メルセデス・ベンツ/BMWも対応を決めた世界の潮流になりつつある「NACS」
「CHAdeMO」に真っ向勝負となるがユーザーへの配慮を第一に
【THE 視点】DMM.comが提供するEV充電サービス「DMM EV CHARGE」は8月1日、2024年春に50kW/120kW/180kWの急速充電器を導入する。また同3日、テスラ方式の充電規格である「NACS」に対応すると発表した。
DMMは、EVの充電事業者としては新興企業であるが、2023年5月より開始した「DMM EV CHARGE」は、提供開始から3ヵ月で2,500基の受注に成功している。
商業施設・宿泊施設・公共施設・マンション等に対する設置を目的に、初期費用とサービス利用料が無料のプランと、それらを設置者が負担する代わりに売電収入の一部を還元するプランの2つを用意したことが好評のようだ。
2024年春より、DMMはEV充電インフラ事業をさらに加速させる。従来の6kWタイプの普通充電器に加えて、50kW/120kW/180kWの急速充電器を用意する。
そして、テスラ方式の充電規格「NACS(North American Charging Standard:北米充電標準規格)」への対応も発表した。24年導入の急速充電器が「NACS」に対応するとみて間違いないだろう。この「NACS」に対応した充電器は、ガソリンスタンド、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアなどに設置予定だ。
「NACS」は、自動車技術の標準化に取り組んでいる「SAE International」によって2023年6月に標準化が発表されており、今後自動車メーカー各社での導入拡大が見込まれている。メルセデス・ベンツ/BMW/ステランティス/GM/ヒョンデ/キア/ホンダの計7つの自動車メーカーが、北米にて合同設立する充電インフラ企業も「NACS」へ対応予定で、日産も独自に対応すると発表している。「NACS」を採用するメーカーが世界的に増えている。
日本でこれまで「NACS」を採用してきたのは、テスラが自前で設置した「スーパーチャージャー」が中心であった。今回「DMM EV CHARGE」が「NACS」へ対応するのは、メーカー以外の企業としては日本初と見てよい。
「NACS」の導入は、それを採用する輸入車メーカーにとって日本市場への参入ハードルを低くできる。そしてうまくいけば、DMMは日本での「NACS」の主導権を握れるだろう。保守的な日本において、ビジネスとしては大きな賭けに出る格好だが、世界のトレンドを導入するだけに成功の可能性はある。
国産車は今後も「CHAdeMO」規格の採用を続けると思うが、輸入車は「NACS」規格が増えるものと思われる。日本でも充電規格争いが勃発しそうであるが、くれぐれも、ユーザーが混乱し利便性を損なうような不毛な争いにならないことを願いたい。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.08.08]