コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:高橋 優
期待度MAXの国産新型BEV2台! トヨタbZ4Xと日産リーフを比べてみた

国産EVが同じタイミングで新型に! トヨタがモデルチェンジを行った新型bZ4Xと同じタイミングで導入された新型日産リーフにはどのような違いがあるのか、日本国内で購入できる最新電動SUVがどれほどのコスト競争力を実現しているのかを詳細に比較分析します。 まず新型bZ4Xでは内外装デザインを刷新しつつ、バッテリーやモーターなども改良することで、ベースのEV性能を高めてます。航続距離は最長746kmと、日本メーカーの発売するEVとしては最長航続距離を実現しながら、急速充電の安定性でもバッテリープレコンディショニングシステムを実装することで、マイナス10度という環境下でも、平温時と同等の充電性能を実現可能となりました。また、新型bZ4Xの電費性能はモデルチェンジ前と比較して大幅に向上しています。これは、シリコンカーバイドを採用するリヤインバーターに切り替えたことで、電力損失を大幅低減されたことがプラスに働いています。 そして74.7kWhグレードの値段設定を据え置きしながら、その上で57.7kWh搭載エントリーグレードは480万円からと、約70万円もモデルチェンジ前のモデルと比較して、値下げしています。この金額は、CEV補助金を活用すれば実質390万円で購入可能となり、これはトヨタのSUVであるハリアーと同等の値段設定です。 その一方で、このSUVセグメントに同じタイミングで日本に投入されたのが、新型の日産リーフです。まず車両サイズについて、bZ4Xは全長4690mm、全幅1860mm、ホイールベース2850mmというミッドサイズ級に該当するものの、リーフは全長4360mm、全幅1810mm、ホイールベース2690mmと、コンパクトセグメントに分類されます。 なので、bZ4Xと本来比較検討するべきは、リーフではなくアリアのほうであるという点は、念の為お伝えしておきます。ちなみに、日産は2025年度末までにアリアのモデルチェンジを行う方針を示しており、その新型アリアの進化度にも注目が集まるはずです。 さて、この同じタイミングで出た両車種ですが、まず注目すべきはグレード構成です。bZ4Xとリーフはどちらも似通った2種類のバッテリー容量をラインアップしています。その一方で日本WLTCモードにおける航続距離はbZ4Xが746kmに対してリーフは702kmとbZ4Xがリード。とくに電費性能について、bZ4X Zグレードが113Wh/kmであるのに対して、リーフB7 Xグレードが130Wh/kmと、bZ4Xが一歩リードしている点も見逃せません。 また充電性能は両車種ともに最大150kWという同等の充電性能であるものの、充電時間はbZ4Xが28分とややリード。とはいえbZ4Xに対する懸念点として、1日4回の急速充電回数制限の問題が挙げられます。新型モデルから急速充電回数制限の撤廃を行ってきているのかは、とくに長距離走行性能が重要視される欧米市場において気になる動向と言えそうです。

TAG: #国産車 #新車 #比較
TEXT:琴條孝詩
EVシフトは先進国よりも新興国で進んでいた! 政府のあと押しによる驚くべき普及率!!

新興国では意外なほどEVが普及している 欧米や中国を中心にEVシフトが進行するなか、新興国ではどのくらいEVが普及しているのだろうか。じつは2025年上半期のデータを見ると、一部の新興国では米国などの主要自動車市場を上まわるペースでEV化が進んでいる。東南アジアや中南米を中心に、EVの導入は想像以上に急速に拡大しているのだ。 本記事ではその現状を解説する。ちなみにここでの「EV」とは、乗用・小型商用車(LDV)におけるもので、大半がバッテリーEV(BEV)だが、プラグインハイブリッドEV(PHEV)も含んでいる。 <新興国におけるEV普及の現状> 国際的な非営利団体ICCT(International Council on Clean Transportation:国際クリーン交通協議会)の2025年上半期の調査によると、新興国市場のなかでもとくに注目すべきは、ベトナムのEV普及率である。2025年上半期のベトナムでは、新車販売に占めるEVの割合が35%に達している。これは、国産EVメーカーのビンファスト(VinFast)による積極的な販売と、政府による登録料免除などの税制優遇措置が奏功した結果である。 以下、タイが22%と続き、トルコが18%、インドネシアが15%、コロンビアが9%と、いずれも米国の9%やインドの3%を上まわる水準に達している。中南米最大の自動車市場であるブラジルとメキシコではそれぞれ6%を超えるEV普及率を記録しているが、PHEVの割合が高いのが現状だ。とはいえ前年比で大幅な成長を見せている。インドは約3%の普及率にとどまっているものの、前年と比較して高い成長率を示しており、今後の伸びが期待される市場である。 そのほか、国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、コスタリカやウルグアイでは税制優遇や化石燃料の高価格が後押ししてEVシェアが15%前後と高い、一方、アフリカではシェアが1%未満と低迷しているが、2024年に販売台数が倍増し、モロッコやエジプトで2000台以上の成長を記録した。ここでも中国製EVが現地価格を押し下げ、普及の鍵となっている。

TAG: #EV シフト #中国メーカー #新興国
TEXT:高橋 優
BYDって世界規模でイケイケなんじゃなかったの? 収益性の悪化が見えた決算のウラ側を読む

BYDの収益性が悪化し始めている 中国BYDの2025年第3四半期の決算が発表され、収益性がついに悪化し始めたという驚きの決算内容であることが判明しました。 まず初めに、BYDの第3四半期の販売台数は111.4万台で前年比ー1.8%とマイナス成長に留まりました。BEV販売台数は増加しているものの、それ以上にPHEV販売台数が大きく下落していることが要因です。次に売り上げも1949.8億元(約4兆1930億円)と、前年同四半期比ー3.1%のマイナス成長に留まりました。 また、BYDのEVで稼ぐ力を見極める上で最重要といえる粗利益について、Q3単体のグループ全体の粗利益率は17.61%と、前年同四半期に記録した21.89%と比較すると、大幅に下落しています。これは、中国国内における値下げ競争によってマージンを削られてしまっている可能性が高いです。 その一方で、BYDグループから電子部品や半導体の受託製造部門を担当する子会社「BYD Electronics」の粗利益を差し引いた自動車関連部門の粗利益率は20.62%と、前年同四半期に達成していた25.6%と比較して減少。とくに2025年シーズン、欧米メーカー勢は軒並み収益性を落としており、それらの競合と比較するとBYDの粗利20%越えという収益性は、相対的に健闘している部類に該当するでしょう。 次に、販管費や研究開発費などを差し引いた営業利益率は5.22%と、前年同四半期に記録した7.17%と比較すると低下しています。とくにBYDは、中国国内の値下げ競争だけでなく海外展開を加速させていることによる初期投資も嵩んでいる状況です。 また、研究開発費は141.5億元(約3042億円)を投じており、前年同期比+3.3%と売り上げが低下しているなかでも増加させています。売り上げ全体に占める研究開発比率も7.26%と、史上最高水準の比率を維持しています。 いずれにしても、確かに営業利益率は5%台とまずまずであるものの、研究開発という将来への種まきを加速しているという点も同時に考慮する必要があるわけです。実際にトヨタは同時期に3544億円を研究開発費として計上しており、BYDはすでに販売規模で倍以上を誇るトヨタと同等近い研究開発費を投入して、利益を圧迫してでも投資に資金をまわしているのです。

TAG: #中国車 #収益 #販売代襲
TEXT:御堀直嗣
レシプロとロータリーと……クルマ好きが大好きなエンジンの種類! じつはEVのモーターにも「巻き線式」「永久磁石式」と種類があった

EVのモーターには2種類存在する モーターは、磁力によって回転力を生み出す。磁力をもたらすのは、永久磁石や電磁石だ。 永久磁石は、そもそも磁力を持つ物質だから、素材をそのまま活かすだけだ。それでも、EVで使われるのは、より高性能化するため、ネオジムという希少金属が含まれている。それによって、一般的なフェライト磁石の10倍といった大きな磁力を持つ。 一方、電磁石は、磁力をもたない材料に、電気を通じさせることで磁力を生み出す。そのための配線が必要で、そこに手作業がある。作業のすべてを製造機械による自動化できれば、電磁石の材料は基本的に鉄の芯と銅線なので、安上がりだし、資源の豊富さもあって、電気自動車(EV)の普及が進んでも資源に対する懸念は少ない。 しかし、鉄芯に銅線を巻くだけであれば、機械で丹念に作業を進められるが、最後に配線をまとめる段階で人手がいる。 EVで使われるモーターは3相交流という仕様だ。簡単にいえば周波数がずれた3つの電流を組み合わせた電磁石により、より滑らかな回転をもたらすよう工夫されている。このため、鉄芯に銅線を巻き付ける際に、最後には3つの銅線をうまくまとめ、手際よく収めなければならない。ここに、人手がかかる。機械ではどうしても、仕上げにくい工程が最後に残るのだ。 もし、ここが機械で仕上げられるようになると、製造効率は格段に高まり、電磁石を使うモーターの普及が進む可能性がある。 一般に、巻き線式と呼ばれるモーターは、電磁石だけで構成されている。永久磁石を回転軸(ローター:回転子)に使うモーターも、その外周となる容器(ステーター:固定子)側には電磁石が使われている。その電流を調整することで出力を変える。 日産アリアは、4輪駆動の前後のモーターともに巻き線式だけを採用する。ほかに、テスラやBYDの4輪駆動車では、前輪側に巻き線式モーターを使う例がある。

TAG: #メカニズム #モーター #工場
TEXT:高橋 優
新型ソルテラは性能大幅アップなのに大幅値下げ! めちゃくちゃお得な内容にライバルはどうする?

マイナーチェンジとは思えない超大幅進化 スバルが日本国内でソルテラのモデルチェンジを実施し、EV性能を飛躍的に高めながら大幅値下げを実施することで、兄弟車であるトヨタbZ4Xを凌ぐコスト競争力を実現してきました。気になる新型リーフなどの競合とのコスト競争力を含めて分析します。 新型ソルテラについて、まず注目するべき変更点は内外装デザインを刷新してきたという点です。フロントデザインは旧型と比較すると大きく変更されており、インテリアも兄弟車となる新型bZ4Xと同じようなデザインとなっています。 bZ4Xと同様にEV性能も改良されており、74.7kWhバッテリーを搭載することで日本国内のWLTCモードにおける航続距離を最長746kmも確保しています。さらに、電池プレコンディショニング機能を搭載することで、マイナス10度という極寒環境下でも理想条件下と同等の充電性能を実現可能です。 その上で、今回の新型ソルテラに対して注目するべき点が値段設定です。エントリーグレードとなるFWDの ET-SSグレードは517万円の設定。中間グレードであるAWD ET-SSグレードが561万円、装備内容を充実させたET-HSグレードが605万円の設定となっています。 じつは旧型モデルは594万円からという価格で販売を開始しており、2023年モデルからは627万円へと33万円もの値上げがされていました。つまり、新型ソルテラは110万円という大幅な値下げが断行されたのです。EV性能や装備内容をさらに充実させながら、同時に大幅値下げを行ってきたという点を踏まえると、スバルが日本国内でソルテラの販売台数を増やそうと本気になってきたことは明らかといえるでしょう。

TAG: #SUV #ニューモデル #国産車
TEXT:桃田健史
そりゃ中国がEVで世界をリードできるわけだ! 日本との違うはひとえに「国策」にアリ!!

EVシフトが中国で一気に進んだのは「第12次五カ年計画」がきっかけ 中国が世界のEV市場をリードするようになって久しい。新エネルギー車(NEV)と中国政府が呼ぶ、EV・PHEV・レンジエクステンダーなどの車両を合算したシェアは、新車販売台数の6割近くに達している。同3%にも満たない日本の現状と比べると、あまりにも大きな差である。 これはひとえに、国策の差だ。中国は世界に先駆けて2000年代後半から、EV普及を国策として掲げた。そうした国の変革の意識を、北京オリンピック、広州でのアジア陸上選手権、そして上海万博を活用して国内外に向けて発信した。 また、「第12次五カ年計画」(2011〜2015年)でNEVの研究開発と販売を強化することを盛り込んだことで、中国国内の自動車メーカー、二輪・三輪車メーカー、トラック・バスメーカーはこぞってEV開発を進めたという経緯がある。 第一汽車、東風汽車、上海汽車などの地場大手メーカーや、それに続く地場中堅メーカーが国の施策を重んじることは当然であり、各社がEV開発を加速させた。一方で、海外から中国への投資を呼び込むため、中国政府はEVの最終組立工場や電動パワートレイン関連の製造工場の建設に対する補助金や、税制優遇を施した。また、中国政府はユーザーへのEV購入補助金制度を拡充させ、その後に段階的に同制度を収束させる施策を打った。 その結果、中国でのEVシェアが急速に上昇し、また航続距離に対する懸念をもつ人にはレンジエクステンダーを容認することでNEV市場全体を活性化させてきた。 こうして中国ではEVをラインアップしていないと、自動車メーカーとして生き残ることが難しい状況にあるが、人口14億人を超える中国では当然、ガソリン車に乗り続けている人も多くいる。そのため、中国の地場大手や地場中堅でも、ハイブリッド車を含めてICE(内燃機関)の製造は続けている。また、EVへの投資が十分に行えない中小メーカーではガソリン車の製造を継続しているが、中国政府が今後、NEVシフトに対する強制力を高めるとそうした中小メーカーは消滅するのかもしれない。 または、中国政府がある時点で日本のように、マルチパスウェイへと政策を軌道修正する可能性もゼロではないはずだ。 いわゆるカーボンニュートラル燃料の研究開発においても、中国はEVで実感した自動車政策の勝ち筋を参考として、日本や欧米諸国の先を行く大胆な施策を講じるかもしれない。

TAG: #EVシフト #中国 #第12次五カ年計画
TEXT:山本晋也
モニターもなきゃ急速充電もない……がなんの問題もない! N-ONE e:のエントリーグレードは「EVの本質」を追求したクルマだった

N-ONE e:が狙う市場とは 2025年9月12日に発売されたホンダの軽乗用EV「N-ONE e:」が好評だ。 WLTCモードで295kmという一充電走行距離は、現時点で軽乗用EVにおける最大のライバルである日産サクラの180kmを大きく上まわっている。エントリーグレードで269万9400円、コネクテッドナビを標準装備した上級グレードでも319万8800円という価格は、いずれもコストパフォーマンスに優れたEVという評価を得ているようだ。 価格の話を深掘りすると、「サクラのエントリーグレードは259万9300円だから、N-ONE e:は割高に見える」という指摘があるだろう。しかし、N-ONE e:はエントリーグレードを含めた全グレードで渋滞時にも対応したACC機能を含む、先進運転支援システム「ホンダセンシング」を標準装備している。サクラのエントリーグレードは日産の看板機能である「プロパイロット」がメーカーオプションとなっているのに対して、実質的なコスパでは上まわっていると評価できる。 ただし、サクラは全車にCHAdeMO規格の急速充電ポートを備えているが、N-ONE e:のエントリーグレードは急速充電をオプション設定としているという違いがある。そして、N-ONE e:のエントリーグレードが急速充電を標準装備していないというのは、けっして目先のコストダウンを狙ったものではない。そこには、しっかりとしたロジックに基づいた理由がある。 一部で話題になっているように、N-ONE e:のエントリーグレードはモニターレスを前提とした専用のインパネが与えられている。標準装備のオーディオもBluetoothによってスマートフォンとつないで音楽などを楽しむという、非常にシンプルな仕様だ。 「いまどきナビのないインパネなんてあり得ない」と思うかもしれないが、こうした仕様は合理的な考えから生まれている。自宅周辺の近距離エリアを、通勤など、ルーティン的に走っているのであればナビは不要。それであれば、ディスプレイのない状態で成立するクルマに仕上げることは自然な判断だ。 主に自宅周辺を走るのであれば、急速充電(≒経路充電)を考慮する必要もない。シンプルに普通充電にだけ対応しておけば問題ないのだ。それでも、普通充電は6kWまで対応している。これにより、充電警告灯が点いてから満充電までわずか4.5時間で済んでしまうという。1時間も繋げば、だいたい65km相当の充電が可能になるのだから、近距離ユースで考えれば急速充電が不要というのも納得だ。

TAG: #ホンダ #新車 #軽自動車
TEXT:すぎもとたかよし
再生中の日産が早くもヒット作を生み出した! あえて日産らしさを封印した「N7」のデザインに天晴れ!!

新型N7のデザインは日産の窮地を救うか? 東風日産により中国向けに作られたセダン、N7が大評判になっています。今年5月に発売後、わずか12時間で1万台以上を受注、6月までにじつに2万件の予約があったとされます。社長の交代劇など、苦境が伝えられる最近の日産にとっては久々の朗報ですが、ここではデザインの面からその評判の理由に迫ってみたいと思います。 ●流行最先端のスタイルで市場投入 新型N7は、日産が2027年の夏までに投入を予定している9車種の第一弾として発売された高級セダン。2024年の北京モーターショーに出品された「日産エポック・コンセプト」の市販車版となります。 全長4930mm×全幅1895mm×全高1487mm、ホイールベース2915mmの堂々としたサイズはフーガに匹敵するもの。その伸びやかなスタイルに対し、「超カッコいい!」「日本でも売ってほしい!」との声が上がっているのです。その好評の理由はどこにあるのか、今回は3つの視点で考えてみたいと思います。 まずひとつはサイズを含めた基本のシルエットです。N7はいわゆる4ドアクーペスタイルで、まさに流行ど真ん中のフォルム。とりわけ欧州プレミアムブランドではすっかり定着したスタイルですが、考えてみれば日産車ではあまり見られないスタイルです。 それを踏まえて写真を見ると、リヤデッキの短いファストバック的なボディは、あえて奇をてらわないじつに素直な造形で、まさに万人にウケるプロポーションとなっているのです。 ふたつ目は、いかにもEV(N7にはPHEVもあり)というシンプルなデザインです。まるでテスラのようなグリルレスのフロントフェイスをはじめ、横一文字の前後ランプ類、強いキャラクターラインをもたないサイド面など、もはや記号的といえるほどの徹底ぶり。さらに、サッシュレスドアの面一感がこれをあと押ししています。 日産は「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」なるデザインフィロソフィを掲げ、繊細でシャープな造形を展開していますが、N7ではそのエッセンスがほとんど感じられないのです。これは、同時期に発表された新型セントラとの違いを見れば明らかで、あえてクセをなくした造形といえます。 ●意図的に日産らしさを隠したスタイリング? 3点目は魅力的なインテリアです。比較的ミニマムな造形は最近の日産車的ですが、2本スポークステアリングをはじめ、その徹底ぶりが目立ちます。一方で、チャコールグレーと青竹色でコーディネイトされたシートやステアリング、ドア内張りなどは、上質な素材も相まってこれまた多くの人にウケそうな空間になっています。 こうして検証してみると、N7はあえて日産らしさを強く打ち出していないことに気が付きます。例のVモーションも最小限の表現で、それこそ新型セントラとは大違い。そして、流行ど真んなかのスタイルでありつつ、特段新機軸なところが見当たらないのも特徴で、エンブレムがなければ日産車とは気付かないスタイルなのです。 その結果、日産車を初めて買ったユーザーがじつに70%という状況に結びついていると考えられます。これらがすべて意図的に進められたとすれば、じつに戦略的な企画といえるでしょう。 さて、「日本でも売ってほしい!」という声についてですが、セダン離れの側面も含め、このサイズはさすがに大き過ぎるかと思えます。もし、カローラやマツダ3くらいのサイズでこのスタイルを再現できれば、一定数のニーズはあるかもしれませんね。

TAG: #カーデザイン #国産車
TEXT:桃田健史
なぜBYDは軽EVを日本に導入するのか? 現在じゃなく未来を見据えた周到な戦略とは

中国BYDがさまざまな戦略を日本市場で打つ理由 中国BYDの日本市場での動きが活発化している。日本専用の車両規格である軽自動車を、BYDが日本向けに設計して発売する。コンセプトモデルが、ジャパンモビリティショー2025(一般公開10月31日〜11月9日)に登場した。 また、驚いたのは朝日新聞が10月21日にオンラインで配信した「イオン、中国EVのセールへ BYD車を実質で200万円前後から」という記事だ。このニュースに対してはYahooニュースでもトップ記事で掲載され5000を超えるコメントが寄せられるなど、世間の注目が高いことが分かる。 だが、その2日後にBYDジャパンは報道にある「BYDの販売拠点をイオンモール内に約30拠点設置する」という事実はない、と記事の内容を全面的に否定している。BYDは、2023年1月から日本国内で乗用車販売を本格的に開始し、2025年までに全国で100拠点を設けるという目標を公表している。その方針には変更はない。 ここから先は、筆者の私見を述べる。BYDが日本市場へ参入し、さらに日本特有の軽EVまで仕立てるという戦略の背景には、大きくふたつのポイントがあると思う。 ひとつ目は、日本EV市場での主導権を得ること。日本でのEV普及率は、乗用車では2%程度ととても低い。2010年代初頭に三菱「i-MiEV」と日産「リーフ」が登場して以来、国や自治体で多様な補助金制度を活用するなどして、日系メーカー各社はEV普及を推し進めてきたが、欧米や中国と比べて日本でのEVシフトの速度は遅い。 日系メーカー各社は、中長期戦略としてEV普及は進むと見ているものの、現時点ではEV市場の「地盤固め」が先決という姿勢だ。 そんな日本で、すでに中国EV市場で主導権を得ているBYDは、独自の技術力と量産効果によるコストメリットを有効に活用して、日本EV市場でも主導権を狙っているように感じる。BYD軽EVは極めて重要な役割を担っている。 ふたつ目のポイントは、ひとつ目のポイントで示した日本での事業実績をタイなどアジア圏での事業におけるマーケティングツールとして活用することが考えられる。アジア圏は日本ブランド車の市場占有率が高く、そのため「日本でBYDのEVが売れる」ことがアジア圏でのBYDブランドに対する信頼度を上げる効果があるはずだ。 BYDが今後、どのような日本市場向け戦略を描いてくるのか。その動向を注意深くウォッチしていきたい。

TAG: #日本市場 #軽自動車
TEXT:山崎元裕
現時点のEVの頂点ってどのクルマ? パフォーマンスのTOP10を並べたら2000馬力だの400km/hだのインフレがヤバすぎた!!

これまでの常識を超えた運動性能 BEV(電気自動車)にとってもっとも重要なスペックとは、はたしてなんなのだろうか。搭載されるバッテリーの容量やその性能は、航続距離や充電時間に直接影響するものであるし、またこれからBEVを購入しようと考えるユーザー予備軍にとっては、価格もまず気になるところではある。だがその一方で、BEVの世界にはいま、これまでの常識では考えられないほどに驚異的な運動性能をスペックシートに掲げるモデルが続々と誕生しているという現実もある。 今回は最高速のデータをもとに、ハイパフォーマンスBEVのベスト10を紹介していこう。 まず第10位にランクされたのは、アメリカのテスラが「モデルS」にラインアップしている、高性能版の「プラッド」だ。3モーターで1020馬力の最高出力を発揮するこのモデルが可能とする最高速は322km/h。0-100km/h加速は2.1秒というから、そのパフォーマンスはスーパースポーツのレベルにあるといってもよいだろう。 第9位は325km/hの最高速と2.7秒の0-100km/h加速を実現したマセラティの「グラントゥーリズモ・フォルゴーレ」。ちなみにフォルゴーレとはイタリア語で稲妻を意味する言葉で、パワーシステムはこちらも3モーターの構成。最高出力は760馬力と「比較的常識的な」数字だ。 3モーターで1234馬力の最高出力を実現し、最高速では328km/hを、そして0-100km/hを1.89秒という数字を主張するのは、第8位となるルシードの「エア サファイア」。ちなみに同社のエアシリーズには4モデルが用意されており、もっともベーシックなものはシングルモーターの430馬力仕様。これでもその運動性能は十分に魅力的だ。 このルシード・エア サファイアの最高速を超える329.4km/hを記録したのが、アメリカのドラコモータースが2019年に発表した「ドラコGTE」だ。4モーター方式で1200馬力の最高出力を誇り、前後輪のパワー配分を自由にセッティングできるほか、路面状況に応じて6タイプのドライブモードを選択することが可能だ。 ちなみにこのドラコからは「ドラゴン」と呼ばれるSUVタイプのBEVも発表されており、こちらは2000馬力の最高出力で320km/h以上の最高速を可能にするという。 第6位にはロータスの「エヴァイヤ」がランクされた。1基あたり500馬力のモーターを4基搭載し、2000馬力の最高出力を発揮。カーボンファイバー製のモノコックを採用したことなどで車重は1680kgに抑えられ、結果0-100km/hは3秒以下、最高速では346km/hを達成した。

TAG: #スーパーカー #ハイパーカー #動力性能
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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