コラム
share:

EVならカタログ数値超えの電費も夢じゃない……のにみんな出せないのはなぜ? 大切なのはエンジン車の乗り方を捨てたEV特有の操作だった


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:TET 編集部
TAG:

カタログ表記の電費と実走行の電費には差がある

電気自動車(EV)であるか、エンジン車やハイブリッド車(HV)などであるかを問わず、諸元表に記された電費(または燃費)が、実走行での数字と異なることはめずらしくない。

理由のひとつは、諸元表に記されるモード測定では空調を使わないからだ。これは、乗用車では極めてまれであるはずだが、空調を装備しないクルマがあった場合に、それでもすべての車両が同じ基準で性能を比較できるようにするための措置である。

エアコンのクライメートコントロール

空調を利用すれば、電費(または燃費)が悪化することは誰もが経験しているのではないか。そして、春や秋など、必ずしも空調を必要としない季節に運転すると、冬や夏に比べ電費が向上することも体験済みだろう。とはいえ、車内温度を自動的に調整するオートエアコンディショナーの装備が普及するに従い、空調のスイッチを入れっぱなしにして走る人もまた多いのではないか。

そうなると、諸元表に記載された電費を超えることはなおさら期待しにくくなる。

しかし、私の実体験からすると、EVでは諸元値を超えることも不可能ではないといえる。私が乗るサクラの場合、電費に相当する交流電力消費率のWLTCモード値(諸元表の値)は、124Wh/kmとある。これを1kWhあたり何km走れるかに換算すると、8.064km/kWhになる。そしてこの表記が、メーター上に表示される。

日産サクラの走行シーン

しかし、実電費で9km/kWhを比較的容易に出せるし、過去3年間使ってきた実績からすれば、10km/kWhを下まわらない状況だ。これを諸元表記になおすと、100Wh/kmとなり、1km走るのに必要な電力が20%近く改善されることになる。その分、一充電走行距離も当然延ばせる。

ただし、それにはEVの特徴を活かした運転の仕方が必要だ。

まず、モーターはエンジンに比べ低速トルクが格段に大きく、しかもそのトルク値は、ガソリンのターボエンジン車に匹敵するほどだ。そこで、走行モードの選択肢があるEVなら、エコモードでも十分な加速が得られるはずだ。

日産サクラのメーター表示

次に、回生を最大に利用するため、サクラの場合はe-Pedal(イー・ペダル)のスイッチを入れるのはもちろん、シフトレバーをDではなくBに入れて運転する。ただし、高速道路では、回生が効き過ぎないようDレンジに切り替える。

サクラは、アクセルのワンペダル運転で停止までできないけれども、上記の設定で運転すれば、停止以外はほぼアクセル操作だけで走れる。こうして走ると、夏冬を問わず10km/kWhの電費はもちろん、空調を使わない季節には12km/kWhも視野に入ってくる。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
ジープもフィアットもテスラのスーパーチャージャーで充電できる! ステランティスの傘下14ブランドがNACS規格採用で大きく変わる充電規格の勢力争い
「日産リーフ」の広告かと思いきやこれはスマホの充電器? 体験型屋外広告「BATTERY WALL」にギャルもびっくり
「BEVですか?」→「マルチパスウェイです」を徹底するトヨタ! EVにこだわらない姿勢で今後も世界で支持される予感がビンビンに伝わってきた【ジャパンモビリティショー2025】
more
コラム
EVならカタログ数値超えの電費も夢じゃない……のにみんな出せないのはなぜ? 大切なのはエンジン車の乗り方を捨てたEV特有の操作だった
東京大学柏キャンパスに設置されている小野測器の1軸型台上試験装置(筆者撮影)
高度な電動車になればなるほど高精度な計測器が不可欠! 東大と小野測器が研究開発する台上試験装置の万能っぷり
中国でバカ売れの「N7」は日産の救世主となるか? 日本メーカーが苦しむ中国市場で人気車を生み出せたワケ
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
見どころはスーパーワンプロトタイプだけじゃない! 全メーカー中でもっともモビリティショーしていたホンダは陸・海・空に加えて宇宙にも進出か【ジャパンモビリティショー2025】
スーパーオートバックスかしわ沼南に90台のEVとオーナーが集合してゆる〜く懇親! 「EV MEET 2025 AUTUMN」を開催
EVらしさをなるべく廃したスタイリングで乗り換えを自然に! スズキが軽EVコンセプトカー「Vision e-Sky」で考えたのはEVであることを気づかれないことだった【ジャパンモビリティショー2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択