2025年2月
TEXT:高橋 優
新型メルセデス・ベンツEQSをロングランで試した! 日本の急速充電設備だと充電性能はやや不満!!

新型EQSの航続距離&充電性能をテスト! メルセデスのフラグシップEVである新型EQSで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。とくに真冬にどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 ⚫︎主要スペック(※は推定値) ・搭載バッテリー容量(グロス/ネット):※125/118kWh ・日本WLTCモード(WLTCモードクラス2)航続距離:759km ・EPA航続距離:※601km ・最大充電出力/SOC 10-80%充電時間:150kW/53分 ⚫︎装着タイヤ ・255/45/R20 ・Goodyear Eagle F1 Asymmetric 5 MO ・空気圧:2.6(適正値2.6) *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下の通りです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%付近までサービスエリア下り線で充電した後、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%程度以下まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のEQSの場合は21℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で0.7%の下振れ) 結果:蓮田SA下り→福島飯坂IC→蓮田SA上り ・走行距離:495.2km ・消費電力量:97%→8% ・平均電費:5.04km/kWh(198.4Wh/km) ・外気温:-2.5℃〜5℃ 航続距離テストの結果から、充電残量100%状態からSOC0%になるまで、556kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のEQSの場合は21℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で0.7%の下振れ) 結果:蓮田SA下り→佐野藤岡IC→蓮田SA上り ・走行距離:76.6km ・消費電力量:90%→65.5% ・平均電費:4.44km/kWh(225.5Wh/km) ・外気温:0.5℃〜3℃ ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、511kmを走破可能であることが確認できました。 *充電性能テスト ・使用充電器:150kW級急速充電器(ABB製/ブーストモード/空冷ケーブル) ・SOC10%〜80%充電時間:45.5分 ・最大充電出力(SOC):145kW(36%) ・30分回復航続距離(航続距離テストベース):257km

TAG: #充電 #長距離
TEXT:山本晋也
まるでペットのようにゴミ収集車が人についていく! 三菱ふそうの自動運転技術にビックリ!!

自動追尾システムは自動運転レベル2相当 2024年10月、幕張メッセにおいて「ジャパンモビリティショーBIZウィーク2024(以下、JMS BIZ2024)」がデジタルイノベーションの総合展示会であるCEATECと共催するカタチで開催された。 JMS BIZ 2024の狙いは、自動車メーカーとスタートアップ企業の出会いの場となること。各社の強みを活かした「共創」のきっかけになることを目指していた。自動車産業という枠を超え、移動手段にとどまらず、社会貢献や新たな価値を創出する「モビリティ産業」へと進化することが期待される内容だったのは、多くの報道で目にしたことだろう。 そんなJMS BIZ 2024において、大きな柱となっていたのがカーボンニュートラルだった。主役はEVに代表されるゼロエミッションビークルだったのだ。さらに、現在のトレンドである自動運転テクノロジーも欠かせない要素なのはいうまでもない。 カーボンニュートラルと自動運転、そして新しい価値の創出……そうしたイベントテーマをまさしく具現化していた一台といえるのが、三菱ふそうトラック・バスが展示していた「eキャンター・センサーコレクト」であろう。 一見すると、グラデーションカラーとなっているパッカー車(ごみ収集車)だが、ベースに量産EVトラックである「eキャンター」を使用した、れっきとしたゼロエミッションのパッカー車である。 それだけではない。キャビン前方の左右に触角のような突起物が確認できるだろうが、これはサイドミラーであり、前に向けてニコン製のカメラが収められている。加えて後方を確認するためのカメラやボディサイドの超音波センサーなどで周囲の状況を検知できるようになっている。 こうしたセンサーを使って、接近する歩行者などを検知すると停車したり、前方に駐車車両があるときは自動で避けたりすることができるという。ここまでであれば、よくある自動運転の実験車といえるが、「eキャンター・センサーコレクト」のすごいところは自動追尾機能を有していることだ。 ごみ収集の現場を想像すればわかるように運転手や作業員の方々は、降りてはごみを回収、また乗り込んでパッカー車を移動といった作業を繰り返している。住宅街など近距離に多くのごみ集積場があるといったシチュエーションでは、乗り降りの手間は無視できない負担となることは容易に想像できる。 そこで、「eキャンター・センサーコレクト」は、キャビンから降りた人物を運転手として認知、その後ろを自動追尾することにより、次のごみ集積場まで移動できるようにした。これにより乗降による負担を軽減することを目指している。また、運転手はWi-Fiでつながった端末によって車両をコントロールできる。そのほかごみ集積場の位置を登録して、そこで停止することもできるという。 結果として、外から見ていると、人間の後ろを無人のパッカー車がついていくといった様子になる。まさに未来のごみ収集シーンを実現する1台といえる。 ただし、「eキャンター・センサーコレクト」の自動追尾機能は、いわゆる無人走行というわけではない。あくまで運転手が周囲の安全を確認していることが前提であり、運転の主体は運転手にある。いわゆる、SAE自動運転レベル分けでいうと、レベル2相当になる。そのため、自動追尾走行についても低速に限られる。もっとも、自動追尾の性格からして、人間より速く走る必要はないわけだが……。 なお、この「eキャンター・センサーコレクト」は、2023年に川崎市と共同で実際にごみ収集を行うといった実証実験を実施済みというから実績あるシステムともいえる。自動追尾のメリットを確認すると同時に、さまざまな課題も見えてきたという。順調に開発は進んでいるといえそうだ。 はたして近未来のごみ収集シーンでは、無人パッカー車が道路脇を移動している姿を見ることができるのだろうか。しかもEVであれば、騒音も少ないというメリットもある。一日も早く、「eキャンター・センサーコレクト」の実用化・量産化を望みたい。

TAG: #eキャンター・センサーコレクト #パッカー車 #三菱ふそう
TEXT:御堀直嗣
「日本の急速充電器って遅くない?」にちょっと待て! 「急速充電器=ガソリンスタンド」という考え方自体を変えるべき

2013年に急速充電器の整備が本格化 急速充電器の高出力化について、日本は欧州に比べ性能水準が低いとの評価がある。しかし、どこまで高性能化すればよいのかも、検討する必要があるだろう。 そもそも、急速充電器の整備が本格化したのは、2009年に三菱i-MiEVが発売され、2010年に日産リーフが発売されて以後の、2013年になってからだ。当然ながらそれを牽引したのは日本だ。 経済産業省が乗り出し、1005億円という途方もない予算で補助金を用意した。ただし、対象が設置費用の全額ではなかったため、トヨタ、日産、ホンダ、三菱自の4社が共同で自腹となる設置費用分を補助し、実質ゼロ円で急速充電器を設置できるようにあと押しした。そして、2014年までに急速充電器を4万基、普通充電器を6万基、計10万基整備する目標を打ち出した。 一方、現在の状況はというと、今年6月の経済産業省の報告では、急速充電器が1万口を超え、普通充電器が3万口を超えたとある。この実績と比較すれば、10年前の目標がいかに大きすぎたかが伺える。 それを批判するのは簡単だが、それほど、10年前は充電器の必要性や需要動向を見極めきれない状況にあったといえなくもない。数値目標の背景にあったのは、全国のガソリンスタンドの数だったはずで、電気自動車(EV)の充電における優先順位に対する知見も不足していた。 したがって、いくら設置費用がタダだといわれても、維持管理や電気代はどうするのかとの不安が、設置場所の施設側にあった。また、どれほど高性能な急速充電器を設置する必要があるのかどうか、疑問も多かった。 対する市販EV側も、登録車となる初代リーフでさえ車載バッテリー容量は24kWh(キロ・ワット・アワー)で、30kWの充電出力があれば、30分で8割近い充電が可能になる。それ以上の高価な、あるいは維持費のかかる高性能な急速充電器を設置しようという意欲につながらなかった。 米国のテスラは、独自に充電網を構築したので、CHAdeMOと関係なく、大容量バッテリー向けの高性能急速充電器の設置を独自に進めた。しかも、自動車メーカー(テスラ)自ら費用を支出し、当初は無料で充電できるような施策をとった。 この時点で、日本のみならず世界のほかの自動車メーカーは、自ら充電網を整備し、無料で充電できるようにするなど考えもしていなかった。なぜなら、ガソリンスタンドを経営するのは石油会社とその関連企業であるからだ。自動車メーカーの仕事は、商品性に優れたEVを作ればよいとしか考えなかった。ここに、EVに対する知見の不足が如実に表れている。

TAG: #急速充電 #急速充電器
TEXT:斎藤充生
子どもに大人気の電動バギーに大迫力のエアロキットや色が変わるフィルムまで登場! 大阪オートメッセのEV関連出展物はどれもユニークすぎた

大胆な「みきゃんカラー」で子どもたちに大人気 ディアパソン C580 Fork3 ヤマハが2026年内の発売を目指して開発を進めている小型特殊規格の低速EV「ディアパソン C580」は、この大阪オートメッセで新たに「オトナの隠れ家」をコンセプトに開発されたトレーラーを牽引した「ディアパソン C580 Fork3」を出展。 岡山県の両備テクノモビリティーのトレーラーを使用し、愛媛県のフィーストが改造を担当。外装には愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」が大胆に描かれ、瀬戸内色の強いコンセプトモデルになっている。 ヤマハがかつて販売していた電動バイクのEC-02もみきゃんカラーにカスタムされ、トレーラー内でホビー用のバイクを整備して、外を走りまわるような使用方法を提案。トレーラー内の電源はもちろんポータブル電源を使用しており、ディアパソンに使用するバッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」の充電も可能な仕様になっている。 ヤマハブースの隣には、子供たちを対象としたアクティビティ「こどモビリティ」が展開されていたことに加え、この親しみやすい外観からか、入れ替わり立ち代わり子どもたちがディアパソンに座っては記念撮影をしていたのが大変印象的だった。 小型特殊規格に収まるディアパソンだから、運転に必要な小型運転免許は16歳から取得できる。子どもたち、あと少しで本当に運転できるようになるから、それまでお楽しみに!

TAG: #G-7オートサービス #オートバックス #ヤマハ発動機 #リバティーウォーク #大阪オートメッセ2025
TEXT:琴條孝詩
150kWの高出力を謳っているのに2台同時に充電したら90kW程度しか出ない! 日本の「EVの急速充電器」の謎

2台同時に使用すると1台あたりの出力が90kW程度にダウン! 電気自動車(EV)の普及に伴い、街なかで目にする機会が増えた急速充電器。とくに、150kW級の大容量の充電器も珍しくなくなった。しかし、2台の車両を同時充電できるタイプが多く、実際に使用してみると、「あれ、充電速度が遅いぞ……」と感じるケースがある。 そう、実際には150kWの出力を誇る急速充電器であっても、2台の車両に同時に電力を供給しようとすると、1台あたりの出力が90kW程度まで減少してしまうのである。せっかく大出力の充電器を設置しているにもかかわらず、期待にそぐわず充電時間が長くなってしまうのはじつに残念。では、なぜこのような仕様になっているのだろうか。 <電力供給の仕組みと設備容量の制約> 日本では、CHAdeMO規格の150kW急速充電器の場合、出力電圧が最大450V電源となっているのが一般的だ。この場合、総出力は150kWとなるが、充電器自体の設計やハードウェア的な制約により、両方のポートを同時に使用すると、電力供給能力が分散され、個々のポートへの出力は90kW程度まで減少してしまう。 これらの急速充電設備の規模は、充電器本体での電力損失や空調などの付帯設備も考慮して決定される。そのため、充電器自体の最大出力である150kWを2台分の車両に供給、つまり合計300kWを確保しようとすると、それに対応するケーブルなども必要となり、設備投資の観点から現実的ではない。結果として、同時に充電を行う際は、出力を制限する仕様となっているのである。 また、高出力の充電器においては、熱管理が非常に重要である。高電流を流すと内部部品が過熱し、寿命が短縮されるリスクが高まる。したがって、充電器内部には強力な冷却システムが搭載されている。しかし、両方のポートを同時に使用すると、冷却システムの負荷増大に伴い、過熱を防ぐため出力が制限されることがある。故に、高出力の急速充電においては温度管理が非常に重要なのである。 とくに150kW級の充電器では、たとえ1台で充電しようとしてもケーブルが過剰に発熱するため、150kWを30分流し続けることに対応できておらず、最大でも最初の15分間程度で、残りの時間は出力を制限する「パワーブースト」機能が採用されている。ちなみにテスラのスーパーチャージャー(SC)はケーブルが水冷式のため、効率良く冷却できていることもあり、最大250kWの充電が可能で、まだ日本では提供されていないものの、最新モデルのV4では、技術的には最大500kWに対応している。

TAG: #充電器 #急速充電器
TEXT:斎藤 充生
大阪は電動モビリティも元気いっぱい! ヒョンデの超注目EVにスズキ初の電動モペットなど見どころたくさん

ヒョンデの新型スモールEV「インスター」は隠れキャラクターの宝庫 大阪オートメッセに初のブース出展を行なったヒョンデは、発表されたばかりのスモールEV「INSTER(インスター)」を2台と、オートバックスと協業し、土屋圭市氏監修のもと開発されたチューニングパーツを装着した「IONIQ 5 N DK Edition」の計3台を展示。 カスタムカーショーではいわゆる走りのモデルに注目が集まりがちだが、今回は圧倒的にインスターに多くの人だかりができていた。軽EVに迫る魅力的な価格設定と実用的なコンパクトさからか、購入検討モードで車両を隅々までチェックしており、関心度の高さが伺えた。 これまで日本にライアンアップされていたヒョンデは、どことなくクールなイメージのモデルだったが、このインスターはユーモアたっぷりでカジュアル。 ボディシルエットこそ骨太でアクティブな印象を受けるが、車内外のいたるところに公式キャラクターのモチーフともなった円が描かれており、なかなかポップな表情を見せている。 こういった愛らしさが親しみやすさを生み、人々の関心を自然と生んでいるのではないかと感じるところで、1960年代のラリー・モンテカルロ参戦マシンをイメージしたカスタム版のインスターを含め、ヒョンデの意外な一面が感じられるクルマといえそうだ。 今春にはHyundai Customer Experience Center 大阪(CXC大阪)のオープンを控えるヒョンデにとって、この大阪オートメッセは関西圏のユーザーに対し、絶好のアピールとなったに違いない。

TAG: #オートバックス #スズキ #ヒョンデ #大阪オートメッセ2025
TEXT:高橋 優
まさかの充電数5回の大誤算!? メルセデス・ベンツ「EQS」で1000kmのロングランに挑戦した

メルセデス・ベンツEQSのEV性能をチェック! メルセデス・ベンツのフラッグシップEVである新型EQSで恒例の1000kmチャレンジを行いました。果たして、テスラを超えて史上最速タイムを更新することはできたのか。途中の電費や充電の様子を詳細リポートします。 まず、1000kmチャレンジの前提条件は以下のとおりです。 *走行ルート 海老名SA下り(神奈川県) ↓ 加古川北IC(兵庫県) ↓ 海老名SA上り(神奈川県) *走行条件 ・途中充電のための停車以外はノンストップで海老名SA上りを目指す ・車内の空調システムはつねにONにして快適な状態をキープ(EQSの場合21℃オートに設定) ・追い越しなど含めて制限速度+10%までは許容 ・渋滞や充電エラー、充電渋滞など、車両の問題以外についてはトータルのタイムから除外 ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQS450+・20インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離と比較して0.7%の下振れなので、オドメーター上で993kmの段階でゴール) 1)海老名SA→草津PA(90kW級急速充電器) ・走行距離:384.3km ・消費電力量:98%→26% ・平均電費:4.8km/kWh(208.3Wh/km) ・外気温:6℃→3℃ ・充電セッション:26%→62%(31分) まず、この区間で注目するべきは、150kW級急速充電器が設置されている湾岸長島PAをスキップしているという点です。湾岸長島PAで充電しようとしたところ充電できず、90kW級が設置されている草津PAまで走らざるを得なくなってしまったのです。あとで調べてみたところ、充電器検索アプリ上では休止中と表示されていたものの、EQSのディスプレイ上では充電器の休止情報は反映されておらず、気づくことができませんでした。 2)草津PA→加古川北IC→桂川PA(90kW級急速充電器) ・走行距離:218.8km ・消費電力量:62%→19% ・平均電費:4.7km/kWh(212.8Wh/km) ・外気温:3℃→4℃ ・充電セッション:19%→25%(7分) すでに折り返し地点を通過。検証を行った2024年冬では湾岸長島PA以西には150kW級急速充電器が存在せず、90kW級で最小限充電を繋ぐという我慢の時間が続きます。この桂川PAでは150kW級が設置されている湾岸長島PAまで辿り着けるぶんだけ充電。やはり、100kWh級以上の大容量バッテリー搭載EVの場合は150kW級急速充電器がマストであると実感します。 3)桂川PA→湾岸長島PA(150kW級急速充電器) ・走行距離:109.0km ・消費電力量:25%→5% ・平均電費:4.7km/kWh(212.8Wh/km) ・外気温:4℃→2.5℃ ・充電セッション:5%→33%(15分) ようやく初めての150kW級急速充電器で充電です。確かに150kW級が設置されていることで高性能EVの利便性は向上するものの、仮に2台が充電すると、充電出力は最大90kWに制限されてしまい、当初想定していた充電計画が狂ってしまいます。 隣にEVがいない、来ないことを祈るしかできないのが苦しいところです。

TAG: #充電 #長距離
TEXT:小鮒康一
「ガソリンでも走れるくせに急速充電器使うなよ」は暴論? 正論? PHEVの急速充電器問題を考えてみた

外部充電のみで賄っているPHEVユーザーも存在 EVユーザーにとってバッテリー残量というのは命綱でもあり、ギリギリの状態でたどり着いた急速充電器に先客がいたときの絶望感は計り知れないものがある。 このとき充電しているのがBEVであるならまだしも、PHEV車であったときは、「ガソリンでも走れるんだから、急速充電器占領しないでよ~」という気もちになる人も少なからずいるのではないだろうか。 筆者もBEVに乗っていたときは何度かそういったシチュエーションに遭遇し、そういった気もちを抱いたことがあるというのが正直なところだ。 しかし、冷静に考えてみれば、急速充電器を使用しているPHEVユーザーも年会費やビジター充電費を支払って使用しているれっきとしたユーザーであり、急速充電器を使用する権利はBEVユーザーと同等にあるということなる。 PHEVモデルはバッテリー容量がそこまで大きくないため、自宅で充電すれば十分だろうという声もあるかもしれないが、なかには自宅に充電設備をもたずに外部充電のみで賄っているユーザーも少なからず存在するハズ。 そもそもPHEVのユーザーは急速充電器を占領するな、といい始めてしまうと、次はBEVのユーザーでも緊急性の低いユーザーは急速充電器を占領するな、というような意見にも繋がりかねないだろう。 もちろん、急速充電器を使う側にもマナーは必要であるため、充電が終わっているのに一向にクルマに戻ってこないとか、そもそも純内燃機関車なのに急速充電器前に駐車するというような行為は言語道断だが、自車のバッテリー残量や待機ユーザーの有無などで譲り合って使うというのがマナーであるのはBEVでもPHEVでも変わりないといえるのではないだろうか。 今後、さらにBEVが普及して急速充電器がより多く設置されるようになったり、充電速度が飛躍的に向上したりすれば、こういったいがみ合う意見も減ってくるかもしれないが、現状はやむを得ないところがあるというのが実際のところ。いつの日か、そんなこともあったと当時を知る人の間で話せる日が来ることを期待したい。

TAG: #EV #PHEV #急速充電
TEXT:渡辺陽一郎
モーターパワーだけ見てもダメ! 見慣れない数値が並ぶ「EV諸元表」の読み解き方

ややこしいのは最大充電能力の違い EVはリチウムイオン電池に充電された電気を使い、モーターを駆動して走る。したがってガソリン/ディーゼルエンジン車とは各種の数値に異なる部分が多い。 動力性能の表記は、エンジンと同じく最高出力がkW(PS/馬力)、最大トルクはNm(kg-m)だが、これは駆動用電池の出力にも左右される。同じモーターを使っても、駆動用電池の出力が向上すれば動力性能も高まる。そして、リチウムイオン電池の総電力量(電池容量)は、kWhで表記される。 たとえば日産リーフの場合、駆動用リチウムイオン電池には、40kWhと60kWhの2種類がある。モーターの型式は同じで、定格出力も85kWで等しいが、運転すると動力性能は60kWhがパワフルに感じる。その理由は、60kWhのバッテリー出力が40kWhのタイプを上まわるからだ。EVの動力性能は、数値の違いだけではわかりにくい。 また、エンジン車にはないデータとして、一充電走行距離の数値も示されている。1回の充電で走行できる距離のことで、リーフの場合、駆動用リチウムイオン電池が40kWhのグレードは322kmだ。60kWhになると450kmまで伸びる。 ちなみにエンジン車には、WLTCモード燃費と燃料タンク容量が記載されている。ノートX・2WDではWLTCモード燃費が28.4km/L、燃料タンク容量は36リットルだから、1回の給油で走行できる距離は単純に掛け算すると1022.4kmだ。 充電時間と給油時間の違いもある。ガソリンや軽油の給油は数分で済むが、EVの充電時間は長い。リーフを200V/6kWの普通充電器で充電した場合、40kWhは満充電まで約8時間、60kWhは12.5時間を要する。これが急速充電器なら、80%までの充電で40kWhが約40分、60kWhは約1時間とされる。 ややこしいのは最大充電能力の違いだ。60kWhは100kWの高出力急速充電器にも対応しているため、最短では充電所要時間を50分程度に抑えられる。しかし40kWhは、最大で50kWhしか受け付けられないため、高出力急速充電器を使っても充電所要時間は前述の約40分に留まる。 このほか、EV、PHEV(プラグインハイブリッド)、燃料電池車には、補助金も用意されている。2024年度の場合、リーフであれば、国から交付される補助金は全グレードにわたって85万円だ。このほか自治体から交付される場合もあり、EVの購入に伴う補助金額は地域格差が大きい。 以上のようにEVには、エンジンを搭載したクルマとは異なる特徴が多い。

TAG: #スペック #リチウムイオンバッテリー
TEXT:斎藤充生
小型3輪モビリティはカッコかわいいだけじゃない! 造船会社ならではの超絶クオリティで魅せるe-NEOの「NEO-ONE」&「NEO-Light」【大阪オートメッセ2025】

なぜ造船会社が小型モビリティ事業を始めたのか? 大阪の造船会社が小型EVモビリティを作っているのをご存知だろうか? 1936年から大阪で造船業を営むダイゾーは、エアゾール事業や特殊潤滑剤を扱うニチモリ事業など、造船以外にも幅広く事業を展開し、それぞれの分野で高いシェアを誇る企業だ。 そのダイゾーは、2025年2月7~9日まで開催の大阪オートメッセのEVスマートモビリティ体験エリアに、自社ブランド「e-NEO Produced by DAIZO」の小型EVモビリティ「NEO-ONE」と「NEO-Light」を展示している。ではなぜ造船会社が小型モビリティ事業をはじめたのだろうか。 取材に応じてくれたダイゾーの陸機事業部第二営業部EVグループに所属する上原さんによると、「ダイゾーでは4年ほど前から造船エリアの広大な敷地と豊富なものづくりの技術力を活用して、輸入されてくる小型モビリティの検品受け入れ業務を行なっている」のだという。 その経験を活かして「自社ブランドを立ち上げることはできないだろうか」と検討したのがきっかけとなり、約2年の準備期間を経て昨年10月に立ち上げられたのが「e-NEO Produced by DAIZO」という小型モビリティブランドだ。 無骨でカッコイイ第1弾モデル「NEO-ONE」 第1弾モデル「NEO-ONE」は、全長2245mm×全幅1150mm×全高1630mm、前1輪後2輪、ハンドル形状はバイクタイプを採用した小型3輪電動モビリティだ。充電は普通100Vと普通200Vの両電源に対応。1回の充電で約100kmを走行可能で、乗員は前ひとり後ろふたりの計3名。モーター出力は3000W(3kW)、普通免許で運転することができる。 後部座席へのアクセスは多少不便さを感じるものの、乗り込んでしまえば足元は広く、思いのほか天地方向にもゆとりを感じる。だが、これで3名が乗車して片道100km走行するのは本来の使い方とはいえず、自宅から駅やスーパーなどへの近場利用で3名が乗車するというのが現実的な使い方のようだ。 雨風を防ぐためのレインカバーを装備し、運転席の脇に設けられたファスナーを上げ下げすることで乗り降りを可能にしている。ただし、レインカバーを装着したまま外に置きっぱなしにすると、徐々に曇りが発生するため、1年に1回程度の交換をオススメしているという。 交換はカバーの外周に沿って設置されたネジを手で外して付け替えるだけという気軽さで、部品代も2万5000円程度と安価に抑えられているから、良好な視界確保のために、適宜交換したいところだ。 運転席の頭上には外気の取り入れ口を設けるほか、室内灯と小型ファンも設置されており、夏場の運転にも配慮がされている。このような快適装備を搭載した小型モビリティは珍しく、NEO-ONEの強みといえる。 展示されたボディカラーがマットブラックということもあるが、見た目は男性的でやや無骨な印象。それでも、各部に有機的なライン処理が施されるほか、この手の小型モビリティにしては望外なレベルでパネルのチリが合っており、品質の高さを感じさせる。 前出の上原さん曰く「そこはもともとが造船会社ですから、社内で求められるクオリティで作った結果ですが、まだまだもっと品質を突き詰めていきたいです」と謙遜するものの、このあたりはブランド立ち上げに伴い、中国に現地関連会社を作っただけのことはあると感じる部分だ。

TAG: #e-NEO #大阪オートメッセ2025

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