インタビュー
share:

フォルクスワーゲンが邦貨換算300万円台のEVを出す狙いとは。VW首脳陣に訊く電動化のミライ


TEXT:小川フミオ
TAG:
VW ID.2allの発表会の様子

 

VW ID.3のフロントビューとリヤビュー
ハッチバック、SUV、ミニバンを続々投入

消費者に広く愛されるベーシックカーを作り続けてきたフォルクスワーゲンは、果たして電動化時代にも「大衆のためのベーシックBEV」を提供する代表選手となれるのか。今後のブランドの舵取り役ともいえるフォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役、イメルダ・ラベー氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオが戦略を訊いた。

BEVの新戦略を着々と進めるフォルクスワーゲン。とりわけ注目は、製品コンセプトのユニークさだ。

ID.シリーズ第1弾としてローンチされたID.3は、従来のハッチバックスタイルを踏襲した、どちらかというと常識路線。

そのあと、日本でも発売されたID.4を発表。そして、2021年5月に全輪駆動のパワフルなID.4 GTXを欧州市場に投入。続けて、2022年3月には60年代テイストあふれるミニバン、ID.BUZZを、そして2023年3月にID.2 all(アイディーツーオール)を発表した。

ID.2 allは、都市内でも使い勝手のよさそうな全長4050mmのサイズと、2万5000ユーロ(邦貨約370万円)以下で販売するという大胆な価格戦略で大きな話題を呼んでいる。

「なにより、ID.2 allは、従来のフォルクスワーゲン・ユーザーが、いいね!と思ってくれるデザインを重視しました」

従来の、という点が強調ポイントのようだ。それこそ、ユーザーとVW車が蜜月にあった時代。日本を含めて世界のいたる市場において、“なるほど”と納得するユーザーが簡単に見つかりそうだ。

フォルクスワーゲンでセールス&マーケティング部門担当取締役をつとめるイメルダ・ラベー氏は、いわばBEV時代を迎えつつあるいま、生き残り戦略に必要なのはなにかを考える立場にある。

VW ID.2allのフロント
「誰でも普通に受け入れられる」のがVW流

下記は、ユーザーに愛される「Love Brand」を目指すフォルクスワーゲン(VW)の製品戦略をめぐる、ラベー氏との一問一答。

──このところ、VWのBEVをめぐる製品コンセプトのユニークさが際だっているように思えます。とりわけ内外装のコンセプト。単にパワーを誇示したりするのでなく、いってみれば、もっとやわらかいかたちで、自動車好きの心を刺激するものがあります。

そもそも、従来のVW車オーナーは、自分のクルマに名前をつけたり、エモーショナルな関係を結んでいることが多かったように思います。私たちはBEVにおいても、そこを重視します。名前をつけて乗っていたくなるクルマを作って提供することこそ、VWの使命ではないかと思うのです。

VW ID.2allのセンターコンソール

──たしか、Love Brandというコンセプトを使いだしたとき、同じタイミングで発表されたのがID.2 allのコンセプトモデルでしたね。そこには、なんらかの関係性が働いている、と考えてもいいでしょうか。

見た目ですぐVWとわかるデザインと、直感的に使いやすいユーザーエクスペリエンスの提供。このふたつを重視してデザインしたクルマです。

空調やラジオのコントローラーをダイヤルにすれば、従来のクルマに乗ってきたひとたちが直感的に操作できます。シンプルで操作が容易というのが、顧客のニーズだと思います。

Love Brandとしては、そんなふうに顧客の使い勝手を優先しているととらえてもらうことが大事です。私たちにとって、ユーザーに抵抗感なく受け入れてもらうことが重要なのです。

今後私たちが発表するニューモデルにおいては、誰でも迷わず使えるようなデザインを採用していきます。

──クルマに慣れろというのではなく、パワートレインがどうなろうと、それとは関係なく、これまで慣れ親しんでいた気持ちが損なわれることなく、BEVにだって乗ってもらう。そんな関係をユーザーとのあいだに取り結ぶことこそ、Love Brandとして生き残っていくために大切、ということなのですね。

これまでBEVというと、特別なフロントマスクとか、差異化のためのデザインを重視してきたところがありますが、ID.2 allは誰でもふつうに受け入れられるスタイルでしょ。操作系も、温度とかはあえて物理的なコントローラーにして、簡単で気持ちよく使えることを目指しています。

つづく

(プロフィール)
Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏
フォルクスワーゲン乗用車部門
セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役

1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
初夏の北軽井沢でアウディ最新モデルを堪能! 「あさま空山望」とのコラボキャンペーンは5月20日まで募集中
ついにGクラスにも完全電動化モデルが登場! メルセデス・ベンツ「G 580 with EQ テクノロジー」で高級オフローダー界に殴り込み
レンジローバーPHEVの使用済みバッテリーを再利用! エネルギー貯蔵システム「BESS」で真の循環型経済の実現を目指す
more
コラム
やっぱり日本でEVは需要薄か!? 国産で好調なのは軽EVだけという現実
数字だけ高スペックでも実際の充電は遅い! EVの進化についていけない急速充電器の現状
テスラ・モデルYに600km走れるRWD登場も日本導入はナシの予想! 日本は「ジュニパー」の登場に期待
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択