小川 フミオ 記事一覧

TEXT:小川 フミオ
ボルボの新型EV「EX30」のツインモーターは強烈な加速力と高い安定性が魅力!

EX30のインテリアをチェックした小川フミオ氏は、いよいよバルセロナの街に繰り出す。ツインモーター車は、ボルボ史上最速の加速力を持つことがひとつのトピックだが、それ以外の特徴も見えてきたようだ。 軽快感のある動きが好印象 ボルボがBEV(バッテリー駆動のEV)専用モデルとして開発した「EX30」。スペインのバルセロナで、シングルモーター「ロングレンジ」と、ツインモーター「パフォーマンス」の2モデルに試乗するチャンスがあった。 バルセロナは、街を彩る建築がおもしろい。最も有名なのは、読者の方もご承知のとおり、聖家族教会(サグラダ・ファミリア)に代表されるアントニ・ガウディによるものだ。 ほかにも、カタラン地方特有のモデルニスモ建築や、もっともっと時をさかのぼったカトリックのゴシック建築など、街角を曲がるたびに、まるでワンダーランド並みの楽しさだなと走りながら思った次第。 ツインモーター車は、トータル出力315kW、トータルトルク543Nmと、しっかりパワフルだ。バッテリー容量は69kWhと、数値的にはやや控えめ。 満充電の走行可能距離は480kmだし(実際は7掛けぐらいかな)、バッテリーが大型化する弊害も考え合わせると、いまのツインモーター用で妥当なのかもしれない。 日本でも昨今は、積雪量の多い地方の市場では、選べるなら4WDを、という傾向が強いようだ。昔は北海道でも”後輪駆動でも慣れてれば十分さー”なんてかんじだったのだけれど。時代は変わった。 ツインモーターの特長はもちろん雪上だけのものでない。走りは、十分、加速のよさを感じさせる。 リアモーターでリア駆動の「ロングレンジ」(200kW、343Nm)もスムーズな加速で、気持ちのよい走りを味わわせてくれるが、ツインモーターは上をいく。 アクセルペダルを踏み込んだときのガンッと強い加速感が印象的だ。バルセロナ近郊の自動車専用道路をドライブしたとき、ぐんぐんと速度を上げていく。操縦安定性は高く、ハンドルへのインフォメーションもあって、安心感が高い。 高速を流しているときなどアクセルペダルを踏み込まないと、前輪の駆動力が停止して、さらに電力消費を抑える。このあたりは、エンジン車の燃費対策と同じ考えかただ。 ワインディングロードが少なかったのと、けっこう混んでいたので、ハンドリングのよさなど、”おいしい”ところはあまり堪能できなかったが、車体の重さを意識させない軽快感のある動きはよかった。

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TEXT:小川 フミオ
ボルボの新型電気自動車「EX30」のインテリアは、華美すぎず趣味性が高い。

バルセロナで「EX30」に再会した小川フミオ氏は、改めてインテリアに感銘を受けたようだ。“クラシックボルボ”から受け継がれる同ブランドのインテリアの秘訣も語ってもらった。 趣味性の高い内装 ボルボの最新モデル、BEVとして設計された「EX30」について、私がおおいに興味を持っていたのは、インテリアデザインだ。 そもそもボルボのプロダクトは、内装の趣味性の高さが、大きな魅力のひとつだった。100シリーズ(1966年~)、200シリーズ(74年~)、700シリーズ(82年~)、それに850(91年~)など、どれもデザイン性が高かった。 EX30のインテリアは、上記のクラシックボルボに対して、とうぜん先に進んでいる。最大の特徴は、デジタライゼーションが進んでいること。XC40やXC60といったモデルで大々的に採用した液晶パネルによる操作性をさらに拡大しているのだ。 液晶パネルのなかに機能を集約していった結果、物理的なスイッチ類の数が大幅に減っている。ウィンドウ開閉とドアの解錠と施錠ぐらいしかない。 ただしレバーは2本残されている。ワイパーやライトのオンオフやウインカーはレバーで行う。これもスイッチにカウントするなら、テスラよりは物理的な操作類が多い。 お気に入りの「ミスト」コンセプト これはボルボ車の“伝統”とはいえないが、相変わらず”いいなあ”と思える点がある。室内の造型と、落ち着いた色使いと、シートだ。 「私たちはBEVを脱炭素とを結びつけて開発しているので、エネルギーをたくさん使って作る素材を排除しました」 THE EV TIMESでも紹介した、ボルボでインテリアデザインを統括するデザイナー、リサ・リーブス氏による、コンセプトだ。 たとえばシート表皮もリサイクル材を使った素材。「ブリーズ」と名付けられたパッケージに含まれるシート地は「ピクセルニット・ノルディコ・コンビネーション」なるもの。 「リサイクル素材を使用したピクセルニットに、パインオイルを原料に取り入れたなめらかな触感のノルディコ(人工皮革)を組み合わせました」とボルボでは説明。 もうひとつの内装は「ミスト」。ウール30パーセントをポリエステルとブレンドしたファブリックだ。「寒いときには暖かく、暑いときには涼しい」と、ウールの魅力を活かした素材と説明される。 からだが滑りにくいうえに、布のような感触になじみが持てるため、私にはより好感度が高かった。

TAG: #EX30 #コンパクトカー #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
日々の生活の相棒としてBYDのコンパクトEV「シーガル」は最適な1台かもしれない

日本円換算で150万円から180万円の価格で、305kmから405kmも走れるBYDの電気自動車「シーガル」。短時間だが走りを確かめた小川フミオ氏は、価格から想像する以上の良いフィーリングを得たようだ。 けっして安物ではない BYDが23年に(本国で)ローンチした、日本の軽自動車より30cmほど長いだけの全長3,780mmのコンパクト4ドア「シーガル」。乗ると、けっして安物ではない印象を受けた。 BYDは、モデルラインナップの拡充で、市場のニーズを先取りしていこうという製品戦略のようで、大から小まで、手がけるモデルのサイズを拡げている。 大は、「ジャパンモビリティショー2023」に出展した電動スーパーSUV「Yangwang(ヤンワン) U8」や、アルファードより長い車体の「Denza(デンザ) D9」。小はたとえばこのシーガル。 シーガルは、「ドルフィン」や「シール」などのBEVと共通の「eプラットフォーム3.0」を使用。ホイールベースは2,500mmと、全長に対して比較的長い。BEVならではのパッケージングだ。 乗りこんだ時の印象は、まずシートクッションが予想以上に厚くて、しっかりからだを受け止めてくれるのが嬉しかった。 私が乗ったのはおそらく上級グレードだったはずで、室内は落ち着いたグレーとトルコブルーというのか、くすんだ水色との2トーン。ハンドルリムもブルーで巻いてあって、視覚的な質感も高い。 モニタースクリーンは、ドライバー前に小型なものと、ダッシュボード中央に10.1インチの、やはりドルフィンなど上級車種よりすこし小ぶりのものがそなわる。私は試す時間がなかったが、これもボタンで90度回転して縦型になるという。 中国のクルマで感心するのは、すべてスマートフォンを使うこと前提の設定。そのひとつが、かならずといっていいほど装備されているワイヤレス充電器だ。 上級車は2台並べて置けるけど、スペースが限られてしまうシーガルでは1台ぶんのみ。それでも通勤用途がメインなら、十分だろう。

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TEXT:小川 フミオ
これぞコスパ最強の電気自動車!180万円で400km走れるBYD「シーガル」に試乗した!

BYD「シール」の試乗会に参加した小川フミオ氏は同社の「シーガル」にも乗る機会があった。日本円にすると約150万円からと価格破壊的なEVはどんなクルマだったのだろうか。 シティ派ユーザーに響くEV BYDのプロダクト戦略はおもしろい。BYDジャパンの劉学亮(Liu Xueliang)社長は、市場の嗜好が変化していく速度は従来と比較にならないほど速い、と語っていた。 2023年4月に発表された「シーガル Seagull」も、いまっぽいプロダクトだ。 全長3,780mm、全幅1,715mm、全高1,540mmと、都会的というのか、シティユースに適した外寸を持つボディ。 大小、サイズ的に広くカバーしようというBYDの市場戦略の一翼を担うモデルともいえるし、日本でいうと日産サクラ/三菱ekクロスEVなどを考えているシティ派ユーザーに響きそう。 日本でも発売されているドルフィンは、本国では働く女のひとが通勤用に購入する場合が多い(BYD本社の広報担当談)そうで、ひょっとしたら、同様の市場において、価格的にさらに買いやすいモデルを求めるひとがターゲットなのかもしれない。 私が、限られた時間だけれど、シーガルに乗れたのは、深圳のBYD本社において。広い敷地内を走って、市街地でドライブしたときの印象を多少なりとも得ることが出来た。

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TEXT:小川 フミオ
まだ日本に入ってこない貴重な「EX30」のツインモーターに試乗!ボルボ史上最速性能を誇るEV

10月にサブスクリプションの受付を始め、まもなく11月中旬からは通常の販売も開始予定のボルボのBEV(バッテリー電気自動車)の「EX30」。日本はシングルモーターの「エクステンデッドレンジ」から導入が始まる。しかし実はEX30にはAWDモデルも用意されている。AWDモデルはどんなクルマで、どう仕上がっているのか、バルセロナで試乗した小川フミオ氏のレポートをお届けする。 期待以上にいい出来 日本では使い勝手のいいサブスクリプションで評判がよい、ボルボの新型BEV「EX30」。日本を含む世界でのデリバリーの前に、バルセロナで試乗会が開かれた。はたして、期待以上にいい出来だった。 2030年までにグローバルで販売する新車をすべてBEVにすると宣言したボルボだけに、BEVとして専用設計されて、初めて市場に投入されるEX30の出来が気になっていた。 EX30が発表されたのは、2023年6月のミラノだった。私も世界各地から発表会に参加したジャーナリストのひとりで、そのとき、全長4,235mmと大胆なほどコンパクトな全長に、まず驚かされたものだ。 発表されたラインナップは、既報のとおり、3つのモデルで構成される。 もっともベーシックなモデルは、リン酸鉄リチウムのLFPバッテリー搭載のシングルモーター「スタンダードレンジ」。最大限の航続距離を必要としない都市生活者をターゲットにしている。 その上には、シングルモーター「エクステンデッドレンジ」。リチウム、ニッケル、マンガン、コバルトによるNMCバッテリーを使用し、スタンダードレンジが走行距離344km(WLTP)なのに対して480kmとされる。 もっともスポーティなのは、前後に1基ずつモーターを搭載したツインモーター「パフォーマンス」だ。唯一の全輪駆動で、静止から時速100km/hまでを3.6秒で加速する性能を有している。 これまでのボルボ車において最速の加速だそうだ。 3.6秒といえば、ポルシェ911カレラSの3.7秒を上回る。そこがダッシュ力にすぐれる電気自動車の強みであり、最高速度となると、時速180km/hでリミッターがかかってしまう。カレラSは308km/hだって。 私はEX30シリーズにおいて最も気に入っているのは、使い方に応じた選択肢が用意されているところだ。2種類の駆動方式と2種類のバッテリー。価格ももちろん違う。BEVも洗練されてきたなあという感ひとしお。

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TEXT:小川フミオ
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」

ボルボのテクニカルリーダー・バッカー氏は「BEV(バッテリー駆動のピュアEV)の技術革新はものすごい速度で進み、近未来の予測は難しくなってきている」と話す。イノベーティブな時代だからこそ、氏の知見を、ボルボは大事にしてもらいたいと小川フミオは思うのだ。 日本にフィットしたEX30 狭い道幅、混合交通、サイズに制限のある駐車場……自動車にはけっしていい環境とはいえない日本にもぴったりのBEV。 ボルボカージャパンの不動奈緒美代表取締役社長は、23年8月の「EX30」導入時にメリットを説明した。 乗ってみれば、たしかに狭かったり混んでいたりする道路環境で扱いやすく、かつ、いざというときは俊敏で、しかも走りも高いレベルにある。 そんなEX30は、どういう背景で開発されたのだろうか。 EX30の動的性能におけるテクニカルリーダー、エグベルト・バッカー(Egbert Bakker)氏に、2023年10月、EX30の国際試乗会のタイミングでインタビューした内容をお伝えしよう。 BEVへ、ボルボであるためのDNAを組み込む ーーバッカーさんは、いままでずっとボルボで、ICE(内燃機関搭載車=エンジン車)の開発をずっと手がけてきた経歴を持っています。BEVであるEX30の開発はまったく違うものでしたか。 「動的性能の面でまったく違います。そこはご存知のとおりです。エンジンという大きなマスがフロントにありません。いっぽう、駆動用バッテリーという重量物をフロア下に搭載してます。なので、低重心でコーナリング性能などにすぐれるのはBEVですが、いっぽう内燃機関のドライブトレインは、バイブレーションのダンパーとして機能していましたが、それはなくなるわけです。いい面もそうでない面も出てきてしまいます。ただし、動的性能における基本的セオリーは共通です」 ーーEX30においても、いわゆるボルボ車らしさは重視したのでしょうか。 「もちろんです。ボルボ車がボルボ車であるための重要な要素は3つ。Predictability(操作に対する車両の動きの予測容易性)、Functionality(機能性)そしてControllability(操作容易性)。これが、ボルボ車のDNAに組み込まれた動的性能の基本要素です。そして、安全性や快適性は、これら3つと密接にかかわっています」 ーーバッテリーについてですが、EX30は、用途別に2種類、都市で使えればいいというひとには低価格でちょっと性能のひくいLFP(リチウム鉄リン酸塩)を、性能や長い走行距離を求めるひとにはNMC(ニッケルマンガンコバルト)を用意したのは、たいへんいいコンセプトだと思います。 「ありがとうございます。欧州をはじめ、このクルマが売られる市場ではどこも、使い方はひとつでありませんから。選択肢はとても重要だと思いました」 近未来の予測は、とても難しくなってきている ーーバッテリーの搭載方法は、従来の、いわゆるパック・トゥ・シャシー、つまりセルをモジュール化してひとつのパックに収めたものをシャシーに載せる設計ですね。このさき、たとえばセル・トゥ・シャシーのように、バッテリーをシャシーの一部として使うような設計に変更する可能性がありますか。 「プラットフォームが、パック・トゥ・シャシー前提で設計されてしまってますので、そこまで大きな変更はありません。このさき、BEVの技術革新はものすごい速度で進んでいくとは思います。いままでボルボのプロダクトは、比較的長いライフサイクルを持っていましたが、それも過去の話になるかもしれません。近未来だってどうなっていくのか、予測がとても難しくなってきています」 私がこの仕事をはじめたとき、設計者はみな鉛筆を手に製図板に向き合っていたものですが、いま、そんなことするひと、見たことありませんよ。バッカー氏はそう言って苦笑。 とはいえ、動力がどうなろうと、クルマには”味”が必要なのは、おそらくずっと変わらない(はず)。 数かずの名ボルボ車を送り出してきたベテラン・エンジニアであるバッカー氏の知見は、この先もずっと大事にしてもらいたい。そうするべきである。ボルボ車のファンの感想である。 <了>

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TEXT:小川フミオ
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの

ボルボ初のコンパクトBEV(バッテリー駆動のピュアEV)「EX30」が好評だ。シンプル&モダンなデザインに、コンパクトなサイズ、スムーズで扱いやすい。このモデルは、2025年までに新車販売台数の50%をBEVへと掲げるボルボにとっての戦略が秘められている。テクニカルリーダーに、小川フミオが訊き出す。 初のコンパクトBEVは、フレキシブルなプラットフォームで EX30は、ボルボが初めてゼロから手がけるBEV専用モデル。乗ると、スムーズで、扱いやすいサイズ感でもって、印象がよい。 もうひとつ、EX30の特徴として挙げられるのが、プラットフォーム。「サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー(SAE)」と名づけられており、ジーリー(Geely)との共同開発だ。 EX30の”姉妹”車は、ジーリーの新エネルギー車プレミアムブランドZeekrの「X」と、ジーリーがダイムラー(現メルセデス・ベンツ)と合弁で設立したスマートの「#1」。すべてBEV。 といっても、フレキシブルプラットフォームなので、ホイールベースなど異なる。基本プラットフォームが完成したあとは、ボルボはスウェーデン・ヨーテボリの自社でEX30を完成させた。 ボルボはどんなふうに独自のEVを作りあげたかったのか。 EX30の”味付け”を担当したのは、動的性能におけるテクニカルリーダーの肩書きをもつベテラン、エグベルト・バッカー(Egbert Bakker)氏。 2023年10月、EX30の国際試乗会が開催されたスペイン・バルセロナで、あまり表に出てこない開発ストーリーを聞いたのが、このインタビューである。 39年間ボルボを見渡し、Nedcarの共同開発も経験してきた ーー最初に、経歴について少し教えていただけますか。ボルボ・カーが用意したあなたの経歴をみると、さまざまなモデルにかかわっていらっしゃいますね。 「なにしろ39年間、ボルボで働いていますから。私はオランダ人で、デルフト工科大学を卒業したあと、1984年にヨーテボリのボルボ本社で働きはじめました。10年間、そこにいてから、オランダへ移り、三菱自動車との共同開発プロジェクトであるネッドカー Nedcarで、「S40」と「V40」(三菱版は「カリスマ」として95年から2004年にかけて生産)の開発に携わりました。本社に戻ってからは、フォード、マツダ、ジャガー、ランドローバー、それにピニンファリーナの仕事を手掛けていました」 ーーフォード・モーターカンパニーが1999年に、高級自動車ブランドを束ねて1999年に作ったPAG(プレミアオートモーティブグループ)ですね。ほかにアストンマーティンやリンカーン、マーキュリーなどが入っていて、ボルボも参加していましたね。 「私は、『850』(1991年)にはじまり、『V70』(96年)、『C70』(97年)、『S80』(98年)などにかかわってきました。いまはジーリーとの協業を担当しています」 EX30を起点にして、ラインナップが広がっていく ーー開発については、最初、プラットフォームの計画があって、それがほぼ完成してから、ボルボではそこからEX30というコンパクトなクルマを作ろうと決めたという説もあります。つまり当初は、コンパクトなBEVなんて、中長期計画に入っていなかったとか。 「そんなことないですよ。当初からEX30になるコンパクトBEVのベースを共同開発しようというプロジェクトでした。ジーリーが基本プラットフォームとサスペンションシステムを開発することが決まっていたので、私たちは、自分たちが欲しいスペックスを渡しました。それが2年半前です。そして、出来上がったものを、ヨーテボリに引き上げたのが1年半前でした」 ーーボルボではBEVはリアエンジンで後輪駆動が基本ですね。「XC40 Recharge」や「C40 Recharge」も、2019年の発表時はフロントモーターの前輪駆動でしたが、23年にモーター搭載位置をリアに移すとともに駆動方式も変更するという大胆な変更を行いました。 「ひとことで言うとパワーのためです。前輪駆動ではもちこたえられない、という判断です。XC40などはこのとき、いまのEX30や(これから発売される)『EX90』と共通の、パワフルで航続距離も長いモーターに変更しました。パワフルなモーターは後輪駆動でないと。ツインモーターは、これに加えて、ちょっと小さなモーターをフロントにも追加した仕様です」 ーージーリーのZeekr Xには、315kWバージョンがあって、静止から時速100キロまでを3秒で加速する、史上最速のコンパクトカーと標榜しているようです。EX30にも、同様のモデルが追加されますか。 「(笑)それはここでは言えません。出るか出ないか。もし出るとしたら、あなたたちジャーナリストが、まっさきにそのニュースを知ることになるでしょう。いまはそれしか言えません」 派生車種についていうと、次は「クロスカントリー」が予定されている(これは決定ずみ)。EX30はさまざまな可能性を秘めた車種なのだ。 <Vol.2へ続く>

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TEXT:小川 フミオ
オープンスポーツ「Z4」の燃料電池車だって作ってみせる!BMWが燃料電池車に懸けるアツい想い

BMWは2020年代後半に燃料電池車(FCEV)の発売を予定している。同社はなぜここまで水素にこだわるのか。そこには不確実な未来に向けて、BMWが考える戦略があった。 多様な電動化戦略 水素を近未来の燃料として有力視するのが、ドイツのBMWだ。さきごろ、「ジャパンモビリティショー2023」で、燃料電池車「iX5ハイドロジェン」をお披露目したBMWでは、これから電気と水素を両輪として進めていくと明言している。 私が以前、インタビューしたBMW取締役会のオリバー・ツィプセ会長は、「BEV(バッテリー駆動のEV)はあるところで頭打ちになる可能性がある」としていた。 南ヨーロッパは充電設備が少ないし、そもそもEVが普及していない地域で充電ステーションを建てても赤字になってしまう。なので、EVの普及がある台数に達すると、収益性が低くなる問題を引き起こす可能性が高い……それが指摘だった。 BMWが水素を使う燃料電池の開発を続けているのは、それだけでない。EUをはじめ、世界各地で水素燃料補給ステーションのネットワークが構築されつつあることもふまえ、多様な電動化戦略に合致しているというのだ。 そこまでは理解できる。しかし……と私は思う。乗用車、それもプレミアムクラスのスポーティなモデルに特化しているBMWが、そこまで水素に入れ込む意味はあるのだろうか。それこそ収益性の問題はクリアできるのだろうか。 「それはあります」。そう答えてくれたのは、水素技術におけるジェネラルプログラムマネージャーを務めるBMWのドクター・ユルゲン・グルドナーだ。下記に、ドクター・グルドナーとの一問一答の続きを記していこう。

TAG: #BMW #iX5ハイドロジェン #燃料電池車(FCEV)
TEXT:小川 フミオ
200kmごとに水素ステーションが整備される欧州でBMWが燃料電池に取り組む理由

ジャパンモビリティショーのBMWブースにはFCEV(燃料電池車)の「iX5ハイドロジェン」が展示されている。JMS開幕前日に燃料電池車の開発を進めるBMWとトヨタ関係者によるシンポジウムが開かれていた。この催しに参加した小川フミオ氏のレポートをお届けする。 再エネでグリーン水素製造が理想的 BMWジャパン(正式にはビー・エム・ダブリュー株式会社)は、水素を燃料とするFCEVの実証実験を、2023年7月25日から開始している。 その車両「iX5ハイドロジェン」を、私も、2022年にアントワープでの国際試乗会でドライブしたことがある。 なんでアントワープだったかというと、巨大な港湾都市であり、船舶や大型貨物車の次世代燃料として、水素が有力視されていて、水素ステーションも増えているため相性がいい、と説明された。 水素を解析して、イオンを取り出し、それを電気エネルギーとしてバッテリーに充電してモーターを駆動する。つまり、水素を燃料とした電気自動車である燃料電池車のiX5ハイドロジェン。 アントワープを走り回ったところ、好印象。トルクがたっぷりあって、加速はスムーズ。燃料としての水素と、窒素化合物の排出ゼロの燃料電池車の可能性を実感させてくれるものだった。 そんななか、「ジャパンモビリティショー2023」開催とタイミングを合わせて、BMW本社で、水素技術におけるジェネラルプログラムマネージャーを務めるドクター・ユルゲン・グルドナー(Dr. Juergen Guldner)が来日した。 ショー開催前の10月24日には、ジャーナリストを招いて「燃料電池車をテーマとしたシンポジウム」が、BMWジャパン主催で開催され、2011年より基礎研究を共同で行っているトヨタ自動車の担当者らも出席。 モデレーターを務めたジャーナリストの清水和夫氏が「風力などで発電した電気の貯蔵は喫緊の課題で、電気から水素を作り(グリーン水素などと呼ばれる)エネルギーとして使うのがひとつの理想型」とするなど、可能性が示唆されたのも印象的だった。

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TEXT:小川フミオ
「電座D9」の実力を知るべくBYD本社へ。日本未導入モデルをいち早く試す!

ジャパンモビリティショーで話題となった「電座D9」。ショーを直前にした時期に、小川フミオは中国BYD本社で、このラグジュアリーミニバンを体感してきた。 電座Denzaの豪華ミニバン「D9」シリーズは、アルファード/ヴェルファイアとの近似性が指摘される。パッケージングはミニバンとして似通ってしまうのは仕方ないだろう。 ディメンション(ボディサイズ)は、ただし、D9のほうが大きく、ピュアEVが設定されている点では、さきを行く。 私が、2023年10月に運転したのは、プラグインハイブリッドの「D9 DM-i」と、ピュアEVの「D9 EV」。 外国人が公道で運転するのは原則的に許可されていないため、自分でハンドルを握ったのは、深圳にあるBYD本社の敷地内だった。 敷地内といっても、社員移動用に、スカイレールという高架鉄道が敷設されているほど広大。本社とさまざまな関連施設と、それに工場があるのだから、ひとつの小さな街ぐらいにはなる。 BYD本社の敷地内で試すハンドリングと後席の居心地 まずドライブしたのは、D9 DM-iだ。1.5リッターのエンジンに、外部充電式のハイブリッドシステムが組み合わせてある。 最大トルクが681Nm(AWD)というだけあって、踏み始めからたいへんスムーズな加速で、加速していってもボディはいやな振動もなく、ハンドリングはすなおで、遊びも少なく、扱いやすいという印象が強かった。 プレミアムクラスのミニバンは、後席の快適性とともに、ドライバーには、それなりのファン・トゥ・ドライブ性が必要となる。そこもちゃんとクリアしていると感じられた。 満充電なら190kmは電気走行なので、エンジンが回ったときの印象は(残念ながら)わからなかった。エンジンは、ゴルフとか家族旅行とかで遠出する機会の多いひとなら、あったほうがよさそうだ。そういうひとには、このモデルがいいのだろう。 いっぽう、D9 EVは、こちらもよく出来ている。上記のとおり、DM-iでエンジンが回ったまま走行すると、どんなフィールなのかわからなかったので、ちゃんと比較できないのだが(すみません)。 速度が上がっても、静粛。ウインドウまわりからの音も、路面からの音もほとんど気にならない。バッテリーによって重心高が下がっているのも、ハンドリングのよさに寄与しているのだろう。運転が好きなひとも好感もてそうだと思った。 EVモデルでは、後席で移動する機会もあった。シートクッションはふかふかっとしているが、いわゆる腰があって、2~3時間ていどの乗車では、からだに負担がかかることもなく、快適。 バックレストを、いわゆるプレミアムエノコミークラスのシート程度にリクラインさせて乗れるし、レッグレストもでてくる。が、私はじつはあれが落ち着かない。ちょこんとまっすぐな姿勢で乗っているのが好きである。 でも、休んで移動したいというひとなら、これはアリだと思う。 「電座」の日本導入は未定 ジャパンモビリティショーでは、トヨタ車体が、レクサスLMやクラウンSUVなみに2列めシートがほぼフルフラットになる「ヴェルファイア・スペーシャスラウンジ(コンセプト)」を出展した。 すぐにでも注文を受けられる状態と聞いたので、この点は、トヨタ系が先に行っていると言えるかもしれない。 ただし、「電座ブランドの日本販売はいまのところ未定」(BYDオートジャパンのマーケティング責任者)とのことで、ピュアEVのミニバンという、少なくとも東京など都市内では活躍してくれそうなD9 EVは、いまはおあずけ。よく出来てるクルマだったので、ちょっと残念だ。 <了>

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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