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EV後進国の巻き返しとなるか、トヨタが全固体電池式EVを2027年をめどに実用化[2023.06.14]


TEXT:福田 雅敏、ABT werke
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全固体電池(photo=トヨタ自動車)

2027年の実用化を目指し開発を加速
航続距離1,500km級の高性能版も開発中

【THE 視点】トヨタ自動車は6月13日、全固体電池(バッテリー中の電解質に固体を用いる電池)の開発と実用化を明言した。

同社の東富士研究所(静岡県裾野市)にて「トヨタテクニカルワークショップ2023」を開催し、次世代電池についての発表を行った。その中で、2026年に導入予定の次世代EVに搭載される次世代電池(高性能版/以下、ハイパフォーマンス版)に加え、新しいバイポーラ構造を持つ次世代電池(汎用版)、そしてパフォーマンスの向上と低コスト化を両立したバイポーラ型リチウムイオン・バッテリーが発表された。

パフォーマンス版は、2026年に導入予定の次世代EVに搭載する。航続距離1,000kmを実現しつつ、コストは現行「bZ4X」比で20%減、急速充電は20分以下(10%〜80%の充電)を目指すという。

しかし今回の発表で興味を引いたのは、全固体電池について触れたことだ。

全固体電池の課題であった電池の耐久性を克服する開発に成功したことで、ハイブリッド車(HEV)用から予定を切り替え、EV用のバッテリーとして開発を加速するという。現在は量産技術を開発中で2027〜2028年中の実用化に挑戦するとのこと。

先に述べたパフォーマンス版のバッテリーと比べて航続距離は20%向上・急速充電は10分以下(10%〜80%)となる見込み。つまるところ、航続距離1,200km、10分の充電で800km以上の走行が可能。早ければ2027年に誕生することになる。

また、もう一段レベルアップした仕様も同時に研究開発中。こちらはパフォーマンス版と比べて航続距離50%向上を目指すというから、一充電で1,500kmの航続距離となることを意味する。

これまでトヨタは、全固体電池の2022年の実用化を目指してきた。東京五輪用EVに搭載し公道走行までは漕ぎ着けたものの、実用化時期は見直した。

先にも触れたが、その後HEV用でまずは実用化を目指すはずであった。ところが今回の発表で一気に風向きが変わった。

日産も全固体電池を開発しており、2028年の実用化を目標としている。トヨタの開発が遅れたがために、日産が国内初となると見ていたが、これにてどちらが先か予想が立たなくなった。両社の開発陣はおそらく、1時間でも早い開発完了を目指してしのぎを削っていることだろう。

ともあれ、2027〜2028年は全固体電池EVの元年となりそうである。EV後進国である日本が、巻き返しを図るチャンスでもある。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★トヨタ、次世代のEVを2026年に投入……航続距離1,000km・20分で80%の急速充電が可能、多様な電動車に対応できる「マルチパスウェイプラットフォーム」も開発中詳細はこちら<click>

★★フォード、ドイツ・ケルンにてEV専用工場を開設……2026年末までに年間200万台/年が目標詳細はこちら<click>

★★メルセデス・ベンツ、長距離対応のトラクター・ヘッド「eアクトロス 600」を2023年10月に初公開へ……中間充電なしで500kmの走行が可能

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★ブレイズ、改正道交法対応の電動キックボード「キックボードEV」を発表……「ライトモデル」と椅子付きの「ベーシックモデル」の2種類を用意詳細はこちら<click>

★次世代スマートモビリティの運用が「東京ミッドタウン」(東京都港区)にて開始……小型電動モビリティ「ロデム」を使用し、八重洲・日本橋エリアを周遊(有料)

デイリーEVヘッドライン[2023.06.14]

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