インタビュー
share:

フォルクスワーゲンはEV時代も「らしく」いられるか。VW首脳陣に訊く電動化のミライ


TEXT:小川フミオ
TAG:
VW ID.2allとフォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏

VW ID.4のフロントビュー

消費者に「愛される」という原点へ

ピュアEVモデルの投入に積極的なフォルクスワーゲンは、電動化時代にも「大衆のためのクルマ」を提供するブランドであり続けることができるだろうか。ベーシックカーの代表選手ともいえるゴルフは、これからどこへ向かうのか。今、どうしてもVWに訊いてみたいあれこれを、自動車ジャーナリスト・小川フミオが同社取締役に投げかけた。

独フォルクスワーゲンは、ラインナップの電動化に熱心なブランドとして知られている。

BEV専用「ID.」というサブブランドはさまざまなかたちで展開され、日本にも(ご存知のとおり)ID.4が2022年に導入された。

このさきには、かつてタイプ2などと呼ばれたマイクロバスのイメージを使ったID.Buzzの導入も検討されているとか。

いまフォルクスワーゲン(以下、VW)がさかんに喧伝しているキーワードは「Love Brand」。一般的には、消費者に愛されているブランドを指す。

かつてのビートルやマイクロバスや初期のゴルフのように、ユーザーとのあいだに強い結びつきをもつことこそ、電動化で企業価値が変わる可能性のある時代の生き残りに重要とVWでは定義している。

きっかけは、2022年7月1日にVWブランドのCEOに就任した、トマス・シェファー氏が、ブランドが向かうべき方向性を打ち出したこと。

「VWがまた、より輝いているブランドになるために何が必要か。就任直後から、社内の様々なチームとブレインストーミング等を重ねてきました」

比較的近くで、あたらしいCEOによる、あたらしい方向性の模索を見てきた、フォルクスワーゲン グループ ジャパンの広報担当者はそう証言する。

「そこには、お客様が欲しくなるVWモデルを増やす、お客様がVWに期待している品質を提供する、より手の届きやすいBEVを用意する、といったことが含まれます」

VW ID.2allの発表会の様子
鍵を握るのはお手頃価格の“FF”コンパクトEV

Love Brand戦略の大きなキックオフは、2023年3月15日に独ハンブルクで行なわれた「ID.2 all」のワールドプレミアだった(と後で判明)。

ID.シリーズ初の前輪駆動、全長4050mmとコンパクトな車体、2万5000ユーロ(邦貨約370万円)以下の安価な価格設定で、発売が待たれているID.2 all。

「顧客(のニーズ)に近く、機能性が高く、ファンタスティックなデザイン。このクルマこそ、VWというブランドの目指すところといえます」

そう述べるシェファーCEOの隣にいたのが、VWブランドのセールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏。これからのVWブランドの舵取り役として重責を担うひとだ。

ドイツ出身の同氏は、いわば自動車畑を一貫して歩んできた経歴を持つ。VWの前は、VW傘下のシュコダ、さらにその前はオペルで経験を積んできた。

私が氏の姿を見たのは、先述したID.2 allのプレス向け発表会のときだった。シェファーCEOとともに、VWの新しい方向性を指し示すようなID.2 allの前に立ち、(言葉から察するに)ドイツを中心とするメディアからさまざまな質問を受けていた。

「私たちは、いままで知られていたVWの美点を、あたらしいモビリティへと転換していくところです」

上記のように語るラベー氏が、2023年6月初旬に来日。アジアのいくつかの国を訪問して、現地法人の社長、販売やマーケティング担当のマネージャーと会ってまわっているようだった。この機会をとらえて、EVを含めてVWの今後の戦略について取材した。

<つづく>

 

フォルクスワーゲン乗用車部門セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役イメルダ・ラベー氏

Imelda Labbé(イメルダ・ラベー)氏
フォルクスワーゲン乗用車部門
セールス・マーケティング&アフターセールス担当取締役

1967年に、フランス国境ちかくの南西ドイツ(Steinfeld/Pfalz)で生まれ、ユニバーシティ・オブ・マンハイムで経営学を学ぶ。その後米スタンフォード・ユニバーシティで経営学の修士号を取得。1986年から2013年にかけて、独オペルで経験を積んだのち、2013年にVW傘下のシュコダに転職し、同社取締役会のスポークスパースンに。2016年からVWグループでグローバルのアフターセールスなどを担当。2022年7月1日より現職。

 

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
新型エルグランドがいよいよe-POWERで登場!? 「EVの雄」日産のジャパンモビリティショー2025は電動モデルが盛り盛り
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
more
コラム
ただバッテリーとモーターに置き換えただけのモデルと思うなよ! N-ONE:eはN-ONEとはデザインまでまったく違う「一車入魂」の力作だった
EVにレアメタルを使わない電池が普及するとレアメタルのリサイクルの採算が合わなくなる……そんな説の真偽を考える
レアメタルの資源不足を解決する手段! いま注目を集める「ナトリウムイオン電池」とは?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
軽自動車市場参入を表明したBYDの軽EVはスライドドアのスーパーハイトワゴン!? 注目モデルが目白押しなジャパンモビリティショー2025のBYDブースは要注目
ホンダはジャパンモビリティショー2025で「陸・海・空・宇宙」を制す!? 「FUN to Drive」な小型EVと「0シリーズ」の新型SUVを世界初公開
電動化時代でもAMGは超弩級マシンでブランドを牽引! ジャパンモビリティショー2025でメルセデス・ベンツが「コンセプトAMG GT XX」をアジア初披露
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択