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日産の6700億円赤字はさほど問題なし! それよりも直近「ワクワクする」クルマの計画がないことが問題


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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車両生産工場を17から10へ

日産の2024年度の決算が発表され、販売台数、収益性ともに悪化するという苦しい現状が判明しました。日産が今後に巻き返しを図ることができるのか、競合の決算内容とも比較しながら分析します。

まずこのグラフは、主要な自動車グループやメーカーの年間販売台数の変遷を示したものです。オレンジで示された日産は、断続的に販売台数を落としており、2024年シーズンの販売台数は334万8687台と、前年比でわずかにマイナス成長に留まっています。また、決算発表では2025年度における販売台数予測を325万台に設定してきているものの、トランプ関税の影響なども含めて、計画の実現性にも懸念が残ります。

グラフ

そして、日産に大きくプレッシャーをかけ始めているとメディアでいわれているのが、北米市場における電動車シフト、および中国市場におけるEVシフトです。

北米市場では現状、日産はe-POWERを1車種も投入することができておらず、その上で、初投入は2026年の新型ローグと、2025年に投入することはできません。とはいうものの、北米市場においてはマツダとスバルもハイブリッド車の割合は極めて低く、その上で日産の2024年度における北米の販売台数は+3.3%とむしろ成長しています。

しかしながら、北米市場における問題は、販売奨励金の大幅増加という点でしょう。台あたりの販売奨励金増加による減益影響が大きくなっており、とくに直近の2025年1月から3月のQ1で大幅に増加しています。つまり、販売の質が低下しており、車両の価値が価格に見合っていない状況なのです。要するに、ハイブリッド車やガソリン車にかかわらず、そもそも現在の日産は北米で魅力的な車種をラインアップできていないといえるわけです。

表

そして中国市場は、現状大衆セダンのシルフィ一本足打法という販売構成であり、このシェアもBYDやジーリーのPHEVに大きなプレッシャーをかけられています。

その一方、日産は4月末からEVセダン「N7」の発売をスタートしており、発売してすぐに1万台の受注を獲得するなど好調です。N7以降の新型EVとともに、そのシルフィ一本足打法からの転換が急務となっています。

日産N7

そして、そのような背景において公開された2024年度決算について、まず日産の四半期販売台数は約87万台と、前年同期比でマイナス成長となりました。売り上げは3兆4900億円で前年比同等規模を維持しました。

グラフ

また、日産への懸念が在庫車両の高止まりです。直近の25年Q1(2024年度第4四半期)では在庫が減少しているように見えるものの、これは北米の在庫車が多額のインセンティブによって一定数を捌けたと分析可能であり、やはり持続可能な状態ではないといえます。

いずれにしても、この1-2年、インセンティブを少なくすることで販売の質が向上したと説明されていたものの、その実態というのは、半導体不足の影響による生産制限によって在庫車両が減少していただけだったわけです。

グラフ

次に、粗利益とマージンの変遷を見てみると、直近の四半期のマージンは12.15%と、Covid-19以降では最低の収益性に低迷しています。販売台数が低下していることで、工場の稼働率が上がっていないことが大きいと推測できます。

グラフ

そして日産は、工場の稼働率を向上させるために、グローバル全体における車両生産工場を、現在の17拠点から10拠点へと大幅削減する方針を表明しました。これは、日本国内も対象であり、稼働率の低い湘南工場などが閉鎖される可能性があります。

生産の再編のイメージ

さらに、販管費や研究開発費を差し引いた営業利益について、直近の四半期の営業利益率は0.17%と、前年同四半期の2.57%と比較しても急減速しています。日産の経理上におけるドル円は、前年同期比で4円の円安であり、その分収益性には50億円のプラス要因と説明されています。四半期単体の営業利益は58億円だったことから、円安でなければ利益がほとんど出ていないという水準です。

グラフ

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