車両価格の差が大きい
国産各メーカーもさまざまなEVがリリースされている昨今、自家用車でEVをチョイスするユーザーが着々と増えている。しかし、充電環境や航続距離、使用するシーンが多様な個人ユースでは、EVへ買い換えたいユーザーでも足かせになってしまっているケースもあるのが実情だ。
しかし、公共交通機関である路線バスなら、決められたルートを決められた時間に走行するため、自家用車と比較するとバッテリーの消費などが事前に想定できるため、圧倒的に導入しやすい。また、オイル交換が不要になるなど、EVならではのメリットでもあるランニングコストの低減に加え、営業所などに充電ステーションを設置できることから、充電時間に縛られたり、スポットを探したりする手間などもなく、EVとの相性はいい。
最近では首都圏を中心にEVバスを導入する事業者も増えてきており、街なかで目にしたことがある人も多いのではないのだろうか。
国産メーカーではいすゞ自動車がエルガEVを、日野自動車がポンチョEVを生産しているが、導入されているのは中国製のBYD(比亜迪)が多い。なぜ国産ではなくBYDのバスが選ばれるのか?
まずBYDは圧倒的に車両価格が安い。小型のJ6は1950万円、大型のK8でも3850万円と、国産のディーゼルバスとほぼ同価格で販売している。ちなみに国産の場合は大型の路線バスタイプのEVで6000万~1億円とも言われており、その差は歴然だ。それでも国内ユースでは、市場を知り尽くした国産メーカーの方が強いイメージがあるが、BYDのJ7は、日本向けにドアや座席数の変更が可能となっており、地域や事業者に合わせてカスタマイズが可能だ。
実際、路線バスはEVに限らず事業者により座席レイアウトをはじめさまざまな仕様があり、オーダーメイドの状態となっているのが国内路線バスの特徴でもある。その点BYDは、輸入車でありながらそうしたニーズにも応えている。
そして、導入の際にネックとなる営業所への充電ステーションの設置は、BYDの場合だとバスの導入と同時に行えるパッケージも用意されている点も、導入のハードルを下げている。
路線バスの世界では、EVはまだまだ都市部の導入にとどまり、主力はディーゼル車だ。もちろん都市部でも国産車が多く、ディーゼルハイブリッドやFCVといったモデルも混在している状況。しかし、ディーゼル車と同等の価格でEVバスを導入できるとなると、地方路線でも海外製のEVバスが走る日も近いのかもしれない。