EVヘッドライン 記事一覧

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「産業用蓄電システム単相連系タイプ(V2X対応)」(photo=パナソニック・ホールディングス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EVをビルの「電力システム」に……パナソニック、ビル向けの自家発電・消費システムを発表[2023.08.31]

太陽光発電の電力でビル施設とEVを稼働し電気代を低減 災害による停電時はエレベーターも動かせるライフラインに 【THE 視点】パナソニック・エレクトリックワークスは8月28日、「産業用蓄電システム単相連系タイプ(V2X対応)」の受注を2023年12月21日より開始すると発表した。EVの電力をビルや施設内などへ供給するV2Xシステムと定置型バッテリー・太陽光発電を連携させ、エネルギーの自家消費率を上げるシステムとなる。 本製品は、EVと蓄電池による同時充放電を実現した。協調制御により同一共用分電盤に最大4システム接続でき、最高出力24kW(従来比約4倍)を達成。施設の負荷に合わせたシステムの構築も可能だ。 また、単相負荷に対する追従制御で、外部制御装置なしでも太陽光発電の全量自家消費を実現した。電力の逆流によるシステム停止リスクを低減することで、太陽光発電の継続利用ができる。これらの機能により、系統からの電気代を抑えることと、停電リスクの低減に貢献できる。 V2Xスタンドは、エアコン室外機1台分より小さい床面積で設置可能なコンパクトなもの。駐車場の限られたスペースにも設置しやすい。屋外工事のみで済むので、EVの購入に合わせて設置することができる。 走るバッテリーであるEVを定置型バッテリーのように活用できるメリットは大きい。太陽光発電による電力で走行すれば移動コストはタダに近い。定置型バッテリーの“増槽”として使用すればピークカットができ、総合的に電気代が安くなるメリットがある。 システムの最高出力が24kWと大きいことから、災害時などに定置型バッテリーとEVに蓄えられた電力でエレベーターの稼働も可能なはずだ。もし近くのEV用急速充電器が生きていれば、そこで充電した電力をEVがデリバリーするという手段もとれる。 筆者は以前、災害によるマンションの停電で、自宅階まで苦労して上った記憶がある。そのような場合に、最低限エレベーターが動くメリットの大きさは、肌で体感している。 機器の導入コストを電気代の削減分で賄えるか、という問題もあろう。しかし、毎夏・冬に発表される電力逼迫や、誤差の範囲内とはみなせなくなった電気代の高騰、そして人の命を脅かすようになった温暖化、台風・豪雨などにより全国で頻発する停電事故を考えると、このような設備の導入・普及は必要かもしれない。 EVの導入を考えている企業は、こういったシステムの導入を前向きに考えてはいかがだろうか。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★HIS、空飛ぶクルマの運行実現に向けて評価・検証を実施……大阪府・大阪市・兵庫県の補助事業に採択、関西エリアにおける需要分析やルートの検討などを実施[詳細はこちら<click>] ★★ボッシュ、800Vの電圧に対応したモーターとインバータの量産を開始……熱損失を50%削減、電力密度35%向上 ★★プロテリアル、EVに使用可能な高出力フェライト磁石モーターを開発……最高出力100kW超えを確認、レアアースを使用せず低コスト ★台湾シン・モビリティ、液浸冷却式のバッテリーを発表……エネルギー密度200Wh/kgで急速充電は15分(0〜80%)、スポーツ車や商用車にも最適化が可能 ★テラモーターズ、茨城県水戸市にEV用急速充電器を導入……「市立サッカー・ラグビー場」と「青柳公園」に最高出力50kWの機器を2024年度に設置予定 ★エネチェンジ、商工中金から包括的サポート……ESG推進のデット・プログラムに参加 ★小型EVのブレイズ、本社<名古屋市中村区>にて試乗会を開催……9月2日(土)〜3日(日)・9日(土)〜10日(日)、 ★日産、来季フォーミュラEのドライバーにオリバー・ローランドを再起用……サッシャ・フェネストラズとのコンビに デイリーEVヘッドライン[2023.08.31]

TAG: #THE視点 #V2X #充電インフラ
ワイヤレス充電システム(photo=ワイトリシティ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
「充電規格戦争」終了の“切り札”か……エネチェンジ、ワイヤレス充電導入の検討を開始[2023.08.30]

EV用充電インフラ大手がワイヤレス充電の普及に取り組む覚悟 「ユーザーがいつでもどこでも手軽に充電」の根幹を見失うな 【THE 視点】エネチェンジは8月23日、日本国内でのEV用ワイヤレス充電の導入を検討すると発表した。2022年7月に出資をした米ワイトリシティのシステムを使用する。 エネチェンジのEV充電サービス「EV充電エネチェンジ」は、現在、日本最大の普通充電(6kW)ネットワークを有している。2027年までに最大300億円を投じ、国内で3万台のEV用普通充電器の設置を目標に掲げている。 ワイヤレス充電は、EVユーザーの作業負担をほぼない状態にすることができる。EVユーザーの利便性を重視するエネチェンジは、ワイトリシティへの出資を通じて、既存および新規設備での実証実験を支援していくという。 ワイトリシティの充電システムは、地上に設置した充電パッド上にEVを止め、EVの車体下部に取り付けられた受電コイルを介して充電するというもの。磁気共鳴により作動するので、特別なケーブル類の接続がないのはもちろん、機器同士が触れることなく高効率な電力転送を行なえる。 充電パッドは、住宅や車道のほか立体駐車場用などの地上設置型と、駐車場や縁石の舗装に埋め込む地中設置型が用意されている。位置の許容範囲が広く、車両をパッドの真上などに完全に合わせる必要はない。トラックやバスにも対応できるという。 ワイヤレス充電については、先日のデイリー(6月29日)でもお伝えしているが、EV普及のうえでは欠かせない存在である[詳細はこちら<click>]。 ワイヤレス充電も、急速充電と同様に相互互換性(規格)の問題があったが、今やワイトリシティが世界標準になりつつあるようだ。多数の特許も取得済みでSAE、ISO、GB規格もクリア済み。ドイツの電子機器メーカーのシーメンスもワイトリシティに出資している。 日本最大の普通充電のEV普通充電器ネットワークを持つエネチェンジが、ワイトリシティへの出資並びに業務提携した意味は大きい。このワイヤレス方式が日本の標準的なシステムとなれば、EV用の普及をより促せるのではないだろうか。 急速充電器のプラグは、日本の「CHAdeMO」やテスラの「NACS」といった規格が乱立し、ユーザーにとっては不要な覇権争いが繰り広げられているように見える。ワイヤレス充電が普及すれば、そのような混乱も防げるのではないだろうか。ユーザーから見れば、「簡単に充電できること」が最重要だということを忘れてはならない。 ワイヤレス充電の普及にあたっては、車両側への機器取り付けの問題もある。しかしワイトリシティの機器は、OEM供給に対応できるという。多くの自動車メーカーが開発と普及に協力することを期待する。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★メルセデス・ベンツ、最高出力400kWの充電ステーションを今年秋に開設……独マンハイム/米アトランタ/中国成都にて10月から稼働、2024年末までに世界2,000ヵ所以上に充電ネットワークを展開へ ★★ポールスター、「ポールスター2」を改良(本国発表)……航続距離が最大22%向上、充電速度も34%スピードアップ ★★三菱自動車、「ミニキャブ・ミーブ」が最大97万2,000円の補助……「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金」の対象、事業用に限る ★日置電気、本社工場(長野県上田市)と周辺公道にて自動運転EVバスの実証運行を開始……マクニカと協力し「ナビヤ・アルマ」を運行、9月8日(金)〜9日(土)は一般市民も乗車可能 ★ステランティス、米国内2,600ヵ所のディーラーにEV用充電器を導入へ……チャージ・エンタープライズ社が充電網を整備 ★二輪用品メーカーのデイトナ、電動キックボードの取り扱いを開始……オリジナルモデル「デイトナ・モビリティDK01」を開発、クラシカルな自転車風のデザイン デイリーEVヘッドライン[2023.08.30]

TAG: #THE視点 #テクノロジー #充電インフラ
企業に向けたEVに対する意識調査(出展=帝国データバンク)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EV化を「プラス」にとらえる企業はたった1割……帝国データバンクが約2万8,000社にアンケート[2023.08.29]

「マイナスの影響となった」と回答したのは13.6%の企業 EV導入に積極的ではない国内企業の姿勢が浮き彫りに 【THE 視点】帝国データバンクは8月25日、国内の企業に対してEVに対するアンケート調査の結果を公表した。調査期間は2023年7月18日~31日。全国2万7,768社を対象に調査を行ない、1万1,265社から回答を得られた(回答率40.6%)。EVに関する調査は、2021年6月、2022年7月に続いて今回で3回目となる。 調査結果および要旨は、EV普及による業績への影響として、「プラスの影響がある」と答えたのは全体の11.1%。「マイナスの影響」と答えたのは13.6%で、プラスよりも2.5ポイント多い数値となった。「影響はない」(41.0%)、「分からない」(34.3%)と回答したのは全体の7割を超える企業だった。 規模別では、「プラスの影響」と答えた大企業は16.3%で、中小企業を6.2ポイント上回った。従業員数が多いほど「プラスの影響」は大きい。 地域別での「プラスの影響」は、北関東の13.8%がトップ。「マイナスの影響」は既存の自動車産業の中心地である東海が20.6%で突出している結果となった。 EV事業への参入意向は、「参入済み」と「参入予定」を合わせて10%で、なんらかの形でEV市場に関わっていく意思があることがわかった。 規模別では、大企業の「参入済み」「参入予定」の割合が15.0%で、中小企業を5.9ポイント上回る。 地域別では、「参入済み」「参入予定」が最も高いのは北関東の14.0%。次いで東海の13.0%。 業界別では、最も高いのは製造の14.0%。次いで小売の13.5%となった。 そして「参入予定なし」は67.4%という結果となった。 自動車産業は、日本の全就業人口の約1割にあたる550万人の雇用を支える日本の基幹産業だ。海外では、新車販売にEVが占める比率が、中国で3割、EUで1割を超えた。北米や東南アジアにおいてもEVは無視できない存在となりつつある。 日本における同比率はいまだ2%に満たない。EVに関しては日本の自動車産業の出遅れ感が指摘されるようになっており、アンケートでそれが浮き彫りとなった。 それでも経営体力のある「大企業」ほどビジネス・チャンスと捉えて前向きな受け止め方をしていることや、北関東が積極的な姿勢を示している点は評価できる。 確かにEVへのシフトはタダで簡単にはできない。しかし補助金が充実しているし、EVシフトをサポートするサービスも増えてきている。現在、化石燃料の価格は天井知らずで上がっており、関係するコストは、誤差では済まない数字となって帳簿などに反映されていることと思う。 このまま我慢をするか、思い切ってEVに先行投資をするかは難しい判断になると思うが、EVシフトへの遅れが企業と社員の財布を直撃しているのは間違いないのではないか。例えば従業員の通勤のために支払う燃料手当。EV化でこの経費が浮けば、企業にどれだけの恩恵があるだろうか。 クルマを作る企業も使う企業も、生き残りをかけ、長期的視点に基づいて経営方針の修正や大旋回が必要であろう。このままでは、テスラやBYDといった海外の振興メーカーに国内勢が駆逐される日が現実となるような気がしてならない。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★パナソニック、EVの電力をビル電源と連動する機器「産業用蓄電システム単相連携タイプ(V2X対応)」を発売……EVの電力を建物に活用するV2Xと蓄電池を連携、太陽光発電とも組み合わせて電力自家消費を加速 ★★ユアスタンド、自社の予約課金システムをSKシグネット製急速充電器と連携……1分単位の課金やQRコード決済が可能、10月よりサービス開始 ★メルセデス・ベンツ・トラック、EVトラック「eアクトロス600」が酷暑下でのテストに成功……スペイン・アンダルシアにて5週間のテスト ★パーク24、福岡市の公共施設「西部地域交流センター」にEVのシェアリングカーを配備……「日産リーフ」を2台 ★レクシヴ、「小田原市EV宿場コンソーシアム」へ参画……EVユーザーの観光誘客を推進する施策 ★トヨタ、給電車を活用した避難生活を提案……「TOKYOもしもFES渋谷2023」<代々木公園/9月02日(土)〜03日(日)>に出展、給電車を活用した避難用具の使用をデモ ★テラモーターズ、埼玉県美里町と連携しEV用充電器を導入……町役場など6ヵ所の公共施設に設置予定 デイリーEVヘッドライン[2023.08.29]

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「ハマーEVアースクルーザー・アップフィット」(photo=GMC)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
Born to be WILDER……無給電で1週間過ごせる「ハマーEV」のキャンパー登場[2023.08.28]

車両とは別電源で稼働する後付けキャンパーユニット 広大な大地が育てた本物のサバイバル仕様 【THE 視点】GMCは8月25日、「ハマーEVピックアップ」のキャンパー「ハマーEVアースクルーザー・アップフィット」を発表した。「ハマーEVピックアップ」 の車体に後付けしてキャンパー化することができるキットで、2024年に同車のユーザー向けにアースクルーザーを通じて販売するとのこと。 アースクルーザーは、アメリカ・オレゴン州にあるキャンパーのメーカー。「フォードF-350」のほか、「三菱ふそう・キャンター」「いすゞ・エルフ」などをベースに、オフロード走行も対応できるキャンパーを製作している。 この「ハマーEVピックアップ」向けキットの主な特徴は以下のとおり。 ・「ハマーEVピックアップ」向けに専用設計された軽量高剛性のカーボンファイバーボディ ・発電出力605Wの太陽光パネルと電力量6kWh/最大容量460Ah/電圧12Vのリチウムイオン・バッテリーを搭載。冷蔵庫などの家電製品を約1週間稼働可能 ・3層構造の断熱材を使用しあらゆる季節に対応可能なポップアップ・ルーフ ・機能性と部屋としてのデザインを追求したインテリア ・ダブルベッド/屋内外対応のシャワー/トイレといったアメニティの充実 ・使いやすさを追求した7インチの対角タッチスクリーン式コントロール・パネル ・1500Wのインバーターを装備 日本でも車中泊のブームが続いているが、世界でもトレンドのようで各社続々とEVのキャンパーを発表している。 フォルクスワーゲンは「ID.Buzz」のキャンパーを公開したし、メルセデス・ベンツは、「Vクラス」のEV「EQV」にキャンパーモデルの「マルコポーロ」の追加を匂わせている。日本ではHWエレクトロが「エレモ-L」のキャンパーを発表した。 今回、GMCが発表したのは「ハマーEVピックアップ」の後付けキャンパーキットだった。ハマーが持つ悪路の走破性を生かして、人里離れた自然の中で1週間も人道的な車中泊が楽しめるのは、このEVならではの特徴であろう。しかも走行距離に影響がない独立の電源なので、ユニットの電力が底をついても自走での帰還が可能だ。 日本に置き換えて考えれば、軽トラックに後付けの架装を施したキャンパーと同じジャンルに分類できる。ピックアップ・トラックは、アメリカの軽トラックと言える身近な存在だ。しかし国土面積や使用環境が違うと、こうも作り込みが変わるのか。趣味のキャンパーというよりも狩猟に使用するような“サバイバル仕様”である。キャンパーは、その国の大地が育てるのかもしれない。 日本にも豪華絢爛な富裕層向けのキャンパーは輸入・販売されているが、「ハマーEVアースクルーザー・アップフィット」には、それらとは一線を画すワイルドさがある。こんなキャンパーを相棒に、ぜひアメリカにて冒険をしてみたいものである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★メルセデス・ベンツ、SUVの新型EV「EQE SUV」の予約を日本で開始……高性能版「AMG EQE 53 4MATIC+ SUV ローンチエディション」は10月下旬以降 ★★フォルクスワーゲン、セダンの新型EV「ID.7」の注文が本国で可能に……航続距離621kmのグレード「プロ」から受注開始 ★★メルセデス・ベンツ、新型「Vクラス」のキャンパー「マルコポーロ」を発表……EVの「EQV」にも「マルコポーロ」の追加を匂わせる ★ポールスター、モービルアイと自動運転開発で協力……世界1億5,000万台以上がモービルアイの運転支援技術を採用 ★ボルボ、小型SUVの新型EV「EX30」をカナダで発売…… RWDモデルとデュアルモーターAWDモデルを導入 ★ポルシェ、Xboxとパートナーシップを締結……レースゲーム「フォルツァ・ホライズン」にて、75周年記念カラーの「タイカン4S」のダウンロードが可能に ★BMW、ドイツ・ライプツィヒ工場に高電圧バッテリーに対応した倉庫を新設……2024年半ばに完成予定 ★全企業のEV事業参入は1割……帝国データバンクが調査を公開、「EV普及によるプラスの影響」を有りと答えたのが全体の11.1%で「マイナスの影響」は13.6% ★BYDジャパン、1ヶ月間の試乗施策「eモビリティパートナープログラム」の車両受け取りエリアを拡大……横浜・名古屋・大阪・福岡に拡大、9月29日(金)まで募集中 ★エネチェンジとテラモーターズ、神奈川県小田原市の観光集客に協力……「小田原EV宿場町コンソーシアム」に参画、市内のEV用充電器の設置を推進しEVユーザーの集客を狙う ★テラモーターズ、青森県五戸町と連携協定……町役場や五戸総合病院など公共施設7ヵ所にEV用充電器を先行導入 ★ブレイズ、「中古車販売特別キャンペーン」を実施…… 10万円分のクーポンを用意、10月31日(火)まで ★埼玉県、リチウムイオン・バッテリーのリサイクル実証を開始……家庭用のバッテリーのレアメタルの含有量や回収コストなどを検証 デイリーEVヘッドライン[2023.08.28]

TAG: #EVキャンパー #THE視点 #ニューモデル
HWエレクトロとメディロム・マザーラボが協業(photo=HWエレクトロ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
運転者の体調急変時に自動運転……HWエレクトロとメディロムが緊急停車システムを共同開発[2023.08.25]

マザーラボのウェアラブル端末でドライバーの体調を常時モニタリング 運行管理側もバイタルデータをリアルタイムに把握可能 【THE 視点】HW エレクトロは8月17日、メディロム・マザーラボ(ヘルステック事業のメディロムの子会社)と事業提携を発表した。ドライバーの体調急変時の緊急自動運転(半自動運転)システムの共同開発を行なう。 HWエレクトロの独自のコネクテッドサービス「HWエレクトロ・プラットフォーム・サービス」と、マザーラボが開発する充電不要のスマートトラッカー「マザー・ブレスレット」が取得するバイタルデータを連携させることで、運転者のバイタルデータに異変を検知した際に自動運転に切り替え、周囲の車両にアラートを発信しながら路肩に自動停車するシステムを目指す。 運転者のバイタルデータを自動で取得する「マザー・ゲートウェイ」を「エレモ」シリーズに搭載し、運転者の走行中のバイタルデータが可視化できる状態も同時に構築する。バイタルデータを「HWエレクトロ・プラット・フォーム」上で表示することで、事業者・運行管理側もリアルタイムで運転者の健康状態を確認できるようになる。 昨今、ドライバーの高齢化に加えて人員不足による業務過多によって引き起こされる睡眠不足・健康上の理由による事故が問題視されており、データを元にした半自動運転のシステム共同開発の実施を通じ、交通事故抑制等の社会問題解決にも貢献していくという。 HWエレクトロのモデルは完全EVなので、電気回路を元にする自動運転システムとの相性は良い。車両に大きな改造を施さずに済むので、緊急自動運転システムの搭載も、内燃エンジン車に比べて容易にできるものと推測する。 Apple Watchなどもそうだが、時計を兼ねた小型デバイスの進化はものすごく、装着するだけで活動量の計測が自動で行われる。心電図の計測も可能になり、波形の異常を感知した際には自動で通報もしてくれる。 ユーザー側からすれば、普段の時計を装着していることと変わらないので、特殊な機器を体につけているとは感じない。マザーラボのデバイスも同様ではないだろうか。今回の発表・開発はCASE時代だからこそ可能なものだろう。 今回の取り組みは、ぜひ他の電動モビリティメーカーも見習ってほしい。例えばバスである。 現在、バスにはドライバーの体調変化が起きた緊急時に、「車両がドライバーに警告を発し、それでもドライバーに反応がなければ自動停車する機能」と、「乗客が異常を感じた際に操作する緊急停止ボタン」が装備されている。しかし、いずれも人間の操作を待つものなので、切羽詰まった緊急時の対応は遅くなる。ハンドル支援機能もないため、ガードレールなどへの接触も避けられないだろう。 しかしこのシステムであれば、二次的な接触事故も減らせるのではないだろうか。大勢の命を預かる車両にこそ、このシステムは欲しいものだ。 ともあれ、既存のプレイヤー同士がそれぞれの強みを生かして安心安全な技術が生まれるのは大変良い取り組みである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ボルボ、EVの小型SUV「EX30」を日本にて発表……300台限定のサブスクリプション車を導入[詳細はこちら<click>] ★★ボルボ、EVの新型MPV「EM90」を11月12日ワールドプレミア……第1弾のティザーを公開、7人乗りのミニバンか ★★ステランティス、アメリカ全土のディーラーにEV用充電器を設置……電装企業のAGIと契約、2,600ヵ所以上に導入 ★ジャガー・ランドローバー、イングランドのウェスト・ミドランズにて300人を新規雇用……EVのテストとメンテナンスのためのエンジニアを確保 ★ジャガー・ランドローバー、EVのバッテリーを活用した蓄電システムを開発……「I-ペイス」のバッテリーを活用、太陽光発電と風力発電に活用 ★空飛ぶクルマのASKA、空陸両用EV「A5」の実機を「モントレー・カー・ウィーク」に出展……公道を実装するデモも実施[詳細はこちら<click>] ★モーションとプラゴ、EV導入・運用プランニングサービスを開始……複数のEVを運用する地自体・事業者向けに ★ハウスプロデュース、事業者向けソーラーカーポートの設置相談受付を開始……EV用充電器との接続も可能 ★折りたたみ型EVバイクのシェアロ、宮崎市の大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」にレンタルステーションを設置……宿泊施設内に2ヵ所、計26台を導入 ★ドイツの電動モーター企業ディープドライブ、「ダブルローター・ラジアルフロー・セントラルモーター」を開発……軸を本体中央に通し直接駆動する小型・パワフルなユニット ★川崎市、電気の地産地消・余剰電力の活用を目指した企業「川崎未来エナジー株式会社」を設立……東急/東急パワーサプライ/NTTアノードエナジー/川崎信用金庫/セレサ川崎農業協同組合/きらぼし銀行/横浜銀行と共同設立、川崎市が51%の出資 ▶︎リコール◀︎「BYDアット3」、事故自動緊急通報装置に不具合……装置起動時に車両データが送信されない デイリーEVヘッドライン[2023.08.25]

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出光の再生可能エネルギー施策のイメージ図(photo=出光興産)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
出光が一般家庭から太陽光電力を買取り……さいたま市と共同実施、余剰電力をEVの充電に活用[2023.08.24]

電力地産地消のうえに提供側にお金を還元する好循環 太陽光発電設備の設置義務化なら導入費用相殺につながる施策を検討せよ 【THE 視点】出光興産とさいたま市は8月9日、市内の一般家庭が設置している太陽光発電の余剰電力を買い取ると発表した。 出光とさいたま市は、「ゼロカーボンシティ実現に向けた共創推進に関する連携協定」を締結している。その協定のもと、市内一般家庭の太陽光の余剰電力を「idemitsuでんき」を介して買い取り、10月から市内の公共施設と出光のステーション「セルフ浦和中尾SS」に使用する。 「セルフ浦和中尾SS」では、今年7月にEV用急速充電器を設置し再生可能エネルギーの電力を使用している。太陽光発電設備、蓄電池およびエネルギーマネジメントシステムも導入済みだ。 この協定により実現する再生可能エネルギー施策のフローは以下となる。 1……「idemitsuでんき」が市内の一般家庭の太陽光発電の余剰電力を買い取るとともに、出光グループの「ソーラーフロンティア」が太陽光発電システムのメンテナンスや機器交換などに対応。 2……買い取った太陽光の余剰電力を、「idemitsuでんき」の再生可能エネルギー電力「グリーンプラス(CO2フリー)」として、さいたま市の公共施設と「セルフ浦和中尾SS」に供給。 3……「セルフ浦和中尾SS」にて、EV用急速充電サービスに使用。 4……「セルフ浦和中尾SS」の太陽光発電システムの電力をSS内で使用。同時に余剰電力を蓄電池に充電し、電力逼迫時に放電するエネルギーマネジメントを行なう。 この出光の取り組みは、「VPP」(バーチャルパワープラント:仮想発電所)の一例ともいえる。電気の地産地消とEVを組み合わせた新しい取り組みの良い例ではないだろうか。 東京都などでは、太陽光発電設備の新築への導入が義務付けられるが、余剰電力をどうするかまでは議論が進んでいないように思われる。余剰電力の取り扱いは、すでに全国で問題になり始めている。 余剰電力をEVに活用することは良い施策だと思う。定置型の蓄電池と組み合わせれば、夏場の電力ピーク時などでも安定してグリーン電力をEVに供給できる。なにより、電力の買い取り先があることは、太陽光発電を導入した一般家庭にとって大きなメリットになると言えよう。 「卒FIT(固定価格での買取期間<住宅用太陽光発電の場合10年間>)だけでは、導入コストを回収することは無理」だと、知人が新築の際に住宅メーカーの担当者から実際に言われたと聞いている。導入を義務化するなら、補助金だけではなくそのコストやメンテナンス費などが帳消しになるような長期的な施策も考案すべきである。 出光とさいたま市のこの施策は、それらの問題の解消につながる新しい取り組みと言えよう。今後他の地域でも増えることを期待する。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BMW、新世代のEVモデル「ノイエ・クラッセ」「MINIクーパー」「CE 02」をワールドプレミアへ……「IAAモビリティ 2023」<ドイツ・ミュンヘン/9月5日>にて ★★ベルエナジー、EV用のポータブル急速充電器「Roadie V2」のレンタル事業を開始……9月1日より開始(料金は要相談)、オプションとしてテスラ車用のアダプターも用意 ★★エネチェンジ、EV向けのワイヤレス充電の実証実験開始の意向……出資しているワイトリシティと協業し普及を推進 ★東北大学、車体自体をバッテリー化できる素材を開発……3Dプリンタを活用した3次元構造のカーボン材料、車体フレームにエネルギーの貯蔵が可能に ★フォルクスワーゲン、「フォルクスワーゲン浜松西」および「浜松」の各店舗にてCO2排出量実質ゼロ運用を開始……EVの充電にもCO2排出ゼロの電力を使用 ★J.D.パワー、新車購入予定者(1年以内)を対象にEVの購入意向や意向者像を初調査……12月に結果を発表 ★ヨネ、EVを被せて消化する消防用品「超耐熱ファイヤーブランケット」を「ラリージャパン2023」の機材として納入……消化困難なバッテリー由来の火災に対応[詳細はこちら<click>] ★新電元、二輪EV向けのパワーコントロールユニット「DU012」をインドにて量産開始……バッテリー電圧/車速/モーターの回転数などをリアルタイムで検出・制御 ★バッテリーセルメーカーのノースボルト、12億ドル(約1,750億円)を新たに資金調達……ヨーロッパと北米でのプロジェクトを拡大 ★大平洋金属とマイクロ波科学、マイクロ波を利用したニッケル精錬技術を共同開発へ……EVに使用するリチウムイオン・バッテリーの材料、製造時のCO2排出を抑制 ★クレハ、「フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)」の生産設備を増強……リチウムイオン・バッテリーのバインダー素材 ★エナリス、容量市場(発電指令電源)参加企業を募集……V2H機器を持つ事業者も対象、電力供出時に報酬が発生 ★日産、「エコ1チャレンジカップ2023〜中・高校生による手作り電気自動車コンテスト〜」を開催……「東急自動車学校」<東京都多摩市/8月26日(土)>にて ★日産、鳥取県境港市とEV活用の包括連携協定を締結……日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」施策、公用EVの段階的な導入などを支援 デイリーEVヘッドライン[2023.08.24]

TAG: #THE視点 #充電インフラ #再生可能エネルギー
サポートマーケティングサービスが開発した「エネバイ」(photo=サポートマーケティングサービス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
「オート三輪」がEVで堂々復活……「EVトゥクトゥク」を進化させた消防用具搬送車が登場[2023.08.23]

コンパクトな車幅により軽でも行けない場所にアクセス可能 商業用の配送車としても活躍が期待できるネオクラシカル 【THE 視点】サポートマーケティングサービスは8月21日、三輪のEVバイク「エネバイ」を、「危機管理産業展2023」<東京ビッグサイト/10月11日(水)〜13日(金)>にて展示・公開すると発表した。EVの「トゥクトゥク」に荷台を付け、消防用ポンプや太陽光パネルなどの積載・運搬が可能となるように改造した。 サポートマーケティングサービスは、この車両を消防バイクとして活用可能することを考え、2013年より開発を続けてきた。消防ポンプは、D級・C級・B級の順にサイズが大きくなり放水性も高くなる。従来はD級しか載せることができなかったが、B級ポンプを載せられるように自社で研究・開発を行なった。その結果、消防ポンプはもちろんのこと、それ以外の様々な救援物資も載せられる新たなジャンルの小型EVが完成した。 「エネバイ」の仕様は、全長2,450×全幅1,090×全高1,620mmで重量は270kg。最大積載量は200kgとなっている。駆動用交流モーターの出力は2kWで、家庭用100V電圧のコンセントから充電ができ、航続距離は90kmほどとのこと。 先日レポートをした「東京国際消防防災展2023」でも、この「エネバイ」を含む何台かの三輪EVの展示があった[詳細はこちら<click>]。 「トゥクトゥク」というよりは、現代日本の黎明期の物流を支えた「オート三輪」と言えよう。日本の小型の積載車と言えば軽トラックだが、それよりも幅が小さいため機動力があり、何より現場により近い場所に車体を停められるのは大きなメリットだ。 それにしても、EVでクラシックモデルを再生したり復刻したりするのは世界的なトレンドのようだ。しかし趣味・趣向を凝らしたファンカーとしてではなく、現代でもきちんと仕事ができる業務用車として復活させるのはどこか日本らしい。 消防・救命道具の運搬用だけではもったいない。かつて日本全国を「オート三輪」が走り回っていたように、配送業務のニーズにも応えられるのではないだろうか。キャビン付きなので、急な天候の変化からも運転者を守ることができ重宝すると思われる。「オート三輪EV」は、これからの活躍が期待できるネオクラシカルな新カテゴリである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ベントレー、クラシックカーの「ブロワー」をEVで復刻……オリジナルの85%のサイズで再現、小型EVメーカーの「ザ・リトル・カンパニー」とコラボ ★BMW、「i5」でプレイできる車内ゲームに「Who Wants to Be a Millionaire?」を追加(本国発表)……ゲームのプラットフォーム「エアコンソール」を活用した車内ゲームが続々追加 ★東京都、「令和5年度グリーン水素製造・利用の実機実装等支援事業」を開始……グリーン水素の製造から利活用までの一連の機器・モデルプランを公募し補助金を交付 ★ブレイズ、「コストコ門真倉庫展」<大阪府門真市>にて展示販売会を実施……8月24日(木)〜9月03日(日) デイリーEVヘッドライン[2023.08.23]

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「スマートエネルギーWeek」にて展示のあったベルエナジーのRoadie V2(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
電欠用緊急バッテリーが爆売れ……ベルエナジー、「Roadie V2」が100基超えの受注[2023.08.22]

「電欠の救急車」や開発現場などにも使える“電気の携行缶” 筆者も10年以上前に開発を検討したEV時代のマストアイテム 【THE 視点】ベル エナジーは8月21日、ポータブルEV急速充電器「Roadie V2」の国内販売・受注台数が100基を突破したと発表した。日本初のモジュール式ポータブル急速充電器で、EV普及に伴い増加傾向にある「電欠」に対応するべく開発された製品だ。 単独での使用が可能なスタンドアローン設計となっているため、固定式充電設備を置く場所がなくてもEVの充電設備を作ることができる。そのため、EVやバッテリーの開発現場や研究室への活用も期待される。 本体は、2種類のユニット(急速充電ユニット<CHAdeMOまたは米国のCCS1>/蓄電ユニット)からなる。急速充電ユニットは最高出力20kWで、これに3.35kWh/個の蓄電ユニットを最大4個繋ぐことで約14kWhの容量となる。約10分の充電で航続20kmほどの電力を回復することができる。蓄電ユニットへの充電は家庭用100Vでの充電が可能で充電時間は約4時間となっている。 筆者は「スマートエネルギーWeek」<東京ビッグサイト/今年3月15日〜17日>にて、「日産サクラ」が「Roadie V2」を搭載したベルエナジーのサービス「電気の宅配便」の展示を実際に確認している[詳細はこちら<click>]。ロードサービスなどにうってつけで、今後のEVの普及を考えると非常に有用なシステムだと感じていた。「Roadie V2」は、エンジン車でいう“燃料の携行缶”に例えられよう。 筆者自身、実は10年以上前に同様のシステムの製作を検討した経緯がある。電欠の場合は車両自体は生きているのだから、最寄りの充電設備までの電力を回復できれば充分。電話を受けたロードサービスや整備工場がユニットを乗用車などに積んで行くだけで良いので、人的コストも移動コストも削減でき合理的なのだ。 開発に向け色々とヒアリングしたが、当時のバッテリーの性能や価格面でのハードルが高く断念してしまった。 ベルエナジーは100基の受注数を突破したとのことだが、実際にロードサービス会社への納入事例が多く、コンパクトな上に家庭用電源で充電できる手軽さが拡販につながった要因だろう。 ちなみに個人でも、長距離旅行などの“携行缶”にと思いつく人もいるかもしれないが、正直導入は困難だ。今回は価格の発表が無かったが、電池の容量から推測するに、1基あたり数十万円から100万円台の価格になると思われる。頻繁に電欠するほど公共充電器が不足しているわけではない。万が一の事態の際は“電欠の救急車”を頼んだ方が良さそうだ。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BYDジャパン、東京都に初の店舗を開設……「BYD AUTO 池袋」が8月26日(土)にオープン、運営は中古車大手のネクステージ ★★テラモーターズ、法人向けのEV導入支援サービス「テラチャージ法人向けプラン」を開始……EV用の駐車場が自社敷地外でも充電器の設置交渉を代行 ★サポートマーケティングサービス、EVの三輪バイク「エネバイ」を「危機管理産業展2023」に出展……車体後部を荷台化し災害物資や救助機器を可搬 ★ヴィーズマン、スポーツEV「プロジェクト・サンダーボール」の初年度生産分(2024年デリバリー)が完売……2025年デリバリー分で予約受付中 ★エネチェンジ、秋田県湯沢市にEV用充電器を設置……市内の公共施設に最高出力6kWタイプを順次 ★三菱重工、水素の大量輸送を見据えてアンモニア分解システムを日本触媒を共同開発へ……アンモニア(NH3)は水素の安全なキャリアとして有用 ★パワーエックス、三井E&Sにコンテナ型の定置型蓄電池「メガパワー」を設置……蓄電池工場「パワーベース」と同市内(岡山県玉野市)にある造船工場 ★ENNE、EVバイク(特定原付)の「T250」がベトナムへ輸出・販売決定……ペダルで発電・モーターで進む人力シリーズハイブリッドのEV デイリーEVヘッドライン[2023.08.22]

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GLMミモス(photo=GLM)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
あるようでなかった全長3m未満・4人乗り……GLMが超小型EV「ミモス」を日本に導入[2023.08.21]

「日産サクラ」と「トヨタ C+pod」の中間に位置するボディサイズ 近距離移動の常用EVとして個人所有の需要もあるはず 【THE 視点】EVの開発を行うGLMは8月17日、カーシェアリング向けの小型EV「ミモス」の取り扱いを開始した。軽自動車規格のEVながら、全長3m未満と一般的な軽自動車よりも小さいボディを持つ。 「ミモス」は、本来は欧州市場向けに普通自動車規格で作られているモデルであるが、日本国内の保安基準と軽自動車規格を満たす仕様に改良し、軽自動車としての登録を実現したという。 世界的には日本の軽自動車よりも小さいボディの超小型EVの普及が進みつつある。「シトロエン・アミ」などはその良い例だ。超小型EVは日本の道路事情や生活環境にも合致するはずだが、そのようなEVは少ないのが現状。大手メーカーの軽では「日産サクラ」と、その兄弟車の「三菱 eKクロス EV」があるのみ。新興系の軽EVは商用がメインだ。 常用の超小型EVのニーズに応えるべく、GLMは「ミモス」の日本市場への早期導入を目指した。主に、シェアリングサービスを検討している行政団体や企業向けに販売及びリースを行う予定とのこと。 「ミモス」のスペックは、全長2,998×全高1,555×全幅1,478mm。4人乗車可能な4シーターで、4人乗車時でも荷物の積載スペースを確保している。バッテリーの最大容量は17.8kWhで、最大航続距離は約130km。充電は家庭用200V充電器の仕様で約6時間となっている。なお、写真は左ハンドル仕様となっているが、今秋には右ハンドル仕様も用意されるとアナウンスされている。 GLMというと自社開発のEVスポーツカーの「トミーカイラZZ」のイメージが強い。今回は自社開発を行なわず、EVの需要の高まりから早急にニーズに応えられるよう海外からの輸入を選択したようだ。自社開発は手間・時間・コストがかかるため、普及速度と相応の台数を優先するなら今回の判断はベストに思う。 サイズから見るに「日産サクラ」と「トヨタC+pod」の中間に位置するEVとなる。スズキが一時期販売していた「ツイン」をも思い起こさせる。 誰もが使いやすいサイズのため、不特定多数が利用するシェアリングサービスには向いている。しかし、近距離移動用の常用EVとしてマイカーの需要もあるはずだ。見た目も小型SUVのようで愛らしく、所有する楽しみもあるのではないだろうか。シェア限定とするのはもったいない。右ハンドル仕様が入れば、一定数の販売が見込めると思われる。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ランボルギーニ、SUVタイプのスーパーEVコンセプト「ランザドール」を発表……ブランド初のEV、前後2モーター式のAWD ★★ロータス、オーダーメイドのEVスポーツ「エヴィジャ」を公開……元F1ドライバーのジェンソン・バトンによるオーダー、最高出力1,500kW(2,039ps)のモンスター ★★ホンダ、北米アキュラブランドに新型EVを導入……SUVの「ZDX」および「ZDX タイプS」を2024年初頭に発売 ★★CATL、超高速充電対応の新型バッテリー「Shenxing」を発表……10分の充電にて航続距離400km分の電力を回復、フル充電で700km以上 ★ベトナムの新興ビンファスト、米国NASDAQに上場……米国株式市場に上場するベトナム系企業の中で最高の時価総額 ★リマック、ハイパーEV「ネヴェーラ」がニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにてEVのレコードタイムを更新……7分05秒298を記録 ★東芝エネルギーシステムズ、EV用バッテリーの劣化診断の実証を開始……モニター参加企業・団体の募集を開始 ★フォード、カナダ・ケベック州にバッテリー用のカソード工場を建設へ……韓国SKオンなどと共同、2026年上半期に生産を開始し4万5,000トン/年を生産 ★ステランティス、米カリフォルニア州にてリチウムを製造……現地法人のCTRに投資、地熱塩水からリチウムを製造する技術を開発 ★テラモーターズ、香川県坂出市/三重県東員町/大分県九重町にEV用充電器を設置……各自治体の公共施設を中心に充電器を導入 ★アルファチャージ、日旅産業と業務提携……日旅産業の主要顧客の宿泊施設にEV用充電器を設置、外出先で充電する「目的地充電」の普及を促進 ★パワーエックス、蓄電池型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」が補助金の対象に……スタンダードモデルとコンパクトモデルが、次世代自動車振興センターの「CEV普及充電インフラ補助金」の対象製品に登録、機器代と工事費を国から支援 ★東芝エネルギーシステムズ、EV用バッテリーを蓄電池システムに再利用……関西電力と共同実証、2023年冬から実証を開始し2024年度中のサービス提供を目指す ★東急建設、工事現場での水素燃料電池式発電機の実用性を検証……7月中旬まで行われた渋谷駅西口地下の工事にて照明用電源に活用、騒音の低減を確認 デイリーEVヘッドライン[2023.08.21]

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「シティサーキット東京ベイ」のイメージ(photo=トムス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
お台場にクルマのテーマパークが復活……トムスが「メガウェブ」跡地にてEVカート場を運営[2023.08.18]

「メガウェブ」がEVカート専用のサーキットにパワーアップして事実上の復活 「静か」「臭くない」EVゆえに可能なモータースポーツの新しい世界 【THE 視点】レーシングチームを運営するトムスは8月15日、モータースポーツのエンターテインメント施設「シティサーキット東京ベイ」<東京都江東区>を、2023年10月下旬に開業予定と発表した。国内最大級のEVレーシングカート用の本格サーキットがお台場に誕生する。 トムスは、「全日本カート選手権」のEV部門の車両開発を手掛けている。この施設ではそのノウハウを活かし、一般人がEVカートを中心にモータースポーツを手軽に体験できるエンターテイメント施設となるという。 屋外と屋内にコースを設置し、実車はもちろんVRによるe-モータースポーツの体験コンテンツも用意する。特に屋内コースでは、プロジェクション・マッピングなどの演出を取り入れたコースになるという。また、キッチンカーによるフードサービスやラウンジ/サウナといった施設も併設する計画もあるとのこと。 施設は、複合施設「パレットタウン」の跡地の一部を利用する形となる。自動車ファンならご存じだろうが、ここはかつてトヨタが運営していたクルマのテーマパーク「メガウェブ」があった場所だ。東京臨海高速鉄道「りんかい線」の「東京テレポート駅」が目の前なので、アクセスは抜群である。 EVカートは、「静音」「排出ガス無し」「デジタル制御」という特性を持つ。これにより騒音の軽減/環境負荷の低減/安全性の向上を実現でき、これまでは郊外に限られていたサーキットを都市部に作ることが可能となった。夜間の営業も可能となり、インバウンド観光や夜間観光(ナイトライフ観光)の促進も期待できる。 EVカートは静かでクリーンということで、実は十数年前に日本EVクラブがこのベイエリアにてEVカートのナイトイベントを行なったことがある。筆者も参加し、EVでしかできないモータースポーツの世界があると実感したものだ。 昨年も、このベイエリアにてEVカートのイベントが行われている。さらに来年は、「フォーミュラE」もお台場を中心にコースが設定される予定だ。今まで一般の人から忌み嫌われていた過剰な「音」と「匂い」などがなくなるからこそ実現につながったと言える。 トムスは今年の「オートサロン」にて、レンタルカート用をはじめ3種類のEVカートを展示していた。その時点で計画がスタートしていたのかもしれないし、筆者も「EVカートなら23区内にサーキットを作れる」「燃料代や整備費も浮くからカートレースに参加しやすくなるかも」などと仲間と話し盛り上がっていた。 「シティサーキット東京ベイ」は、今後の日本のモータースポーツの方向性を示す一つのお手本ではないだろうか。オープンしたら、筆者も仲間と一度競り合ってみたいものである。 ちなみにトムスはトヨタと非常に縁の深いレーシングチームであり、トヨタ公認のカスタムパーツメーカーでもある。「メガウェブ」が、誰もが気軽にモータースポーツの魅力を体感できる施設にパワーアップして帰ってきたと言って良いだろう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★GLM、軽自動車規格の小型EV「ミモス」を日本に導入……行政や企業向けに販売(リースを含む)、航続距離139km ★★HWエレクトロ、運転者の体調急変時に緊急の自動運転機能を実装へ……メディロム・マザーラボと協業、マザーラボの活動量計にて体調を計測 ★パワーエックス、シリーズBラウンドにて計46.2億円を新規調達……バッテリーの大規模工場「パワーベース」の製造設備導入費などに充当 ★GM、AIによるバッテリー素材メーカー「Mitra Chem」へ投資……低価格EVの量産・販売を目指す ★凸版印刷、水素エネルギー事業へ参入……水素燃料電池用の「触媒層付き電解質膜」と「膜電極接合体」の生産設備を高知工場<南国市>に導入、印刷技術を活用し量産 デイリーEVヘッドライン[2023.08.18]

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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