コラム
share:

「日本の急速充電器って遅くない?」にちょっと待て! 「急速充電器=ガソリンスタンド」という考え方自体を変えるべき


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:TET 編集部
TAG:

2013年に急速充電器の整備が本格化

急速充電器の高出力化について、日本は欧州に比べ性能水準が低いとの評価がある。しかし、どこまで高性能化すればよいのかも、検討する必要があるだろう。

そもそも、急速充電器の整備が本格化したのは、2009年に三菱i-MiEVが発売され、2010年に日産リーフが発売されて以後の、2013年になってからだ。当然ながらそれを牽引したのは日本だ。

経済産業省が乗り出し、1005億円という途方もない予算で補助金を用意した。ただし、対象が設置費用の全額ではなかったため、トヨタ、日産、ホンダ、三菱自の4社が共同で自腹となる設置費用分を補助し、実質ゼロ円で急速充電器を設置できるようにあと押しした。そして、2014年までに急速充電器を4万基、普通充電器を6万基、計10万基整備する目標を打ち出した。

急速充電器のイメージ

一方、現在の状況はというと、今年6月の経済産業省の報告では、急速充電器が1万口を超え、普通充電器が3万口を超えたとある。この実績と比較すれば、10年前の目標がいかに大きすぎたかが伺える。

それを批判するのは簡単だが、それほど、10年前は充電器の必要性や需要動向を見極めきれない状況にあったといえなくもない。数値目標の背景にあったのは、全国のガソリンスタンドの数だったはずで、電気自動車(EV)の充電における優先順位に対する知見も不足していた。

急速充電器のイメージ

したがって、いくら設置費用がタダだといわれても、維持管理や電気代はどうするのかとの不安が、設置場所の施設側にあった。また、どれほど高性能な急速充電器を設置する必要があるのかどうか、疑問も多かった。

対する市販EV側も、登録車となる初代リーフでさえ車載バッテリー容量は24kWh(キロ・ワット・アワー)で、30kWの充電出力があれば、30分で8割近い充電が可能になる。それ以上の高価な、あるいは維持費のかかる高性能な急速充電器を設置しようという意欲につながらなかった。

米国のテスラは、独自に充電網を構築したので、CHAdeMOと関係なく、大容量バッテリー向けの高性能急速充電器の設置を独自に進めた。しかも、自動車メーカー(テスラ)自ら費用を支出し、当初は無料で充電できるような施策をとった。

この時点で、日本のみならず世界のほかの自動車メーカーは、自ら充電網を整備し、無料で充電できるようにするなど考えもしていなかった。なぜなら、ガソリンスタンドを経営するのは石油会社とその関連企業であるからだ。自動車メーカーの仕事は、商品性に優れたEVを作ればよいとしか考えなかった。ここに、EVに対する知見の不足が如実に表れている。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
エンジンサウンドが聞こえてシフトショックも感じられるEVが超進化! ヒョンデ「IONIQ 5 N」がマイナーチェンジ
ポルシェ史上最高出力の市販車は911でも水平対向6気筒でもない!? 新型カイエンにEVの「エレクトリック」と「ターボ・エレクトリック」が登場
ジープもフィアットもテスラのスーパーチャージャーで充電できる! ステランティスの傘下14ブランドがNACS規格採用で大きく変わる充電規格の勢力争い
more
コラム
60年もの不動車がバッテリー交換だけで走り出した! EVの長期保管はエンジン車よりも簡単!!
EVならカタログ数値超えの電費も夢じゃない……のにみんな出せないのはなぜ? 大切なのはエンジン車の乗り方を捨てたEV特有の操作だった
東京大学柏キャンパスに設置されている小野測器の1軸型台上試験装置(筆者撮影)
高度な電動車になればなるほど高精度な計測器が不可欠! 東大と小野測器が研究開発する台上試験装置の万能っぷり
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
見どころはスーパーワンプロトタイプだけじゃない! 全メーカー中でもっともモビリティショーしていたホンダは陸・海・空に加えて宇宙にも進出か【ジャパンモビリティショー2025】
スーパーオートバックスかしわ沼南に90台のEVとオーナーが集合してゆる〜く懇親! 「EV MEET 2025 AUTUMN」を開催
EVらしさをなるべく廃したスタイリングで乗り換えを自然に! スズキが軽EVコンセプトカー「Vision e-Sky」で考えたのはEVであることを気づかれないことだった【ジャパンモビリティショー2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択