コラム
share:

[THE視点]ファミマのEV充電事業に参加した現役エンジニアから見た「コンビニ×EV充電器」の利点


TEXT:福田 雅敏 PHOTO:ファミリーマート、東京アールアンドデー
TAG:

ファミリーマート店舗の急速充電器を50〜100kW級の高出力型に置き換え、2台同時充電も

株式会社ファミリーマートは、株式会社e-Mobility Power(e-モビリティ・パワー)と共同で、ファミリーマート店舗に現在設置されているEV用急速充電器を、50〜100kW級の高出力型に入れ替えると発表した。

ファミリーマートは2010年より店舗への急速充電器の設置を進めてきた。流通・小売業界最大規模となる全国約700店舗に充電器が設置されているという。現在の急速充電器は20kW級が中心だが、今回の取り組みにより、50〜100kW級へと高出力化される。充電ニーズの高い店舗には充電口の数を従来の1口から2口に増やした機種を設置し、2台同時充電を可能とする。

2023年1月24日「ファミリーマート千葉大宮インター店(千葉県千葉市)」での稼働開始を皮切りに、2023年度は約220店舗に新型急速充電器の設置を予定しており、2025年度を目途に入れ替え完了を予定という。

今回採用された急速充電器は「CHAdeMO」規格の台湾デルタ電子株式会社製の急速充電器で、2台同時充電可能な最出力100kW(1口あたりの最出力90kW)の充電性能をもつ高性能・高機能なもの。24時間営業のファミリーマートに設置されたことも利用者にはメリットが大きい。

およそ1年で220店舗に展開とは相当スピーディーな施策。2010年から急速充電器の設置を進めてきたファミリーマートでは、古い機種は恐らく老朽化も進んでいるのだろう。そもあり、今回思いきって高性能・高機能なものを導入すると考えられる。

ちなみに料金(ファミリーマート千葉大宮店の場合)だが、e-モビリティ・パワー発行の充電カード保有者会員の場合は16.5円/分。充電カードを非保有のビジターの場合は、利用時間5分までが275円で、以降1分ごとに55円。50kW以上の急速充電利用時間は最大15分となる。

「マツダ・デミオ」市販車ベースのEVを開発、ファミマEV事業黎明期に3台を納入

2010年に筆者も、つくば市(茨城県)・伊藤忠商事・ファミリーマートの3社共同で再生エネルギーからEV走らせる「クリーンエネルギーを活用した低炭素交通社会システムの共同実証プロジェクト」の実証試験に参画した。

このプロジェクトが立ち上がった時は、日産リーフ」など市販EVはまだ発売されていなかった。そのため、実証試験で使われたEVは、マツダデミオ」のガソリン車をEVに改造し3台が実証試験に供された。1台はファミリーマートが使用し、1台はカーシェアリングの車両として、そしてもう1台はつくば市が使用した。

このプロジェクトの拠点であるファミリーマートのつくば研究学園店には、店舗の屋根に太陽光パネルを設置。そこからいったん定置型バッテリーに充電され(デミオEVと同じものを使用)、その電力から急速充電器を行うという当時としては画期的なシステムだった。それが今ではファミリーマート700店舗に急速充電器が設置されているとうのには驚いた。

充電待ちの30分はあっという間、買い物やトイレなどに有効活用

現在国内の急速充電器数は8,000基あまりといわれている。その1割弱がファミリーマートに設置されたということは、実証試験終了後も積極的に急速充電器を設置していったということ。

コンビニに充電器があると非常に便利だとこの実証試験から感じていた。休憩ついでに買い物やトイレを借りられたりと充電中に用事も済ませられる。30分という充電時間はまったく気にならない。プロジェクトの充電器は一般にも開放していたので、実証試験以外の車両にも使われた。実際に利用者からの評判も良かった。

大容量の仕様や一基あたり2台同時充電ができる機器が設置されるのは、これまでの運用ノウハウが生かされたものだと感じ大歓迎である。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
ヒョンデ新型EVは第4の刺客にして真打ち登場か? サイズも価格も軽EVを徹底的にマークした「インスター」
EVとしては使えなくなってもまだまだ再利用できる! 日産リーフのバッテリーを再利用したポータブル電源が「JIDAデザインミュージアムセレクションVol.26」に選定
ジープ初の電気自動車「アベンジャー」に限定色「レイク」をまとった100台の特別限定車が登場
more
コラム
韓国ヒョンデのハイパフォーマンスEV「IONIQ 5 N」で1000km走行! 電費は厳しいが充電性能の高さに注目!!
賛否の渦に巻き込まれるも聞けば唸るほどの徹底ぶり! 話題のR32EVが目指した場所とは
全国の高速道路でたった「520口」かよ! EVが売れてないのにそこかしこで「急速充電待ち」が発生するワケ
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
more
イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択