ホンハイ製の三菱車はモデルBが有力
三菱自動車工業(以下、三菱)は5月、「Foxtronと電気自動車のOEM供給について覚書を締結」したと発表した。Foxtronとは、Foxconn(鴻海精密工業)の傘下にある電気自動車開発を行う企業。鴻海(以下、ホンハイ)といえば、ホンダと日産の経営統合が協議された昨年末から今年前半にかけて、日産との関係についてさまざまな噂がメディアやSNSで飛び交った企業だ。
今回の三菱とホンハイとの協業については、ホンハイが開発したEVを台湾の裕隆汽車製造(以下、ユーロン)で生産し、2026年後半からオーストラリアやニュージーランドで販売する計画だ。当該モデルについての詳細は、三菱から明らかにされていない。
ただし、ホンハイが4月に都内で開催した「EV戦略説明会」を取材した際、プレゼンテーションのなかで登場した「MODEL B」が、三菱向けである可能性が極めて高い。なぜならば、2025年に台湾で投入し、2026年には日本OEM向けでオセアニアに投入するとの記載があったからだ。
MODEL Bは、イタリアのカロッツェリアであるピニンファリーナがデザインを担当した、斬新な都市型小型EV。ボディ寸法は、全長4315mm×全幅1885mm×全高1535mm、ホイールベースが2800mm。モーター性能は、リヤ駆動では170kW/340Nm、またAWDでは344kW/680Nmだ。バッテリー容量は58kWhで、満充電での後続距離は欧州NEDCモードで500kmとした。
三菱としては、電動車については、ホンダ・日産・三菱のアライアンスの活用も今後、継続的に協議する可能性を残しつつも、三菱が得意とするオセアニア地域や東南アジア等で早期に導入できるEVが必要だったといえる。開発から製造まで、社外に委託することでそれを実現した。
三菱といえば、1900年代初頭から続くグローバルEV史のなかで、大手自動車メーカーとしては日産「リーフ」とほぼ同時に、「i-MiEV」を市場導入したEV業界の先駆者だ。i-MiEVでの電動化に関する知見を、アウトランダーPHEVの商品改良によってさらに磨きをかけている。
そうしたなか、今回のホンハイ・ユーロンからEVのOEM供給を受けることは、三菱にとって事業の大きな転換を感じさせる出来事だといえる。まさに、100年に一度の自動車産業大変革の象徴だ。
見方を変えれば、日系メーカーのなかでは比較的、身軽な三菱だからこそできた大きな決断だともいえるだろう。
改めてホンハイと日産との協業も噂されるなか、ホンハイが提供するEVの新しいビジネスモデルに今後も注目していきたい。