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船舶でも水素燃料電池がトレンド……ヤンマー、船舶向けの燃料電池システムを商品化[2023.08.03]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
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「船用燃料電池システム」のテスト風景(photo=ヤンマーホールディングス)

パワートレインも含めた統合的なFCシステムを提案
FCシステムを搭載した「水素運搬船」の実現も期待

【THE 視点】ヤンマーホールディングスのグループ会社、ヤンマーパワーテクノロジー(ヤンマーPT)は8月1日、「舶用水素燃料電池システム」(FCシステム)を商品化したと発表した。まずは水素の補給が比較的容易な沿岸を航行する旅客船や作業船・貨物船などへの採用を提案していくという。

ヤンマーPTは、国土交通省の水素燃料電池船(FCEV船)の安全ガイドラインや、船舶分野における水素利用のロードマップの策定に参画してきた。FCを搭載した試験艇での実証運航試験や、高圧水素充填試験(70MPa)を実施するなど、FCEV船の社会実装に向けたさまざまな取り組みを進めている。

これらの取り組みで得た技術や知見を、舶用エンジン事業で培った技術と融合し、蓄電システム・電力制御システム・推進システム・水素貯蔵システムを統合システムとして提供していくという。

ヤンマーのFCシステムの主な仕様は、定格出力300kW(カスタマイズ可能)、長さ3,400×幅1,100×高さ1,700mmで、質量は3,000kgとなっている。様々な有害物質を含んだ排気ガスが発生しない点に加えて、低振動・低騒音・排ガス臭がない点が特徴。内燃エンジンによるこれらの問題は、乗員や乗客のストレスになる。それが緩和されるのは大きな効果だ。

ヤンマーPTは、これまでも小型船にFCシステムを搭載し実証試験をしてきた。今回発表されたFCシステムは、定格出力300kWと自動車用と比較しても大きい(ちなみに「トヨタ・ミライ」のFCスタックは最高出力128kW)。

FCシステムのサイズは、中型船以上を想定しているようだ。しかし、水素容器の圧力は70MpaでFCEV(自動車)と同じである。港湾での水素インフラを考えると、自動車と同じ圧力で使用した方が融通が利いて良いのだろう。小型燃料電池船での実証試験も、自動車用の移動用水素ステーションが使われていたように思う。

自動車と大きく違う点は、水素の搭載量だろう。比較にならないほど大量の水素が搭載できる。開発が進めば、水素を運搬するFCEV船も可能ではないだろうか。「パワーX」が開発を進めている「電気運搬船」の水素版のようなものだ。

EV船の充電待機時間を考えると、船舶もFCEV船とした方が運用効率が良いように思われる。船舶業界でも、FCがトレンドとなってきた。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

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