水素価格は値上がりが続き現実と乖離する点も
FCEVの普及には価格低下と総合水素ステーションの設置が必要
【THE 視点】内閣官房は6月6日、「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第4回)」にて、「水素基本戦略」を改定した。官民合わせて、15年間で15兆円を、水素関連事業に投資する。
合わせて経済産業省傘下の資源エネルギー庁は同日、「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」を公開した。その中において、水素価格の低下を目指すことを明言した。
白書には、「水素社会の実現に向けた取組の加速」の項目があり、「水素社会の実現を通じて、カーボンニュートラルを達成するためには、水素の供給コスト削減と、多様な分野における需要創出を一体的に進める必要がある」と書かれている。
具体的には、「一般的な水素ステーションにおいて、100円/Nm3(ノルマルリューベ:空気量を表す単位)で販売されている水素の供給コストを、2030年に30円/Nm3(CIF価格)、2050年には20円/Nm3(同)以下に低減し……(以下略)」とのこと。
水素ステーションで現在販売されている水素の価格は、1kg当たりの単価だ。1kgで11.14Nm3となることから、100/Nm3と報告される水素の価格は、1,114円/kgとなる。
しかし、昨年までは1,100円/kg(税込)程度であった水素の価格は、今年の初めから4月にかけておよそ1.5倍の1,650円/kgとなったところが多い。こうなると、2030年に現在の価格の3割程度(およそ1/3)とされる報告書の価格とつじつまが合わない。2030年の時点で、白書内にて2050年の目標としている1/5程度にしなければならないということになる。
また水素ステーションの数も、現在およそ170ヵ所とされているが、政府は2030年までに1,000ヵ所を目指すという。
しかし、今後増えるであろう商用FCEV(燃料電池車)の導入拡大を見据えた施策を加速させるためには、もう少し実際の現場を捉えなければいけない。
トヨタやホンダは、トラック・メーカーと協業して大型商用FCEVの開発・導入を加速させる方針を示している。しかし現在、大型車に対応した水素ステーションはまだまだ少ない。乗用車・大型車ともに利用できる大型の水素ステーションなどのインフラ整備を進めなければ、普及の加速は難しいだろう。
筆者は日頃の足としてFCEVに乗っている。現在値上がりしてしまった水素の価格では、ランニングコストで比較するとハイブリッド車には到底及ばす一昔前のガソリン車並みとなってしまっている。
今後の普及を考えると、2030年以前に水素価格を現状の価格の1/3以下にしなければ、エンジン式のクルマと比較してランニングコストが合わない。更に言えば、先に記述したとおり1/5程度まで下げないことには、FCEVが日常の足として日本に浸透するのは困難だ。
なお、水素エネルギーとFCEVに関して、当媒体の以下の記事でも述べているので、ぜひご一読いただきたい。
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水素燃料電池(FC)を世界に誇る先端技術に……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(後編)[THE視点]
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.06.08]