TEXT:岩尾 信哉
ソニー・ホンダモビリティ、CES2023にてEVブランド「アフィーラ」のプロトタイプを発表
2023日1月5日(米国時間)に、世界的な家電IT見本市であるCES(正式名称、コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの意)が米国ネバダ州ラスベガスで開幕した。ソニーとホンダが設立した合弁会社であるソニー・ホンダモビリティ株式会社(以下、SHM)は、これに先立つ4日に開かれたソニー・グループのプレスカンファレンスにおいて、新たにEVブランド「AFEELA」(アフィーラ)を立ち上げることを表明、プロトタイプを公表した。 注目を集めたプロトタイプEV CESは多くの企業が先端デジタルエレクトロニクスを披露する場であり、ソニー・グループはプレスカンファレンスにおいて、ゲームやVR技術など様々なインフォテインメント・ビジネスの展開について明らかにした。なかでも、昨年9月に設立されたSHMがイベント前にティザー公開していたEVコンセプトカーが、どのようなモデルとして登場するのかが注目されていた。 プレゼンテーションが中盤過ぎまで進むと、SMHの野泰秀会長兼CEOが登壇。プロトタイプEVを披露するとともに、新たにEVブランド「AFEELA」を立ち上げることを明らかにした。その名はSHMが考えるモビリティ体験の中心に在る”FEEL”を表しているという。 これまでSMH設立前にソニーは独自にコンセプトカーを制作していたが、今回披露されたプロトタイプを見ると、エッジを廃したラウンドフォルムや左右に伸びた液晶インストルメントパネルのデザインなど、内外観ともによりシンプルに仕立てられていることが特徴といえる。 スペックの概略について触れておくと、全長×全幅×全高:4,895×1,900×1,460mm、ホイールベース:3,000mm。前:ダブルウィッシュボーン式、後:マルチリンク式のサスペンションを与え、駆動方式はAWDとされている。 ボディサイズを見ると、北米市場において競争激しい乗用セダンのカテゴリーに含まれ、アコードやトヨタ・カムリと同格ながら、ホイールベースの長さが特徴といえる。 最先端のIT技術を装備 今回披露されたプロトタイプに与えられた技術的トピックを挙げれば、室内に設置されたカメラを含め、車両の内外に計45個のカメラ、センサーなどを装備する。これらを統合制御するために、最大 800TOPS(1秒あたりの演算処理回数、単位:兆回。Tera Operation Per Secondの略語)の演算性能を持つECUを搭載。運転者が介さず走行する、レベル3の自動運転の実現を目指すとしている。 エンターテインメント企業群としてのソニー・グループ傘下にあるSMHの成り立ちから想像されるとおり、インフォテインメント技術の採用は誰もが期待するポイントだ。 車両における「リアルとバーチャルの世界の融合」はIT技術のテーマとしてよく耳にする言葉だ。SMHは車両における電子技術を駆使して「移動空間をエンターテインメント空間、感動空間へと拡張」することを目指す。具体的には、Epic Games(ソニーが資金を投資)とモビリティにおける新しい価値観やコンセプトの検討を開始するという。 さらにSMHは車両向けの電子技術を進化させることで「モビリティのインテリジェント化」を進めるとしている。具体的には、AD/ADAS、HMI/IVI、テレマティクスなどの開発に関して、主要機能にモバイル技術を手がけるクアルコム社傘下のクアルコム・テクノロジーズ社と協業を図る。同社が開発する電子プラットフォーム「Snapdragon Digital Chassis」を利用して、装置やシステムの動作に必要な機能のすべてをひとつの半導体チップに実装するSoC(System On a Chipの略語)を採用予定とのこと。SHMは次世代のモビリティ体験の実現に向けて、同社と戦略的な技術パートナーシップを築いていくとしている。 今回のCESではメルセデスやBMW、フォルクスワーゲンなどが出展、車両技術やコンセプトモデルを紹介している。いっぽうで、日本勢が出展を控えたのは、本来家電IT見本市であるCESに対する、自動車メーカーとしてのスタンスの微妙な違いが表れているようだ。 注目される「アフィーラ」の量産EVが世に送り出される時期について、SMHは今回披露されたプロトタイプをベースに開発を進め、2025年前半に先行受注を開始。同年中の発売を予定しており、デリバリーは2026年春に北米市場から開始するとしている。 ソニーのセンサー技術とホンダの安全技術、様々なIT技術を組み合わせ、世界最高水準のAD/ADASを目指すとしている「アフィーラ」のEVがどのような形で姿を現すのか、期待して待ちたい。