コラム
share:

FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点]


TEXT:福田 雅敏 PHOTO:福田 雅敏
TAG:

筆者は現役のEV開発エンジニアであるが、実はプライベートでは「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」に乗るFCEVユーザーである。「クラリティ」に乗り始めてまだ日は浅いのだが、実際にFCEVに乗ることで見えてきた水素エネルギーの現実もある。今回はFCEVの利点と課題をユーザーの視点で話してみたい。

走り心地はEVそのもの

「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」は、2016年に販売された。国内ではリース販売専用モデルだったこともあり、非常に希少なモデルと言われている。販売台数は、国内では500台程度で、海外も含めると1,900台程度と言われている。

筆者の場合、席を置く「東京R&D」がリースしている車両を使用している。筆者は2013年頃よりFCEVに興味を持ち始め、2018年からFCEVトラック・バスの開発にも携わり、FCEVの可能性を色々と学んできた。こうして日常の足として使用することで、ユーザーの立場からもFCEVについて理解を深めたいと考えている。ちなみに90年代にも「トヨタ RAV4EV」、初代「プリウス」を日常の足に使用し、新しいパワートレインの車を試してきた。

まず、クラリティのスペックを簡単に紹介する。全長4,915×全幅1,875×全高1,480mmで空車重量が1,890kg。最高出力130kW(177ps)/最大トルク300Nm(30.6kgm)のモーターに、最高出力103kWのFCスタックを搭載。141Lの水素用タンクを備え、航続距離は750km(JC08)となっている。

デザインは好みもあると思うが、かなり凝った造形で、特にフロントヘッドライト周りとリアサイドのスパッツ、室内とトランクとの間にガラス窓を設けるなど、内外ともにかなり作り込まれている。

走りはEVそのものであり、言われなければFCEVだとは誰も気づかないと思う。「クラリティ」の場合、最近のEVのように高出力のモーターによる発進加速を争うようなモデルでもないので、それほど強烈なEV感は味わえないが、SPORTモードを使えばそれなりに速く走れる。1,890kgもある車体だが重さは感じない。高速道路を多用する筆者だが、高速域での静粛性も高く快適である。

ただ、車格が少し大きいので取り回しが悪いのと、水素タンクがリアシート下とトランクに置かれているので、トランクの使い勝手が悪いのが難点である。そのほか装備面では、バッテリー式EVのように、FCから外部へ電気を供給できる可搬型外部給電機もあるのだが、120万円程度するので導入は見送った。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
70.5kWhの高電圧バッテリー搭載で一充電走行距離は591kmに延長! メルセデス・ベンツが新型EQAを発売
ファン待望のコンパクトモデルが「二刀流」で帰ってきた! アルファロメオ「ミラノ」改め「ジュニア」を名乗るHEV/BEVモデルを発表
日産がフォーミュラEサウンドをモチーフにしたサウンドトラック「エレクトリック・レガシィ」を公開
more
コラム
固体電池を早くも実用化! 中国のEVセダンは競争激化で「価格も航続距離も性能も」驚異的な世界に突入していた
日産が発表した中期経営戦略! 2026年に100万台の販売増加を打ち出した「The Arc」に立ちはだかるハードル
日産は電動車シフトに突き進む! 中期経営戦略「The Arc」の中身
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
全国約30カ所を巡る! BYDが展示&試乗イベント「Hello! BYD Caravan」を開催
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択