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EV時代はブレーキも多様化! 回生に加えて電動キャリパーやMR流体など新技術が続々検討されていた


TEXT:大内明彦 PHOTO:Continental/曙ブレーキ/TET編集部
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回生ブレーキの制動力は驚くほど強力だが……

バッテリーを電力源として電気モーターで走るEVには、内燃機関車にはない大きな特徴がある。HEV、PHEVも同じだが、電気を流すと回転して自動車の駆動力となる電気モーターは、逆に外からの力でモーターをまわすと発電機として機能することである。EVやHEVが走行中に、内燃機関車のエンジンブレーキと同じ操作(スロットルオフによるパワーオフの状態)をすると、タイヤがモーターをまわす形になり、その際にモーターが発電機として働き、その電気をバッテリーに充電することできる。

減速によって捨てていた運動エネルギーを電気エネルギーに変え、バッテリーに充電して再利用することから回生と呼ばれている。もともとは鉄道で使われてきた技術で、モーターに通電すると回転力(駆動力となり)、逆にモーターを外部の力でまわすと発電を行うという特性を有効に活用した方式が回生となる。

回生ブレーキを使用するEV

では、回生によって制動効果が得られるEVには、これまでのような機械式ブレーキ(油圧によって作動するブレーキシステム)は必要ないのか、という素朴な疑問が生じるかもしれないが、残念ながらというか、当たり前だが機械式ブレーキは必要である。

自動車にとって必要な制動作用には、ドライバーがブレーキペダルを操作して思ったとおりに車両を減速、停止することができる働きが欠かせず、とくに停止を意図した場合の正確な制動能力は必要不可欠である。

フットブレーキを踏み込んでいるイメージ

回生による制動効果(減速効果)は、実際のところ大きな力をもっている。たとえばレーシングカーになってしまうが、ル・マン24時間でHEVプロトのトヨタTS050の回生能力を尋ねた折に「減速効果はメカニカルブレーキを必要としないほど大きい」と答えてもらったことがある。

レーシングハイブリッドのTS050は内燃機関(ガソリンエンジン)と電気モーターによる合成動力だが、そのスペックは、ガソリンエンジン出力520馬力、モーター出力480馬力という公表値だった。逆にいえば、480馬力の出力をもつモーターの発電能力(減速能力)は、350km/hを超す超高速からの減速でメカニカルブレーキの助けを借りなくても間に合うほど強い力を発生(回生)できる、ということである。

トヨタのル・マンカーであるTS050

しかし、回生による制動効果に問題がないわけではない。制動コントロールに不可欠な減速加速度の制御が困難なのである。レーシングカーのように最大性能を求める環境ではそれほど問題にならないが、市販車のように快適かつ確実な制動Gの確保、維持には回生に頼るだけでは無理な話なのである。

また、低速時からの制動で、意図したポイントで車両を停止させる制動操作(作用)も回生だけでは困難だ。EV、あるいはHEV、PHEVでは、回生と機械式ブレーキの共存、協調制御が求められる状態だ。

ブレーキ協調制御のイメージ

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