#バッテリー
TEXT:御堀直嗣
寒い冬が苦手といわれる電気自動車! 逆に暑い夏はどうなる?

夏はバッテリーの温度が上がりやすい 電気自動車(EV)で使われるリチウムイオンバッテリーは、人間が快適に暮らせる温度が適しているといわれることは、極寒への対処でも話した。 では、近年の猛暑にはどうなのか。 暑さに対しても、やはり人間と同じように適切な対処をしないと、充放電ともに本来の性能を出し切れないことになる。そして、暑さへの課題もバッテリー特性が関係する。 暑さでは、単に外気温の高さだけでなく、高速道路を連続して走行し続けたような場合も、バッテリー温度が上がりやすい。大電流を連続して流し続けるためだ。 電気の使われ方については、EV以外の家庭電化製品やパーソナルコンピュータ(PC)のバッテリーや配線も、出力の高い状態で連続して使うと熱を持つようになる。大きな電流が流れると、余剰分が熱となって外部へ放出されるからだ。バッテリーに過剰な電流が流れ、余剰分が熱となって外へ放出され、それが限度を超えると、膨張したり、発火したりといった不具合や事故につながりかねない。原因は、抵抗だ。 電気の流れは、川にたとえることができる。ある川幅を普段は問題なく水が流れていても、大雨などで水かさが増すと、堤防を越えて洪水を起こしかねない。電気も水も、流れが多すぎれば弊害をもたらす。 それならば、あらかじめ太い電線を使えばいいと思うかもしれない。しかし、無闇に太い配線を用いれば、場所も取るし、重くもなる。 高速道路の利用(大電流を流し続ける)を制限することはできないが、適度な太さの配線により多様な使い道での性能と価格の調和をとり、折り合いをつけることになる。 そのうえで、バッテリーのケースに冷却機能を設け、リチウムイオンバッテリーが機能しやすい温度管理をする対策が行われている。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:御堀直嗣
リチウムバッテリーは暑いのも寒いのも苦手! EVの性能はバッテリーの温度管理で大きく変わる!!

冬はEVの一充電走行距離が短くなる 電気自動車(EV)で使われるリチウムイオンバッテリーは、人間が快適に暮らせる温度が適しているといわれる。つまり、極寒や酷暑は苦手だ。EVが寒さや暑さを苦手とするのは、バッテリー特性に負うところが大きいだろう。 とくに寒い冬は、EVの一充電走行距離が短くなるといわれる。理由は、低温になると電圧が低下するからである。走行に必要な電力は、電圧×電流なので、電圧が下がれば電力量が減り、そのぶん走れる距離が短くならざるを得ない。 対応策を理解するとき、背景となるのは、やはり人間と同じような環境で最適な性能を発揮するという、リチウムイオンバッテリーの特性だろう。 人間も、寒さで体が硬くなれば、事前にウォーミングアップをすることで、いつもどおりの活動ができるようになる。リチウムイオンバッテリーの充放電は、正(+)負(-)の電極間をイオンが往復することで行われる。したがって、イオンが移動しやすい温度環境を整えることが大切だ。 かつて、発売当初の市販EVは、バッテリーを空冷していたので、停車中を含め意図的な温度管理をできずにいた。走ったとき、走行風で冷やすという効果しか望めなかったのだ。極寒の地では、気温が下がっただけバッテリーが冷えてしまう。つまり、イオンが電極間を移動しにくくなる。移動が鈍れば、電圧が下がる。 対策は、バッテリー温度を下げ過ぎないことで、空冷に替えて液冷を導入することにより、冷媒を温めれば、バッテリーを温度低下から守ることができる。 とはいえ、空冷ではダメということではない。空冷であることを通じて、廃車後のリチウムイオンバッテリー再利用のため、セル単位に分解しやすいことを視野に入れていた。クルマとして最適なだけでなく、リチウムイオンバッテリーという高価な部品を使い尽くすための視点が、EVでは不可欠なのだ。液冷式となった今日も、EV後の再利用を視野に、バッテリーケースの設計を行う必要がある。 リチウムイオンバッテリーの再利用を重視する理由は、廃車後も、なお70%近い容量を残しているからだ。これを定置型の電気施設などで再利用しない手はない。たとえば太陽光や風力など、再生可能エネルギーによる発電の電力を貯めておくのに使える。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:御堀直嗣
結局「全固体電池」ってなに? どんなメリットがある? 「夢の電池」と言うには時期尚早な次世代バッテリーの中身

電解質を固体にしたのが全固体電池 電解質とは、電気を帯びたものから、電気の基となるイオンを分離し、移動させる作用を促す物質をいう。つまり、バッテリーの電極からイオンを分離する働きがある。 一般に、バッテリーの電解質は液体で、クルマの補器を動かす鉛酸バッテリーも、希硫酸の電解液によって鉛合金の電極を化学反応させ、イオンを分離して電子の移動が起き、電気が流れる。 リチウムイオンバッテリーは、リチウムのイオンが移動するだけで電気が流れる仕組みで、電極の物性は変化しない。リチウムイオンの移動を促すのが電解質で、リチウムイオンバッテリーもこれまでは液体または粘性を持つゲル状だった。この電解質を、無機物の固体にしたのが全固体電池だ。電極も固体、電解質も固体(液体率が0%)なので、すべてが固体の電池ということから、全固体となる。 利点は、電解質が水溶液であったりゲル状であったりする現状では、電解質が蒸発したり、分解したり、液漏れや発火、劣化などを起こす可能性があるが、無機物の固体を使う全固体式であれば、それらの懸念を解決できる可能性がある。 また、固体であることによって、バッテリーを車載するうえで、液体の電解質が偏るなどの懸念も払拭され、つねに安定した性能を発揮し、車両に搭載する際の自由度が増すことへの期待もある。要は、縦でも横でも、自由に置けるということだ。 次に、正負極の電極間をイオンが高速移動することが期待されるので、充放電性能が向上する。かつて、固体の電解質はイオンの移動速度が遅いとされたが、東京工業大学の菅野教授らにより、液体より早く固体のなかを移動するイオンの発見があり、今日の開発競争がはじまったとされている。 そのほか、耐熱性も高く、これまで以上のエネルギー密度をもつ電極材料を容易に使えるようになる。 構造的には、表裏に正極と負極を設定できるバイポーラ型にも適しているとされ、これによって容量の拡大も見込めるだろう。

TAG: #バッテリー #全固体電池
TEXT:桃田健史
BYDが強いのは「バッテリー技術」が手の内にあるから! 今後も「自動車メーカー以外」がEVの世界で躍進する可能性は大

変化が起こる可能性は十分ある EVでのコア技術といえば、駆動用の大型バッテリーだ。 見方を変えると、バッテリー技術を得意とする企業がEV市場を仕切るようになるのか、といったイメージをもつ人がいるかもしれない。 もっともわかりやすい事例が、中国BYDだ。 この数年でグローバル販売台数を急激に伸ばし、2024年にはついにホンダ超えを実現しまうほどの成長を見せた。 そのBYDをテレビやネットで紹介する場合、「電池メーカーとして創業した」を報じられることが多い。確かに、そうしたルーツがあるにせよ、BYDは中堅自動車メーカーを買収することで、それまで社内に蓄積がなかった自動車の設計・開発・製造の技術をものにして、プラグインハイブリッドやEVの量産を始めたという経緯がある。 筆者はこうしたBYDが成長していく様を中国現地で見ながら、これまでBYD各モデルと世界各地で接してきた。 そうした経験を踏まえると、BYD躍進の背景には、電池技術を「手の内化」していることがコスト面での強みになっていることは確かだといえる。 ほかの電池メーカーを見た場合、彼らが主導してEVプラットフォームを確立するという明確な動きはないように思う。 一方で、直近では日産絡みの報道でよく登場する台湾の鴻海(ほんはい)のような、電気製品やEVなどをメーカー側から委託されて、製造に向けたトータルパッケージ化する企業の存在も目立つようになってきた。 だが、そうしたポジショニングにあるグローバル企業はけっして多くはない。 では、自動車部品大手はどうか? ドイツでは、ボッシュやコンチネンタルというツートップがいるが、彼らもこれまでEVや自動運転技術など次世代自動車の基幹部品を製造しながら、EVプラットフォームという発想はコンセプトとしては存在するものの、量産に向けた商流を真剣に構築しようという動きはないのように思う。 そうとはいえ、EVと社会を結びつける基本体系であるエネルギーマネジメントという大きな括りのなかでは、EV本体の製造にかかわるサプライ側の中核企業が、EVプラットフォーマーへと変化していく可能性は十分にあるはずだ。 それは、バッテリーメーカーに限らず、半導体メーカーであれ、またはデータ通信企業であれ、1社ではなく複数社による連携体が自動車メーカーとビジネスモデルについて対等な立場で協議することも考えられるだろう。 いわゆる、100年に一度の自動車産業大変において、EVプラットフォームに対する商流の変化が起こることは十分にあり得る。

TAG: #バッテリー #メーカー
TEXT:TET 編集部
CHAdeMOに挿すだけで30秒で診断完了!? データマイニング法を用いた画期的なバッテリー診断機が「EverBlüe Drive」から登場

バッテリー診断機がEV循環サイクル実現のための隠れたカギ 日本国内でのEVシフトは、順調に進んでいるとはいえない状況にある。その大きな原因のひとつとして挙げられるのが、EV特有の残価率の低さだ。EVの駆動用バッテリーは、車両価格の3分の1から半分を占めるというのが定説だ。しかし、そのバッテリーは使用に伴い性能が劣化してしまうため、結果的にEVのリセールバリューは低いという課題を抱えている。 そこにブレークスルーを起こすべく立ち上がったのが三洋貿易の「EverBlüe Drive」ブランドである。EverBlüe Driveは、EVメインのリバースエンジニアリングビジネスや、自動車部品の輸出入、最新車両のベンチマーク情報サービスといった事業を手がけてきた三洋貿易のノウハウを活かし、モビリティ領域で安心・安全な循環型社会を実現すべく、EVバッテリーのメンテナンス用品を主軸に各種製品をリリースしている。 そのEverBlüe Driveから、画期的なEV・PHEV用のバッテリー診断機が発売された。 リセールの低さという課題を抱える一方で、EVのバッテリーは多くのレアメタルを含んだ高い価値をもつ部品であるという側面も無視できない。軽度の劣化ならば蓄電池として再利用したり、重度の劣化でもマテリアルを回収してリサイクルするといった再利用が可能なのだ。 適切な再利用にあたってはEVバッテリーの状態を適切に把握することが重要となるが、現在市場に流通している診断機は、測定に時間がかかる、筐体が高価、高電圧の充放電が必要となるなどといった課題を抱えているものがほとんどである。それもあって、国内での再利用は進まず中古EVの需要が高い海外への車両流出が多くなり、EVバッテリー循環の構造は十分に機能していないというのが現状だ。 今回発表されたEverBlüe DriveのEV・PHEV用バッテリー診断機「ETX010」は、既存の診断機が抱えていた諸問題をクリアした意欲的な新製品となっている。 まず注目したいのがそのサイズ感だ。本体は750gと軽量なハンディタイプとなり、ケーブルや別体の機器も必要としない。「いつでもどこでも使える」という点も、バッテリー診断を広めることにひと役買うことだろう。 使用方法はいたって明快で、急速充電口(CHAdeMO)に本体を挿入するのみ。測定に要する時間はわずか30秒程度で、自社で保有する膨大な車両解析データをもとに独自アルゴリズムを用いてSOH(State Of Health=バッテリー劣化状態)を推定。その結果は専用のアプリ上に表示され、PC上で一括管理も可能となる。 既存のEVバッテリー診断機では急速充電を必要とし、その充電データによる解析がメインとなっているが、EverBlüe Drive ETX010では車体の充放電の必要がなく、高電圧バッテリーの取り外しも必要としないデータマイニング法での測定となるため、より安全かつ手軽な診断が可能となっている。また、測定精度についても電気的な試験と同等に保たれているという。 EverBlüe Drive ETX010の価格は、税込19万5800円。別途でアプリ・システム利用料が必要となるが、絶対的な価格もリーズナブルで、診断回数が無制限ということも考えれば、バーゲンプライスといってもいいだろう。 EverBlüe Driveは、これからもバッテリーメンテナンス機器をシリーズとして順次発売予定としている。同社が製品を通じて目指すEVの循環型社会の実現に、今後の展開にも期待したい。

TAG: #カーライフ #バッテリー #メンテナンス
TEXT:御堀直嗣
EVの要「リチウムイオン電池」はレアメタルなしに作れない! そもそも「レアメタル」ってなに?

リチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊 電気自動車(EV)を支える重要部品のひとつが、リチウムイオンバッテリーである。その正極には、レアメタルが使われている。 レアメタルとは、言葉通り「稀な」という意味があり、地球に存在する量が極めて限られ、鉱物などからの抽出が難しかったり、安定的な確保が難しかったりする、非鉄金属をさす。 希少さという意味では、貴金属もある。これは、数が限られるのはもちろん、腐食に耐える性質を備えた金属をさす。たとえば、金、銀、白金、パラジウムなど8つの元素がある。白金やパラジウムは、エンジン車の排気触媒で使われている。 そして、ベースメタルと呼ばれるのが、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛など、生産量の多い金属だ。鉄やアルミニウムはクルマの車体で使われたり、銅は配線、鉛は鉛酸バッテリーで使われたりしている。 リチウムイオンバッテリーで使われているレアメタルは、多くが、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどで、一般に三元系とよばれるリチウムイオンバッテリーは、ニッケルとコバルトとマンガンを組み合わせた合金による電極を使う。そして、リチウムのイオンが正負極の間を移動することで充放電が行われ、まさにリチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊だ。 レアメタルは、それぞれに産地が異なる。リチウムは南米の塩湖、オーストラリアの鉱石などから得られる。ニッケルはフィリピンやロシアなど、コバルトはアフリカのコンゴ、マンガンは南アフリカや中国などで、いずれも、日本はもちろん欧米も輸入に頼らなければならない。 中国のEVが、リン酸鉄を正極に使う背景は、普及を目指した原価の低減にある。リンも鉄も、レアメタルやレアアースではないので、安価に入手しやすい。一方、電池性能は高くないとされてきたが、セルの工夫などで三元系と競争力をもてる仕様になってきている。

TAG: #バッテリー #メカニズム #レアメタル
TEXT:琴條孝詩
同じリチウムイオンでも「種類」によって「運用方法」を変えるべき! EVのバッテリーを劣化させない「充電方法」とは

2種類のリチウムイオン電池がEVに使われている 電気自動車(EV)の普及が進むなか、バッテリーの寿命がクルマの寿命に直結するという新たな課題が浮上している。EVを長く使い続けるためには、バッテリーの適切な管理が不可欠だ。本記事では、現在主流のEV駆動用バッテリータイプとEVバッテリーを長持ちさせるコツについて解説しよう。 <EVバッテリーの基本と種類> EVに使用される主流のバッテリーはリチウムイオン電池である。高エネルギー密度と長いサイクル寿命をもつリチウムイオン電池は、スマートフォンや家電製品向けに幅広く使用され、EV用途には最適化されたものが使用されている。 リチウムイオン電池のなかでも、主に2種類のタイプがEVに採用されている。電極にニッケル・マンガン・コバルトなどを使った「三元系(NMC)」と呼ばれるリチウム電池とリン酸鉄リチウム(LFP)電池だ。 LFP電池は、コバルトを使用せず安価に製造できて安全性が高く、長寿命で熱安定性に優れているため、多くの低価格EVに広く使用されている。ただ、エネルギー密度が低く、低温時の性能低下が課題だ。BYDやテスラなどの企業が、エントリーモデルにLFP電池を採用している。 “三元系”のニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池は、高エネルギー密度を誇り、テスラ・モデルSなどの長距離走行EVに使用されている。エネルギー密度、寿命、コストのバランスが取れているため、乗用車向けに人気が高い。 <バッテリー寿命を延ばす充電のコツ> EVのバッテリー寿命を延ばすためには、適切な充電習慣が重要だ。まず、継ぎ足し充電を心がけることが大切。とくに「三元系(NMC)」電池の場合、充電レベルを20%から80%の間に保つことが理想的とされている。EVオーナーとしては、いざというときのために毎晩フル充電したい気分になるが、これはバッテリーにとって好ましくない。80%以上の充電や20%以下の放電を繰り返すと、容量が少しずつ減少していく。そのため、たとえば25%まで使用したら75%まで充電するというサイクルを心がけるといいだろう。 LFP電池に関しては、低電圧による劣化が少なく、正確な充電残量把握のための満充電メリットがデメリットを上まわるともいわれている。テスラのマニュアルでは当初、搭載されているLFPについて次のように説明していた。 「LFPバッテリー搭載車両の場合、通常走行であっても充電制限を100%に維持し、少なくとも週1回はフル充電して100%にしておくことを、Teslaでは推奨しています」 急速充電の頻繁な使用も避けるべきだとされている。急速充電は通常の充電に比べて充電速度が速いためバッテリー内での化学反応が急速に進行し、これがバッテリーの熱を増加させて劣化を早める要因となる。また、長距離ドライブ後、すぐに充電するのではなく、バッテリーを少し冷ましてから充電を開始するのが望ましい。これもバッテリーの温度管理が寿命に大きく影響するためだ。

TAG: #バッテリー #充電
TEXT:御堀直嗣
「燃料タンク=バッテリー」「エンジン=モーター」じゃない! EVの性能はバッテリー容量とモーターの出力以外に「バッテリーの出力」が重要だった

バッテリーの性能は一充電距離や出力性能に影響 リチウムイオンバッテリーの諸元で注目されるのは、kWh(キロ・ワット・アワー)の単位で示される容量だ。この数値が大きいと、より遠くまで充電せずに走り続けられる。急速充電への不安から、バッテリー容量の大きな電気自動車(EV)を好む傾向が根強い。 このようにバッテリーは、エンジン車でいう燃料タンクのように、エネルギーを貯めておく機能がある。 同時に、バッテリーは一度にどれほどの電力を出せるかという出力性能も備えている。 たとえば急加速する際、バッテリーに電力が残されていても、一気にその電気を使えなければ加速に不足が生じる。つまり、エンジンと燃料というこれまで慣れ親しんできたクルマの部品や要素の機能と違った側面が、EVにはある。 そしてモーターは、バッテリーから送られてきた電力で力を出すための装置という位置づけが正確なのではないだろうか。 バッテリーの出力は、バッテリーの種類や、同じバッテリーでも性質の違いによって差が出る。 たとえば、ハイブリッド車(HV)で永年使われてきたニッケル水素バッテリーは、瞬間的に高出力を出す性能に優れている。一定の重量でどれくらい大きな出力を出せるかの指標となる、出力密度(W/kg)で、鉛酸バッテリーより優れた性能を備える。さらに高性能なのが、バッテリーではないがキャパシター(コンデンサー=蓄電器のように一時的に電気を貯める機能がある)だ。 したがって、1997年にトヨタからプリウスが発売されたあと、HV開発を模索する他メーカーのなかには、バッテリーではなくキャパシターの活用を検討していた例がある。 一方、ニッケル水素バッテリーは、電気を蓄えるためのエネルギー密度でリチウムイオンバッテリーに劣る。このことから、貯めた電気で走るEVや、PHEVでは、リチウムイオンバッテリーが使われるのである。 また、リチウムイオンバッテリーは、ニッケル水素が得意とする出力密度においても、それ以上の性能を引き出すことができる。ただし、もしリチウムイオンバッテリーをHVで使う場合は、エネルギー密度より出力密度を重視した特性にする必要がある。EV用とHV用では、同じリチウムイオンバッテリーといっても、性質が異なるのである。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:西川昇吾
バッテリー交換をしてまで乗るひとは極小! EVはまだ真の愛車にはなりきれてない可能性

初代リーフの場合は? 現在多くの電気自動車(BEV)で採用されているバッテリーがリチウムイオンバッテリーだ。このリチウムイオンバッテリー、長年使用しているとバッテリー性能が落ちてしまい、いずれほとんど走れなくなる……つまり寿命を迎える。では、長年このバッテリーを搭載するクルマを所有していたオーナーは、どうするケースが多いのだろうか? 古くからBEVを販売していた自動車メーカーといえば日産だ。2010年からリーフを販売していた日産は正にBEVのパイオニアといえる存在。リーフも初代はすでに販売から10年以上経過していて、これまでも存在していたICE(内燃機関車)を乗っていた場合でも乗り換えを検討してもおかしくない年月が経過している。 実際に初代リーフに乗っていたユーザーはどのような選択肢を取った人が多かったのか? 日産にその疑問をぶつけてみた。 すると、「リーフは普通車の量産型電気自動車としては初のモデルであったので、『新しい物好き』なユーザーが多かったです。そのようなユーザー特性の背景から、バッテリーの劣化が進んでからはマイナーチェンジしたリーフや、2代目リーフに乗り換えるユーザーがほとんどでした」、とのこと。わずかにバッテリーを交換して乗り続けるユーザーもいたそうだが、あまり多くなかったのが実状だったようだ。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:山本晋也
ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?

重要なのは「SOC」ではなく「SOH」 EVについては、自動車好きの間でも賛否両論といった状況なのは、ご存じのとおり。そして、EVが批判される要因のほとんどは、バッテリーに充電した電力によって走るという基本的な部分に起因するものが多い。EVに対するネガティブな評価をまとめると「バッテリーが問題だ」といえるだろう。 たとえば、エンジン車や水素燃料電池車の燃料補給に比べて、EVは充電時間が長いといった意見は、現状のバッテリー性能に対する批判ともいえる。 また、ハイブリッドカー(HEV)が普及したてのころから、よくいわれてきた電動車に対する不満として、「バッテリーが劣化する」といったものがある。バッテリーが劣化すると本来の性能(航続距離や最高出力)が出ないばかりか、そのリペアには多大な費用がかかる。そのため、トータルでみると電動車は経済的でないといった批判は、ある意味で定番だ。 たしかに「HEVのバッテリーを交換したら50万円以上かかった」、「EVのバッテリーは200万円以上するから長く乗れない」といった都市伝説的ウワサを見かけることは多い。ただし、実際に何十万円、何百万円も出してバッテリーを修理したというオーナーの不満を目にすることは、ウワサを見かけるほどは多くないのも事実。 なぜなら、電動車のバッテリーは、自動車メーカーの長期保証対象となっているからだ。 メーカーや車種によって保証期間は異なるため、ご自身の愛車の保証内容については各自で確認してほしいところだが、概ね「8年・16万km・70%」というのがバッテリー保証の基準となっている。 保証期間は新車販売から8年以内、走行距離は16万km以下、そしてバッテリー容量が70%を切ると保証の対象になるというのが、多くのEVにおける保証内容となっている。 ここで覚えておきたいのは「70%」という数値が示すものだ。 日常的にEVを使っているときにパーセントで表現するのは充電率であることが多い。これは現在のバッテリー能力に対して、どれだけ充電しているかを示すもので、業界的には「State of Charge」の略称で「SOC」と表現されることが多い。 しかし、SOCの数値ではバッテリーの劣化を知ることはできない。SOCの数値は、バッテリーの電力残量を実効電力量で割ったものであり、劣化によって使える能力が落ちたことは基本的に考慮しないからだ。極論すると、劣化によってバッテリーの能力が半減した状態でも、普通充電をつないでじっくりと充電すればメーター表示のSOCにおいては100%まで充電できる。しかし、それは新車時の100%と同じ電力量が入っているという意味ではない。 そして、バッテリーの劣化度を示す基準となるのが「State of Health」の略称「SOH」である。英単語の意味からも想像できるように、SOHとはバッテリーの健全度を示すもの。その基準は、単純に満充電でどれだけ入れられるかにある。たとえば、新車時に100kWhほど充電できるバッテリーが使っていくうちにSOC100%の状態でも70kWhしか入らないようになれば、「このバッテリーのSOHは70%だね」ということができる。 メーカー保証でいうところの「70%」という数字は、保証期間や走行距離の間にSOHが70%を切るほど劣化したら、保証対応として修理しますということを意味している。 70%の性能を残しているのであれば、それなりの機能を維持しているように思えるかもしれない。しかしながら、「SOH=70%」というのは、結構なバッテリー劣化を実感できるレベルともいえる。新車時に満充電で400km走れるEVを想定したとき「SOHが70%になっても満充電で280km走れるじゃん」と思うかもしれないが、多くのEVにおいてSOCが20%を切ったあたりから走りを抑える制御が入り始める。それはSOCが低い状態でフル加速などの性能を引き出す走りをする(バッテリー的には高出力の状態)と、劣化しやすい傾向にあるからだ。 上記の例において、SOC20%以下では走行しない前提で単純計算すると、バッテリー新品時の実走行可能距離は320kmで、SOHが70%まで劣化した状態では同224kmとなる。新車時からの実際に“走れる”距離が100kmも短くなってしまったら、オーナーは劣化を実感するだろう。さらに、カタログでの航続距離スペックが180km程度のコンパクトなEVで同様の計算をすると、SOH70%では実際の使える領域では100km程度の航続性能になってしまう。ご承知のとおりカタログスペックは空調を使わず、上手に理想的な運転をしたときの航続距離であるから、リアルワールドではもっと厳しい数字になることは自明だ。

TAG: #バッテリー #交換

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