EVヘッドライン 記事一覧

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GLMミモス(photo=GLM)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
あるようでなかった全長3m未満・4人乗り……GLMが超小型EV「ミモス」を日本に導入[2023.08.21]

「日産サクラ」と「トヨタ C+pod」の中間に位置するボディサイズ 近距離移動の常用EVとして個人所有の需要もあるはず 【THE 視点】EVの開発を行うGLMは8月17日、カーシェアリング向けの小型EV「ミモス」の取り扱いを開始した。軽自動車規格のEVながら、全長3m未満と一般的な軽自動車よりも小さいボディを持つ。 「ミモス」は、本来は欧州市場向けに普通自動車規格で作られているモデルであるが、日本国内の保安基準と軽自動車規格を満たす仕様に改良し、軽自動車としての登録を実現したという。 世界的には日本の軽自動車よりも小さいボディの超小型EVの普及が進みつつある。「シトロエン・アミ」などはその良い例だ。超小型EVは日本の道路事情や生活環境にも合致するはずだが、そのようなEVは少ないのが現状。大手メーカーの軽では「日産サクラ」と、その兄弟車の「三菱 eKクロス EV」があるのみ。新興系の軽EVは商用がメインだ。 常用の超小型EVのニーズに応えるべく、GLMは「ミモス」の日本市場への早期導入を目指した。主に、シェアリングサービスを検討している行政団体や企業向けに販売及びリースを行う予定とのこと。 「ミモス」のスペックは、全長2,998×全高1,555×全幅1,478mm。4人乗車可能な4シーターで、4人乗車時でも荷物の積載スペースを確保している。バッテリーの最大容量は17.8kWhで、最大航続距離は約130km。充電は家庭用200V充電器の仕様で約6時間となっている。なお、写真は左ハンドル仕様となっているが、今秋には右ハンドル仕様も用意されるとアナウンスされている。 GLMというと自社開発のEVスポーツカーの「トミーカイラZZ」のイメージが強い。今回は自社開発を行なわず、EVの需要の高まりから早急にニーズに応えられるよう海外からの輸入を選択したようだ。自社開発は手間・時間・コストがかかるため、普及速度と相応の台数を優先するなら今回の判断はベストに思う。 サイズから見るに「日産サクラ」と「トヨタC+pod」の中間に位置するEVとなる。スズキが一時期販売していた「ツイン」をも思い起こさせる。 誰もが使いやすいサイズのため、不特定多数が利用するシェアリングサービスには向いている。しかし、近距離移動用の常用EVとしてマイカーの需要もあるはずだ。見た目も小型SUVのようで愛らしく、所有する楽しみもあるのではないだろうか。シェア限定とするのはもったいない。右ハンドル仕様が入れば、一定数の販売が見込めると思われる。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ランボルギーニ、SUVタイプのスーパーEVコンセプト「ランザドール」を発表……ブランド初のEV、前後2モーター式のAWD ★★ロータス、オーダーメイドのEVスポーツ「エヴィジャ」を公開……元F1ドライバーのジェンソン・バトンによるオーダー、最高出力1,500kW(2,039ps)のモンスター ★★ホンダ、北米アキュラブランドに新型EVを導入……SUVの「ZDX」および「ZDX タイプS」を2024年初頭に発売 ★★CATL、超高速充電対応の新型バッテリー「Shenxing」を発表……10分の充電にて航続距離400km分の電力を回復、フル充電で700km以上 ★ベトナムの新興ビンファスト、米国NASDAQに上場……米国株式市場に上場するベトナム系企業の中で最高の時価総額 ★リマック、ハイパーEV「ネヴェーラ」がニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにてEVのレコードタイムを更新……7分05秒298を記録 ★東芝エネルギーシステムズ、EV用バッテリーの劣化診断の実証を開始……モニター参加企業・団体の募集を開始 ★フォード、カナダ・ケベック州にバッテリー用のカソード工場を建設へ……韓国SKオンなどと共同、2026年上半期に生産を開始し4万5,000トン/年を生産 ★ステランティス、米カリフォルニア州にてリチウムを製造……現地法人のCTRに投資、地熱塩水からリチウムを製造する技術を開発 ★テラモーターズ、香川県坂出市/三重県東員町/大分県九重町にEV用充電器を設置……各自治体の公共施設を中心に充電器を導入 ★アルファチャージ、日旅産業と業務提携……日旅産業の主要顧客の宿泊施設にEV用充電器を設置、外出先で充電する「目的地充電」の普及を促進 ★パワーエックス、蓄電池型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」が補助金の対象に……スタンダードモデルとコンパクトモデルが、次世代自動車振興センターの「CEV普及充電インフラ補助金」の対象製品に登録、機器代と工事費を国から支援 ★東芝エネルギーシステムズ、EV用バッテリーを蓄電池システムに再利用……関西電力と共同実証、2023年冬から実証を開始し2024年度中のサービス提供を目指す ★東急建設、工事現場での水素燃料電池式発電機の実用性を検証……7月中旬まで行われた渋谷駅西口地下の工事にて照明用電源に活用、騒音の低減を確認 デイリーEVヘッドライン[2023.08.21]

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「シティサーキット東京ベイ」のイメージ(photo=トムス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
お台場にクルマのテーマパークが復活……トムスが「メガウェブ」跡地にてEVカート場を運営[2023.08.18]

「メガウェブ」がEVカート専用のサーキットにパワーアップして事実上の復活 「静か」「臭くない」EVゆえに可能なモータースポーツの新しい世界 【THE 視点】レーシングチームを運営するトムスは8月15日、モータースポーツのエンターテインメント施設「シティサーキット東京ベイ」<東京都江東区>を、2023年10月下旬に開業予定と発表した。国内最大級のEVレーシングカート用の本格サーキットがお台場に誕生する。 トムスは、「全日本カート選手権」のEV部門の車両開発を手掛けている。この施設ではそのノウハウを活かし、一般人がEVカートを中心にモータースポーツを手軽に体験できるエンターテイメント施設となるという。 屋外と屋内にコースを設置し、実車はもちろんVRによるe-モータースポーツの体験コンテンツも用意する。特に屋内コースでは、プロジェクション・マッピングなどの演出を取り入れたコースになるという。また、キッチンカーによるフードサービスやラウンジ/サウナといった施設も併設する計画もあるとのこと。 施設は、複合施設「パレットタウン」の跡地の一部を利用する形となる。自動車ファンならご存じだろうが、ここはかつてトヨタが運営していたクルマのテーマパーク「メガウェブ」があった場所だ。東京臨海高速鉄道「りんかい線」の「東京テレポート駅」が目の前なので、アクセスは抜群である。 EVカートは、「静音」「排出ガス無し」「デジタル制御」という特性を持つ。これにより騒音の軽減/環境負荷の低減/安全性の向上を実現でき、これまでは郊外に限られていたサーキットを都市部に作ることが可能となった。夜間の営業も可能となり、インバウンド観光や夜間観光(ナイトライフ観光)の促進も期待できる。 EVカートは静かでクリーンということで、実は十数年前に日本EVクラブがこのベイエリアにてEVカートのナイトイベントを行なったことがある。筆者も参加し、EVでしかできないモータースポーツの世界があると実感したものだ。 昨年も、このベイエリアにてEVカートのイベントが行われている。さらに来年は、「フォーミュラE」もお台場を中心にコースが設定される予定だ。今まで一般の人から忌み嫌われていた過剰な「音」と「匂い」などがなくなるからこそ実現につながったと言える。 トムスは今年の「オートサロン」にて、レンタルカート用をはじめ3種類のEVカートを展示していた。その時点で計画がスタートしていたのかもしれないし、筆者も「EVカートなら23区内にサーキットを作れる」「燃料代や整備費も浮くからカートレースに参加しやすくなるかも」などと仲間と話し盛り上がっていた。 「シティサーキット東京ベイ」は、今後の日本のモータースポーツの方向性を示す一つのお手本ではないだろうか。オープンしたら、筆者も仲間と一度競り合ってみたいものである。 ちなみにトムスはトヨタと非常に縁の深いレーシングチームであり、トヨタ公認のカスタムパーツメーカーでもある。「メガウェブ」が、誰もが気軽にモータースポーツの魅力を体感できる施設にパワーアップして帰ってきたと言って良いだろう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★GLM、軽自動車規格の小型EV「ミモス」を日本に導入……行政や企業向けに販売(リースを含む)、航続距離139km ★★HWエレクトロ、運転者の体調急変時に緊急の自動運転機能を実装へ……メディロム・マザーラボと協業、マザーラボの活動量計にて体調を計測 ★パワーエックス、シリーズBラウンドにて計46.2億円を新規調達……バッテリーの大規模工場「パワーベース」の製造設備導入費などに充当 ★GM、AIによるバッテリー素材メーカー「Mitra Chem」へ投資……低価格EVの量産・販売を目指す ★凸版印刷、水素エネルギー事業へ参入……水素燃料電池用の「触媒層付き電解質膜」と「膜電極接合体」の生産設備を高知工場<南国市>に導入、印刷技術を活用し量産 デイリーEVヘッドライン[2023.08.18]

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「Ene-1 Suzuka Challenge」に出場した「ミツバイク」(photo=ミツバ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
単三充電池40本のサバイバル……ミツバ、鈴鹿のエコレースで自社開発のEVバイクが9連覇[2023.08.17]

パナソニックの充電池「エネループ」40本分で鈴鹿東コースを8周 残電力をいかにマネジメントするかがEVレースのキモ 【THE 視点】ミツバは8月4日、「鈴鹿サーキット」<三重県鈴鹿市>にて7月30日に行なわれた手作りEVのエコレース「Ene-1 Suzuka Challenge」の「KV-Moto」部門(主催:ホンダモビリティランド)において、自社製の電動駆動システムを搭載したEVバイク「ミツバイク」が優勝を飾り、大会9連覇を達成したと発表した。 本レースは、パナソニックの単三充電池「エネループ」40本をエネルギー源とし、手作りのEVを使用してサーキットを走行する。2013年から開催されているレースで、今年は40台が参加した。 コースは鈴鹿サーキットの東コース(2.243km)を逆回りで走行。1台ずつ出走して1周のタイムアタックを行う「1 LAP」と、そのタイム順で決めたグリッドから一斉にスタートし、30分間走行する「30minトライアル」の2つの競技の合計ポイントで勝敗を決める。 クラスは、最低重量が15kgに制限されている「Div+」と「DivNEXT」、最低重量の定めがない「Div1」に分かれ、さらに一般、大学・高専・専門学校・高等学校・中学校の各部門に分かれる。 今回のレースでは、ミツバは「1 LAP」では2位だったが、「30minトライアル」でコース8周(走行距離18km)を完走し高ポイントを獲得した結果、総合優勝を飾った。高効率のモーターとエネルギーマネージメントが勝敗の決め手となったという。 「Ene-1」レースは、筆者がJAFの委員時代に開催されていたFIAのソーラーカーレースに併催されていたこともあり、見学したことがある。マシンはほとんど音を立てずに、選手が前傾姿勢で疾走していく姿が印象に残っている。 高レベルのモーター効率とエネルギーマネージメントが勝敗の決め手というが、マシンをどう省エネルギーで走らせるか、どのようなライン取りを行うかといった戦略も必要なはず。チームとライダーのスキルの差も結果に大きく働いていることは間違いない。 「フォーミュラE」もそうなのだが、飛ばしたもの勝ちではなく、チェッカーまでにバッテリーの残量をいかに制するかというサバイバルレースの側面もあるのが、EVレースの特徴である。 ちなみに「Ene-1」は、4輪クラスの「KV-40」も開催されており、次回は2023年10月15日(日)に「モビリティリゾートもてぎ」<栃木県茂木町>の予定だ。 余談だが、鈴鹿サーキットには、「ene-1(エネワン)」という一般者向けのアトラクションがある。一定のエネルギーで「走行距離」を競うものだ。エネルギーがなくなってしまえばゴール手前で終了。操作パネルにあるエコメーターを見ながらアクセルを調節し、400m先のゴールを目指すという内容となっている。“残電力サバイバル”の緊張感を味わえるアトラクションである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★中国の吉利汽車(ジーリー)、新型EV「JI YUE 01」を発表……クーペタイプのSUV、充電網を独自に構築 ★★グリーンコープ生活協同組合ふくおか、配送車にEVトラック「日野デュトロ Z EV」を13台新規導入……約500台ある配送車の全EV化を加速 ★★トムス、お台場にEVカート用のサーキットを開業……EVカートやe-モータースポーツを体験できる「シティサーキット東京ベイ」<東京都江東区>を10月下旬にオープン ★ボルボ・トラックス、マレーシアにてEVトラックの販売を開始……現地の物流企業が「FMエレクトリック」2台を初購入 ★プラゴ、スマホ充電レンタルサービス「シェアスポット」を運営するインフォリッチと協業……「ShareSPOT」と「Myプラゴ」をそれぞれのサービスのコンテンツに組み込む ★エネチェンジ、「竜宮城スパホテル三日月 富士見亭」<千葉県木更津市>にEV用充電器を導入……「ホテル三日月本社」と合わせて6kWタイプの普通充電器を11基 デイリーEVヘッドライン[2023.08.17]

TAG: #THE視点 #テクノロジー #モータースポーツ
「moonn. T-01」(photo=カーステイ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
キャンピングカーも“オール電化”……「HWエレクトロ・エレモ-L」の量産キャンパーが発表[2023.08.16]

完全電動のキャンピングカーの発表は国内初で今後普及の予感 アイドリングによる振動がなく空調完備で快適な車中泊が可能に 【THE 視点】キャンピングカーと車中泊スポットのシェアリングサービスのほか、車両製造事業などを展開するカーステイは8月9日、HWエレクトロとEVキャンピングカーを開発し、先行予約を開始した。価格は1,150万円(税込)〜を予定し、1年間で20台の販売を目指す。 今回発表された「ムーン T-01」は、HWエレクトロの中型EVバン「エレモ-L」をベースに開発。「エレモ-L」が持つ広い荷室空間を活用し、大型家電やベッドを架装した本格的なキャンピングカーに仕上げた。 電力系統も独自の工夫を凝らした。走行用のメインバッテリー(最大容量43.5kWh)はもちろん備えるが、ルーフに大型のソーラーパネル(370W)を搭載し、200Aのサブバッテリーに充電が可能だ。 その電源にて電子レンジ・冷蔵庫・エアコン・IH調理器といった生活機器を動かす。もちろん100Vのコンセントも備えているため、あらゆる電子機器の充電・稼働ができる。乗車定員は2人で、車載のベッドはセミダブルまでの拡張に対応可能という。 EV車両としての特徴は、走行用のバッテリーを8時間で満充電にでき、通常のEVなので公共の充電器の利用が可能。航続距離は270kmで最高速度は90km/h、車高が2,045mmなので立体・地下駐車場の利用ができる。サブバッテリーは外部給電にて7時間で満充電になる。 「エレモ-L」は、今年の「東京オートサロン」にて実車の展示があり、筆者も間近で車両を確認している。車体サイズは、全長5,457×全幅1,850×全高2,045で荷室フロアの長さは2,890mmとなっている。 車体サイズは「トヨタ・ハイエース」のスーパーロングに近い。ただ、荷室はがらんどうで数値以上に広く感じた。会場では移動オフィスのようなカスタム車両が展示されていたが、キャンピングカーとしても活用可能だと思っていた。もしかしたら、その時点で開発が行なわれていたのかもしれない。 EVキャンピングカーは、電気がないところでも十分な電力を取れることがメリットになる。この車両の場合は、370Wの太陽光発電機能があるのも頼もしい。しかしこの車体サイズに最大容量43.5kWhのメインバッテリーだと少ないようにも思う。キャンピングカーとして活用するためには、近場にEV用充電器があるか確認する必要がある。この太陽光発電でメインバッテリーを充電できるよう、改良してはいかがだろうか。 電力の問題はさておき、アイドリングせずに車内の電源を入れておけるのは大変なメリットだ。熱帯夜などでは空調を動かしておけるので、安眠度が高まるだろう。車中泊とキャンプブームの昨今、このようなクリーンで静かなEVキャンピングカーは注目度が増すと思われる。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★東京都、都有施設の公共EV用充電器を有料化……料金の支払いは電子決済、10月2日(月)から ★★ダイハツ、商用EVバンのコンセプトカー「ヴィジョン-F」を公開へ……「ガイキンド インドネシア国際オートショー2023」<8月10日〜20日>に出展 ★★アキュラ、新型EV「ZDX」を8月17日に初公開……「モントレー・カー・ウィーク」<米カリフォルニア/8月17日〜20日>にて、発売は2024年初頭[詳細はこちら<click>] ★★BMW、「i5」を含めた新型「5シリーズ」向けの純正アクセサリーを秋に発売……カーボンの外装などラインナップ予定 ★★オペル、SUVの新型EVを9月5日に発表……「IAAモビリティ」<ドイツ・ミュンヘン/9月5日〜10日>にて、新世代のインテリア装備など注目 ★★キャデラック、フルサイズSUVの新型EV「エスカレードIQ」を発表……シリーズ初の完全電動車[詳細はこちら<click>] ★ボグゾール、英国内のEV用充電器不足を解消するイニシアチブを開始……英国の地方自治体の69%が路上充電器を未設置、ブランドの完全電動化を見据えて行動 ★ヤマハ発動機、船舶向けの電動推進システム「ハルモ」の実証実験を開始……徳島市と連携し「ひょうたん島周遊船」を電動化 ★ボルボ、SUVのEV「EX90」を改良(本国発表)……RWDと5人乗りバージョンを追加 ★メルセデス・ベンツ、完全無人の自動駐車場に「EQEサルーン」や「EQSサルーン」が対応……ドイツのシュトゥットガルト空港にて ★レクサス、SUVのEV「RZ」のカスタマイズカー「RZスポーツ・コンセプト」を「モントレー・カー・ウィーク2023」に出展……「東京オートサロン2023」にて公開された車両 ★EVモーターズ・ジャパン、大阪市高速電気軌道に大型EVバス「F8シリーズ2-シティ・バス 10.5m」を納入……大阪シティバス56号・59号系統にて運行 ★自動配送ロボット開発のハコボット、大阪のネジ商社サンコーインダストリーから資金調達……屋外走行可能な「ハコベース」の開発・実証実験に充当、サンコーインダストリーは世界最高齢の総務部員(ギネス認定)が在籍する企業 ★ブイキューブ、法人向けにEV用充電器導入サービスを開始……助成金を活用し無料の導入プランも用意 ★ミツバ、「Ene-1 Suzuka Challenge」<鈴鹿サーキット/7月30日開催>のKV-Moto部門で9連覇を達成……単三乾電池40本を搭載したEVバイクで鈴鹿のフルコースを30分間走行し距離を競うレース デイリーEVヘッドライン[2023.08.16]

TAG: #EVライフスタイル #THE視点 #ニューモデル
アルファ・ウルフ(photo=アルファのYouTubeより)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
“無骨・剥き出し”の80’sスタイル……米新興アルファ、EVピックアップ「ウルフ」を発表[2023.08.10]

“アメリカの軽トラック”らしい実用性重視のヘヴィデューティ志向 EVをヒットさせるには魅力的な商品性が必要 【THE 視点】アメリカの新興EVメーカーのアルファは7月31日、EVのピックアップ・トラック「ウルフ」を初公開した。同社によれば、初公開までのスケジュールは予定通りに進んでいるという。プロトタイプが高温状態・険しい地形・高速道路においてテストを実施し、それぞれの状況で高いパフォーマンスを示したとのこと。 「ウルフ」は、シングルキャブの「ウルフ」(ベーシックモデル)/ダブルキャブ(センターピラーレス・観音開きドア)の「ウルフ+」/ダブルキャブ(センターピラー有り)の「スーパー・ウルフ」の3種類を用意。 ボディサイズは、最も大きい「スーパー・ウルフ」の値で、全長5,450×全幅1,995×全高1,768mm。荷台のサイズは、長さ1,652×幅1,490×深さ458mm(スーパー・ウルフ)となっている。 シングルモーターのRWD(ベーシックのみ)とデュアルモーターのAWDの用意があり、0〜96km/h(0〜60mph)の最速タイムは5.9秒(ウルフ+)と、重く大きなピックアップ・トラックとしてはかなりの高性能ぶり。航続距離は最大で440km(275マイル)以上。アルファは現在、プロトタイプを追加生産して開発を進め、量産の準備を進めているという。 今回の発表に合わせて、アルファの公式YouTubeに「ウルフ」の走行動画がアップされた。現代のEVらしい洗練された映像ではなく、荒野をホコリにまみれて豪快に走る映像を捉えている。 北米、特にアメリカ・テキサスといった地域でのピックアップは、日本でいう「農家の軽トラック」のように、一家に一台あるような存在だと聞いたことがある。 それゆえ北米を中心にEVピックアップが続々と発表されている。筆者もカナダ旅行にて見かけた新興メーカー「リヴィアン」の「R1T」は、EV時代のピックアップを象徴するような存在だし、老舗のフォードやラムも「F150ライトニング」や「ラム1500REV」といったEVピックアップを発表している。 「ウルフ」がユニークな点は、レトロなデザインを採用していることであろう。リヴィアンもフォードもラムも、どちらかといえばモダンなデザインだが、「ウルフ」は、エンジンオイルの匂いを画面越しにも感じるような剥き出し・無骨さ溢れる1980年代風である。ベーシックモデルは特に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した「トヨタ・ハイラックス」そのものの雰囲気ではないか。 日本でもレトロなデザインの「トヨタ・ランドクルーザー70」新型が発表され注目を集めているが、レトロでヘビー・デューティーなデザインを好むユーザーは世界共通で存在する。「ウルフ」はそのような層の心を虜にすると思う。 ピックアップといえば、「トヨタ・ハイラックス」が、日本で若者を中心に“メーカーの想定を超えて”ヒットした。それを受けてか、三菱も新型ピックアップ「トライトン」を日本に導入する。日本でもピックアップの支持層は確実に増えている。 もしEVのピックアップが日本でも登場すれば面白い展開になる。日本でEVが売れない理由は、インフラの問題以前に“商品性が乏しい”からだと思っている。“EVはエコ”という考えと売り文句はすでに手垢まみれである。ピックアップのような、ユニークで目を引きライフスタイルに刺激を与えるEVが必要ではないだろうか。どうせ持つならかっこいい方が良い。 ともあれ、「ウルフ」は発表から2年が経過しての公開。認証プロセスや量産体制の構築といった課題があり、発売までにはまだ時間が掛かりそうではある。ただ、期待値は大きいだろう。早く市販にたどり着いて欲しいものだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BMW、防弾仕様の「i7プロテクション」を発表……ドイツ政府公式のセキュリティレベル「VR9」をクリア、自衛隊の64式小銃も採用する7.62mmをはじく高い防御性能[詳細はこちら<click>] ★★HWエレクトロのEVバン「エレモ-L」がキャンピングカーに……カーステイが「エレモ-L」ベースの「ムーン T-01」の先行予約を開始、HWエレクトロと共同開発 ★★出光興産、さいたま市内の再生可能エネルギーを使用したEV充電サービスを開始……「idemitsuでんき」契約者自宅の太陽光発電の電力を買取り ★武蔵精密工業、インドのEVスタートアップ「BNC」に出資……EVバイク用の駆動ユニット「eアクスル」以外にソフト開発なども協力へ ★武蔵精密工業、ケニアのスタートアップ「ARC Ride」に追加出資……二輪・三輪EVのハード・ソフトの開発を強化、東アフリカでのEV事業の展開も視野 ★TSMC/ボッシュ/インフィニオン/NXPが欧州に半導体製造の合弁会社「ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)」を設立……2027年末までに製品の生産を開始 ★GM、V2H(EVの電力を家庭用電力として使用可能にするシステム)技術を推進……キャデラックの新型EV「エスカレードIQ」をはじめ2024年型のEVモデルをV2H技術「アルティウム」に適応 ★東京住宅供給公社JKK、社用車にEVを導入……「日産サクラ」を17台 ★フォルクスワーゲン、「ID.4」の展示・試乗イベントを開催……8月19日(土)の「東京ミッドタウン」<港区六本木>を皮切りに11月末まで全国19都市を巡業 ★「日産サクラ」と音楽ユニット「ゆず」がコラボレーション……「Kアリーナ横浜」<みなとみらい地区>でのこけら落とし公演を記念し「#ゆずサクラ」をキーワードとした取り組みを実施 ★“人力シリーズハイブリッド”のEVバイク「ENNE T250」、EVバイク専用タイヤを標準装備へ……予約済み車両も無償でアップグレード デイリーEVヘッドライン[2023.08.10]

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マレリ iTMM(photo=マレリ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
目立たない部品が航続距離を20%も改善……マレリ、新型の統合熱管理モジュールを開発[2023.08.09]

駆動系・電装系・冷暖房系の熱管理を統合制御しシステムも単純化 EVの熱管理はユーザーの“お財布”に直結する重要問題 【THE 視点】マレリは、EV用の新しい統合熱管理モジュール 「iTMM」を発表した。車両のさまざまな熱回路を1つのコンポーネントに効率的に組み合わせることで、より効率的な熱管理システムを形成。EVの航続距離の延伸や安全性などを向上させる。 内燃エンジンのないEVであるが、熱は発生している。電気モーターはもちろん、バッテリーに高負荷をかければ高温状態になる。スマートフォンを酷使した場合の発熱と同様だ。ただ、この熱を管理できれば、パワートレインの冷却や、室内の冷暖房などの効率化ができ、無駄な消費電力を抑えられる。 通常のEVは熱交換器を複数備えた上で、それぞれが単独で役割を果たしている。これらを統合するのが「iTMM」で、冷却水循環装置(チラー)や水冷コンデンサなどの配置を最適化しモジュール化した。最大6チャンネルを組み合わせて管理することができ、パワートレイン・充放電・室内の複雑な熱管理システムを単純化できる。 統合熱管理システムの採用でユーザーが最も恩恵を受けるのは暖房の使用時である。低温状態を含めた厳しい環境での熱管理の効率が上がるため、冬季のヒートポンプシステムと組み合わせた場合、走行距離を最大20%改善することができるという。 このような熱管理システムを組んだEVとして知られるのが「テスラ・モデルY」や「BYD SEAL」が挙げられる。テスラはこのような熱管理モジュールを「オクトバルブ」と呼称し、「モデルY」の重要部品と位置付けている。 熱を最適に管理することで、空調使用時の走行距離への影響を減らし、急速充電性能の向上・バッテリー寿命の延伸・軽量化・コストダウンができるようになる。これらは全て、ユーザーのお財布に影響する問題だ。 統合熱管理モジュールの開発競争は熾烈になっている。EVの性能向上・走行距離の延伸は、モーター・バッテリーの開発だけではなく、統合熱管理モジュールのような目立たない部品やソフトウエアなど全てが揃って成し遂げられるのだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BMW、新型「5シリーズ」のEV「i5」に中国専用車を設定……グリルなどのメッキにゴールドを採用しゴージャス感を演出 ★★ホンダ傘下のホンダトレーディング、リチウムイオン・バッテリーのリサイクル事業を推進……エマルションフローテクノロジーズ/リーテックと協業、全固体電池への対応も検討 ★GM傘下の商用EVブランド「ブライトドロップ」、EVバン「Zevo 400」と「Zevo 600」をメキシコで発売……アメリカ・カナダに続いて3カ国目の導入 ★フォーミュラE、ニック・キャシディが来季はジャガーTCSに移籍……ミッチ・エヴァンスとのコンビに ★プラゴ、EV充電ビジネスへの参入をしやすくするクラウドソリューション「PLUGO OPEN CHARGE LAB」を提供開始……会員登録やカード発行なしに充電課金ができる仕組みなどを提供 ★アークエルテクノロジーズ、「AAKEL eFleet ver.1.1 」をリリース……EV毎の充電料金を計算しサービス事業者に情報提供、企業の福利厚生で補助金を算出する場合などに有利 ★パワーエックス、再生可能エネルギー開発企業「オリンピア」から蓄電池を受注……系統用として6台、最大容量は2.7MWh/台 デイリーEVヘッドライン[2023.08.09]

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テスラが採用する充電規格「NACS」に対応(photo=DMM.com)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
DMMがEV充電インフラ事業に本腰……北米「NACS」規格の急速充電器を日本にて展開[2023.08.08]

メルセデス・ベンツ/BMWも対応を決めた世界の潮流になりつつある「NACS」 「CHAdeMO」に真っ向勝負となるがユーザーへの配慮を第一に 【THE 視点】DMM.comが提供するEV充電サービス「DMM EV CHARGE」は8月1日、2024年春に50kW/120kW/180kWの急速充電器を導入する。また同3日、テスラ方式の充電規格である「NACS」に対応すると発表した。 DMMは、EVの充電事業者としては新興企業であるが、2023年5月より開始した「DMM EV CHARGE」は、提供開始から3ヵ月で2,500基の受注に成功している。 商業施設・宿泊施設・公共施設・マンション等に対する設置を目的に、初期費用とサービス利用料が無料のプランと、それらを設置者が負担する代わりに売電収入の一部を還元するプランの2つを用意したことが好評のようだ。 2024年春より、DMMはEV充電インフラ事業をさらに加速させる。従来の6kWタイプの普通充電器に加えて、50kW/120kW/180kWの急速充電器を用意する。 そして、テスラ方式の充電規格「NACS(North American Charging Standard:北米充電標準規格)」への対応も発表した。24年導入の急速充電器が「NACS」に対応するとみて間違いないだろう。この「NACS」に対応した充電器は、ガソリンスタンド、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアなどに設置予定だ。 「NACS」は、自動車技術の標準化に取り組んでいる「SAE International」によって2023年6月に標準化が発表されており、今後自動車メーカー各社での導入拡大が見込まれている。メルセデス・ベンツ/BMW/ステランティス/GM/ヒョンデ/キア/ホンダの計7つの自動車メーカーが、北米にて合同設立する充電インフラ企業も「NACS」へ対応予定で、日産も独自に対応すると発表している。「NACS」を採用するメーカーが世界的に増えている。 日本でこれまで「NACS」を採用してきたのは、テスラが自前で設置した「スーパーチャージャー」が中心であった。今回「DMM EV CHARGE」が「NACS」へ対応するのは、メーカー以外の企業としては日本初と見てよい。 「NACS」の導入は、それを採用する輸入車メーカーにとって日本市場への参入ハードルを低くできる。そしてうまくいけば、DMMは日本での「NACS」の主導権を握れるだろう。保守的な日本において、ビジネスとしては大きな賭けに出る格好だが、世界のトレンドを導入するだけに成功の可能性はある。 国産車は今後も「CHAdeMO」規格の採用を続けると思うが、輸入車は「NACS」規格が増えるものと思われる。日本でも充電規格争いが勃発しそうであるが、くれぐれも、ユーザーが混乱し利便性を損なうような不毛な争いにならないことを願いたい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★マレリ、EV用の新型「統合熱管理モジュール」を発表……熱管理を1つのコンポーネントにまとめ、航続距離を最大20%向上 ★★ヒョンデ、韓国ソウル大学と「バッテリー共同研究センター」を設立……リチウムイオン・バッテリーと全固体電池について22の共同研究プロジェクトを実施 ★米新興のアルファモーター、新型EVピックアップトラック「ウルフ」を発表……クラシックなデザインを採用、YouTubeにて走行動画を公開 ★新電源、EV充電器の設置パートナー企業の案内サービスを開始……新電源の充電器を熟知し施工可能業者を案内することで安心感を向上 ★日産、福岡県八女市の再生可能エネルギー企業「やめエネルギー」と提携……八女市内で作られた電力でEVを運用 ★愛知県豊川市内においてドローン配送の実証実験を実施……KDDIスマートドローンの運行管理システムを使用し医薬品を配送 デイリーEVヘッドライン[2023.08.08]

TAG: #THE視点 #充電インフラ #国内ビジネス
ENNE T250(photo=ENNE)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
“人力シリーズハイブリッド”の二輪EV「ENNE T250」に大容量バッテリーモデル追加[2023.08.07]

ペダルを漕いで発電しモーターを駆動するユニークな機構 外部給電機能などを付ければ災害時にも有効な発電/電源車に 【THE 視点】特定小型原動機付自転車(特定原付)を販売するENNEは、6月3日から先行販売しているEVバイク「T250」に、大容量バッテリー(14.0Ah)を搭載したモデルを追加した。同時に、従来の7.8Ahモデルの購入者に対して14.0Ahへのアップグレード(有料)も行う。14.0Ahモデルは8月10日まで、アップグレードは8月9日までの受付となる。 「T250」はユニークな機構を持つEVバイクだ。自転車と同形状なのだが、ペダルは発電機につながっていて、後輪はモーターで駆動する。走行は、アクセル操作でバイクと同様に走るモードと、ペダルで発電した分に応じて走る自転車モードの2つがある。 最高速度は特定原付の制限である20km/hで、これ以上の速度は出ないように設定されている。しかし、モーターの性能は40km/hほどで走行ができる高性能なものだという。 発電機は、バッテリーを介さずモーターに直接電力を供給する仕組みだ。この仕様により、漕いだら漕いだ分だけ(発電した分だけ)ホイールが回り、自転車に近い感覚でバイクが進む。ちなみにバッテリーへの充電は、自転車本体にプラグを直接繋ぐか、取り外して充電を行なう。ペダルを漕いでの充電はできない。 定格出力250Wの駆動用モーターに対して、発電機は定格350Wの性能があるが、ペダルの回転数が低い場合や坂道などで発電量が足りない場合は、バッテリーから不足分の電力を補って走行をアシストするという。運転者は、坂道だからといって一生懸命に漕ぐ必要はない。この辺の仕組みは電動アシスト自転車のようでもある。 ちなみに「T250」はドイツでの販売も決定した。日本モデルに装備される最高速度灯や20km/h制限などは廃して販売するという。独創的な仕組みが評価されたようだ。 「T250」は、簡単に言えば“人力シリーズハイブリッド”である。“走るフィットネスバイク”とも言えようか。どちらにせよ立派なEVバイクである。 希望を言わせてもらうと、回生ブレーキ機構を備えたらどうか。坂道を下る際の減速エネルギーを無駄にせずに済む。それから発電機からモーターへ直接充電する「チャージモード」があっても良い。USBなどを介して外部給電機能も付ければ、非常用の発電/電源車として重宝するはずだ。燃料が要らないのは非常に大きな利点となる。 いずれにせよ、海外勢に圧されているEV業界にメイド・イン・ジャパンのユニークなモデルが登場するのは嬉しい。今後の成功と発展を期待するとともに、ぜひとも試乗してみたい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フィスカー、EVのラインアップを拡充……ピックアップ・トラックの「アラスカ」とスポーツモデルの「ローニン」の予約を開始 ★★ウーバー・ジャパン、「テスラ・モデルY」を配車サービス「Uberプレミアム」に導入……日の丸交通と協業、専用車として100台を用意 ★テスラ、2泊3日の試乗「Go Outdoor キャンペーン」を開始……8月31日(木)までエントリー受付、9月に車両貸与 ★信越化学工業、高機能シリコン製品の開発に1,000億円規模の投資……EVなどによる重要増に対応 ★東北大学、EVに関わる数々の研究成果を発表  ・燃料電池用触媒の白金材料「ハイエントロピー合金」の有用性を確認  ・X線顕微鏡で薄膜型全固体電池の全可視化に成功  ・充放電によるバッテリーの劣化の経時的進行を3次元で測定する技術を開発 デイリーEVヘッドライン[2023.08.07]

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30秒間のホバリングに成功(photo=ASKA)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
“公道を走れる”空飛ぶクルマの開発が前進、「ASKA A5」が開発テストで初飛行に成功[2023.08.04]

商品化に向け必要不可欠な連邦航空局の型式認定手続きを開始 インホイール・モーターの採用で公道も走れる名実を伴った「空飛ぶクルマ」 【THE 視点】米国カリフォルニアに本社を置くASKA社は8月2日、空飛ぶクルマ「ASKA  A5」が初飛行に成功したと発表した。テザーケーブルで地上に繋がれた状態で垂直離陸をし、30秒間の安定したホバリングに成功したという。 「ASKA A5」は、垂直離陸に加えて滑走路を利用した離着陸、そして公道を自走可能な空陸両用の空飛ぶクルマである。7月21日に、連邦航空局(FAA)の認証書(COA)と特別耐空証明を取得し、FAAの型式証明手続きを正式に開始したとも発表している。また、米国自動車管理局(DMV)より公道用のナンバープレートも取得済みだ。価格は1機78万9,000ドル(約1億1,300万円)で、2026年の商業化を目指している。 日本で一般的に認知されている空飛ぶクルマは、ドローンの大型版のようなもので、機構はヘリコプターに近い。 しかし「A5」は、飛行機に近い機構を持つ。浮上後は、推進用のプロペラと「主翼」の揚力を使用し飛行する。翼自体の浮き上がる力を利用するので、エネルギーの節約になる。この機構は、アメリカ海兵隊の輸送機「MV-22 オスプレイ」の仕組みに近い。 飛行航続距離は250マイル(約400km)で、飛行最高速度は時速150マイル(約240km)。パイロットを含めた4人乗りで、ボディの大きさは「SUVサイズ」と公表しているが、写真から推測するに大型の商用バンの方が近いだろう。 飛行のための機構もユニークだが、一般車に混じって公道走行可能なことも大きな特徴だ。駆動系にはインホイール・モーターを採用し、地元シリコンバレーの公道において、300マイル以上(約480km)の走行に成功している。ちなみに駆動系は全てモーターだが、発電用に内燃エンジン(レンジエクステンダー)も搭載している。自家発電機能があれば飛行中の安心感も高くなる。もちろん、エンジンを駆動せずとも家庭用電源や公共の設備を利用して充電が可能だ。 現在、一般認知されている「空飛ぶクルマ」は自走不可の(タイヤ自体がない)電動の航空機である。しかし「A5」は、公道を自走可能というクルマ本来の能力を備えている“本当の空飛ぶクルマ”と言える。 実は筆者の知人がこのASKA社のボードメンバーにおり、5月に会った際に話は聞いていた。三菱重工の小型ジェット機「MRJ」が商業化から撤退した理由は、型式認証の影響もあったようで、「A5」はこの関門をクリアしての発表である。ASKA社内の雰囲気は、失敗に対しては「良い経験を積んだ」と寛容なようで、長距離飛行テストもじきに開始されるだろう。 日本でも、2025年の「大阪・関西万博」でのデビューに向けて空飛ぶクルマの開発が加速している。しかし名実を伴う空飛ぶクルマは、ASKAが先を飛んでいるように思う。やはり地を走れてこその「クルマ」ではないだろうか。 アメリカ本国では、「A5」のプレオーダーが始まっている。日常は陸路で子どもの通学の送迎ができ、休日には空を飛んで隣県の大型スーパーに買い物に行けるような“スーパーカー”のお値段は、なんとハイパー・スポーツカー「パガーニ」などよりも安い。2026年の発売が待ち遠しい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★DMM、EV充電サービス「DMM EV CHAGE」に「NACS」規格を導入……テスラが採用する充電規格、2024年から高速道路のSAなどで利用可能に ★BMW、「iX」などでプレイ可能な車内ゲーム開発を推進……スマートフォンをコントローラーにインフォテイメント・システムの画面でゲームをプレイ、充電の待ち時間をエンターテイメントに ★ブレイズ、三輪のEVスクーター「EVデリバリー」向けに大容量積載BOXを発売……200Lの大容量、8万8,000円 ★ボルボ、2023年7月のEV販売台数は5,504台……前年同月の1,583台から大幅増加 ★オランダ・アイントホーフェン工科大学の学生フォーミュラチーム、EVフォーミュラマシンの15%軽量化に成功……米国VICORの電源モジュールを採用 ★BMWとエアバスなど、燃料電池の開発に「量子コンピューター」を活用し協力……白金触媒の反応を正確にシミュレーション ★パワーエックス、東急不動産などが運営するコワーキング・スペース「TENOHA 東松山」<埼玉県東松山市>に系統用バッテリーを導入……系統用としては国内初 ★三菱ケミカルグループ、リチウムイオン・バッテリー(LIB)の原料「γ-ブチロラクトン(GBL)」を増産……LIBの材料となる「N-メチル-2-ピロリドン(NMP)」の原料に使用、EVや半導体の需要増を見込む ★商船三井、水素製造用の純水製造システム開発が滋賀県から補助対象に……海水からも高純度の純水の製造が可能な技術を開発・実証実験 デイリーEVヘッドライン[2023.08.04]

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「船用燃料電池システム」のテスト風景(photo=ヤンマーホールディングス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
船舶でも水素燃料電池がトレンド……ヤンマー、船舶向けの燃料電池システムを商品化[2023.08.03]

パワートレインも含めた統合的なFCシステムを提案 FCシステムを搭載した「水素運搬船」の実現も期待 【THE 視点】ヤンマーホールディングスのグループ会社、ヤンマーパワーテクノロジー(ヤンマーPT)は8月1日、「舶用水素燃料電池システム」(FCシステム)を商品化したと発表した。まずは水素の補給が比較的容易な沿岸を航行する旅客船や作業船・貨物船などへの採用を提案していくという。 ヤンマーPTは、国土交通省の水素燃料電池船(FCEV船)の安全ガイドラインや、船舶分野における水素利用のロードマップの策定に参画してきた。FCを搭載した試験艇での実証運航試験や、高圧水素充填試験(70MPa)を実施するなど、FCEV船の社会実装に向けたさまざまな取り組みを進めている。 これらの取り組みで得た技術や知見を、舶用エンジン事業で培った技術と融合し、蓄電システム・電力制御システム・推進システム・水素貯蔵システムを統合システムとして提供していくという。 ヤンマーのFCシステムの主な仕様は、定格出力300kW(カスタマイズ可能)、長さ3,400×幅1,100×高さ1,700mmで、質量は3,000kgとなっている。様々な有害物質を含んだ排気ガスが発生しない点に加えて、低振動・低騒音・排ガス臭がない点が特徴。内燃エンジンによるこれらの問題は、乗員や乗客のストレスになる。それが緩和されるのは大きな効果だ。 ヤンマーPTは、これまでも小型船にFCシステムを搭載し実証試験をしてきた。今回発表されたFCシステムは、定格出力300kWと自動車用と比較しても大きい(ちなみに「トヨタ・ミライ」のFCスタックは最高出力128kW)。 FCシステムのサイズは、中型船以上を想定しているようだ。しかし、水素容器の圧力は70MpaでFCEV(自動車)と同じである。港湾での水素インフラを考えると、自動車と同じ圧力で使用した方が融通が利いて良いのだろう。小型燃料電池船での実証試験も、自動車用の移動用水素ステーションが使われていたように思う。 自動車と大きく違う点は、水素の搭載量だろう。比較にならないほど大量の水素が搭載できる。開発が進めば、水素を運搬するFCEV船も可能ではないだろうか。「パワーX」が開発を進めている「電気運搬船」の水素版のようなものだ。 EV船の充電待機時間を考えると、船舶もFCEV船とした方が運用効率が良いように思われる。船舶業界でも、FCがトレンドとなってきた。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★メルセデス・ベンツ、「メルセデスAMG EQS SUV」をアメリカで発売……10万9,300ドル(約1,560万円)から[詳細はこちら<click>] ★★ブレンボ、インテリジェントブレーキ「SENSIFI」を日本向けに発表……AIなどにより四輪独立のブレーキ制御が可能 ★★NTT西日本など、地方自治体の自動運転バスなどの導入を支援……NTTビジネスソリューションズ・マクニカと提携、次世代の地域交通システムの実装を推進 ★米エアモビリティ企業のASKA、空飛ぶクルマ「A5」が飛行テストを開始……ホバリングに成功、EVとして公道走行も可能 ★積水ハウスの豊橋支店が「EVオートチャージ」を導入……双日・日商エレクトロニクス・オムロンが展開するEV充電システム、電力ピークを避け最適なタイミングで自動充電 ★テラモーターズ、飯田グループのマンション「センチュリー東武動物公園」<埼玉県宮代町>にEV用充電器を導入 ★パワーエックス、再生可能エネルギー発電所開発のウエストホールディングスと提携……蓄電所と太陽光発電所を共同開発・運用 デイリーEVヘッドライン[2023.08.02]

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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