固体電池搭載で航続距離は1000km超え
中国のIMモーターが、新型EVセダンであるL6の正式発売をスタート。固体電池を搭載することで航続距離1000km以上を実現しながら、エルクテストで前人未到の時速90kmオーバーを実現。4輪操舵機能、市街地ADASなどあらゆる装備内容を盛り込んで、すでに1万台以上の注文台数を獲得。テスラ・モデル3包囲網の一角を構成する存在の最新EVセダンを解説します。
今回取り上げていきたいのが、中国のプレミアムEVブランドであるIMモーターの存在です。IMモーターについては、中国最大の国有自動車メーカーであるSAICが立ち上げたプレミアムEV専門ブランドであり、2022年中旬に初めてのEVセダンであるL7の納車をスタートさせながら、2023年初頭にもL7のSUVバージョンであるLS7の納車をスタート。
他方で、このプレミアムEVセグメントについては、現在テスラやLi Auto、NIO、さらにはファーウェイやシャオミなどさまざまなプレイヤーが乱立していることで、そのブランド力こそが重要なファクターとなっています。その意味において、知名度で大きく劣るIMモーターについては販売台数が低迷していたわけです。
そして、そのIMモーターが2023年後半に正式発売をスタートしたのが、3車種目のミッドサイズSUVであるLS6の存在です。このLS6に関しては、最大電圧が875Vという超高電圧バッテリーを搭載することで超急速充電を可能としながら、内外装の装備内容を充実させることによってコスト競争力を大幅アップしました。実際に発売直後は月間1万台近い販売台数すら実現し、そのIMモーターの知名度を大きく引き上げたモデルとなったわけです。
そして、そのような背景において今回正式発売がスタートしたのが、IMモーター4車種目のミッドサイズセダン、L6の存在です。すでにラインアップしているLS6のセダンバージョンという位置付けであり、他方でL6に対しては、IMモーターを傘下に収めるSAICの開発した次世代EVテクノロジーをふんだんに採用。
とくに目玉であるのがSkin Lizardと名付けられたスマートデジタルシャシーの存在です。後輪操舵機能を統合することによって、その最小回転半径は驚異の5m未満を実現。そのうえ、前輪をスライドさせることが可能で、極めて狭い駐車スペースにおいても縦列駐車を可能にしたり、従来の車両走行安定補助システムであるESPと比較しても30%もの反応速度向上によって、高速走行時における救急回避性能など、基本性能を大幅に向上しています。
実際にシャシー性能の向上によって、緊急回避性能をテストするエルクテストにおいて、時速90.96kmという、衝撃的なテスト結果を達成しています。このエルクテストに関しては、テスラ・モデル3が時速83kmで突破していたり、NIO ET5が時速83.7km、アウディQ5Lが時速82.7kmなど、時速80kmを超えると運動性能が非常に高いといわれるものの、今回のL6は時速90kmオーバーということで、そのスマートデジタルシャシーの完成度の高さがうかがえるでしょう。
L6については全部で5種類のラインアップ構成(5月末に欧州出荷向けの新グレードを追加して現在は6種類。2025年中にも欧州で発売予定)であり、エントリーグレードのみ400Vシステムを採用するものの、残りはすべて800Vシステムを採用。とくに100kWh搭載グレードの最大システム電圧は875Vと超高電圧化されていることで、電費性能も12.8kWh/100kmと高効率を実現。そのうえ、最大396kWという超急速充電に対応可能であり、充電残量80%までたったの16.8分を実現。15分間の充電時間で最大610km分の航続距離を回復可能という、中国国内で最速クラスの充電性能すら実現しています。
そのうえ、9月に正式発売がスタートする予定の、固体電池を搭載するLightyearグレードについては、航続距離1000km以上を実現することを確約。しかも10分間の充電時間で400km以上という航続距離を回復可能という充電性能も両立する見込みです。
さらに、動力性能についても妥協することなく、最高回転数毎分2.1万回という高性能モーターを採用することによって、AWDグレードの最高出力は579kW、最大トルクも800ニュートンに到達。0-100km/h加速も驚異の2.74秒を実現し、最高速も時速268kmを実現しています。
さらに、L6については、コクピットシステムを駆動するプロセッサーに、プロセスノード5ナノを実現するQualcomm Snapdragon 8295を標準装備。自動運転システムのプロセッサーにはNvidia Drive Orin-Xを標準搭載しています。よって、高精度マップに依存することなく、高速道路とともに市街地におけるNOA(Navigation On Autopilot)にも対応させることが可能であり、この自動運転システムである「IM AD」については、トヨタも出資するMomentaとタッグを組んで開発し、2024年末までには市街地NOAを中国全土において利用可能にすることも表明しています。
そして、その値段設定が20万元切りを実現、日本円で431万円から購入可能という化け物級のコスパを実現してきている様子が見て取れます。