新型N7のデザインは日産の窮地を救うか?
東風日産により中国向けに作られたセダン、N7が大評判になっています。今年5月に発売後、わずか12時間で1万台以上を受注、6月までにじつに2万件の予約があったとされます。社長の交代劇など、苦境が伝えられる最近の日産にとっては久々の朗報ですが、ここではデザインの面からその評判の理由に迫ってみたいと思います。
●流行最先端のスタイルで市場投入
新型N7は、日産が2027年の夏までに投入を予定している9車種の第一弾として発売された高級セダン。2024年の北京モーターショーに出品された「日産エポック・コンセプト」の市販車版となります。
全長4930mm×全幅1895mm×全高1487mm、ホイールベース2915mmの堂々としたサイズはフーガに匹敵するもの。その伸びやかなスタイルに対し、「超カッコいい!」「日本でも売ってほしい!」との声が上がっているのです。その好評の理由はどこにあるのか、今回は3つの視点で考えてみたいと思います。

まずひとつはサイズを含めた基本のシルエットです。N7はいわゆる4ドアクーペスタイルで、まさに流行ど真ん中のフォルム。とりわけ欧州プレミアムブランドではすっかり定着したスタイルですが、考えてみれば日産車ではあまり見られないスタイルです。
それを踏まえて写真を見ると、リヤデッキの短いファストバック的なボディは、あえて奇をてらわないじつに素直な造形で、まさに万人にウケるプロポーションとなっているのです。

ふたつ目は、いかにもEV(N7にはPHEVもあり)というシンプルなデザインです。まるでテスラのようなグリルレスのフロントフェイスをはじめ、横一文字の前後ランプ類、強いキャラクターラインをもたないサイド面など、もはや記号的といえるほどの徹底ぶり。さらに、サッシュレスドアの面一感がこれをあと押ししています。
日産は「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」なるデザインフィロソフィを掲げ、繊細でシャープな造形を展開していますが、N7ではそのエッセンスがほとんど感じられないのです。これは、同時期に発表された新型セントラとの違いを見れば明らかで、あえてクセをなくした造形といえます。

●意図的に日産らしさを隠したスタイリング?
3点目は魅力的なインテリアです。比較的ミニマムな造形は最近の日産車的ですが、2本スポークステアリングをはじめ、その徹底ぶりが目立ちます。一方で、チャコールグレーと青竹色でコーディネイトされたシートやステアリング、ドア内張りなどは、上質な素材も相まってこれまた多くの人にウケそうな空間になっています。

こうして検証してみると、N7はあえて日産らしさを強く打ち出していないことに気が付きます。例のVモーションも最小限の表現で、それこそ新型セントラとは大違い。そして、流行ど真んなかのスタイルでありつつ、特段新機軸なところが見当たらないのも特徴で、エンブレムがなければ日産車とは気付かないスタイルなのです。
その結果、日産車を初めて買ったユーザーがじつに70%という状況に結びついていると考えられます。これらがすべて意図的に進められたとすれば、じつに戦略的な企画といえるでしょう。

さて、「日本でも売ってほしい!」という声についてですが、セダン離れの側面も含め、このサイズはさすがに大き過ぎるかと思えます。もし、カローラやマツダ3くらいのサイズでこのスタイルを再現できれば、一定数のニーズはあるかもしれませんね。







































































