #新車 #軽自動車
TEXT:斎藤 充生
ホットハッチ大好き英国人も唸らせたホンダ「スーパーワン」! 2026年の発売を前にプロトタイプを日本初公開【ジャパンモビリティショー2025】

「令和版ブルドック」だと絶賛のBEVホットハッチ ホンダはジャパンモビリティショー2025で、軽量コンパクトなバッテリーEVスポーツモデル「Super-ONE Prototype(スーパーワン・プロトタイプ)」を世界初公開した。 今年7月に英国で行われたモータースポーツの祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で公開された先行コンセプトモデルの「Super EV Concept」は、英国やアジア各国のさまざまな路面環境や気候条件で走行試験を重ねていることがアナウンスされたものの、ボディはカモフラージュされていたため詳細を掴めないでいた。 ところが今回、ジャパンモビリティショー2025で発表されたスーパーワンは、2026年の量産開始を前にほぼ完成形と言える仕上がりのプロトタイプとして登場。気になる部分を詳細に観察することができた。 軽規格からはみ出してもやりたかったこと ボディフォルムから想像がつく通り、ベースとなったのは先ごろ発売を開始した軽EVの「N-ONE e:」だ。その試作車両を入手したホンダ社内のとある部署が、「軽自動車規格の制約を取り払ってチューニングしたらおもしろいクルマになるのではないか」という以前から思い描いていたことを具現化したのが、このクルマなのだという。なのでスーパーワンは軽自動車ではなく、登録車となる。 スーパーワンというネーミングは、N-ONE e:のハイパワー版を意味するのかと思いきや、これまでの常識や企画の枠を超越する存在(Super)として、ホンダならではの唯一無二(One and Only)の価値を届けたいという思いから名付けたという。 ベース車から大幅に拡幅されたブリスターフェンダーは、見た目の迫力もさることながらトレッドの拡大に貢献している。これにあわせてサスペンションの見直しを図り、走りとハンドリングを向上。具体的な数値は伏せられているが、ベース車のN-ONE e:に対し出力とレスポンスの向上が図られたパワートレイン、そして軽EV由来の軽い車体との相乗効果で、往年の「テンロクホットハッチ」を彷彿とさせるような走りになったと、ホンダブースの担当者は力強く説明してくれた。 ちなみに英国でテスト走行のことを尋ねると、次のようなエピソードを聞くことができた。 「英国は狭い道ばかりなのにヨーロッパ大陸で生産された大型モデルに我慢して乗っている状態で、こういった小さなホットハッチが本当に欲しいようです。実際にスーパーワンに乗せたら一様にみんながおもしろいと言ってくれました」 もしかすると、スーパーワンは日本人も英国人も大好きな、あのミニよりミニでカッ飛び系のホットハッチになっているのかもしれない。そのことをホンダ担当者に伝えると、「言えないですけどね」と断りを入れながらも首を大きく縦に振って見せてくれたので、当人たちも相当意識して開発したようだ。 そして、テスト車両をホンダ社内で試乗した役員らは、皆かつての「(シティーターボⅡ)ブルドックだ!」と大喜びしたという。カーボンニュートラル実現に突き進むホンダにあって、EVでも痛快なホットハッチが開発できることを素直に喜んだのだろう。 令和版ブルドックと呼ばれたことで、製作途中から非対称グリルや、インテリアに青い挿し色を入れるなど、ブルドックをオマージュした要素を組み入れたというから、往年のホンダファンにとっては感涙ものだろう。 前置きが長くなってしまったが、ここからはスーパーワンの細部や注目ポイント、さらに気になる価格などについて紹介しよう。

TAG: #JMS2025 #N-ONE e: #スーパーワン #プロトタイプ #ホンダ
TEXT:山本晋也
ただバッテリーとモーターに置き換えただけのモデルと思うなよ! N-ONE:eはN-ONEとはデザインまでまったく違う「一車入魂」の力作だった

似ているようでぜんぜん違うN-ONEとN-ONE e: ホンダ初の軽乗用EV(電気自動車)として9月から発売開始となったN-ONE e:が話題だ。エントリーグレードで269万9400円と、57万4000円のCEV補助金を考慮すると、十分に手の届く価格に抑えながら、一充電走行距離は295kmと軽乗用EVとしては期待以上のロングレンジを実現。次期愛車に身近で手ごろなEVを探しているユーザーにドンピシャの価格と性能となっていることも、注目度を高めている理由だろう。 そんなN-ONE e:は、名前からもわかるようにN-ONEという既存のエンジン車をベースとしたEVである。少しばかり、N-ONEについて振り返ってみよう。 どこか懐かしい、クラシカルなルックスをもつN-ONEの誕生は2012年。ホンダ軽乗用車の原点といえる「N360」のスピリットを引き継ぐ、新しいニッポンのノリモノとして開発された。当初は、全高1600mmを超えるハイトワゴンだったが、マイナーチェンジにより全高1550mm以下となるローダウン仕様を追加したことで、「ハイトワゴンの広さ」と「機械式駐車場に対応するサイズ」を両立するという独自の価値を手に入れた。 そして、2020年のフルモデルチェンジでは多くのファンが驚いた。プラットフォームやパワートレインは最新世代にアップデートしながら、ボディ外観は従来どおりとしたのだ。灯火類やグリルなどの意匠は新しくなっているので、ビッグマイナーチェンジと感じるほどだが、メカニズム的にはれっきとしたフルモデルチェンジであった。それほど、N360の伝統を受け継いだN-ONEのスタイリングは変えがたい価値があるとホンダと、そのファンは認識していた。 しかしながら、N-ONE e:はエンジン車のN-ONEと異なるイメージのルックスとなっている。一見すると、グリルやヘッドライトなどを変えただけと思えるかもしれないが、じつは違う。AピラーからCピラーまで前後ドアのアウターパネルは変わっていないが、N-ONEが10年以上も守ってきたボディシルエットは変わっているのだ。 具体的に見ていこう。 まず目立つのは、グリルとヘッドライトの変更だろう。軽商用EVであるN-VAN e:と共通のEVアーキテクチャーを採用している関係から、N-ONE e:も充電リッドをフロントグリルに配置している。 グリルを独自デザインにすることは必須であり、それに合わせて灯火類やバンパーなども新デザインとなった。それでも「愛着フェイス」を目指したというデザイナーの意思は、Nの伝統を受け継いでいるといえるだろう。

TAG: #国産車 #軽自動車
TEXT:TET 編集部
ホンダはジャパンモビリティショー2025で「陸・海・空・宇宙」を制す!? 「FUN to Drive」な小型EVと「0シリーズ」の新型SUVを世界初公開

「Honda 0 シリーズ」第3弾は普及価格帯のSUVか? 10月31日(金)から一般公開される「ジャパンモビリティショー2025」の開催に先駆けて、自動車メーカーを中心に続々と出展内容が発表され、盛り上がりを見せ始めている。 今回は、創業以来「夢を原動力に、技術と独創的なアイデアで、人と社会の可能性を広げるモビリティの創造にチャレンジしてきた」ホンダを取り上げる。 その展示内容は「陸・海・空」と多方面にわたり、じつにさまざまなモビリティが展示予定となっている。そこで、今回は四輪EVに特化して見どころを紹介したい。 まずは「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」を開発アプローチに据えてプロダクト開発が行われる、まったく新しいホンダのEVシリーズ「Honda 0 シリーズ」について取り上げないわけにはいかないだろう。 先ごろ開催された世界陸上で展示されたほか、同大会の投てき競技では4分の1サイズのHonda 0 SUVが競技をサポートする車両としてフィールドを駆け巡っていたので、ご記憶の方も多いことと思う。 その「Honda 0 SUV プロトタイプ」がジャパンモビリティショーに初登場する。Honda 0 シリーズの第1弾モデルであり、開放的な視界と自由度の高い広々とした居住空間をもたらすこの中型e-SUVは、これまで米国と英国で先行公開されていたもので、待望の日本上陸となる。 そして、Honda 0 シリーズの第2弾モデルであり、フラッグシップと謳われる「Honda 0 SALOON(サルーン)プロトタイプ」も今回のショーに登場し、本邦初公開を果たす。 しかし、それらを差し置いても注目なのは、Honda 0 シリーズの新たなモデルがジャパンモビリティショー2025で世界初公開されることだろう。 「Honda 0 シリーズの価値をより多くの方にご体感いただけるモデルとして、新たに加わるSUVモデル」というホンダからの発表以外、一切ベールに包まれたままのモデルだが、果たしてどのような姿で登場するのか妄想が膨らむ。 「FUN to Drive」な四輪小型EVを世界初公開 世界初公開モデルはHonda 0 シリーズだけに留まらない。ホンダらしいFUNを追求し、使い勝手の良さと操る喜びの両立を目指して開発したという、四輪小型EVのプロトタイプも披露される。 このモデルは、『日本、英国、アジア諸国の小型EV需要の高い国で走行試験を実施しており、ホンダが目指す「FUN to Drive」に磨きをかけている』とホンダが事前アナウンスしている。その言葉から想像すると、今年のグッドウッドで公開された小型EV「Super EV Concept」が一瞬脳裏をよぎるが、果たしてどうだろうか。 このほか、参考出品としてHonda Micro EVが展示されるほか、北米市販予定モデルのアキュラRSXプロトタイプに、先月発売されたばかりのN-ONE e:や水素ハイブリッドモデルのCR-V e:FCEVなど、多数の四輪モデルが展示される。 世界初公開のEVモデルは二輪やe-MTBでも控えているし、船外機にボート、飛行機、F1、さらには着座型パーソナルモビリティ「UNI-ONE」にロケットまで、多種多様なモビリティが展示される。 これらは、ホンダブースを中心に「Tokyo Future Tour 2035 ~モビリティの未来の姿にワクワク~」や「Mobility Culture Program ~モビリティそのものにワクワク~」、「Out […]

TAG: #Honda 0 series #JMS2025 #ホンダ
TEXT:渡辺陽一郎
EVってこれからの時代の乗りものなのにHonda eはたった1代で消滅! Honda eを作った意味ってドコにある?

Honda eってなんのために販売された? 2025年上半期(1〜6月)に国内で売られた乗用車のうち、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率はわずか1.4%だった。日本で電気自動車を売りにくい理由はいくつか挙げられるが、もっとも有力な事情は車種が少ないことだ。小型/普通車の市場占有率が50%に達するトヨタでも、トヨタブランドの電気自動車はbZ4Xのみになる。このように選択肢が乏しいと、電気自動車がほしくても、ニーズに合った車種を見つけられない。売れなくて当然だ。 そしてホンダは、2020年に電気自動車のHonda eを発売したのに2024年に終了した。電気自動車はこれから普及させるべき分野だから、改良やフルモデルチェンジを積極的に行うべきだが、車種を廃止してしまった。 この理由をホンダに尋ねると以下のように返答された。 「Honda eは、ホンダにとって実質的に最初の電気自動車だから、先進技術を満載した。インパネには5つの液晶スクリーンが並び、通常はミラーで得られる後方の情報も、サイド/センターカメラシステムに表示される。その代わり価格も高かった(発売時点の価格は451〜495万円)。今後はN-ONE e:などにより、ホンダの電気自動車も普及段階に入るため、Honda eは役割を終えて販売も終了した」 Honda eはたしかに装備を充実させていた。前述の内容に加えて、車内Wi-Fiやスカイルーフなども全グレードに標準装着した。 その一方で駆動用リチウムイオン電池の総電力量は35.5kWhに留まり、1回の充電で走れる距離も、WLTCモードで259〜283kmであった。価格が高い割に、1回の充電で走行できる距離は短い。つまりHonda eは「ホンダにはこのような先進的で楽しい電気自動車も開発できます!」とアピールするためのクルマだったといえる。 そのために一定の期間を経過すると「役割を終えて販売も終了した」わけだが、ここにホンダの欠点がある。Honda eを気に入って買ったユーザーはどうなるのか。改良版を購入して今後も乗り続けたいと思っても、それはできない。Honda eをせっかく開発したのだから、装備をシンプルに抑えて価格を下げたグレードを加えるべきだったが、それもせずに終了させた。 ホンダにはこのパターンが多い。ハイブリッド車のインサイトも、ホンダでは「初代は軽量な2人乗りのクーペでハイブリッドの低燃費を訴求して、2代目はGの価格を189万円に抑えて普及を図った。3代目はハイブリッドの上質な走りを味わえる上級車種とした」という。各世代でインサイトの役割が異なるわけだが、フルモデルチェンジのたびにクルマ作りと価格が変わると、ユーザーは乗り替えられない。 いい換えれば、ホンダが顧客の視線に立たないから、Honda eは廃止され、インサイトは世代によってクルマ作りを大きく変えた。CR-V、オデッセイ、シビックのように、国内における車種の廃止と販売の復活を繰り返す朝令暮改も同じ理由だ。

TAG: #名車 #国産車 #絶版車
TEXT:TET 編集部
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表

ホンダ初の固定式バッテリーを採用した電動ネイキッドモデル ホンダの英国現地法人ホンダモーターヨーロッパ・リミテッドが、現地時間9月16日にホンダにとって欧州初となる電動モーターサイクルの新型モデル「WN7」を発表した。 ホンダは2050年を目途に、ホンダが関わるすべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルの実現を目指していることは周知の通りで、二輪製品は先行して2040年代のカーボンニュートラル実現を目標に取り組みを進めている。 2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付けたホンダは、現在グローバルで電動ラインアップの拡充を進めており、今回発表されたWN7もそのひとつである。 WN7はEICMA2024(ミラノショー)に出展した「EV Fun Concept」の量産モデルにあたり、ホンダ初の固定式バッテリーを採用したFUN領域向けの電動ネイキッドモデルだ。モデル名のWN7は、Wが開発コンセプトの「Be the Wind(和訳:風になる)」、Nが「Naked(ネイキッド)」、7が出力クラスの数字に由来し命名されている。 固定式バッテリーはリチウムイオンタイプを採用し、一充電航続距離は130km以上とされる。欧州のEV急速充電器用コネクター規格CCS2での充電に対応し、30分で20%から80%までの急速充電が可能なのだという。 出力は600㏄、トルクは1000㏄の内燃エンジン車に匹敵する性能を有し、EVならではのスリムで未来的なフォルムのマシンを力強く走らせる。 ホンダはこのWN7に、75年以上にわたる二輪車開発の経験や知見を注ぎ込み、内燃エンジン車とは異なる静かでスムーズな乗り味を与えたという。むろん電動モデルであっても、操る楽しさと走る喜びを高次元で実現しているのはいうに及ばずだ。ホンダが目指すカーボンニュートラルの実現に向け、四輪だけでなく二輪も電動モデルのバリエーション展開を強化し、ここからさらに加速していくことが見込まれる。今後登場する電動モデルにも期待したい。

TAG: #カーボンニュートラル #ホンダ #新型車情報 #電動バイク
TEXT:TET 編集部
これまでに40万人が参加したeモータースポーツイベント! 「Honda Racing eMS 2025」の開催が決定

世界3エリアで決勝進出者を選考 2023年の初開催から、これまで累計40万人以上が参加した人気のeモータースポーツイベント「Honda Racing eMS 2025」が今年も開催される。 ホンダのモータースポーツ事業を担うホンダレーシング(HRC)が主体となり、リアルレーシングシミュレーター「グランツーリスモ7」を用いて行なわれるこのイベントは、より多くのひとにモビリティを操る楽しさと、身近にモータースポーツの感動を感じてもらうことを目的に開催されるイベントだ。第2回目となった昨年の大会では、世界70か国から延べ20万人が参加し、その注目度の高さが話題となった。 大会は大きくふたつのセクションに分けて実施される。まずは、オンライン予選「Online Qualifer」を8月29日(金)から9月28日(日)まで開催。グランツーリスモ7のオリジナルコース「レイク・マジョーレ」を舞台に、当イベントオリジナルの特別リバリーをまとった「ホンダNSX コンセプトGT ’16」でタイムアタックを行う。参加条件は8月29日時点で年齢が満7歳以上(日本在住者は満6歳以上)で、プレイステーション5または4でグランツーリスモ7のオンラインプレイが可能な方に門戸が開かれている。 なお、この特別リバリー車両は、大会参加賞として予選に参加したすべての方にプレゼントされるので、グランツーリスモ7のマシンコレクターも参加不可避のイベントだ。 オンライン予選の成績上位者で、年齢が満18歳以上の選手は、続く12月6日(土)・7日(日)に行なわれるオンライン決勝大会「Grand Final」に進出する。決勝レースは「欧州・中東・アフリカ」、「北米・中南米」、「アジア・オセアニア」の3つの地区に分けて開催され、それぞれの地区トップがチャンピオンとなる。なお、「アジア・オセアニア」地区の決勝レースのみ、昨年大会の優勝者である佐々木拓眞選手がシード権を持って出場するため、他地区に比べ1名少ない9名が決勝レースに挑む形となる。 また、Honda Racing eMSアンバサダーには、昨年に引き続き223万人ものチャンネル登録者を抱える人気Vチューバー「戌神ころね(いぬがみころね)」が起用され、より多くの方に向けてeモータースポーツの魅力を伝えていくとしている。 昨年大会は、U17クラスが設けられたり、Hondaウェルカムプラザ青山に予選を勝ち抜いたプレイヤーを集めてオフライン形式の決勝ラウンドを開催したりと、非常に手の込んだイベントであったが、一転今年はシンプルで分かりやすいフォーマットに変更。見る側も見やすくなったと言えそうだ。だが、eモータースポーツは走ってナンボ。腕に覚えのあるeモータースポーツプレイヤーは、この機会にぜひ挑戦してもらいたい。

TAG: #eモータースポーツ #HRC #イベント #ホンダ
TEXT:御堀直嗣
ホンダのEVは「Honda e」からじゃないんだぜ! かつて販売したフィットEVを覚えているか?

あのフィットにもEVがあった ホンダは、2012年8月に、フィットEVの国内リース販売を開始した。対象は、自治体や企業というフリート(団体)利用者である。2年間で約200台の限定的な内容だ。 車載するリチウムイオンバッテリーの容量は20kWhで、一充電走行距離は、当時のJC08モードで225kmであった。車両価格は、消費税(5%)込みで400万円である。 車体色は、限定的なリース販売であったこともあり、ブルーパールの1色のみだ。 特徴的なのは、リチウムイオンバッテリーに東芝製のSCiBを採用したことである。 SCiBは、負極にチタン酸リチウムを用いることで、一般的な炭素と比べ、リチウムイオンが負極に出入りする際の容量低下を抑えることができ、急速充電に適しているとされる。 東芝によれば、充放電のサイクル回数が2万回以上とあり、これはほかのリチウムイオンバッテリーの4~5倍にのぼる。一方、容量や電圧で劣る面があるとされるが、フィットEVのモーター出力は92kW、最大トルクは256Nmで、初代日産リーフの80kW、254Nmと比べてもほぼ同等であり、あえて不足があるというほどではないはずだ。 また、SOC(State Of Charge=バッテリーの充電状態)で0~100%まで繰り返し使え、それでも劣化が少ないといわれる。 実際、SCiBは、三菱i‐MiEVでバッテリー容量の小さい10.5kWhのMグレードにも使われ、満充電からの走行距離は短くなるが、バッテリー劣化が少ないため、あえて中古車でMグレードを選ぶ例もあるほどだ。 ホンダ関係者でフィットEVを乗り続けている人も、充電や走行性能でとくべつ劣化に悩むような不満はないと語っている。 5ナンバー車というフィット本来の使い勝手のよさもあり、フィットEVが一部のフリート関係者でのみ使われ終わってしまったのは残念である。 遡ればホンダは、1988年からEVの研究をはじめたという。 最初の実験車は、シビックシャトルをベースにしていたように記憶している(ややあやふやだが……)。1990年代初頭、国内自動車メーカーでEV開発が行われた際、実験車両として選ばれたのは、トヨタRAV4、日産プレーリーなどSUVが多かった。床下にバッテリーを車載する都合上、積載性がよかったためだろう。ただし、当時はいずれも車載するバッテリーは、エンジン車で補器用に使われる鉛酸であった。 次いで、ホンダが本格的にEV開発を進めたのは、ホンダ EVプラスになってからといえる。 このモデルはバッテリーはまだリチウムイオンではなく、ニッケル水素であった。このため、一充電走行距離は10・15モードで210kmである。空調には、ヒートポンプが用いられ、省電力への取り組みがすでにあったといえる。 DCブラシレスモーターの性能値は明らかにされなかったが、試乗する機会があり、運転してみると、EVらしく出足が鋭く、そこからの加速も躍動感があり、VTECのガソリンエンジンで魅了してきた、ホンダ車らしい活気を感じることができた。 国内への導入は1997年に、36カ月のリース販売で、国内法人営業での取引であった。しかも約20台という限定数だ。したがって、フィットEVと同様に、一般の消費者が手にする機会はなかった。 価格は発表されなかったが、リース料金は保守整備を含め26万5000円で、36カ月で954万円に達する。とても一般の手には負えない金額になる。 一方、ホンダEVプラスは米国でも実証実験の一環としてリース販売され、米国では個人への提供もあった。 カリフォルニア州に住む一家族を取材する機会があり、両親と子どもの4人家族に話を聞くと、性能にはとても満足しているとのことであった。米国では未成年の子供を学校へ両親が送り迎えする(あるいは、スクールバスを利用しなければならない)とき、子どもたちにとってEVであることが誇らしく、友達に自慢したという話もあった。 ほかに、自宅の車庫で充電プラグを充電口に差し込むのは子どもの役目で、そうした親の手伝いのできることも子どもたちを喜ばせていた。セルフスタンドでのガソリン給油は、子供にはさせられない。排出ガスを出さないだけでなく、日常的な使い勝手のなかで、子どもにも役割分担できるよさがEVにはあることを知ることができた。

TAG: #EV #名車 #国産車
TEXT:TET 編集部
ホンダが2026年に発売予定の新型EVは「アシモ」も搭載! アキュラRSXプロトタイプを米国・モントレーで初披露

Honda 0 Series用と思われたASIMO OSをAcuraブランドにも展開 ホンダは、北米で展開する高級車ブランド「Acura(アキュラ)」の新型EVとして、SUVタイプの「アキュラRSXプロトタイプ」を、米国カリフォルニア州で開催された自動車イベント「モントレーカーウィーク」の会場で世界初公開した。 アキュラRSXプロトタイプは、アキュラブランドの次世代EVモデルの方向性を示すコンセプトモデル「アキュラ・パフォーマンス・EVコンセプト」をベースに、2026年後半の発売を見据えて作り上げられたプロトタイプモデルだ。 モントレーカーウィークで世界初公開されたアキュラRSXプロトタイプの注目点は、ホンダが独自に開発した次世代EVプラットフォームを採用する最初のモデルであること。そして、ホンダ独自のビークルOSとしてCES2025で発表され、ホンダ・ゼロシリーズに搭載すると伝えられた「ASIMO(アシモ)OS」を採用していることだ。 これらにより、ホンダはユーザーごとの好みや運転行動を学習し、”超・個人最適化”された移動体験を実現すると公式リリース内でコメントしている。 また、デュアルモーターによるAWDや、スポーティなセッティングを施したダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンション、ブレンボ製ブレーキを標準装備するなど、低重心設計による没入感のある魅力的な走行体験を提供すると付け加えている。 デザインと先進技術でアキュラを再定義する デザイン面では次世代EVプラットフォームが可能にするデザインの自由度を最大限に生かし、クーペのようなシルエットに深く彫り込まれた形状のサイドパネルを備え、力強いプロポーションを与えることに注力されている。加えて、21インチの大径マルチスポークホイールとそれを覆うホイールアーチ、ロングホイールベースと車体の四隅に配置されたタイヤによって前後のオーバーハングは切り詰められ、現代的で走りの良さを予感させるデザインに仕上げられている。 むろん、フロントフェイスはアキュラ独自のダイヤモンド・ペンタゴン・デザインを進化させて採用。上段に配置されたシャープな形状のデイタイムランニングライトと、下方に設置されたLEDヘッドライトによって、上下分割型の印象的なヘッドライトデザインが構築されている。 アメリカン・ホンダモーターでアキュラのデザイン・エグゼクティブを務める土田康剛氏は、「アキュラRSXプロトタイプは、優れた空力性能がもたらすパフォーマンスを、スポーティなクーペスタイルで表現しています。このモデルを皮切りに、パフォーマンス性や独自性を表現した普遍的な美しいデザインと先進技術を軸にAcuraブランドを再定義していきます」とコメントした。 EVとしての美点を運動性能とデザイン性の両面に活かしたアキュラRSXプロトタイプ。量産モデルはハイブリッドを含むICE(内燃エンジン)搭載車とEVの混流生産が可能で、米国におけるEV生産のハブ拠点とホンダが位置付けているオハイオ州メアリズビル四輪車生産工場で生産され、2026年後半の発売を予定しているとのことだ。

TAG: #アキュラ #プロトタイプ #ホンダ #新型車情報
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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