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TEXT:曽宮 岳大
「私は家電感覚でこのクルマを選びました」アイオニック5オーナー、“ななみん”さんに聞くEV活用法

そのクルマの魅力や楽しみ方をオーナーさんに語ってもらうオーナインタビュー企画。今回ご登場いただくのは、「ヒョンデ アイオニック5」を所有されている“ななみん”さん。聞けば彼女は、自宅の“スマートハウス化”という壮大なプランを計画し、その一環として電気自動車(EV)を導入したのだという。詳しくお話をうかがうべく、彼女のご自宅におうかがいした。   「蓄電池を買うよりEVの方がおトク」ということで購入 “ななみん”さんが自動車免許を取得されたのは、30代を過ぎてから。お仕事が忙しかったのもあるが、それほどクルマ好きというわけではなかったことも、免許取得が遅れた理由だった。そんな彼女がアイオニック5を“愛機”として迎えるに至ったのは、スマートハウスの実現に向け、色々調べていくなかで、「蓄電池を買うより、EVを買う方がおトク」という結論に行き着いたから。EV導入の際に重視したことは、性能云々より、蓄電池としてのコスパだったのだ。そのあたりの経緯をうかがった。 「もともと都内に住んでいたんですけど、コロナ禍を機に勤めている会社がリモートワークを継続する方針を発表したので、それで都内より広い家に住めるよう千葉の郊外に引っ越したんです。その際、戸建てを購入するなら、スマートハウス化をやりたいなという思いがありました。太陽光パネルや家庭用蓄電池のことを色々調べていったところ、求めるバッテリー容量の蓄電池が高額で、電気自動車以上の価格だったんです。だったら電気自動車を買ってそれを“動く蓄電池”としても使おう、その方が一石二鳥だということになって、それで電気自動車の購入を検討し始めました」 EVの中でもアイオニック5を選んだ理由は? 「EVを導入しようとしたのは去年(2022年)。その時点で販売されている電気自動車を色々調べました。蓄電池として使うからにはバッテリー容量が大きい方が良いんですけど、バッテリー容量が上がるにつれて車両価格が高くなってしまう。十分なバッテリー容量があり、その中で価格とのバランスが良かったのがアイオニック5でした」 他に検討したクルマはどのあたりですか? 「日産リーフとアリアを検討しましたね。アリアだと90kWh仕様という選択肢もあったのですが、900万円近くなってしまい、蓄電池用途ではコスパがあまりよくないと考えました。リーフの方は実は購入直前まで行ったんですけど、納期の問題からパスさせていただくことに。あとこれは後で運用してみて分かりましたが、我が家の屋根に積んだ約10kWの太陽光パネルに対し、バッテリー容量が40〜60kWhクラスだとちょっと心許ないんです。結果的に、バッテリー容量とコスパと納期がアイオニック5を選んだ大きな決め手ではありましたけど、72.6kWhのバッテリー容量があるアイオニック5にして正解だったなと思っています」 >>>次ページ 車中泊しても快適です

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ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボは熾烈な戦いをいかに制するか。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

相次いで新型EVを投入するボルボ。今後も毎年のようにニューモデルをリリースしていく予定であるという。EV専業メーカーになる道を選んだボルボは、これまでとは大きく変わっていくのだろうか。だが、舵取り役のジム・ローワンCEOの言葉からは、今回の「変身」は、彼らが「らしく」いるための選択であったことが明らかになった。 グローバル生産する“効能” 小型SUVのBEV、EX30を発表・発売(欧州)したボルボ・カーズ。このクルマが代表する今後のボルボの“行き方”こそ、市場に評価されるものだと、ジム・ローワンCEOは自信を見せる。 EX30発表会におけるローワンCEOへのインタビューから、ここでは、技術と生産と、それらに密接なかたちで結びついた印象のマーケティングについて、注目すべき発言をまとめた。 −−EX30は、2023年の欧州に続いて、日本でも発表・発売を予定しているとか。 「日本市場には、EX30のサイズはぴったりだと思うんですが、どうでしょうか。実際、私が聞くところでは、日本の市場調査では、EX30に期待する声はたいへん大きいとか。私が見たかぎりにおいても、東京のような市街地で乗るには、最適なサイズのクルマです」 −−先んじて2022年11月に発表された大型SUVであるBEVのEX90は、期待できる内容だが発売は2024年に延期された。 「いまソフトウェアをすべて書き換えて、2024年後半の発売に備えていこうという状況です。クルマはいちおう出来てきたのですが、私としてはソフトウェアの完成度に不満があり、そこで、4〜5ヵ月発売を延期しても、完成度を上げるほうを当然選んだわけです」 −−ボルボ・カーズにとってあたらしい動きは、EX90もEX30もグローバル生産を選択したことだ。 「EX30は中国生産した車両を世界各地に輸出します。EX90については、中国の自社工場とともに、サウスカロライナ州チャールストンの自社工場で生産します。私たちが吉利汽車(ジーリーともギーリーとも欧米では呼ばれる)と(EX30の)プラットフォームをシェアする戦略を選択したことで、開発費削減という恩恵が得られます。このさきボルボ・カーズでは毎年のように新車を発表していきたいと思っていますから、開発提携は重要な課題です」 「若いひと」に支持されるボルボ −−吉利汽車といえば、英国の伝統的なスポーツカー、アストンマーティンの大株主であり、ロータスの親会社でもあるが、BEVについても知見は豊富だ。 「吉利汽車のエンジニアリングにおける知見と蓄積されてきた技術力は、私たちのプロダクト開発においてもおおいに役立ちます。優秀なエンジニアもたくさん協力してくれています。中国企業がもつBEVの開発能力はたいそう高いものです。それらを役立てることでボルボというブランドの商品力はいっそう強化されると私は思います。ボルボに期待される安全性やデザイン性、それにサステナビリティに関するコンセプトは守りつつ、価格競争力を持つことが出来るのです」 −−大きな中国企業と密接な協力関係をもつことで、将来そこに飲み込まれていく不安はないか。 「協力関係を拡大していくことで、キャラクターを喪失しないかと不安の声も耳にしますが、ボルボ・カーズがボルボのブランドのもとで発売するプロダクトは、ホロモゲーション、安全性テスト、内外装、素材、サプライチェーンなど、すべて独自のものを使います。共用するのは、バッテリーなどを含めたプラットフォームです」 −−これから熾烈化するBEV市場で生き残っていく施策は、ボルボらしさを見失わないということか。 「ボルボは量産ブランドではありません。プレミアムブランドという位置づけです。そのなかには生産台数も含まれます。乗用車の市場で、1%ぐらいのシェアを持っていて、それを2%まで拡大することは出来るでしょう。ユーザーはボルボというブランドを好いてくれていて、安全性やサステナビリティに関して、ブランドイメージを高く評価してくれています」 −−ボルボはプログレッシブなブランドとして評価されている。 「調査によると、いまボルボに注目してくれるユーザーのなかには、科学の分野に携わるひとや、ソフトウェアのエンジニアや、マーケティングを担当しているひとなどが目立つそうです。年齢も若いひとが多い。このひとたちにとってボルボは“プログレッシブ(先進的)”なブランドなのです。これからも、やや保守的なイメージのあるブランドから多くのユーザーが移行してくると信じています。それは、私たちが大事にしている価値を、若いひとたちがシェアしてくれるからです」 <完>

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ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボが二兎を追わずに目指すものは何か。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

ボルボにとって、電動化は氷山の一角。現在同社の舵取り役を務めるジム・ローワンCEOはそう語る。彼らは果たしてどこを目指しているのか。どうして内燃機関の開発を止めたのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオがCEOインタビューを通して、ボルボが見ている明日の姿を浮き彫りにする。 ソフトウェアやマテリアルに注目すべし ボルボ・カーズのジム・ローワンCEOは、これからの生き残りにおいては、素材の開発とコアコンピューティングテクノロジーが大事になる、とする。 ミラノにおけるEX30の発表会場で行なったインタビューから、要点を紹介していこう。 −−電動化が進んでいくなかで、自動車メーカーは何をやるべきか。ボルボ・カーズの考えはいかなるものか。 「電動化は氷山の一角にすぎません。私たちがいま行なおうとしているのは“変革”であって、電動化自体が目的ではないのです。電気モーターか、内燃機関か。みんな議論をそこで終わらせてしまっています。いま起きつつあるのは、実際はもっと深いところでの変革なのです」 −−ボルボが起こそうとしているのは、クルマ自体の変革か。 「いま、電動化とともに注目すべきは、コアコンピューターテクノロジー、ソフトウェア、シリコンといった分野であり、そして、忘れてはならないのが素材です」 −−クルマにおける変革は、見えないところで起こるということか。 「モーターは同期型か非同期型かとか、インバーターモジュールはどうするかなどといった議論もあります。いまさかんに取り沙汰されている話題でいうと、窒化ガリウムを使ったインバーターとか、パワー半導体のシリコンカーバイド(SiC)とか。要するにマテリアルサイエンスともいうべき領域が、私たち企業の未来に大きくかかわってくるのです」 −−自動車メーカーはまったく新しい領域に足を踏み入れはじめている。 「いまや、私たちはどんどん極小な領域に足を踏み入れていっています。サブアトミック(原子核内部)のところまで分け入っているわけです。ナノテクノロジーの分野が、この先の開発において、どんどん重要になっていくと思っています」 “エンジン”の選択肢より、新技術へ −−2023年6月に発表したEX30ではLFPバッテリーとNMCバッテリーというふうに、クルマのユーザーが何を求めているかによって使い分けている。 「駆動用バッテリーにしても、リチウムイオンとひと言でくくれなくなっていますから。今回は、性能はまずまずのレベルですが比較的廉価で、都市で使うぶんにはなんの問題もないLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーも搭載しました。さらに、シリコン負極(アノード)の開発を進めたり、またソリッドステートタイプ(全個体電池)もそろそろ現実ものとなってきたりという具合ですね」 −−ボルボ・カーズは2021年6月に「ソフトウェアがクルマを定義する時代がくる」としていた。素材とともにコンピューティングも重要な要素になる。 「コアコンピューティングテクノロジーがクルマの“性能”を左右する時代です。ビジョン処理とAI、一般的なコンピューティング、それにインフォテインメントと、さまざまな機能において重要なのです。私たちは、このさきクルマはソフトウェアによってスペックスが決まってくると思っていて、これからのプロダクトをSoftware-Defined Carと定義しています」 −−自動車の作りかたが根本的に変わってくる。ボルボ・カーズはさまざまな企業と提携したりしながら、あたらしい道を開拓していく姿勢が明確だ。 「(先述の素材を含めて)すべてを同時に行なっていかなくてはいけないのです。そんな時代に、ICEもBEVもというのでは、私たちのような規模の企業にとって、負担が大きすぎます。そこで私たちは電動化を選んだのです。あたらしい技術にこれからも投資していきます」 Vol. 3へ続く

ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボが電動化の先に見る明日とは。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

ボルボ・カーズはいち早く電動化に向けて大きな一歩を踏み出したメーカーのひとつ。とりわけ彼らは、リサイクル素材を多用するなど、ボルボ=サステナブルなイメージを強化するEVを精力的にリリースしている。何故彼らは電動化に“全振り”する戦略を採ったのか。ジム・ローワンCEOに、自動車ジャーナリスト・小川フミオが直撃した。 ボルボはこれからどこへ向かうのか 2023年6月に発表したコンパクトサイズのSUV、EX30で大きくBEVメーカーへの変身へと舵を切った感のあるボルボ。 EX30は、中国の吉利汽車とプラットフォームの共用戦略も採用。生産も中国で行なう一方、北米での販売も行なうなど、ボルボにとって、重要な車種だ。 2022年3月からボルボ・カーズの舵取りを行なっているジム・ローワンCEOに、ミラノでのEX30発表の機会をとらえて、インタビューを行なった。 スコットランド出身のローワン氏はダイソンCEOも務めていた経歴の持ち主。ローワンCEOを迎えたボルボは、EX90を2022年11月にストックホルムで公開。 このとき、ローワン氏は世界中から集まったプレスの前に姿を見せた。私もそのとき最前列でステージを見学させてもらった。 日本人の耳にはちょっとクセのある英語とともに、1965年生まれという先入観を吹き飛ばすような精力的な身振り手振りでもって、このさきボルボ・カーズは大胆にカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の削減に取り組んでいくと語った。 EX90は(読者のかたは先刻ご承知のように)BEVの大型SUV。「30分の充電で600km以上走るBEVで、私たちがいまどういう姿勢であり、そしてこれからどこへ向かうかを示す指標です」と、ローワンCEOはそのとき述べた。 リサイクル素材の使用を大々的に謳っていたのも印象的だった。たとえば、スチールでは11%、アルミニウムでは25%、そしてプラスチックは15%(重量では48kg)がリサイクル素材となるという。 「電動化自体が目標ではない」 その流れのなかで、次に発表したのが、EX30である。ローワンCEOはなにを考えているか。 各テーマごとに、ローワンCEOのコメントとして、インタビューでの回答のなかから抜き出してみた。 −−現在、ボルボが掲げている目標のなかで、もっとも重要なものはなにか。 「一般的に言っているのは、2030年までに販売するクルマをすべてBEVにすることです」 −−電動化を着々と進めている。 「電気化自体が目標というわけではないのです。目指しているのは、サステナビリティ、地球環境保全です。そのために、カーボンフットプリントを削減します。パワートレインが電気になればそれでサステナブル、というわけではありません。部品、生産、廃棄まで含めて、2025年までに、2018年比で約40%、二酸化炭素を減じていく大胆な目標を立てました」 −−EX30ではリサイクルパーツの多用が謳われている。 「カーボンフットプリント減少のために重要なのは、クルマのなかで使う素材の選択です。リサイクルしたアルミニウム、リサイクルした鉄、リサイクルしたプラスチック。往々にしてリサイクル素材はコストがかかりますが、そこは問題でなく、正しいことをやっているのがもっとも重要なのです」 −−さらに素材には踏み込んでいる。 「私たちは、グリーンスチールを使う最初のメーカーです(注:現時点では未使用)。製造プロセスこそ一般のスチールとおなじですが、(製鉄プロセスにおいて通常コークスを使う際の二酸化炭素排出量を抑制する)水素を利用することでカーボンフットプリントを減らすことが出来ます。私はこれはいい選択だと思っています」 −−このさきもカーボンフットプリント削減への努力は惜しまない。 「私たちが掲げている目標は、2025年までにカーボンフットプリントを2018年比で40%減らすことです。そこに向かって、こうして着々と進んでいるのです」 Vol. 2へ続く

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VWゴルフ GTIの歴代モデルスケッチ
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンのアイコン、ゴルフの存続やいかに。VW首脳陣に訊く電動化のミライ

電動化への道を急ピッチで切り拓くフォルクスワーゲンだが、やはりクルマ好きとして気になるのは、彼らを象徴するプロダクトであるゴルフの行方だ。ベーシックカーの王様であるゴルフもまた、BEV化を果たすのか、否か。フォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役、イメルダ・ラベー氏に自動車ジャーナリスト・小川フミオが切り込んだ。 ゴルフは電動化するのか? BEV時代を迎えつつあるいま、フォルクスワーゲン(VW)はどのような製品戦略をとっていくのだろう。 Love Brandであるために、というVWの目的を達成する手段として、「手の届きやすいBEVを提供する」こととともに「顧客が欲しくなるVWモデルを増やす」というものもある。 とりわけ昔からのVWファンだったら、もっとも気になるのは、ゴルフの行方ではないだろうか。はたして電動化するのか。するとしたら、いつなのか−−。 VWのセールス&マーケティング担当重役のイメルダ・ラベー氏に、その質問をぶつけてみた。 ──ID.シリーズにラインナップが集約されていくのかどうかわかりませんが、仮にそうなると、早晩ゴルフはなくなってしまうのでしょうか。 ゴルフは残ります。VWはゴルフ。ゴルフはVW。そのイメージは大事にしていきたいと思っています。ただ、(初代ゴルフが1974年に発売されたあと)他のアイコニックなプロダクトが、折りにふれて顧客に受け容れられてきています。直近でいうと、SUVが大人気の日本市場におけるティグアンです。指名買いをしてくれるモデルに成長しています。 ──2023年6月初頭に北米で発表したID.Buzzロングホイールベースのように、かつて北米で高い人気をもっていたマイクロバスのイメージを現代に活かしたモデルを作れるのも、フォルクスワーゲンの強みですね。 私たちの製品戦略は、過去のアイコン的なプロダクトを、BEVのポートフォリオ(ラインナップ)のなかにうまく組み込んでいくことです。まさにID.Buzzはいい例で、アイコニックな製品を完全にBEV化できて、かつ大きな評判を呼んでいます。   GTIやRの生産は当面継続へ ──ということは、ゴルフのBEV化も比較的容易であると? いえいえ。ブランドのヘリテイジをきちんと反映しつつ、これからの製品戦略に沿ったプロダクト。これが私たちがプロダクトを開発する際の基準です。かりにゴルフを電動化するとしたら、ゴルフのアイデンティティを完全に反映したプロダクトでなくてはなりません。なにをもってゴルフをゴルフと認めるか。出来上がったプロダクトを、消費者がゴルフと完璧に納得してくれなくてはならないのです。そのコンセプトが完全に出来上がるまで、電動化したゴルフは発表しません。 ──日本市場ではBEVの市場占有率が、たとえば北欧と較べると著しく低いと思います。かりにBEV化したゴルフを出されても、ファンは戸惑うのではないでしょうか。いまの話を聞いて、ホッとしているファンもいるかもしれません(笑) 日本に限らず、BEVのシェアが低い市場はいくつもあります。私たちとしても、ある日とつぜんICE(エンジン車)の販売を取りやめるようなことはしません。ICEパーフェクションといって、当面はゴルフGTIやRなどを含めて、エモーショナルな価値をもつモデルは生産を続けますし、性能向上だって図っていきます。ゴルフも同様です。ICEとして、より磨きをかけたモデルを2024年後半に発表します。電動化はその次の時代に向けて、ということになるでしょうね」 <完> (プロフィール) Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

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フォルクスワーゲンのBEVファミリー、ID.シリーズのイメージ
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンのEVは「サブスク」が鍵を握る? VW首脳陣に訊く電動化のミライ

買った後でも愛車を“アプデ”できる いまやデジタル技術なしにクルマを語ることはできない。各自動車メーカーとも、デジタルを駆使した様々な手法で商品力アップを図っている。フォルクスワーゲンは、クルマを購入したのちに機能をアップデートできる「ファンクション・オン・デマンド」というサービスを開始。愛車の新しい買い方・使い方を提案している。彼らのデジタル戦略について、フォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏に自動車ジャーナリスト・小川フミオが訊いた。 クルマの“進化”のなかには、デジタライゼーションと呼ばれる機能がある。 車内の照明の色が変えられる機能から、コンピューターのアップグレードによる高性能化まで、デジタル技術を使った進化にはめざましいものがある。 フォルクスワーゲン(VW)では「ファンクション・オン・デマンド」と銘打って、クルマを購入したのち、機能を追加するサービスもいくつかの市場で展開中だ。 さらにこの技術も“進化”中。なかには、自分の設定をクラウドに保存して、クルマを買い替えても、ラジオ局の設定やストリーミングの選択などがキャリーオーバーできて、ゆえにすぐに自分仕様にできる機能の可能性まである。 BEVと相性がいいといわれるファンクション・オン・デマンドなど、VW本社でセールス&マーケティング担当取締役をつとめるイメルダ・ラベー氏に、現状と、近い将来の方針を尋ねた。 機能も顧客ごとにカスタムできる時代へ ──デジタライゼーションをうまく使えば、より顧客ひとりひとりのニーズに即した仕様に仕立てられるかもしれないし、BEVとの相性はとてもいいのでは、と思われます。 はい、そのとおりだと思っています。私たちは、デジタル技術を使ってユーザーとの距離感をいままで以上に縮めたいと考えています。どんなインフォテインメントシステムを提供するのかなど、しっかり考えて実行に移していきたいですね。 私は「インカーCRM」って呼んでいるんですけれど、デジタル技術によって、企業と顧客との関係をうまく管理していって、そのさき、しっかりした関係を築いていけるといいと思います。 ──ファンクション・オン・デマンドは、OTA(オーバー ジ エア)など通信を使って自車の機能をアップグレードできたりと、まさにデジタル時代的なサービスですね。 たとえば、LEDマトリックスライト、ハイビームアシスト、パークアシスト、スマートフォンインターフェースなど、あとから購入してインストールできるサービスは、これからどんどん拡大していきそうです。現時点ではあいにく、どれぐらいの規模になるか、数字とともに予想を申し上げるのがむずかしいのですが。 ──これからのサービスだから(むずかしい)ということでしょうか。 はい。いまはまだ初期段階だと思います。私たちもいくつかの市場ですでにサービスを展開していますが、消費者に必要なものはなにかを、メーカーとしてあらかじめ予測して用意しておくのが、とてもむずかしいと感じています。市場によってニーズは違いますし。たしかに、誰かからクルマを購入したとき、(運転支援システムやドライブモードや音楽のアーカイブや空調の設定などを)すぐに自分好みのセッティングに変えられるのは喜ばれるでしょう。 ──多くのメーカーがいま、同様のサービスを喧伝しはじめていますね。なかには、走行距離に応じて課金するサブスクリプションサービスを使った販売なんて可能性も言及されています。世のなかのニーズはすごい勢いで変化していますね。 商品開発のプロセスにおいて、開発の初期段階で、プリインストールしておく機能と、ファンクション・オン・デマンドで提供する機能とを切り分けておく必要があります。(初期の販売価格も変わってくるし)この切り分けの設定こそ、マーケットにおける成功のカギだと私は思っています。もちろん顧客に価値あるものを提供することこそ、Love Brandになるために重要なのです。 <つづく> (プロフィール) Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

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VW ゴルフ GTIのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンのアイコン「GTI」は生き残るのか。VW首脳陣に訊く電動化のミライ

BEVとFun To Driveは好相性 フォルクスワーゲンが得意とするのは、大衆に愛されるベーシックカーづくりだ。しかしその一方で、GTIやRの称号を冠するホットなモデルも多くのファンを魅了している。電動化時代にも、そのアイコンは生き残ることができるか、否か。フォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役のイメルダ・ラベー氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオがインタビューした。 BEVに熱心に取り組むフォルクスワーゲン(VW)。いっぽう同社には、「ゴルフGTI」や「ポロGTI」といった、アイコニックなスポーツモデルがある。 1976年の初代以来、ゴルフGTIという他に並ぶもののないセグメントを市場のなかで確立したVW。GTIは、高性能エンジンを、スポーティなセッティングがほどこされたサスペンションシステムとともに、セリングポイントとしてきたモデル、と言い換えてもいい。 BEVの時代にあって、VWの考えるFun To Driveは、どのようなかたちになっていくのだろう。 VWブランドのセールス&マーケティング担当取締役のイメルダ・ラベー氏は「Fun To Driveは今後も大事にしていきたい」と話す。 ──VWは電動化を急速に進めている印象ですが、BEVにおけるFun To Driveはどう定義していますか。 BEVはごく低い速度域からトルクがたっぷり。加速性能もいいし、BEVはFun To Driveを含めたエモーショナルなクルマを作るいい土台だと思っています。デザインも同様です。ID.2 allのデザインは好例でしょう。エモーショナルなパワーが伝わるカタチと、大きな反響を呼んでいるほどです。内装においても過去のモデルの要素を採り入れてエモーショナルな価値を追求。私はこれがVWのFun To Driveだと思っています。   GTIは「存続させていきたい」 ──VWでエモーショナルな価値をもったモデルといえば、従来、ゴルフGTIとゴルフRが代表格でした。ゴルフGTIは、今後も残るのでしょうか。 ゴルフにしてもポロにしても、GTIはたいへんアイコニックなブランドです。世界中にファンが多く、ソーシャルメディアの世界でも、リアルな世界でも、ファンのコミュニティでの結びつきはたいへん強いものです。なので私たちは、GTIというブランドを存続させていきたいと考えています。 ──VWではGTIのファンコミュニティにも積極的にかかわっていると聞きます。 ながいあいだ、オーストリアのWörtherseeにおいて毎年、GTIミーティングが有志の手によって開催されていましたが、残念ながら地元の自治体の判断で2023年からは開催できなくなりました。そこで私たちは、2024年から(VW本社のある)ウォルフスブルクで、このミーティングを行なえるようにしました。 ──GTIはパワフルな前輪駆動、Rは大きなパワーを4つの車輪に配分する全輪駆動と、従来のモデルにとっては、駆動方式やドライブトレインが大事でした。もちろん、エンジンのフィールも。どのようなかたちでの存続を考えていますか。 現時点ではっきりしたことは申し上げられないのですが、たとえば、GTIフィーリングのようなものはBEVでも作りだせると考えています。GTIもRも、エモーショナルな価値を強く持ったモデルです。そのコアにある価値を見据えて、それを今後も提供していこうと思っています。ただしBEVでもGTIは成立するというのが私たちの考えです。だいたい次の路線は決まったのですが、残念ながら、ここでそれについて申し上げるのは時期尚早です。 <つづく> (プロフィール) Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

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VW ID.2allの発表会の様子
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンが邦貨換算300万円台のEVを出す狙いとは。VW首脳陣に訊く電動化のミライ

  ハッチバック、SUV、ミニバンを続々投入 消費者に広く愛されるベーシックカーを作り続けてきたフォルクスワーゲンは、果たして電動化時代にも「大衆のためのベーシックBEV」を提供する代表選手となれるのか。今後のブランドの舵取り役ともいえるフォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役、イメルダ・ラベー氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオが戦略を訊いた。 BEVの新戦略を着々と進めるフォルクスワーゲン。とりわけ注目は、製品コンセプトのユニークさだ。 ID.シリーズ第1弾としてローンチされたID.3は、従来のハッチバックスタイルを踏襲した、どちらかというと常識路線。 そのあと、日本でも発売されたID.4を発表。そして、2021年5月に全輪駆動のパワフルなID.4 GTXを欧州市場に投入。続けて、2022年3月には60年代テイストあふれるミニバン、ID.BUZZを、そして2023年3月にID.2 all(アイディーツーオール)を発表した。 ID.2 allは、都市内でも使い勝手のよさそうな全長4050mmのサイズと、2万5000ユーロ(邦貨約370万円)以下で販売するという大胆な価格戦略で大きな話題を呼んでいる。 「なにより、ID.2 allは、従来のフォルクスワーゲン・ユーザーが、いいね!と思ってくれるデザインを重視しました」 従来の、という点が強調ポイントのようだ。それこそ、ユーザーとVW車が蜜月にあった時代。日本を含めて世界のいたる市場において、“なるほど”と納得するユーザーが簡単に見つかりそうだ。 フォルクスワーゲンでセールス&マーケティング部門担当取締役をつとめるイメルダ・ラベー氏は、いわばBEV時代を迎えつつあるいま、生き残り戦略に必要なのはなにかを考える立場にある。 「誰でも普通に受け入れられる」のがVW流 下記は、ユーザーに愛される「Love Brand」を目指すフォルクスワーゲン(VW)の製品戦略をめぐる、ラベー氏との一問一答。 ──このところ、VWのBEVをめぐる製品コンセプトのユニークさが際だっているように思えます。とりわけ内外装のコンセプト。単にパワーを誇示したりするのでなく、いってみれば、もっとやわらかいかたちで、自動車好きの心を刺激するものがあります。 そもそも、従来のVW車オーナーは、自分のクルマに名前をつけたり、エモーショナルな関係を結んでいることが多かったように思います。私たちはBEVにおいても、そこを重視します。名前をつけて乗っていたくなるクルマを作って提供することこそ、VWの使命ではないかと思うのです。 ──たしか、Love Brandというコンセプトを使いだしたとき、同じタイミングで発表されたのがID.2 allのコンセプトモデルでしたね。そこには、なんらかの関係性が働いている、と考えてもいいでしょうか。 見た目ですぐVWとわかるデザインと、直感的に使いやすいユーザーエクスペリエンスの提供。このふたつを重視してデザインしたクルマです。 空調やラジオのコントローラーをダイヤルにすれば、従来のクルマに乗ってきたひとたちが直感的に操作できます。シンプルで操作が容易というのが、顧客のニーズだと思います。 Love Brandとしては、そんなふうに顧客の使い勝手を優先しているととらえてもらうことが大事です。私たちにとって、ユーザーに抵抗感なく受け入れてもらうことが重要なのです。 今後私たちが発表するニューモデルにおいては、誰でも迷わず使えるようなデザインを採用していきます。 ──クルマに慣れろというのではなく、パワートレインがどうなろうと、それとは関係なく、これまで慣れ親しんでいた気持ちが損なわれることなく、BEVにだって乗ってもらう。そんな関係をユーザーとのあいだに取り結ぶことこそ、Love Brandとして生き残っていくために大切、ということなのですね。 これまでBEVというと、特別なフロントマスクとか、差異化のためのデザインを重視してきたところがありますが、ID.2 allは誰でもふつうに受け入れられるスタイルでしょ。操作系も、温度とかはあえて物理的なコントローラーにして、簡単で気持ちよく使えることを目指しています。 つづく (プロフィール) Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

TAG: #コンパクトカー #マーケティング #戦略
VW ID.2allとフォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲンはEV時代も「らしく」いられるか。VW首脳陣に訊く電動化のミライ

消費者に「愛される」という原点へ ピュアEVモデルの投入に積極的なフォルクスワーゲンは、電動化時代にも「大衆のためのクルマ」を提供するブランドであり続けることができるだろうか。ベーシックカーの代表選手ともいえるゴルフは、これからどこへ向かうのか。今、どうしてもVWに訊いてみたいあれこれを、自動車ジャーナリスト・小川フミオが同社取締役に投げかけた。 独フォルクスワーゲンは、ラインナップの電動化に熱心なブランドとして知られている。 BEV専用「ID.」というサブブランドはさまざまなかたちで展開され、日本にも(ご存知のとおり)ID.4が2022年に導入された。 このさきには、かつてタイプ2などと呼ばれたマイクロバスのイメージを使ったID.Buzzの導入も検討されているとか。 いまフォルクスワーゲン(以下、VW)がさかんに喧伝しているキーワードは「Love Brand」。一般的には、消費者に愛されているブランドを指す。 かつてのビートルやマイクロバスや初期のゴルフのように、ユーザーとのあいだに強い結びつきをもつことこそ、電動化で企業価値が変わる可能性のある時代の生き残りに重要とVWでは定義している。 きっかけは、2022年7月1日にVWブランドのCEOに就任した、トマス・シェファー氏が、ブランドが向かうべき方向性を打ち出したこと。 「VWがまた、より輝いているブランドになるために何が必要か。就任直後から、社内の様々なチームとブレインストーミング等を重ねてきました」 比較的近くで、あたらしいCEOによる、あたらしい方向性の模索を見てきた、フォルクスワーゲン グループ ジャパンの広報担当者はそう証言する。 「そこには、お客様が欲しくなるVWモデルを増やす、お客様がVWに期待している品質を提供する、より手の届きやすいBEVを用意する、といったことが含まれます」 鍵を握るのはお手頃価格の“FF”コンパクトEV Love Brand戦略の大きなキックオフは、2023年3月15日に独ハンブルクで行なわれた「ID.2 all」のワールドプレミアだった(と後で判明)。 ID.シリーズ初の前輪駆動、全長4050mmとコンパクトな車体、2万5000ユーロ(邦貨約370万円)以下の安価な価格設定で、発売が待たれているID.2 all。 「顧客(のニーズ)に近く、機能性が高く、ファンタスティックなデザイン。このクルマこそ、VWというブランドの目指すところといえます」 そう述べるシェファーCEOの隣にいたのが、VWブランドのセールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏。これからのVWブランドの舵取り役として重責を担うひとだ。 ドイツ出身の同氏は、いわば自動車畑を一貫して歩んできた経歴を持つ。VWの前は、VW傘下のシュコダ、さらにその前はオペルで経験を積んできた。 私が氏の姿を見たのは、先述したID.2 allのプレス向け発表会のときだった。シェファーCEOとともに、VWの新しい方向性を指し示すようなID.2 allの前に立ち、(言葉から察するに)ドイツを中心とするメディアからさまざまな質問を受けていた。 「私たちは、いままで知られていたVWの美点を、あたらしいモビリティへと転換していくところです」 上記のように語るラベー氏が、2023年6月初旬に来日。アジアのいくつかの国を訪問して、現地法人の社長、販売やマーケティング担当のマネージャーと会ってまわっているようだった。この機会をとらえて、EVを含めてVWの今後の戦略について取材した。 <つづく>   Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏 フォルクスワーゲン乗用車部門 セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役 1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。  

TAG: #コンパクトカー #マーケティング #戦略
レンジローバーのグローバルマネージングディレクター、ジェラルディン・インガム氏
TEXT:小川フミオ
レンジローバーのBEVが間もなく誕生。ランドローバー新担当が語る「電動化の魅力」とは

ランドローバー・レンジローバーがピュアEVになって、2023年末に受注をスタートする。ラグジュアリーSUVの王者として君臨してきた同車の在り方は、電動化によりどう変わるのか、あるいは変わらないのか。英国本社でレンジローバーのグローバルマネージングディレクターに就任したばかりのジェラルディン・インガム氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオが訊いた。 Meta自動車部門も経験した新ディレクター ランドローバーは、2023年末よりピュア電動モデルの受注を開始するという。 2030年までには、ジャガー・ランドローバーブランドの全モデルにピュアEVの選択肢を設定することも発表されている。 そしてランドローバーが出す初のBEVは、レンジローバーなのだ。 レンジローバーといえば、誰もがすぐに、個性的なデザインの車体と、ぜいたくな内装と、大きなエンジンといったぐあいに、イメージが浮かぶ。電動化が進むと、いかなる変化があるのだろう。 その未来を尋ねるにふさわしい人物が、2023年5月中旬に、東京を訪れた。英国本社でレンジローバーのグローバルマネージングディレクターに就任したジェラルディン・インガム氏だ。 インガム氏は、英国出身で、これまで日産UK、ルノー本社、フォルクスワーゲンUK、さらに(なんと)Metaの自動車部門でディレクターとしての経歴を重ねてきたひと。 ランドローバーには、2023年4月に入社。仕事内容について「このアイコニックなブランドの電動化を先導し、モダンラグジュアリーのエキサイティングな新時代への道を切り開いています」とプレス資料で書かれる。 「レンジローバーはご存知のように、リダクショニズムというデザイン言語によるデザインをはじめ、モダンでラグジュリアスな内装など、成功要件をすべてそなえています」 インガム氏はそれら、レンジローバーの成功要件を「マジックフォーミュラ」(魅力的な方程式)と表現。これからもそれらを守っていく所存、とする。 「先進的技術によるイノベーション、オフロード走破性、車内のデジタル技術の数々……これらに加えて、今後、電動化技術を積極的に採り入れていきます」 インガム氏は、自信にみちた笑顔でそう答えた。 「変化のための変化は行わない」 「私たちは2023年末に、初のBEVの予注を受け付けます。そして24年にはデリバリーを開始します。いえることは、電動化しても、変化のための変化は行なわず、レンジローバーのDNAに忠実なモデルづくりを継続します」 強いて、電動化がもたらすメリットをあげるとしたら……インガム氏はつけ加えた。 「さらに静粛性が高くなるってことでしょうね。私はいま、会社のプロダクトをよく理解しなくてはならない立場なので、とっかえひっかえレンジローバーに乗って通勤しています」 自分の経験から言うと……とインガム氏。 「私は自宅と会社の往復に3時間かけています。その時間が期待以上に快適なんです。乗り心地もいいし、静かだし、好きな音楽を聴いていれば満ち足りています。電動化すると、さらに10時間ぐらいは平気でドライブしていられそう、と思っています」 電動化するレンジローバーを評価してほしい層は、どういうひとたちか。 「成功のシンボルとしてレンジローバーに憧れたかつての私のようなひとたちに加え、電動車にそろそろ乗ろうと考えていて、ならばぜいたくなSUVを、というひとたちが、すぐ思いつきます」 たしかに、そういうひとは、日本にも一定数いそうだ。ただし、現状では大型電動車には二律背反した問題がある。 長い距離走れる大きなバッテリーがあると便利だけれど、行く先によっては、性能のいい充電設備を探すのに苦労する。カリフォルニアなら、スーパーマーケットの駐車場にも充電設備があるのだけれど。 「聞いてみたところ、日本ではまだまだ充電インフラが整っていないと考えるユーザーのかたがたがいるようです。ただ、実際のデータとしては、8割がたのオーナーが自宅で充電して、それでなんの問題もなしとしているようです」 すでに日本発売されているプラグインハイブリッドモデルを例にとると、「InControlナビゲーションシステム」なる充電施設を探せるオンライン上のロケーターが機能している、とインガム氏は指摘。

TAG: #トップインタビュー #レンジローバー

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