燃料電池の“排出ガス”から水素を回収し再利用 大型FCEVトラック/バス向けの転用も期待 【THE 視点】IHIは、水素燃料電池(FC)向けの大容量再循環装置「電動水素ターボブロア」を開発し、実証運転に成功した。 航空機機体製造装置メーカーの三栄機械、そして秋田大学と連携して開発したもので、航空機用FC向けの補機となる。独自開発の「ガス軸受超高速モーター」を採用することで大容量化を達成した。FCから排出される水蒸気の中には未反応の水素がある。「ターボブロア」でそれを大量に回収し、FCの燃料極(負極:アノード)に再循環・再利用でき、発電の効率を上げることができるという。 「ターボブロア」には、独自開発の「ガス軸受」を用いた超高速モーターを採用している。これにより、再循環装置の大容量(高効率)化・小型化・軽量化を同時に実現できた。「ガス軸受」は潤滑油を使用しないため、潤滑油で水素を汚染することもない。 さらに、水素雰囲気中で使用するための密閉構造化や、大容量化に必要なモーター排熱性能の向上(熱によるモーターへのダメージを低減)も行なっている。航空機用として必要な電力出力400kWを超える大型FCの水素再循環は、従来の小容積型ブロアでは複数台並列で運転せざるを得なかったが、「ターボブロア」を採用すれば1台で足りるようになる。 プロトタイプは、そうまIHIグリーンエネルギーセンターおよび秋田大学の電動化システム共同研究センターで特性評価を行なった。その結果、これまで難しいとされていた環境(燃料電池燃料極排気ガスの水素ガス環境や水蒸気を含んだ高湿潤環境)で必要性能が得られることを確認したという。 今後2024年中を目標にFCシステムに乗せて検証を行ない、同じく開発を進めている「航空機推進用大出力電動モーター」、FCの空気供給を担う「電動ターボコンプレッサ」「高磁束プラスチック磁石ローター」と組み合わせ、2030年代のFC航空機の実用化を目指す。ちなみにIHIのFC向け「電動ターボ」は、以前に本欄でも触れているのでご一読いただきたい[詳細はこちら<click>]。 IHIは今回、「この成果は、航空機にとどまらず。今後、大出力化が期待される燃料電池モビリティにおいて、船舶や大型トラックなどの開発にも貢献することが期待される」とも発表した。 今回の「電動ターボブロア」の開発は、FCシステム全体の小型化/軽量化/コストダウンなどに寄与するものとなる。2030年以降とされるFC航空機の開発も加速されるものと推測される。 ただ、忘れてはいけないのが地上面。400kWクラスのFCといえば、大型トラック用としても対応できる。航空機だけでなく大型自動車のFC化も推進されているのは度々報じている。IHIといえば自動車用ターボチャージャーの開発の大手だ。願わくば、上記の表明にもあるようにFCEVトラック/バス、そして乗用車への転用も期待したい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、欧州で商用バンにEVを追加 ……欧州向けの商用バン「プロエース」にEVモデルを追加する。最大サイズのボディを持つ「プロエース・マックス・エレクトリック」の航続距離は420km(WLTP)となる。 ★★プジョー、新型バン「Eトラベラー」本国で発表 ……スタンダード(全長4.98m)とロング(5.33m)の2つのボディタイプを用意。最高出力100kW(136ps)/最大トルク260Nm(26.5kgm)のモーターを搭載。バッテリー容量は50kWと75kWから選択でき、75kWタイプの航続距離は350kmとなる。 ★「ポールスター4」、2023年末にデリバリー開始 ……ボルボの高級ブランドであるポールスターが、SUVモデル「ポールスター4」の生産を開始した。2023年末に中国のユーザーに出荷し、正式発売は2024年に行なうとのこと。 ★「トヨタ・クラウンセダンFCEV」を都内で展示 ……岩谷産業が運営する「イワタニ水素ステーション芝公園」<港区>内に設置されているトヨタ自動車のFCEVのショールーム「MIRAIショールーム」に、11月15日(水)〜20日(月)の6日間限定で展示する。 ★レクサス、各地域のモビリティショーに「RZ」を出展 ……名古屋/大阪/福岡/札幌の各地域で今後開催が予定されている各地域の「モビリティショー」に、EV専用のSUVモデル「RZ」を出展する。各地域のモビリティショーは、11月23日(木)の「名古屋モビリティショー」を皮切りに、2024年1月まで上記の順で開催される。 ★メルセデス・ベンツがEVで出張整備 ……メルセデスベンツは、ユーザー向けの出張整備サービスをドイツ国内で開始する。使用車両は小型バンの「eヴィト」。簡単な修理や車両確認などに対応するという。 ★茨城県阿見町のアウトレットにEV充電器 ……ユビ電は「あみプレミアム・アウトレット」にEV充電器を設置した。11月14日よりサービスを開始している。最高出力6kWタイプの普通充電器を10基導入し、任意の時間設定で買い物中に利用ができる。 ★パワーエックス、新規電力事業を開始 ……法人向けの電力事業「X-PPA」を開始する。日中の太陽光発電で蓄電池に電力を貯め、夜間にその電力をオフィスビルや商業施設に販売する。2024年夏頃に東京電力エリアで15MW(メガワット)の供給を行なう。 ★パナのEV充電インフラをOKIが保守 ……パナソニックとOKI(沖電気工業)がEV充電サービスで提携した。パナが展開するEVチャージャーのシェアリングサービス「エブリワ・チャージャー・シェア」のインフラ設備の保守・運用サービスをOKIが行なう。 ★郵便局に大型蓄電池 ……パワーエックスと日本郵政は、カーボンニュートラル社会の促進に向けて協業に合意した。大型蓄電池を郵便局に導入し電力最適化サービスを展開するほか、再生可能エネルギーの利用促進も図る。 ★スポーツEV「アイオニック5ドリフトスペック」が「ラリージャパン」で見られる ……ヒョンデモビリティジャパンは、「フォーラムエイト・ラリー・ジャパン2023」<愛知県豊田市周辺/11月16日(木)〜19日(日)>に展示ブースを構える。イギリスのラリーイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で公開されたスポーツEV「アイオニック5 N」と「アイオニック5・ドリフトスペック」を出展する。 ★オペル、シリーズハイブリッドモデルを発表 ……発電用にガソリンエンジンを積んだ2モーター式AWDのシリーズハイブリッドモデル「GSe」を発表した。設定されるモデルは「アストラ」「アストラ・スポーツツアラー」「グランドランド」となる。 デイリーEVヘッドライン[2023.11.16]
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