すでにEVシフトを終えたノルウェーのEV動向
ノルウェー市場における2025年6月最新のEV販売動向について、中国製EVが大量に流入し始めているという注目動向を含めて解説します。
まず、寒さの厳しいノルウェー市場は、発電構成の9割以上を再生可能エネルギーで賄うことができていることで、早くから積極的なEVシフトを促すために、EVに対する税制優遇措置を数々実行しました。これにより世界でもっともEV普及率が高い国にまで上り詰めました。
2025年6月単体のBEVとPHEVの販売台数の合計は1.8万台弱と、6月としては史上最高の販売台数を更新。とくに新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売割合が97.7%に到達。つまり、6月に売れた自動車100台のうち、98台がBEVかPHEVだったわけです。また、BEVに限ったシェア率も6月単体で96.9%に到達。前年同月の2024年6月のBEVシェア率が80.0%であったことからも、すでにごく一部のニッチなセグメントを除いて、BEVシフトは完了を迎えたといえます。
ノルウェーは2026年シーズン以降に発売されるガソリン車とディーゼル車の新車販売を完全終了する方針であることから、あと半年で、2-3%の内燃機関車販売がEVに切り替わるのかが焦点となりそうです。
それでは、このノルウェーにおいてどのようなEVが人気なのかを分析しましょう。まず6月単体の販売台数を2025年と2024年でそれぞれ比較したランキングを見てみると、トップからテスラ・モデルY、トヨタbZ4X、フォルクスワーゲンID.Buzz、フォルクスワーゲンID.4、テスラ・モデル3、フォルクスワーゲンID.3、BYDシーライオン7がランクインしています。
ここで注目するべきはトヨタbZ4Xの販売台数です。2024年と比較してもわずかに販売台数を増加させることに成功しており、モデルチェンジ前という点を加味すると、販売ネットワークの充実による信頼性などの高さから、トヨタがノルウェー人に信頼されている様子が見て取れます。トヨタは2025年後半にアーバンクルーザーとCH-R+を追加で投入予定です。とくにコンパクトで安価なアーバンクルーザーは、いまだにトヨタのハイブリッド車を選んでいるような人たちをEVに移行するために重要なモデルとなり得るはずです。
また、モデルYは6月単体で5000台を発売しており、これは自動車販売全体の27.2%に相当します。これは日本国内で言えば、トヨタ・ヤリス、ルーミー、ホンダN-BOX、日産ノートあたりが全部モデルYとして売れたような凄まじい勢いです。
そして、第7位にランクインしたBYDシーライオン7はもっともダークホース的な存在といえます。シーライオン7の最上級AWDグレードは、日本円で約681万円という驚異的なコスト競争力を実現しており、このコスト競争力の高さによって販売台数が増加している模様です。直接の競合となるフォルクスワーゲンID.4やアウディQ4 e-tronなどの販売台数減少に影響している可能性があります。
さらに、新型EVとして、シーライオン7、ボルボEX90、ポールスター3、ポールスター4、アウディQ6 e-tron、シュコダ・エルロックなど、新型モデルによる人気車種の新陳代謝が活発化している点もEV普及率の上昇に貢献していると言えそうです。