#EVシフト
TEXT:高橋 優
EVシフトの減速は幻想!? 世界規模でみたEVシェア率の伸びは想像を超えていた!

BEVとPHEVの合計販売台数は163.5万台超 2025年3月における世界全体のEV販売動向が判明しました。EVシフト減速といわれるなか、EVシフト減速のリアルとともに、2025年シーズンに注目するべき最新EV動向を含めて解説します。 まず初めに、最新のデータが判明している2025年3月の世界全体でのBEVとPHEVの合計販売台数は163.5万台超に到達し、前年同月比+24.4%となりました。成長率の内訳について、PHEVは前年同月比+14%だった一方で、BEVは+32%で成長しており、PHEVよりも販売台数が伸びています。 さらに、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数のシェア率も、3月単体では25%に到達しています。前年同月が19%だったことを踏まえると、シェア率の伸びが加速している状況です。 次に、BEVに絞った販売動向について、1月から3月のQ1合計におけるBEV販売台数とBEVシェア率の変遷を2023年シーズンから追ってみると、黄色で示されたBEVの販売シェア率は9%、10%、そして14%とシェア率が上昇中です。2025年通期でのBEVシェア率20%にも期待可能でしょう。 また、世界の主要マーケットと比較したBEVシェア率の変遷について、日本市場のBEVシェア率は3月単体で1.56%と低迷しているものの、世界全体では17%に到達しており、主要先進地域において日本のBEVシェア率がまったく伸びていない様子も見て取れるでしょう。 次に、このEVシフト減速という言説が間違っているといえる世界全体のEVシフト成長の流れにおいて、人気のEVを分析しましょう。まず2025年Q1におけるBEVとPHEVの販売台数ランキングトップ20を見てみると、トップからテスラ・モデルY、BTD Song、テスラ・モデル3、ジーリーXingyuan、BYDシーガル、Hong Guang Mini EV、シャオミSU7と続いています。 また、トップ20のうちBYDが9車種、ジーリーが3車種ランクイン。とくにトップ20のうち、テスラと中国勢以外でランクインできたのはフォルクスワーゲンID.4だけであり、BYDやジーリーを筆頭とする中国勢の躍進の様子が見て取れます。 その一方で、それらの人気車種を2024年Q1での販売台数と比較しましょう。まず注目するべきは、ジーリーのXingyuan、Starship 7、シャオミSU7、BYD Qin L、Seal 06、Xpeng Mona M03、Li Auto L6であり、これらは1年前には発売されていなかった新型モデルです。また、BYD Song、テスラ・モデル3、BYDシーガル、Hong Guang Mini EVは、前年比で販売台数を伸ばしているものの、テスラ・モデルY、BYD Qin Plus、Yuan Plusは前年比で販売台数が減少しています。BYD Qin PlusとYuan PlusはQin LやYuan Upが登場したことによる販売が鈍化したことが推測可能です。モデルYはモデルチェンジにおける買い控えと生産ラインの切り替えが要因として考えられます。 そして、この人気車種ランキングにおいて注目するべきさらなるポイントとして、中国とアメリカ、欧州という主要マーケットを抜いたその他のマーケットにおける人気EVランキングについて、トップからBYD Song、テスラ・モデルY、Vinfast VF3、BYD ATTO 3が人気です。とくにベトナムの振興メーカーVinfastの小型SUV「VF3」の快進撃には驚かされるでしょう。 また、ピックアップトラックセグメントについて、3月単体でトップに躍り出たのがBYD Shark 6です。Q1全体だと、フォードF-150 Lightningが販売台数トップを維持しているものの、このShark 6はオーストラリアやメキシコ市場などの一部マーケットでしか販売されておらず、ピックアップが人気のタイ市場をはじめとする東南アジアで本格的に発売がスタートすると、F-150 Lightningを抜くはずです。 Q1のテスラ・サイバートラックは約6300台と、F-150 Lightningを下まわるという販売低迷に見舞われています。一時は予約台数200万台に達したなどといわれていたサイバートラックの低迷は、在庫過剰、生産ラインの稼働率低下によるテスラ全体の収益性低迷の理由とも推測でき、今後の販売動向には注目が集まります。

TAG: #EVシフト #普及 #販売
TEXT:高橋 優
日産の6700億円赤字はさほど問題なし! それよりも直近「ワクワクする」クルマの計画がないことが問題

車両生産工場を17から10へ 日産の2024年度の決算が発表され、販売台数、収益性ともに悪化するという苦しい現状が判明しました。日産が今後に巻き返しを図ることができるのか、競合の決算内容とも比較しながら分析します。 まずこのグラフは、主要な自動車グループやメーカーの年間販売台数の変遷を示したものです。オレンジで示された日産は、断続的に販売台数を落としており、2024年シーズンの販売台数は334万8687台と、前年比でわずかにマイナス成長に留まっています。また、決算発表では2025年度における販売台数予測を325万台に設定してきているものの、トランプ関税の影響なども含めて、計画の実現性にも懸念が残ります。 そして、日産に大きくプレッシャーをかけ始めているとメディアでいわれているのが、北米市場における電動車シフト、および中国市場におけるEVシフトです。 北米市場では現状、日産はe-POWERを1車種も投入することができておらず、その上で、初投入は2026年の新型ローグと、2025年に投入することはできません。とはいうものの、北米市場においてはマツダとスバルもハイブリッド車の割合は極めて低く、その上で日産の2024年度における北米の販売台数は+3.3%とむしろ成長しています。 しかしながら、北米市場における問題は、販売奨励金の大幅増加という点でしょう。台あたりの販売奨励金増加による減益影響が大きくなっており、とくに直近の2025年1月から3月のQ1で大幅に増加しています。つまり、販売の質が低下しており、車両の価値が価格に見合っていない状況なのです。要するに、ハイブリッド車やガソリン車にかかわらず、そもそも現在の日産は北米で魅力的な車種をラインアップできていないといえるわけです。 そして中国市場は、現状大衆セダンのシルフィ一本足打法という販売構成であり、このシェアもBYDやジーリーのPHEVに大きなプレッシャーをかけられています。 その一方、日産は4月末からEVセダン「N7」の発売をスタートしており、発売してすぐに1万台の受注を獲得するなど好調です。N7以降の新型EVとともに、そのシルフィ一本足打法からの転換が急務となっています。 そして、そのような背景において公開された2024年度決算について、まず日産の四半期販売台数は約87万台と、前年同期比でマイナス成長となりました。売り上げは3兆4900億円で前年比同等規模を維持しました。 また、日産への懸念が在庫車両の高止まりです。直近の25年Q1(2024年度第4四半期)では在庫が減少しているように見えるものの、これは北米の在庫車が多額のインセンティブによって一定数を捌けたと分析可能であり、やはり持続可能な状態ではないといえます。 いずれにしても、この1-2年、インセンティブを少なくすることで販売の質が向上したと説明されていたものの、その実態というのは、半導体不足の影響による生産制限によって在庫車両が減少していただけだったわけです。 次に、粗利益とマージンの変遷を見てみると、直近の四半期のマージンは12.15%と、Covid-19以降では最低の収益性に低迷しています。販売台数が低下していることで、工場の稼働率が上がっていないことが大きいと推測できます。 そして日産は、工場の稼働率を向上させるために、グローバル全体における車両生産工場を、現在の17拠点から10拠点へと大幅削減する方針を表明しました。これは、日本国内も対象であり、稼働率の低い湘南工場などが閉鎖される可能性があります。 さらに、販管費や研究開発費を差し引いた営業利益について、直近の四半期の営業利益率は0.17%と、前年同四半期の2.57%と比較しても急減速しています。日産の経理上におけるドル円は、前年同期比で4円の円安であり、その分収益性には50億円のプラス要因と説明されています。四半期単体の営業利益は58億円だったことから、円安でなければ利益がほとんど出ていないという水準です。

TAG: #EVシフト #決算
TEXT:小林敦志
世界中の自動車メーカーの工場が集結するメキシコ! ついに立ちあがった自国量産BEVブランド「サクア」とは?

メキシコでは日産車がもっとも多く売れている 同盟国なども巻き込みながら世界を混乱させている、アメリカ・トランプ政権の関税政策。いち早く追加関税が課されたのが、アメリカの隣国であるカナダとメキシコ。カナダは激しく反発しているが、メキシコも黙って受け入れているわけではない。 かつては北米自由貿易協定(NAFTA)を結び、いまではそれがアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)となり、強固な経済的協力関係が続いていただけに、3カ国の関係が混乱してしまったのも頷ける。 メキシコは主にアメリカ国内向けとなるが、世界の大手自動車メーカーの生産拠点が多く存在する。JETRO(日本貿易振興機構)資料によると、2024歴年締めでのメキシコ国内での大型バスとトラックを除く年間自動車生産台数が398万9403台なのに対し、メキシコ国内での新車販売台数は149万6797台となり、生産台数に占める国内販売台数比率は約37%となっている。アメリカと国境を接する地域を中心にアメリカで使われていた中古車が大量に入ってきていることも、国内消費量が少なめに感じる背景にあるのかもしれない。 生産台数ではGM(ゼネラルモーターズ)がトップとなるものの、メキシコ国内での販売台数となると日産が25万6227台でトップとなっている。海外市場における日系ブランド車での販売ランキングでは、トヨタがトップとなることがほとんどといっていい状態なので、メキシコは意外なほど特殊な市場といえるのかもしれない。 筆者はアメリカ西海岸の街サンディエゴと国境を接するメキシコ側国境の街ティファナで、コレクティーボと呼ばれる乗り合いバスのような公共交通機関でキャラバンがよく使われているのを目撃している。一般的にはトヨタ・ハイエースが海外ではコレクティーボのような需要のほか、ホテルが用意するシャトルバスやチャーターバスなどになっていることが多いのだが、調べてみるとメキシコ国内ではハイエースのようなニーズはキャラバンが目立って担っている(ここ最近はメルセデスベンツ・スプリンターなどが進出しているが……)。 また、ティファナあたりのタクシーでは、アメリカで使い古されたシボレーやフォードのフルサイズセダンが定番だったが、そのうち日産セントラとなってきた。1993年に7代目日産サニーは日本国内での生産を終了したが、メキシコ国内ではその後も日産ツルとして2016年まで生産及び販売を続け、タクシーとしてもメキシコ国内で大活躍した。公共交通機関で日産車の需要が多いことで、これが消費者の支持を得てメキシコで強みを見せているようである。ちなみに新車販売台数全体の約4割が日系ブランド車となっている。

TAG: #EVシフト #メキシコ
TEXT:高橋 優
日本のEVシェアはたった1%台! この先続々投入される新型EVで停滞ムード解消なるか?

BEVとPHEVの販売台数は約6400台 日本国内における2025年4月のEV販売動向が判明しました。テスラ、BYD、ヒョンデそれぞれが新型モデルを投入することで販売を増加させた一方、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いています。2025年シーズンの国内EVシフトの展望を含めて解説します。 まず、2025年4月のBEVとPHEVの合計販売台数は約6400台と、前年同月比でわずかなプラス成長を実現しました。商用軽EVの日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は月末にならないと判明しないため、実際にはEV販売は少しプラスされます。前月である2025年3月の販売実績は1万1985台となりましたが、前年比−9.5%に留まりました。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数の比率について、4月は2.01%となりました。ここにN-VAN e:などの販売台数が合わさると、おそらく前年同月のシェア率2.12%を超える見通しです。ちなみに確定した3月度のシェア率は2.62%であり、前年同月に記録していた3.17%から下落しています。 さらにBEV単体の販売動向について、白で示されている輸入EVは4月に1763台と、前年同月比+51.2%と販売が大幅増加したものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は348台と、前年同月比で半減と落ち込みました。また、シェア率が確定した3月のBEVシェア率は1.56%であり、前年同月が1.89%だったことから、国内のBEVシフトが後退している様子が見て取れます。 また、現在の日本のBEV販売シェア率を世界の主要国と比較すると、日本はデータが確定した3月において1.56%と低迷しています。その一方で、3月の世界全体のBEVシェア率は17%に到達しており、2024年3月が13%だったことから着実にBEVシフトが進行中です。 日本は2025年の間に1%台というBEVシェア率の低迷を脱出できるのか、世界全体では2025年平均でBEVシェア率20%の大台にどこまで近づけるのかに注目でしょう。

TAG: #EVシフト #普及 #販売
TEXT:桃田健史
ただEVを作ってお終いじゃない! ソフトもインフラにも本気で取り組むホンダのEV事業が熱い!!

ホンダのEV事業に注目! EVシフトが踊り場。ここ1〜2年で、そういわれることが増えてきている。だが、自動車メーカー各社としては、中長期的にはEVシフトが確実に起こることを前提として、事業戦略を練っている。 なかでもホンダは、2040年にグローバル販売でのEV・FCEV(燃料電池車)100%を目指す。日系メーカーで、年次を決めて100%EVシフトを宣言しているのはホンダのみだ。 足もとで動いているホンダEV戦略は大きくふたつある。ひとつは、日米を中心とした「0シリーズ」。もうひとつは、中国に特化した「イエシリーズ」だ。 4月末に開幕した中国上海モーターショー(上海国際自動車工業展覧会)では、「広汽ホンダGT」「東風ホンダGT」を世界初公開した。ホンダは中国で、広州汽車と東風汽車のそれぞれと合弁事業を進めており、「GT」はレーシングマシンを連想させるトップモデルだ。 また、中国市場向けEVの駆動用バッテリーでは、CATLとのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを共同開発し、イエシリーズの第三弾に投入することも明らかにした。 0シリーズについては、米CES2025(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で、「サルーン」と「SUV」を世界初公開した。 注目されるのは、ホンダ独自の車載OS(オペレーティングシステム)として「アシモOS」を採用したこと。自動車産業界では近年、ソフトウェアに重きを置いた自動車の設計思想SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が競争領域として注目されているところだ。 ホンダとしては、次世代EV導入のタイミングで、クルマづくりを抜本的に変革する姿勢を社内外に向けて発信したといえるだろう。 また、EV普及のために重要な充電インフラについても、国や地域の社会状況に応じた対策を打つ。 たとえばアメリカでは、メルセデス・ベンツ、BMW、GM、ステランティス、ヒョンデ、キアと連携するEV高出力充電用を構築するための合弁事業「アイオナ」を設立した。 アイオナの充電施設では、CCS(コンボコネクター方式)やNACS(ノース・アメリカン・チャージング・スタンダード)など、多様な急速充電をユーザーに提供する。2030年にはカナダを含めて3万基の設置を目指す。 日本でも、軽EVのさらなる普及や0シリーズの導入、そして充電インフラとの連携に加えて使用済み電池のリユース・リサイクルなど、バリューチェーンにおける新しい仕組みづくりを進めているところだ。 これからも、グローバルにおけるホンダEV事業の動きに注目していきたい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:琴條孝詩
いくら急速充電器が増えても「加速」とか「ゼロエミッション」とかに興味がない人はいる! EVはそれでいいんじゃないか?

充電インフラの現実とBEV普及の壁 日本政府は2035年までに新車販売のすべてを電動車(BEV、PHEV、FCVを含む)にするという目標を掲げている。これは、カーボンニュートラルの実現に向けた国家的な方針で、乗用車に関しては「新車販売で電動車100%」を目指すと明言されている。しかし、現実的には、「本当にBEV(バッテリーのみの電気自動車)を無理に普及させる必要があるのか?」という疑問が浮かぶ。 CO2削減という観点から見れば、BEVの製造過程でもCO2は排出される。そのため、燃費性能に優れたHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)の普及だけでも十分な効果が期待できるのではないだろうか。むしろ、充電インフラの現状を考えると、BEVはその走りや静粛性、加速感といった特性を本当に愛する人だけが乗ればよいという考え方の人がいてもおかしくはない。 国内のBEV充電インフラは、近年急速に整備が進んでいるものの、依然として課題が多い。経済産業省の調査では、2024年3月時点で、国内のEV急速充電の設置数1万128基、普通充電(200V)3万195基という状況である。EV充電スタンドは上記の数にテスラ専用のスーパーチャージャー(SC)のステーション数128の急速充電器数が加わるが、いずれにしても普及率や設置数の面で、利用者の利便性を十分に支える水準には達していない。 また、都市部では急速充電器の設置スペースの確保が難しく、駐車料金が別途かかるケースも多い。地方では自宅充電がしやすい一方、公共充電スポットの利用頻度は限定的となる。さらに、長距離移動時の経路充電、とくに高速道路のサービスエリアでは混雑や台数不足が問題となっており、繁忙期には「充電渋滞」が発生することもある。 設置から8~10年が経過して老朽化する充電器も増えており、更新や維持のためのコスト負担が事業者の重荷となっている。一部の古いCHAdeMO充電器は故障や老朽化が進み、設置場所に行ってみると利用困難なケースがあったり、採算が合わず撤去されたりしているケースも少なくない。 以上のことを考えると、家庭用充電設備の設置ができない集合住宅住まいのユーザーや長距離移動が多いユーザーにとって、BEVの選択は依然としてハードルが高い。 一方、ガソリンスタンドの数は2023年度末で2万7414カ所。政府は、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」との目標を掲げているが、給油時間と充電時間の違いもあり、利便性としてBEVの充電環境は厳しいといわざるをえない。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:山本晋也
日本にいると「結局EVは浸透しなかった」と思われがちだがそれは特殊な市場! 海外では徐々にユーザーが増えている!!

日本のEV販売は明らかに減速している 日本では「EVは失敗」だとか「EVの販売は減速」といったニュースやコラムのタイトルを見かけることも多く、EVはオワコンであり、販売台数は減っているという認識が広まっている印象もある。 はたして、EV販売のファクトはどうなっているのだろうか。国策としてEV推しの中国を除き、日米欧のEVセールス状況を調査、2024年と2023年のデータを比べてみることにした。 まずは、我が日本における状況から見てみよう。結論をいえば、日本のEV販売は明らかに失速している。 2024年の乗用車(登録車・軽自動車)のEV販売台数は5万9487台。2023年は8万8152台だったので、3割以上も減っていることになる。 ※自販連・全軽自協の公表データをもとに筆者が集計した値。輸入車含む とくに軽EVの減速が目立つ。2023年には4万4161台も売れていたのに、2024年は2万5430台と、ほぼ半減しているイメージなのだ。ただし、軽EVの乗用モデルは日産サクラと三菱eKクロスEVという姉妹車(つまり性能的には同一)しか選択肢がなく、この性能の軽EVを求めるユーザーに行き渡ってしまったという見方もできそうだ。 欧州(EU圏)のEV販売状況はどうなっているのか。ここではACEAの発表値をもとに考察してみたい。そして欧州においてもEV販売は失速していた。とはいえ、2024年の販売規模は前年比マイナス5.9%と微減で、日本ほど激減しているわけではない。 しかも、EUについては2025年に入ってからEVが元気を取り戻している。1~2月のEV販売台数は25万台を超え、前年同期比28.4%増となっている。このあたりの数値は各国におけるEV補助政策の影響もあるので単純に販売状況=ユーザーニーズといえない部分もあるが、欧州については2024年に失速したEVが2025年に盛り返しているといえそうだ。

TAG: #EVシフト #新車販売
TEXT:桃田健史
本当にEV時代はくるのか? 「EVシフトは踊り場」は本当か? 電気自動車のいまの立ち位置

「EVシフトは踊り場」という報道が目立つ EVシフトが踊り場になった。そんな表現が、ネットやテレビのニュースで目立つようになったのは2024年に入ってからだろうか。それまでは、「日本はEVシフトに乗り遅れている」といった報道があったのが、一転して「ハイブリッド車の技術で先行する日本はグローバル市場で優位」といったニュースを見ることが少なくない。 そもそも、こうしたEVシフトはなぜ生まれたのか? EVの歴史を振り返ると、古くは1900年代初頭にニューヨークのマンハッタンでEVタクシーが採用されている。 その後はガソリンエンジンの発達により、EVは特殊なクルマという扱いが続いた。1990年の米カリフォルニア州のZEV規制(ゼロエミッションビークル規制法)がEV量産化を後押しするも、すぐに失速。 大量生産型のEVが初めて登場したのは、2000年代末から2010年代にかけての、三菱i-MiEVと日産リーフまで待たなければならない。 その時点でテスラは、まだ小規模なベンチャー企業にすぎなかった。 ところが、2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」をきっかけに、グローバルでEV関連事業に対する投資が一気に活発化する。

TAG: #EVシフト #ニュース
TEXT:桃田健史
EVの先行きはわからないが気がつけば選び放題! いまの日本は輸入車だけで7ブランド136車種ものEVが買える!!

輸入電動車は現在7ブランド・136モデル 最近、日本でもEVラインアップが一気に増えた。そう感じている人が少なくないだろう。とくに、輸入車でのモデル拡充が目立つ。 たとえば、11月中旬にはJR東京駅周辺に輸入車ブランドのEVや燃料電池車など数多く展示されたり、また筆者もドライバーとして参加したユーザー向けの公道試乗会が実施された。これは、輸入車関連企業がつくる業界団体、日本自動車輸入組合(JAIA)が実施した「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」だ。 その際、JAIAが提示したデータが興味深い。同イベントが開催された約4年前の2020年10月に電動車は、JAIA登録ブランドのうち10ブランドで20モデル。それが、2024年6月末時点で7ブランド・136モデルと急激に拡大している。 そうしたモデルは、コンパクトカーから大型SUV、さらに超高価格のスポーツカー、さらに二輪車など多種多様だ。 また、JAIAの上野金太郎会長によれば、「2024年上半期でJAIAの電動車販売台数が初めて1万台の大台を超えた」という。シェアで見ると16.7%。ただし、ブランド別で、しかもEVに限定した販売比率についてはJAIAとして公開していない。 また、グローバルにおけるEVシェアはどうなっているのだろうか。 これについても、メーカーやブランドによって、それぞれで電動車の定義が若干違うこともあり、EVに限定したシェアを抽出することは現時点で難しい。 そこで、市場全体での状況についてデータを紹介しておく。 欧州オーストリアの自動車関連大手のAVLが、日本国内で9月に実施したシンポジウムで公開したデータがある。 それによれば、7月時点でグローバルでのEV(及び燃料電池車、レンジエクスタンダー)の販売比率は14.4%だ。エリア別で見ると、やはりもっとも販売比率が大きいのは中国だ。中国で言うNEV(新エネルギー車)の販売比率は23.6%に及ぶ。 2010年代に世界一の自動車生産・販売国となった中国では、政府主導のNEV政策を推進してきた効果が大きい。 次いで、欧州が11.1%。ただし、欧州連合の執務機関である欧州委員会がこれまで推進してきた欧州グリーンディール政策における電動化関連法案が宙に浮いている状態であり、こうした販売比率が今後、さらに減少する可能性も否定できない。 メルセデス・ベンツやボルボなど、自社のEVシフト戦略を見直す動きもあるなか、メーカー各社の今後のEV販売比率の変化を予想することは難しい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:桃田健史
「ガソリン旧車価格が爆騰」「クルマを所有しなくなる」 数十年後の自動車社会はどうなるのか現実的に想像してみた

EVの普及と社会の変革は同時に行われるべき いまから十数年後の2040年代、さらにその先の2050年代。仮に、日本で新車購入できる自動車がEVのみになったら、どうなるのだろうか? あくまでも私見としての仮定を、いくつか紹介してみる。 たとえば、ガソリンスタンドの数が極端に少なくなっていて、ハイブリッド車の所有はかなり大変になっているのかもしれない。 EVではなくても、少なくともPHEVではないと、日常生活のなかで自動車を使うことが不便に感じるのかもしれない。 充電施設についても、自宅での基礎充電機器が量産効果によって価格が下がり、出力10kW程度が標準化になっているのかもしれない。そうなれば、電池容量が100kWh級でも、自宅でひと晩で出来るようになる。 または、交換式バッテリーシステムが一気に進化して、バッテリーパックの標準化も進み、充電するという感覚がなくなっているかもしれない。 国や地域によっては、期限を決めてガソリン車やディーゼル車を公道で使用することが禁止、または制限される時代になるかもしれない。その先には、内燃機関を搭載するハイブリッド車ですら、使用制限がかかるかもしれない。 こうした動きを、別の方向から見れば、ガソリン車の付加価値が一気に上がることも十分考えられる。実際、2020年代中盤の現時点でも、昭和の時代を感じるネオクラシックカーの中古車価格が一部車種では高騰する社会現象が起こっている。 それが、ガソリン車の使用禁止や使用制限が法的にかかれば、在りし日を思い起こすような一部のガソリン車はプレミアム価格になって、専用の売買市場のなかで取引されるようになるかもしれない。 また、サーキットなどのクローズドエリアで開催される、ガソリン車の試乗会や同乗体験会などもかなり高い料金設定でも、事業が十分成り立つようなビジネスモデルになるかもしれない。 以上のような予測は、EVをガソリン車の単なる代替として見た場合の話だ。だが、本来のEVシフトは、社会のなかで多く使われている電気というインフラを「クルマにも適用する」ことだと思う。つまり、EVの普及と社会の変革は同時進行で行われるべきことなのだ。 たとえば、大量生産・大量消費という「所有」から、シェアリングを基本とする「共有」への大きなシフトが考えられる。ただし、「所有から共有」といっても、カーシェア、ライドシェア、さらにサブスクといった小さな括りではない。もっと大きな時代の変化を、ユーザー自身が感じる社会がやってくるのかもしれない。 EVしか買えなくなる時代とは、そんな社会変化を伴うことになるのではないだろうか。

TAG: #EVシフト #普及

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