鉄道アセットを総合水素ステーションに活用
社会インフラにこそ燃料電池式のEVは有用
【THE 視点】西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は4月12日、燃料電池を搭載した鉄道車両を開発することを発表した。合わせて水素ステーションの整備も進め、鉄道ほかトラックなどの物流関係に水素を提供する計画だ。
JR西日本は、2050年にグループ全体の CO2 排出量を「実質ゼロ」とすることをめざしている。その一環として、水素利活用に関して2つのテーマをあげた。
1つ目は、水素利活用計画の検討である。駅などの鉄道アセットを活用した「総合水素ステーション」を設置し、燃料電池列車やバス・トラック・乗用車に対する水素供給および日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)の貨物列車による水素輸送の拠点としての活用を検討するという。
2つ目は、燃料電池列車導入に向けた開発である。気動車(ディーゼルエンジン車両)の将来の置換えをめざす。
今回のJR西日本の水素の利活用計画において、「総合水素ステーション」という発想は非常に良い取り組みであり、まさに「ステーション(駅)」と言える。
自動車と鉄道とはこれまで別なものとして考えられてきたが、自動車共用の水素ステーションが出来れば、建設費の大幅なコストダウンにもつながり、遅々として進まない水素ステーションの整備が改善されるのではないだろうか。もちろん水素ステーション側の稼働も増えるため収益率の改善にもつながる。
筆者は、普段の移動の足としてFCEVに乗るが、東京23区内にある水素ステーションでも、1日10台程度の利用しかないという。湾岸部に行けば、東京都交通局のFCEVバス「トヨタ・ソラ」が多く走っているので稼働は多いだろうが、1日10台程度では人件費さえ稼げない状況ではないかと思われる。
また、気動車に代わる列車として燃料電池列車というのも良い選択と考える。EVと同じバッテリー式では、恐らく膨大な量の電池を搭載しなければならず、その充電にも相当の時間が掛かる。
燃料電池の良いところは充填時間の短さで、電車の折り返し時間などに水素が補給できれば、現在のダイヤと列車の運用に大幅な変更を必要としない。
この「総合水素ステーション」事業と燃料電池列車、是非とも実現してほしいものである。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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