試乗 記事一覧

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TEXT:烏山 大輔
カクカクデザインと大きなボディ、ヒョンデ「アイオニック5」はどんなクルマ?[TET消費者派チェック]

2022年5月に販売を開始したアイオニック5は、年末に「2022-2023インポートカーオブザイヤー受賞」と最高のスタートをきった。流行りのSUVスタイルではなくハッチバックなのに、モデルYよりも2cmほど背が高いという、マジックのようなボディを持つアイオニック5はどんなクルマなのだろうか。今回の[TET消費者派チェック]の概要はこちら。リーフの回はこちら。モデルYの回はこちら。 乗る前に考えたこと 13年ぶりに日本市場に参入し、Hyundaiの読み方もヒュンダイからヒョンデに変わった。取り扱い車種も大変革しICE(内燃機関)やHEV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)ではなく、BEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)のみ、それぞれ「アイオニック5」と「ネッソ」の2車種でスタートした。 長らく日本から遠ざかっていたブランド、かつ完全なBEVとしての新型車のアイオニック5には、事前に全くイメージを持っていなかった。だからこそ特別な先入観もなく試乗に臨めた。 BEVのパイオニアたる日産・リーフとBEV専業メーカーのテスラ・モデルYとの対峙で、アイオニック5にはどんな特徴が見えてくるのかが楽しみだった。 電費 80km/h巡航ではわずか0.2だけモデルYにおよばす8.6km/kWhだった。100km/h巡航はモデルYと0.7差、リーフとも0.4の差をつけられ6.0km/kWhと最も悪い結果に終わった。速度が上がるともちろん電費は悪くなるのだが、車重が一番重い(2,100kg)こととCd値も最も大きい(0.32)ことがこの結果になった要因だと考えられる。 ※電費比較表:単位はkm/kWh、1kWhでどれほど走行できるか。数字が大きいほど電費が良い。 Cd値:リーフ 0.28、アイオニック5 0.32、モデルY 0.23 パッケージング アイオニック5だけを写真で見ると背が低めのハッチバックのように見えるのだが、実は全高は1,645mmとSUVのモデルYより21mm高い。ハッチバックのように見えるのは全幅と全高の比率からくるものだと考えられる。試しにリーフとその比率を比較してみると、下記のようにほぼ同値だ。 アイオニック5:1.148(全幅1,890÷全高1,645) リーフ:1.143(全幅1,790÷全高1,565) アイオニック5はこの全高を活かして、前後ヘッドクリアランスを確保した。後席膝前スペースに至っては、一番長いホイールベースのおかげで26cmと3台の中で最も余裕があった。 荷室は幅と奥行きがほぼスクエア、かつ土手(荷室とバンパーの高さの差)も2cmとわずかで荷物を載せやすい。一方、トノカバーまでの高さは36cmしかない。これは地面からバンパーまでの高さが77cmと一番高かったことも原因だ。フランク(ボンネット下の荷室)はボンネットを開けて、カバーを開ける2回の操作が必要だが、24L(RWDは57L)の容量が確保されている。 運転してわかったこと 今回試乗したグレードは、Lounge AWDとその名の通りAWD(全輪駆動)なので前後にモーターを搭載し、305ps/605Nmのパワーとトルクを発揮する。0-100km/h加速は5.2秒と十分な速さだ。特に発進加速では0-100km/h加速が3.7秒のモデルYと遜色ない瞬発力をみせる。そんなモデルYと決定的に違うのは、アイオニック5は快適な乗り心地を有していることだ。これまでのICE(内燃機関)からの乗り換えも全幅の大きさをのぞけば多くの人にお勧めできるBEVだと思う。

TAG: #アイオニック5 #ヒョンデ #消費者派チェック
TEXT:曽宮 岳大
日本の電気自動車界を牽引してきた日産・リーフは、最新のライバルの前では分が悪い!?[TET消費者派チェック]

日本で電気自動車と言ったらこの日産「リーフ」を外す訳にはいかない。伝統あるこのクルマは最新の海外ライバル、ヒョンデ「アイオニック5」とテスラ「モデルY」に対してどんな得手・不得手があるのだろうか。今回の[TET消費者派チェック]の概要はこちら。アイオニック5の回はこちら。モデルYの回はこちら。 乗る前に考えたこと EVに求めるものというのは人それぞれで、先進的なデザインやパッケージングを求める人もいれば、親しみのある従来のエンジン車に近いカタチを求める人もいると思う。リーフは後者の最右翼で、目を見張るような新しさはないが、反対に、長く親しんできたモノに宿る安心感のようなものがある。この安心感、親しみ、ホッとする感じ。これはひとつの大きな魅力として挙げられるだろう。なんでも尖っていればいいというわけではないと思うのだ。 電費 あくまでも今回我々が設定した区間での計測という前提だが、事前の予想では車重が一番軽いこと(モデルYとは320kg差、アイオニック5とは420kg差)かつ、全高と全幅も一番小さいこと(=前面投影面積が小さい)、2輪駆動のFWDであることから、電費はリーフが圧倒的な大差をつけるかと予想していた。 ※電費比較表:単位はkm/kWh、1kWhでどれほど走行できるか。数字が大きいほど電費が良い。 しかし結果は80km/h巡航が3位、100km/h巡航は2位だった。Cd値(空気抵抗係数)は2番目であることも考えあわせると、ともに2022年登場のライバルとはやはり基本設計の差が出たのだと考えられる。実際に交流電力消費率はリーフが一番大きい(=電費が悪い)ので、不利だった面は否めない。3代目リーフに期待したい。 Cd値:リーフ 0.28、アイオニック5 0.32、モデルY 0.23 交流電力消費率:リーフ 161、アイオニック5 142.4、モデルY 150(単位はWh/km、1km走るのにどれだけ電力を消費するか)   パッケージング 全高とホイールベースが最小のリーフには分が悪かった。前席ヘッドクリアランスは5cmを確保できたが、後席は天井に頭がつっかえてしまった。後席膝前は19cmと足を組めるほどの余裕はある。 全長が一番短いこともあり荷室も一番小さかった。そして土手(荷室とバンパーの高さの差)が22cmもあるので、荷物の積み降ろしも一番しづらいが、あくまでも今回のライバルと比較したからの結果だ。容量自体は435Lを確保している。なおフランク(ボンネット下の荷室)は用意されていない。 運転してわかったこと 乗る前に感じた印象は、運転した感想と重なる。新世代感の漂う他2台は、乗ると確かにワクワクする。リーフにはそのワクワク感は薄いが、乗り込んだ途端、そして走らせても、“いつも通りの雰囲気”というか、家に戻ってきた時のようなホッとする安心感がある。この安心感は嫌いじゃない。いつも自分の側にあって、道具のように当たり前に使える感覚。そのうえ進化を重ねた機械としての信頼感もある。例えば毎日の移動や、仕事の足として使うような用途には向いていると思う。

TAG: #リーフ #日産 #消費者派チェック
TEXT:小川 フミオ
来年の日本発表が待ち遠しい!BYDのEVセダン「シール」をサーキットで乗る!

サーキットで行われた中国・BYDのミドルクラス・セダン「シール」の試乗会に参加した小川フミオ氏。いよいよコースに繰り出す。 BYDは走行性能に大きな自信 私が珠海サーキットで乗れた「BYDシール」は、もっともハイパフォーマンスのAWD。ほかに、後輪駆動版と、まだショーでお目見えしたばかりのプラグインハイブリッドがある。 サーキットを試乗の場所に選んだのは、いくつか理由があるはずだ。ひとつは、中国では特別の許可がないかぎり、外国人が公道で運転することはできない。 もうひとつは、シールの走行性能に、BYDが大きな自信を持っていることだ。私の試乗の前日は台風14号の影響で大雨。このときの参加者は時速80キロが上限とされたと聞いた。 私のときは、幸いなことに曇天で、制限速度はなし。たっぷりと楽しめた。 トータルで最高出力390kW(530ps)、最大トルク670Nmの全輪駆動システムは、2,185kgの車重をものともしない。アクセルペダルを強く踏み込むと、間髪入れずにドンッというかんじで加速に移る。 加速していくときの雰囲気は、私が好きなかんじで、上では「ドンッというかんじ」と表現したものの、ゆっくり踏み込んでいくと、トルクが積み増していくフィーリングが気持よい。 アクセルペダルを緩めたときの減速は、(まだクオリティが揃っていないとのことで)乗った車両によって多少のバラつきがあった。いい車両は、少し緩めると反応よく少し減速するのがわかる。 回生ブレーキの調整のせいか、ごくわずかの加減速でも、車体がピッチングする車両もあった。私のとなりには中国人のインストラクターが乗っていたので、そのひとの頭が前後に揺れるのが、申し訳ない気分になった。

TAG: #BYD #シール
TEXT:烏山 大輔
ぶっちゃけどう違うの!? ミドルクラスEV・3車種をとっかえひっかえ乗ってみた![TET消費者派チェック]

「電気自動車は、電気でモーターを回して走るだけだから、回転の上下によりパワーの出方が変わるエンジン車とは違って、どれも同じようなクルマなんでしょ」 数年前まではそんな声もよく聞いたし、実際にわれわれ自身にも、そうなんじゃないかと思っていた部分もあった。 そして今回、電気自動車の3台を直接乗り比べる企画をスタートさせた。その結果、「こんなにも違うものか!」と驚きさえ覚えた。パワーの出し方も違えば、そもそも根本的な「クルマ作り」の考え方さも三“車”三様だった。 TET消費者派チェック概要 THE EV TIMES(TET)では、これまでに掲載してきた「試乗記」とは別の切り口の試乗記を始める。企画タイトルは「TET消費者派チェック」だ。 消費者派チェックでは価格や大きさなどから競合すると思われる数台を集め、同日にクルマを乗り換えながら比較、試乗することで、ドライバビリティ、電費、パッケージングの違い(室内空間と荷室)の差をあぶり出すことを目的としている。BEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)を購入しようと比較・検討している読者の皆さんの参考になる記事を目指す。 室内空間については、身長172cmのドライバーがポジションをとり、同じ人間が後席に座り前後のヘッドクリアランスと後席膝前スペースを測っている。昭和生まれの人間らしく座高が高めなので、ヘッドクリアランスは厳し目になっている。 電費計測は条件を揃えるため3台で同じコースを同時に走行している。計測方法は東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジを出発し、東名川崎インターチェンジでUターン、綾瀬SICに戻るという往復(約43km)を1セットとし、往路と復路の平均値で比較する。速度は80km/hと100km/hで1セットづつ計測した。 各車ともに本線に合流し、目標速度に達したらACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をセットし、巡航する。こうすることで一定速度を維持でき、読者の皆さんにも同じ方法で走行することで再現性の高い電費計測としたいのが狙いだ。 3車種の紹介 第1回目の消費者派チェックにあたり、日本のBEVの代表として選んだのは「日産・リーフ」だ。初代モデルは2010年と、今から13年も前にグローバルで世界初の量産車BEVとしてデビューした、BEVのパイオニアだ。その後、2017年に2代目に生まれ変わった。現在のラインナップにはバッテリー容量が40kWhと60kWhの2種類がある。今回の試乗車は60kWhのe+Gグレードを用意した。車両本体価格は583.44万円だ。 2台目は2022-2023インポートカーオブザイヤーにも輝いた「ヒョンデ・アイオニック5」である。2009年に日本市場から撤退したヒュンダイが2022年にヒョンデとブランド名を改め再上陸した。 新生ヒョンデにエンジン搭載車はなく、BEVのアイオニック5とFCEV(燃料電費車)の「ネッソ」の2車種のみ。アイオニック5には5つのグレードが用意されているが、今回の試乗車はAWDで72.6kWhのバッテリーを積むトップグレードのLounge AWDだ。車両本体価格は599万円とリーフとほぼ同じになった。 3台目はアメリカ代表のBEVメーカーテスラから「モデル3」を用意しようとしたが、取材日程に合う広報車の都合で「モデルY」になった。モデルYはモデルXに次ぐテスラの2車種目のSUVだ。現在のモデルYは3グレード構成で、試乗車はAWDのパフォーマンスである。バッテリー容量は非公表、車両本体価格は727.9万円だ。 モデルYのみSUVということで、3台が揃うと全高の違いが大きいかと想像していたが、リーフは1,565mm、アイオニック5が1,645mm、モデルYが1,624mmということで写真でもお分かりの通り、際立った差はなかった。特にハッチバックスタイルに惑わされて単体だと小さく見えるアイオニック5だが、実は全長4,635mm、全幅1,890mmとかなりの大柄だ。 価格ではリーフとアイオニック5が、大きさではアイオニック5とモデルYが、ライバルとして比較されることは十分にあり得そうなので、結果としてこの3台になって良かったのかもしれない。 リーフの回はこちら。 アイオニック5の回はこちら。 モデルYの回はこちら。 日産 リーフ 全長:4,480mm 全幅:1,790mm 全高:1,565mm ホイールベース:2,700mm 車両重量:1,680kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:161Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:450km(WLTCモード) 最高出力:160kW(218ps)/4,600-5,800rpm 最大トルク:340Nm(34.7kgm)/500-4,000rpm バッテリー総電力量:60kWh モーター数:前1基 駆動方式:FWD(前輪駆動) フロントサスペンション:ストラット リアサスペンション:トーションビーム フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前後215/50R17 最小回転半径:5.4m 荷室容量:435L(フロント無し) 車両本体価格:583万4,400円   ヒョンデ アイオニック5 全長:4,635mm 全幅:1,890mm 全高:1,645mm ホイールベース:3,000mm 車両重量:2,100kg 前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg 乗車定員:5名 […]

TAG: #アイオニック5 #テスラ #ヒョンデ #モデルY #リーフ #日産
TEXT:小川 フミオ
美しい形、質感も文句なし! BYD「シール」はEVセダンとしてヒットできるか!?

前回「シール」の構成や仕様を確認した小川フミオ氏は、同車の内外装デザインに注目する。どんな印象を持ったのだろうか。 美しいプロポーションを選択 BYDのスポーティセダン「シール」は、同社の「海洋デザイン(Marine Aesthetic Design)」に連なるモデル。 「シーガル(カモメ)」や、日本で既発の「ドルフィン(イルカ)」と並んでアザラシを車名としている。 デザイン的には、「X」と呼ばれるデザインモチーフがフロントマスクに採用されている。ヘッドランプ下のLEDによるシグネチャーランプの意匠が、そのように見えるからだろう。 LEDによるドットライトを採用しているのはリアコンビネーションランプも同様。遠目からではわかりにくいものの、近寄ると、ラインとドットのコンビネーションが質感を生んでいるのがわかる。 サイドウインドウの輪郭は、弧を描いているが、じっさいはリアクオーターに明かり採りをもたない、いわゆる4ライト。つまり欧州の”お約束”ではドライバーズカーを意味している。 4ライトにこだわるのは、BMWやメルセデス・ベンツ。レクサスも同様で、「LS」をはじめ「ES」や「IS」と、同ブランドのセダンはみなドライバーズカーであることが主張されているのだ。 プロポーションは、奇をてらっていない。Aピラーの位置も、ことさら前のほうに移されていないし、リアクォーターパネルは、後輪の上に位置している。 BEV(バッテリー電気自動車)だから変わっているべき、という時期はとうに卒業して、100年を超える自動車の歴史のなかで、みなが美しいと思うプロポーションに忠実であることを選んだのだろう。 じっさい、BYDのヘッドオブデザインを務めるウォルフガング・エッガー氏が、過去のICE(エンジン車)で確立した美を継続する、と語っているのをミュンヘンのIAAモビリティのリポートで読んだこともある。

TAG: #BYD #シール
TEXT:小川 フミオ
日本デビュー目前のBYD「シール」に試乗!テスラ「モデル3」のガチンコライバル!

BYD「シール」は全長4,800mm、全幅1,875mm、全高1,460mmとテスラ「モデル3」に合わせたかのような大きさだ。一体どんなクルマに仕上がっているのだろうか。メディア向けの試乗会に参加した小川フミオ氏のレポートをお届けする。 デザインはドイツ流 BYDの最新セダン「シール」が日本上陸を控えている。2023年1月の「ATTO3(アット3)」、9月の「ドルフィン」に続く、第3弾の「シール」は余裕あるサイズのEVセダンだ。 ひと足お先に、私は、最新モデル「シール」に、試乗するチャンスを得た。予想以上にスポーティなモデルだった。 ツインモーターの全輪駆動(AWD)、シングルモーターの後輪駆動、それにプラグインハイブリッドと、駆動系は多様。とくに全輪駆動版は静止から時速100km/hまでを3.8秒で加速するパワーを誇る。 ファストバックのボディスタイルは、元アウディのウォルフガング・エッガー氏がひきいる社内のデザインチームが手がけ、内装は、メルセデス・ベンツ出身のミケーレ・ヤウク=パガネッティ氏が担当。 私は、390kWの最高出力と、670Nmの最大トルクを発揮するAWD版に、「珠州サーキット Zhugai  International Circuit」で試乗した。 なぜサーキットか。このとき、BYDが掲げたスローガンは「Innovation Meets Accelaration」。イノベーションとは既存の発明を使いながらの技術革新のことで、それを活用して性能を加速させていく、といった意味だろうか。 じっさいに、先述のとおり、シールは加速度がセリングポイントのひとつ。2トンを超える車重とは信じられないぐらいのダッシュ力だ(後輪駆動でも静止から100km/hまでの加速タイムは5.9秒と短い)。 満充電での走行距離は、AWDが520km、後輪駆動が570km。充電時の車両がわの受け入れ量は150kWと高い。150kWのチャージャーを使えば、10パーセントからはじまり80パーセント充電までにかかる時間は37分とされている。 AWDモデルも、後輪駆動モデルも、リアに搭載するモーターは永久磁石。前者は加えて、永久磁石式の同期モーターを使う。これに、82.5kWhと、余裕ある容量の駆動用バッテリーが組み合わされている。

TAG: #BYD #シール
TEXT:小川 フミオ
きっとロールス・ロイス「スペクター」を4ドアにしたら「i7 M70 xDrive」になる

小川フミオ氏によるBMW「i7 M70 xDrive」の試乗記は最終回を迎えた。今夏、ロールス・ロイス初の電気自動車である「スペクター」にも乗っている同氏は、この両車に共通点を見出したようだ。Vol.2はこちら あなたもハン・ソロになれる じっさいに私は、「i5」と並行して、「i7 M70 xDrive」(以下・M70)をリスボンでドライブするチャンスに恵まれた。とてつもない加速力だ。 まっさきに連想したのは、映画「スターウォーズ」。ミレニアムファルコン号がワープ航法に移ったとき、周囲の星が一瞬で背景に退いてしまう描写があった。まさにあれ。 どこまで速度が上がるのか、といういきおいで制限速度まで加速していく。 かつて、1980年代から90年代にかけて、BMWをはじめ、ポルシェやメルセデスが、アウトバーンにおけるハイスピードドライビングを可能にする高性能マシンで競っていた時代を連想した。 結局、排ガスによる地球温暖化が社会問題化するにあたり、社会や環境に敏感なドイツのメーカー各社は、最高速度を250km/hに抑える協定を結んだ。 もちろん、「i7」の最高速も250km/hだけれど、再生可能エネルギーによる電気を使えば、化石燃料よりも環境負荷は低くなる、というのが、あちらの高性能車乗りのエクスキューズでもある。 もうひとつの見方をすると、世のBEV(バッテリー電気自動車)の多くは、電費をおもんばかって、最高速をもっと低く抑えるリミッターをかけている。M70はすごい自信ぶりではないか。 フランクフルトの五叉路のような、ドイツ・アウトバーンの速度無制限区間だったら、さらにすごかっただろう。250km/hで巡航できそうだ。リスボンでの試乗において、高性能ぶりの片鱗は充分に感じられた。 しかもたんに直線で速いだけでない。カーブだって、大小問わず、小気味よく、すいすいとこなしていく。 電子制御のアクティブサスペンションシステムと、後輪操舵システムも、小さなカーブでは車体の安定性に大きく寄与してくれているはずだ。 さらに、前方の路面状況に応じてダンピングを調節する「エグゼクティブドライブプロ」と、「アクティブロールコンフォート」と、そして強力な「Mスポーツブレーキブレーキシステム」までそなえる。

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川 フミオ
BMWのEV「i7 M70 xDrive」だけに施されたデザインと引き継がれた伝統

前回、「i7 M70 xDrive」をドライブした小川フミオ氏は、改めてこのクルマのデザインを観察する。BMWの最高峰モデルにはどんな工夫が加えられているのだろうか。 特別なクルマに与えられる、特別な仕立て 新しい7シリーズは、大きくいって2つに分かれる。ひとつはガソリンとディーゼルのICE(内燃機関)、もうひとつはピュアEVの「i7」シリーズだ。 ここで紹介している「i7 M70 xDrive」は、2023年にi7のラインナップに加わった、現時点でもっともパワフルなMパフォーマンスモデル。 といっても、基本デザインは同じだ。全長5,390ミリ、全幅1,950ミリ、全高1,545ミリのディメンションをもち、ルーフの前後長は長く見える。 とりわけ個性的なのはフロントマスクの造型。上下幅が薄くて左右に広いヘッドランプと、その下に大きなエアダム。 キドニーグリルは大きいが、クロームを使っているのは輪郭線だけで、これまで縦バーも目立っていたが、今回はブラックアウトされている。その周囲もブラックの部分が多い。 フロントマスクの比較:M70と60ではブラックアウトした面積の違いでイメージもだいぶ異なる ポルトガルのリスボンで試乗車に対面したとき、押出しの強さに圧倒された。従来の「eDrive50」と「xDrive60」は、グリル周囲が車体同色の処理で、かつグリル内の縦バーもしっかり見えるデザインだったのと、かなり差異化されている。 「このクルマは、特別な存在感をもって、周囲の車両とは明らかにちがうと目だたせたいと考えていました」 BMWの乗用車のエクステリアデザインを統括するクリストファー・ワイル氏は、試乗会のときに、そう説明してくれた。 「なので、フロントマスクのデザインはとても重要です。BMWのトップクラスに属する車両には、それにふさわしいフロントマスクが必要と、ダブルレイヤーのヘッドランプまわりのデザインなどを与えました」

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川 フミオ
BMWは電気自動車「i7 M70 xDrive」でライバルに挑戦状を叩きつける

ポルトガルで行われたi5の国際試乗会では、「i7 M70 xDrive」もジャーナリストに委ねられていた。この「i7」のトップグレードに乗った小川フミオ氏のレポートをお届けする。 i7はBEVに新しい世界を拓いた BMWは最高峰セダン「7シリーズ」にBEV(バッテリー電気自動車)の「i7」を設定し、2022年7月から日本でも販売している。ICE(内燃機関)のバージョンもすごいけれど、i7のナチュラルな操縦感覚はBEVに新しい世界を拓いた印象すらある。 さらに、2023年には、従来の「i7 eDrive50」と「i7 xDrive60」に加えて、よりスポーティな「i7 M70 xDrive」を追加。ビー・エム・ダブリュー株式会社の手によって、日本でも5月29日から発売された。 「BMW 7シリーズ初の M ハイ・パフォーマンス・モデル電気自動車」と日本法人がプレスリリースで紹介するi7 M70 xDrive(以下M70)は、現在、i7のラインナップで最高性能を誇る。 性能をみても、「50」が650キロの走行距離と335kWの最高出力(それでもすごい)、「60」が走行距離は同じだが400kWであるのに対して、M70の走行距離は570kmとやや短くなるものの、マックスパワーは485kWにまで上がる。 「もっとも速く、もっともパワフルな、BMWのBEV」と、BMWではプレスリリースに記している。 Mの名を冠しているM70は、後輪用モーターの電圧を2倍に上げ、電力密度も過去最高の値にまで引き上げたという。これを、5世代目になるBMWのeDriveシステムに組み合わせたのが特長。

TAG: #BMW #i7 #M70
TEXT:小川 フミオ
EV版「M5」も開発中!「i5 M60 xDrive」のロケット級の速さにも驚き!

5シリーズの電気自動車「i5」の試乗記。前回までは後輪駆動の「i5 eDrive 40」をお届けした。今回はいよいよ全輪駆動で601psの出力を誇る「i5 M60 xDrive」に乗る。 ジェット機とロケットほどの違い 「i5」には、「i5 eDrive 40」と並行して、全輪駆動で、かつパワフルなモーターを搭載した「i5 M60 xDrive」が発売された。 i5 eDrive 40が最高出力250kW、最大トルク430Nmをもつのに対して、「i5 M60 xDrive」はモーターを1基ずつ前後に搭載。フロントは192 kW、リアは250kW。システムトータルの出力は442kW、最大トルクは820Nmにもなる。 静止から時速100キロまでを3.8秒で加速する駿足ぶりを示すとともに、”電費”は100km走るのに20.6kWhから18.2kWh。満充電だと、455kmから516kmのあいだという走行距離を誇る。 フロントグリルは縦バーをもたず、BMW伝統のキドニーグリルの輪郭だけが残された個性的なデザイン。周辺がグロスブラックというアグレッシブな仕様が試乗車だった。 そのアグレッシブな印象をまったく裏切らない、驚くようなトルク感の加速と、クイックなステアリングフィールが、このクルマの身上なのだろう。 高速道路では、i5 eDrive 40も速かったが、あちらがジェット機なら、こちらはロケットだ。軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、周囲のクルマがあっというまに後景にしりぞくほど。 ステアリングの安定感はすばらしく、路面が多少荒れていようと、直進性がしっかり保たれるので、いっさい不安感がない。よく出来たスポーツセダンと感心させられた。 しかも、BMWとスポーツモデル開発を担当するM社は、この先「M5」に相当するモデルを準備中というのだから、どんなクルマになるのだろう。トルクたっぷりの加速感が大好きなドライバーにはたまらないだろう。 i5 M60 xDriveには、アダプティブサスペンションがおごられている。かつ、Mモデルなのでステアリングホイールコラムに「スポーツブースト」という瞬間的な加速をもたらすレバーまでついている。これは路上では使えません(笑)。

TAG: #BMW #i5 #セダン

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