自動追尾システムは自動運転レベル2相当
2024年10月、幕張メッセにおいて「ジャパンモビリティショーBIZウィーク2024(以下、JMS BIZ2024)」がデジタルイノベーションの総合展示会であるCEATECと共催するカタチで開催された。
JMS BIZ 2024の狙いは、自動車メーカーとスタートアップ企業の出会いの場となること。各社の強みを活かした「共創」のきっかけになることを目指していた。自動車産業という枠を超え、移動手段にとどまらず、社会貢献や新たな価値を創出する「モビリティ産業」へと進化することが期待される内容だったのは、多くの報道で目にしたことだろう。
そんなJMS BIZ 2024において、大きな柱となっていたのがカーボンニュートラルだった。主役はEVに代表されるゼロエミッションビークルだったのだ。さらに、現在のトレンドである自動運転テクノロジーも欠かせない要素なのはいうまでもない。
カーボンニュートラルと自動運転、そして新しい価値の創出……そうしたイベントテーマをまさしく具現化していた一台といえるのが、三菱ふそうトラック・バスが展示していた「eキャンター・センサーコレクト」であろう。
一見すると、グラデーションカラーとなっているパッカー車(ごみ収集車)だが、ベースに量産EVトラックである「eキャンター」を使用した、れっきとしたゼロエミッションのパッカー車である。
それだけではない。キャビン前方の左右に触角のような突起物が確認できるだろうが、これはサイドミラーであり、前に向けてニコン製のカメラが収められている。加えて後方を確認するためのカメラやボディサイドの超音波センサーなどで周囲の状況を検知できるようになっている。
こうしたセンサーを使って、接近する歩行者などを検知すると停車したり、前方に駐車車両があるときは自動で避けたりすることができるという。ここまでであれば、よくある自動運転の実験車といえるが、「eキャンター・センサーコレクト」のすごいところは自動追尾機能を有していることだ。
ごみ収集の現場を想像すればわかるように運転手や作業員の方々は、降りてはごみを回収、また乗り込んでパッカー車を移動といった作業を繰り返している。住宅街など近距離に多くのごみ集積場があるといったシチュエーションでは、乗り降りの手間は無視できない負担となることは容易に想像できる。
そこで、「eキャンター・センサーコレクト」は、キャビンから降りた人物を運転手として認知、その後ろを自動追尾することにより、次のごみ集積場まで移動できるようにした。これにより乗降による負担を軽減することを目指している。また、運転手はWi-Fiでつながった端末によって車両をコントロールできる。そのほかごみ集積場の位置を登録して、そこで停止することもできるという。
結果として、外から見ていると、人間の後ろを無人のパッカー車がついていくといった様子になる。まさに未来のごみ収集シーンを実現する1台といえる。
ただし、「eキャンター・センサーコレクト」の自動追尾機能は、いわゆる無人走行というわけではない。あくまで運転手が周囲の安全を確認していることが前提であり、運転の主体は運転手にある。いわゆる、SAE自動運転レベル分けでいうと、レベル2相当になる。そのため、自動追尾走行についても低速に限られる。もっとも、自動追尾の性格からして、人間より速く走る必要はないわけだが……。
なお、この「eキャンター・センサーコレクト」は、2023年に川崎市と共同で実際にごみ収集を行うといった実証実験を実施済みというから実績あるシステムともいえる。自動追尾のメリットを確認すると同時に、さまざまな課題も見えてきたという。順調に開発は進んでいるといえそうだ。
はたして近未来のごみ収集シーンでは、無人パッカー車が道路脇を移動している姿を見ることができるのだろうか。しかもEVであれば、騒音も少ないというメリットもある。一日も早く、「eキャンター・センサーコレクト」の実用化・量産化を望みたい。