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イーロンマスクの動きで不買運動まで起こったテスラ! EVが伸び悩むいまこの先の戦略はどうなる?


TEXT:桃田健史

イーロン・マスクの一挙手一投足が経営に影響

トランプ大統領との対立が目立っているテスラの創業者、イーロン・マスク氏。そんな背景などもあってか、最近テスラの調子がイマイチだ。これからどのような進路を歩むのか注目だ。

ただし、今回の件でマスク氏はテスラ経営者としてではなく、アメリカ連邦政府の政府効率化省のトップとして報道されることが多い。その名のとおり、行政機関での無駄を削減することが、トランプ大統領がマスク氏に与えたタスクだったが、その強引な方策に解雇された職員やその家族から猛烈な反発が出た。

そうしたマスク氏に対する気もちが、テスラの不買運動へと飛び火した。また、欧州市場でもマスク氏の公的、または私的(テスラCEOとして)の発言がテスラの販売に大きな影響を及ぼした。

このような経営者の動向が、自動車メーカーの業績に直接関わるケースは極めてまれである。テスラの場合、創業時は投資家として、また2000年代末にテスラが窮地に陥ってからは経営トップとして表舞台に躍り出たマスク氏の一挙手一投足が、テスラの経営を大きく左右するというプロセスが続いた。

現状、そうした「テスラ=マスク氏」という構図が、テスラ事業にネガティブに作用しているといわざるを得ない。

一方で、テスラ事業そのものを見ると、モデルラインアップでは売れ筋「モデルY」と「モデル3」が熟成期となり、また「サイバートラック」の販売が頭打ち。新事業として、ロボットタクシーや人型ロボットを自社イベントでプロモーションし、一部は社会実装のステージに入っているものの、実質的なビジネスプランの先行きは未だ不透明な状況だ。

また、中国ではBYDを筆頭とする中国地場メーカーによるEV価格競争が激化するなかで、テスラとしては新たなるセグメントでの新車導入が必要な時期なのかもしれない。

時代を少し振り返ってみると、2000年代のEV業界は「リーフ」と「i-MiEV」が大手自動車メーカー初量産のEVとして市場の基盤を作った。2010年代に入るとテスラの「モデルS」構想が具体化したものの、安定的な生産に達するまでかなり長い年月を必要とした。

ところが、「モデル3」の登場と世界的なESG投資拡大によって、テスラの販売台数、そして株価が急上昇していった。ESG投資とは、従来のように財務状況だけではく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンスを重視した投資のことだ。

そうした時代の波に乗ったテスラは、マスク氏の政権入りという高みに達したのだが、世界的なEGS投資のトレンドがすでにピークから下降に向かい、世界最大の中国市場で地場EVメーカーが躍進するなど、テスラにとって、またマスク氏にとってビジネスのステージが再び大きく変わり始めているのだと思う。

今後のテスラの動向を注視していきたい。

桃田健史

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