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セルを浸して性能向上……台湾シン・モビリティがEVに搭載可能な液冷式バッテリーを開発[2023.09.04]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
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「IMMERSIO Cell-to-Pack(CTP)」(シン・モビリティ)

テスラとパナソニックの元技術者が立ち上げたベンチャー企業
急速充電や寿命を左右する冷却技術の究極系

【THE 視点】産業用途向け液浸冷却バッテリー技術のパイオニアである台湾シン・モビリティーは、ドイツ・ミュンヘンで開催される「IAAモビリティショー」で、新型バッテリー「IMMERSIO Cell-to-Pack(CTP)」を発表する。液浸冷却式のバッテリーで、高いエネルギー密度・放熱性・安全性を有する。

エネルギー密度は、最大200Wh/kgというトップクラスを持ち、20〜80%の充電は15分以内で済むという。その要因は特許取得済みの液浸冷却技術で、効率的に熱を除去し個々のセル内の熱暴走やパック全体の火炎伝播を防止することができる。鉱油で冷却する先進的な高ニッケル正極円筒形リチウムイオンセルの技術を活用しているという。

ボディは高張力エンジニアリングプラスチック製で、耐久性と信頼性を確保する精巧なセルマネージメントユニットを備えている。このユニットには各セルの温度・電圧・電流を監視・制御するシステムが組み込まれている。

乗用車・スポーツ車・商用車・トラックといった様々な車両とその用途に合わせてカスタマイズが可能。希望の顧客とのディスカッションから始まり、試作・試験・審査を経て、ニーズに最適化された製品を製造する。その後、現場での製品の実性能のモニターを続け、その情報に基づいてさらなる改良を加え最適化を行なうとのこと。

シン・モビリティーは、テスラとパナソニックの技術者によって2015年に設立された特殊用途向けのEV用バッテリー企業。極限のパフォーマンスを求められるレーシングカーやスーパースポーツカーを研究開発プラットフォームとして使用している。

この発表を聞いて、最初に頭に浮かんだのがテスラの初代「ロードスター」だ。バッテリーは液冷式を採用していたと聞く。しかも旧サンヨー(現パナソニック)のものだ。シン・モビリティーはテスラとパナソニックの技術者により設立されている。もしかしたら似た構造を持つのかもしれない。ちなみに日本のチューニングメーカー大手のHKSがエンドーザーに参画している。

最近のEVのバッテリーの多くがサーマルマネージメントされている。特に冷却は重要で、急速充電や寿命を大きく左右する機能となる。この液冷式を取り入れたパックの200Wh/kgというエネルギー密度は非常に高い。液冷式は重いというイメージを覆す数値だ。液冷式のサーマルマネージメント開発が成功したのだろう。詳細はIAAモビリティでの正式発表を待ちたい。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★MINI、新型EVの「クーパー」と「カントリーマン」を発表
……ドイツ・ミュンヘンで行なわれる「IAA」モビリティで2台の新型EVを発表する。「クーパー」はMINI伝統の衣裳を踏襲したオーソドックスな3ドアモデルで、「カントリーマン」は5ドアのSUVとなっている。「エースマン」は2024年4月に発表予定。

★★テスラ、「モデル3」の改良新型を発表
……かねてから噂のあった改良新型を日本でも発表し先行受注も開始した。ラインナップは「RWD」(561万3,000円)と「ロングレンジ(デュアルモーターAWD)」(651万9,000円)の2機種。今回は外観と内装のアップグレードがメインのようだ。納車は2023年12月から。

★★ロータス、「エレトレ」の国内販売を開始
……「エレトレS」(2,332万円)と「エレトレR」(2,585万円)の2機種を用意する。SUVクーペスタイルの高性能SUVで、0-100加速の最高タイムは2.95秒(R)で航続距離は600km(S)。すでに100台受注し、来年夏以降の納車を予定している[詳細はこちら<click>]。

★伊藤園、配送車両にEVトラックを導入
……飲料を配送する車両に「エルフEV」を採用し、10月より順次導入を開始する。架装の一部(スライドドア・バックドア)に茶殻を使用し、軽量化と環境負荷の低減を狙っている。2023年度内に東京地区の営業拠点に30台を導入するという。

★オペル、「アストラ・スポーツツアラー・エレクトリック」の受注を開始
……ステーションワゴン(5ドア)タイプの新型EVで、価格は4万3,490ユーロ(約680万円)。月額339ユーロ(約5万3,515円)のリースプランも用意する。最高出力115kW(156ps)・最大トルク270Nm(27.5kgm)で最高速度は170km/h。バッテリーの容量は54kWhで航続距離は413km(WLTP1)となっている。

★ホンダ、可搬型外部給電器「パワー・エクスポーター e: 6000」を発表
……バッテリー式EV・FCEV・PHEVに接続し家電などが使用できるよう電力を取り出す機器。バッテリーではないため、電動車とセットで使用する必要がある。シガーソケットを使用するインバータのようなイメージだ。最高6kVAの電力を出力でき、イベント機器用の電源として機能させることができる。交流100V・200Vの同時出力が可能。

★ZF、マグネットフリーのモーターを開発
……誘導電流ユニットにより磁力を作るため、磁石とレアアース類が必要ない。現在のEVの主流である永久磁石の動機モーターと同等の性能を持ち、モーター本体を小型化できる。電圧800Vにも対応する。

★太陽石油、EVのカーシェアリングの実証を開始
……レクシブの法人・自治体向けプラットフォーム「SOLATOカーシェア」を使用し愛媛県内で実証を開始する。ソーラーカーポートの発電による電力を使用したオフグリッド型の電力にてEVを稼働させるのが本実証の特徴。車両は「日産サクラ」を使用する。

★東京ガス、群馬県太田市などとEV充電マネジメントを共同検証
……東京ガス・太田市・太田都市ガス・日本カーソリューションズの4団体が共同で実施する。簡易型車載器を活用して車両の稼働状況を調査するほか、その結果に基づくEV導入計画の策定、充電マネジメント導入時の電力コストの算定・効果検証などを行なう。

★日本ゼオン、リチウムイオン・バッテリー用バインダーの生産設備をアメリカに構築
……リチウムイオン・バッテリーの正極・不極・機能層・シーリング用材料として使われるバインダーを現地生産・消費を目指す。日本ゼオンにとって、米国で初めての設備となる。

★ネクストドライブ・eモビリティパワー・東京大学大学院工学系研究科、EVユーザーの基礎充電行動を研究へ
……スマートメーターのBルートのデータを活用し、自宅での充電頻度や充電量を把握可能な行動推定モデルを構築する。自宅のコンセントは通信機能がないため、Bルートにネクストドライブの機器を設置してデータの収集を試みる。モニターの募集はeモビリティパワーが行ない、推定モデル構築は東京大学が行なう。このデータを収集することで、自宅外での充電ニーズを把握することが可能になるという。

★モーション、2.5億円を新たに資金調達
……EVの充電を制御・最適化し電力コストを低減するソリューション「オプティーブ」の開発に充てるという。調達先は環境エネルギー投資・兼松コミュニケーションズ・大和自動車交通・フェアーの4社。

デイリーEVヘッドライン[2023.09.04]

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