メキシコでは日産車がもっとも多く売れている
同盟国なども巻き込みながら世界を混乱させている、アメリカ・トランプ政権の関税政策。いち早く追加関税が課されたのが、アメリカの隣国であるカナダとメキシコ。カナダは激しく反発しているが、メキシコも黙って受け入れているわけではない。
かつては北米自由貿易協定(NAFTA)を結び、いまではそれがアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)となり、強固な経済的協力関係が続いていただけに、3カ国の関係が混乱してしまったのも頷ける。
メキシコは主にアメリカ国内向けとなるが、世界の大手自動車メーカーの生産拠点が多く存在する。JETRO(日本貿易振興機構)資料によると、2024歴年締めでのメキシコ国内での大型バスとトラックを除く年間自動車生産台数が398万9403台なのに対し、メキシコ国内での新車販売台数は149万6797台となり、生産台数に占める国内販売台数比率は約37%となっている。アメリカと国境を接する地域を中心にアメリカで使われていた中古車が大量に入ってきていることも、国内消費量が少なめに感じる背景にあるのかもしれない。
生産台数ではGM(ゼネラルモーターズ)がトップとなるものの、メキシコ国内での販売台数となると日産が25万6227台でトップとなっている。海外市場における日系ブランド車での販売ランキングでは、トヨタがトップとなることがほとんどといっていい状態なので、メキシコは意外なほど特殊な市場といえるのかもしれない。
筆者はアメリカ西海岸の街サンディエゴと国境を接するメキシコ側国境の街ティファナで、コレクティーボと呼ばれる乗り合いバスのような公共交通機関でキャラバンがよく使われているのを目撃している。一般的にはトヨタ・ハイエースが海外ではコレクティーボのような需要のほか、ホテルが用意するシャトルバスやチャーターバスなどになっていることが多いのだが、調べてみるとメキシコ国内ではハイエースのようなニーズはキャラバンが目立って担っている(ここ最近はメルセデスベンツ・スプリンターなどが進出しているが……)。
また、ティファナあたりのタクシーでは、アメリカで使い古されたシボレーやフォードのフルサイズセダンが定番だったが、そのうち日産セントラとなってきた。1993年に7代目日産サニーは日本国内での生産を終了したが、メキシコ国内ではその後も日産ツルとして2016年まで生産及び販売を続け、タクシーとしてもメキシコ国内で大活躍した。公共交通機関で日産車の需要が多いことで、これが消費者の支持を得てメキシコで強みを見せているようである。ちなみに新車販売台数全体の約4割が日系ブランド車となっている。