#国産車
TEXT:高橋 優
期待度MAXの国産新型BEV2台! トヨタbZ4Xと日産リーフを比べてみた

国産EVが同じタイミングで新型に! トヨタがモデルチェンジを行った新型bZ4Xと同じタイミングで導入された新型日産リーフにはどのような違いがあるのか、日本国内で購入できる最新電動SUVがどれほどのコスト競争力を実現しているのかを詳細に比較分析します。 まず新型bZ4Xでは内外装デザインを刷新しつつ、バッテリーやモーターなども改良することで、ベースのEV性能を高めてます。航続距離は最長746kmと、日本メーカーの発売するEVとしては最長航続距離を実現しながら、急速充電の安定性でもバッテリープレコンディショニングシステムを実装することで、マイナス10度という環境下でも、平温時と同等の充電性能を実現可能となりました。また、新型bZ4Xの電費性能はモデルチェンジ前と比較して大幅に向上しています。これは、シリコンカーバイドを採用するリヤインバーターに切り替えたことで、電力損失を大幅低減されたことがプラスに働いています。 そして74.7kWhグレードの値段設定を据え置きしながら、その上で57.7kWh搭載エントリーグレードは480万円からと、約70万円もモデルチェンジ前のモデルと比較して、値下げしています。この金額は、CEV補助金を活用すれば実質390万円で購入可能となり、これはトヨタのSUVであるハリアーと同等の値段設定です。 その一方で、このSUVセグメントに同じタイミングで日本に投入されたのが、新型の日産リーフです。まず車両サイズについて、bZ4Xは全長4690mm、全幅1860mm、ホイールベース2850mmというミッドサイズ級に該当するものの、リーフは全長4360mm、全幅1810mm、ホイールベース2690mmと、コンパクトセグメントに分類されます。 なので、bZ4Xと本来比較検討するべきは、リーフではなくアリアのほうであるという点は、念の為お伝えしておきます。ちなみに、日産は2025年度末までにアリアのモデルチェンジを行う方針を示しており、その新型アリアの進化度にも注目が集まるはずです。 さて、この同じタイミングで出た両車種ですが、まず注目すべきはグレード構成です。bZ4Xとリーフはどちらも似通った2種類のバッテリー容量をラインアップしています。その一方で日本WLTCモードにおける航続距離はbZ4Xが746kmに対してリーフは702kmとbZ4Xがリード。とくに電費性能について、bZ4X Zグレードが113Wh/kmであるのに対して、リーフB7 Xグレードが130Wh/kmと、bZ4Xが一歩リードしている点も見逃せません。 また充電性能は両車種ともに最大150kWという同等の充電性能であるものの、充電時間はbZ4Xが28分とややリード。とはいえbZ4Xに対する懸念点として、1日4回の急速充電回数制限の問題が挙げられます。新型モデルから急速充電回数制限の撤廃を行ってきているのかは、とくに長距離走行性能が重要視される欧米市場において気になる動向と言えそうです。

TAG: #国産車 #新車 #比較
TEXT:高橋 優
新型ソルテラは性能大幅アップなのに大幅値下げ! めちゃくちゃお得な内容にライバルはどうする?

マイナーチェンジとは思えない超大幅進化 スバルが日本国内でソルテラのモデルチェンジを実施し、EV性能を飛躍的に高めながら大幅値下げを実施することで、兄弟車であるトヨタbZ4Xを凌ぐコスト競争力を実現してきました。気になる新型リーフなどの競合とのコスト競争力を含めて分析します。 新型ソルテラについて、まず注目するべき変更点は内外装デザインを刷新してきたという点です。フロントデザインは旧型と比較すると大きく変更されており、インテリアも兄弟車となる新型bZ4Xと同じようなデザインとなっています。 bZ4Xと同様にEV性能も改良されており、74.7kWhバッテリーを搭載することで日本国内のWLTCモードにおける航続距離を最長746kmも確保しています。さらに、電池プレコンディショニング機能を搭載することで、マイナス10度という極寒環境下でも理想条件下と同等の充電性能を実現可能です。 その上で、今回の新型ソルテラに対して注目するべき点が値段設定です。エントリーグレードとなるFWDの ET-SSグレードは517万円の設定。中間グレードであるAWD ET-SSグレードが561万円、装備内容を充実させたET-HSグレードが605万円の設定となっています。 じつは旧型モデルは594万円からという価格で販売を開始しており、2023年モデルからは627万円へと33万円もの値上げがされていました。つまり、新型ソルテラは110万円という大幅な値下げが断行されたのです。EV性能や装備内容をさらに充実させながら、同時に大幅値下げを行ってきたという点を踏まえると、スバルが日本国内でソルテラの販売台数を増やそうと本気になってきたことは明らかといえるでしょう。

TAG: #SUV #ニューモデル #国産車
TEXT:すぎもとたかよし
再生中の日産が早くもヒット作を生み出した! あえて日産らしさを封印した「N7」のデザインに天晴れ!!

新型N7のデザインは日産の窮地を救うか? 東風日産により中国向けに作られたセダン、N7が大評判になっています。今年5月に発売後、わずか12時間で1万台以上を受注、6月までにじつに2万件の予約があったとされます。社長の交代劇など、苦境が伝えられる最近の日産にとっては久々の朗報ですが、ここではデザインの面からその評判の理由に迫ってみたいと思います。 ●流行最先端のスタイルで市場投入 新型N7は、日産が2027年の夏までに投入を予定している9車種の第一弾として発売された高級セダン。2024年の北京モーターショーに出品された「日産エポック・コンセプト」の市販車版となります。 全長4930mm×全幅1895mm×全高1487mm、ホイールベース2915mmの堂々としたサイズはフーガに匹敵するもの。その伸びやかなスタイルに対し、「超カッコいい!」「日本でも売ってほしい!」との声が上がっているのです。その好評の理由はどこにあるのか、今回は3つの視点で考えてみたいと思います。 まずひとつはサイズを含めた基本のシルエットです。N7はいわゆる4ドアクーペスタイルで、まさに流行ど真ん中のフォルム。とりわけ欧州プレミアムブランドではすっかり定着したスタイルですが、考えてみれば日産車ではあまり見られないスタイルです。 それを踏まえて写真を見ると、リヤデッキの短いファストバック的なボディは、あえて奇をてらわないじつに素直な造形で、まさに万人にウケるプロポーションとなっているのです。 ふたつ目は、いかにもEV(N7にはPHEVもあり)というシンプルなデザインです。まるでテスラのようなグリルレスのフロントフェイスをはじめ、横一文字の前後ランプ類、強いキャラクターラインをもたないサイド面など、もはや記号的といえるほどの徹底ぶり。さらに、サッシュレスドアの面一感がこれをあと押ししています。 日産は「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」なるデザインフィロソフィを掲げ、繊細でシャープな造形を展開していますが、N7ではそのエッセンスがほとんど感じられないのです。これは、同時期に発表された新型セントラとの違いを見れば明らかで、あえてクセをなくした造形といえます。 ●意図的に日産らしさを隠したスタイリング? 3点目は魅力的なインテリアです。比較的ミニマムな造形は最近の日産車的ですが、2本スポークステアリングをはじめ、その徹底ぶりが目立ちます。一方で、チャコールグレーと青竹色でコーディネイトされたシートやステアリング、ドア内張りなどは、上質な素材も相まってこれまた多くの人にウケそうな空間になっています。 こうして検証してみると、N7はあえて日産らしさを強く打ち出していないことに気が付きます。例のVモーションも最小限の表現で、それこそ新型セントラとは大違い。そして、流行ど真んなかのスタイルでありつつ、特段新機軸なところが見当たらないのも特徴で、エンブレムがなければ日産車とは気付かないスタイルなのです。 その結果、日産車を初めて買ったユーザーがじつに70%という状況に結びついていると考えられます。これらがすべて意図的に進められたとすれば、じつに戦略的な企画といえるでしょう。 さて、「日本でも売ってほしい!」という声についてですが、セダン離れの側面も含め、このサイズはさすがに大き過ぎるかと思えます。もし、カローラやマツダ3くらいのサイズでこのスタイルを再現できれば、一定数のニーズはあるかもしれませんね。

TAG: #カーデザイン #国産車
TEXT:山本晋也
ただバッテリーとモーターに置き換えただけのモデルと思うなよ! N-ONE:eはN-ONEとはデザインまでまったく違う「一車入魂」の力作だった

似ているようでぜんぜん違うN-ONEとN-ONE e: ホンダ初の軽乗用EV(電気自動車)として9月から発売開始となったN-ONE e:が話題だ。エントリーグレードで269万9400円と、57万4000円のCEV補助金を考慮すると、十分に手の届く価格に抑えながら、一充電走行距離は295kmと軽乗用EVとしては期待以上のロングレンジを実現。次期愛車に身近で手ごろなEVを探しているユーザーにドンピシャの価格と性能となっていることも、注目度を高めている理由だろう。 そんなN-ONE e:は、名前からもわかるようにN-ONEという既存のエンジン車をベースとしたEVである。少しばかり、N-ONEについて振り返ってみよう。 どこか懐かしい、クラシカルなルックスをもつN-ONEの誕生は2012年。ホンダ軽乗用車の原点といえる「N360」のスピリットを引き継ぐ、新しいニッポンのノリモノとして開発された。当初は、全高1600mmを超えるハイトワゴンだったが、マイナーチェンジにより全高1550mm以下となるローダウン仕様を追加したことで、「ハイトワゴンの広さ」と「機械式駐車場に対応するサイズ」を両立するという独自の価値を手に入れた。 そして、2020年のフルモデルチェンジでは多くのファンが驚いた。プラットフォームやパワートレインは最新世代にアップデートしながら、ボディ外観は従来どおりとしたのだ。灯火類やグリルなどの意匠は新しくなっているので、ビッグマイナーチェンジと感じるほどだが、メカニズム的にはれっきとしたフルモデルチェンジであった。それほど、N360の伝統を受け継いだN-ONEのスタイリングは変えがたい価値があるとホンダと、そのファンは認識していた。 しかしながら、N-ONE e:はエンジン車のN-ONEと異なるイメージのルックスとなっている。一見すると、グリルやヘッドライトなどを変えただけと思えるかもしれないが、じつは違う。AピラーからCピラーまで前後ドアのアウターパネルは変わっていないが、N-ONEが10年以上も守ってきたボディシルエットは変わっているのだ。 具体的に見ていこう。 まず目立つのは、グリルとヘッドライトの変更だろう。軽商用EVであるN-VAN e:と共通のEVアーキテクチャーを採用している関係から、N-ONE e:も充電リッドをフロントグリルに配置している。 グリルを独自デザインにすることは必須であり、それに合わせて灯火類やバンパーなども新デザインとなった。それでも「愛着フェイス」を目指したというデザイナーの意思は、Nの伝統を受け継いでいるといえるだろう。

TAG: #国産車 #軽自動車
TEXT:渡辺陽一郎
EVってこれからの時代の乗りものなのにHonda eはたった1代で消滅! Honda eを作った意味ってドコにある?

Honda eってなんのために販売された? 2025年上半期(1〜6月)に国内で売られた乗用車のうち、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率はわずか1.4%だった。日本で電気自動車を売りにくい理由はいくつか挙げられるが、もっとも有力な事情は車種が少ないことだ。小型/普通車の市場占有率が50%に達するトヨタでも、トヨタブランドの電気自動車はbZ4Xのみになる。このように選択肢が乏しいと、電気自動車がほしくても、ニーズに合った車種を見つけられない。売れなくて当然だ。 そしてホンダは、2020年に電気自動車のHonda eを発売したのに2024年に終了した。電気自動車はこれから普及させるべき分野だから、改良やフルモデルチェンジを積極的に行うべきだが、車種を廃止してしまった。 この理由をホンダに尋ねると以下のように返答された。 「Honda eは、ホンダにとって実質的に最初の電気自動車だから、先進技術を満載した。インパネには5つの液晶スクリーンが並び、通常はミラーで得られる後方の情報も、サイド/センターカメラシステムに表示される。その代わり価格も高かった(発売時点の価格は451〜495万円)。今後はN-ONE e:などにより、ホンダの電気自動車も普及段階に入るため、Honda eは役割を終えて販売も終了した」 Honda eはたしかに装備を充実させていた。前述の内容に加えて、車内Wi-Fiやスカイルーフなども全グレードに標準装着した。 その一方で駆動用リチウムイオン電池の総電力量は35.5kWhに留まり、1回の充電で走れる距離も、WLTCモードで259〜283kmであった。価格が高い割に、1回の充電で走行できる距離は短い。つまりHonda eは「ホンダにはこのような先進的で楽しい電気自動車も開発できます!」とアピールするためのクルマだったといえる。 そのために一定の期間を経過すると「役割を終えて販売も終了した」わけだが、ここにホンダの欠点がある。Honda eを気に入って買ったユーザーはどうなるのか。改良版を購入して今後も乗り続けたいと思っても、それはできない。Honda eをせっかく開発したのだから、装備をシンプルに抑えて価格を下げたグレードを加えるべきだったが、それもせずに終了させた。 ホンダにはこのパターンが多い。ハイブリッド車のインサイトも、ホンダでは「初代は軽量な2人乗りのクーペでハイブリッドの低燃費を訴求して、2代目はGの価格を189万円に抑えて普及を図った。3代目はハイブリッドの上質な走りを味わえる上級車種とした」という。各世代でインサイトの役割が異なるわけだが、フルモデルチェンジのたびにクルマ作りと価格が変わると、ユーザーは乗り替えられない。 いい換えれば、ホンダが顧客の視線に立たないから、Honda eは廃止され、インサイトは世代によってクルマ作りを大きく変えた。CR-V、オデッセイ、シビックのように、国内における車種の廃止と販売の復活を繰り返す朝令暮改も同じ理由だ。

TAG: #名車 #国産車 #絶版車
TEXT:御堀直嗣
ホンダのEVは「Honda e」からじゃないんだぜ! かつて販売したフィットEVを覚えているか?

あのフィットにもEVがあった ホンダは、2012年8月に、フィットEVの国内リース販売を開始した。対象は、自治体や企業というフリート(団体)利用者である。2年間で約200台の限定的な内容だ。 車載するリチウムイオンバッテリーの容量は20kWhで、一充電走行距離は、当時のJC08モードで225kmであった。車両価格は、消費税(5%)込みで400万円である。 車体色は、限定的なリース販売であったこともあり、ブルーパールの1色のみだ。 特徴的なのは、リチウムイオンバッテリーに東芝製のSCiBを採用したことである。 SCiBは、負極にチタン酸リチウムを用いることで、一般的な炭素と比べ、リチウムイオンが負極に出入りする際の容量低下を抑えることができ、急速充電に適しているとされる。 東芝によれば、充放電のサイクル回数が2万回以上とあり、これはほかのリチウムイオンバッテリーの4~5倍にのぼる。一方、容量や電圧で劣る面があるとされるが、フィットEVのモーター出力は92kW、最大トルクは256Nmで、初代日産リーフの80kW、254Nmと比べてもほぼ同等であり、あえて不足があるというほどではないはずだ。 また、SOC(State Of Charge=バッテリーの充電状態)で0~100%まで繰り返し使え、それでも劣化が少ないといわれる。 実際、SCiBは、三菱i‐MiEVでバッテリー容量の小さい10.5kWhのMグレードにも使われ、満充電からの走行距離は短くなるが、バッテリー劣化が少ないため、あえて中古車でMグレードを選ぶ例もあるほどだ。 ホンダ関係者でフィットEVを乗り続けている人も、充電や走行性能でとくべつ劣化に悩むような不満はないと語っている。 5ナンバー車というフィット本来の使い勝手のよさもあり、フィットEVが一部のフリート関係者でのみ使われ終わってしまったのは残念である。 遡ればホンダは、1988年からEVの研究をはじめたという。 最初の実験車は、シビックシャトルをベースにしていたように記憶している(ややあやふやだが……)。1990年代初頭、国内自動車メーカーでEV開発が行われた際、実験車両として選ばれたのは、トヨタRAV4、日産プレーリーなどSUVが多かった。床下にバッテリーを車載する都合上、積載性がよかったためだろう。ただし、当時はいずれも車載するバッテリーは、エンジン車で補器用に使われる鉛酸であった。 次いで、ホンダが本格的にEV開発を進めたのは、ホンダ EVプラスになってからといえる。 このモデルはバッテリーはまだリチウムイオンではなく、ニッケル水素であった。このため、一充電走行距離は10・15モードで210kmである。空調には、ヒートポンプが用いられ、省電力への取り組みがすでにあったといえる。 DCブラシレスモーターの性能値は明らかにされなかったが、試乗する機会があり、運転してみると、EVらしく出足が鋭く、そこからの加速も躍動感があり、VTECのガソリンエンジンで魅了してきた、ホンダ車らしい活気を感じることができた。 国内への導入は1997年に、36カ月のリース販売で、国内法人営業での取引であった。しかも約20台という限定数だ。したがって、フィットEVと同様に、一般の消費者が手にする機会はなかった。 価格は発表されなかったが、リース料金は保守整備を含め26万5000円で、36カ月で954万円に達する。とても一般の手には負えない金額になる。 一方、ホンダEVプラスは米国でも実証実験の一環としてリース販売され、米国では個人への提供もあった。 カリフォルニア州に住む一家族を取材する機会があり、両親と子どもの4人家族に話を聞くと、性能にはとても満足しているとのことであった。米国では未成年の子供を学校へ両親が送り迎えする(あるいは、スクールバスを利用しなければならない)とき、子どもたちにとってEVであることが誇らしく、友達に自慢したという話もあった。 ほかに、自宅の車庫で充電プラグを充電口に差し込むのは子どもの役目で、そうした親の手伝いのできることも子どもたちを喜ばせていた。セルフスタンドでのガソリン給油は、子供にはさせられない。排出ガスを出さないだけでなく、日常的な使い勝手のなかで、子どもにも役割分担できるよさがEVにはあることを知ることができた。

TAG: #EV #名車 #国産車
TEXT:高橋 優
日本のEVは世界でどのぐらい売れてる? 販売動向の現在を探ってみた

2025年の日本メーカーのEVシフト動向を調査 日本メーカーの2025年上半期の最新EV販売動向が判明しました。EVシフトで遅れているといわれている日本メーカーの立ち位置と下半期以降の注目EV動向を含めて解説します。 まず、トヨタの最新EVシフト動向を確認します。このグラフはBEVとPHEVの月間販売台数の変遷を示したものです。2022年5月からbZ4X(ハブボルト問題による長期販売停止によって実際の大規模納車開始は2022年10月以降)、2023年3月からbZ3、2025年3月からbZ3X、そして2025年6月からbZ5がそれぞれ発売され、販売台数が大きく伸びています。 他方で、2025年6月度のBEV販売台数は1万7014台と、前年同月比+23.7%の成長を実現しているものの、この1〜2年ほどの販売の伸びと比較すると鈍化しているように見えます。これは、bZ3Xの販売が伸びたもののbZ3の販売が低迷していることが要因でしょう。 さらに、トヨタのEVシフトで気になるのが、BEV販売台数がヨタの想定よりも順調ではないという点です。トヨタは年度初めにBEVやPHEVの年度販売台数予測を発表し、たとえば2023年度のBEV販売台数目標を、年度当初は20.2万台と予測。ところが年度途中から、その目標達成は不可能として12.3万台まで大幅に下方修正し、結局2023年度のBEV販売台数は11.66万台と、その大幅下方修正後の目標値にすら届いていなかったのです。 さらに2024年度のBEV販売台数目標を、年度当初は17.1万台と発表していたものの、2024年度第二四半期決算で16万台へと下方修正。そのうえ第三四半期決算内で14.2万台にさらに下方修正し、結局2024年度は14万4513台と、最新の下方修正後の目標値をギリギリ達成してきた格好です。 トヨタは、すでに2025年度のBEV販売目標をとして31万台という挑戦的な販売目標を提示しているものの、過去2〜3年のEVシフト達成率を踏まえると、目標達成を懸念せざるを得ないのです。 とはいえトヨタは2025年にEVのラインアップを大幅に拡充する予定です。まず、中国市場について、すでに3月中にbZ3Xの発売をスタートし、6月単体の販売台数は6030台と好調です。また、bZ5が6月から発売開始、2025年度末までに中大型セダンのbZ7も投入予定です。次に欧州市場では、新型bZ4XとともにCH-RのEVバージョンであるCH-R+、またスズキe VITARAの兄弟車となるアーバンクルーザーの発売を予定しています。さらに、欧州と東南アジア向けとしてタイでハイラックスのEVバージョンも生産予定ですし、レクサス2車種目のEVとして、ESのEVバージョンもグローバルに投入予定です。 次はEVのパイオニアである日産のEVシフト動向です。このグラフは日産のモデル別BEV販売台数と、新車販売全体に占めるBEVの販売シェア率の変遷を示したものです。日産は、2022年末にBEV販売シェア率が6%を突破するなど順調でしたが、2023年以降、EV販売シェア率は減少トレンドに。実際に2025年2月単体のシェア率は2.56%と最低水準のシェア率に留まってしまっていました。とくにアリアの販売台数が思ったほど伸びず、モデル末期のリーフの販売失速も重なったことが要因でしょう。 その一方で、現在日産でもっとも売れているEVがN7です。4月末にローンチしてから急速に販売台数を増加させ、最新データが判明している7月単体では6455台と絶好調です。8月は生産体制を増強して1万台の生産台数を計画するほどです。新車販売全体に占めるBEVシェア率も4.63%と、2023年1月以来となる高水準を記録しています。 とくにN7は、海外へ展開する方針も表明しながら、さらに欧州市場にはマイクラEVを投入。そしてグローバル全体では新型リーフも投入されます。もしかしたら2026年3月単体で、史上最高の10%近いBEVシェア率を達成するかもしれません。

TAG: #EV販売台数 #国産車
TEXT:渡辺陽一郎
スズキ初のEV「eビターラ」はぶっちゃけ売れる? 日本のスズキファンが買うかどうかは「価格」次第

クルマとしてはよくできているスズキ初のBEVだが…… スズキは最初の量販電気自動車となるeビターラを2025年度中(2026年3月まで)に国内で発売する。フロンクスと同様、インドの工場で生産される輸入車で、ボディサイズは全長が4275mm、全幅は1800mm、全高は1640mmだ。カテゴリーはコンパクトSUVで、全長と全幅はマツダCX-3などに近い。 エンジンを搭載しない電気自動車だから、駆動用リチウムイオン電池の容量は比較的大きい。49kWhと61kWhが用意され、1回の充電で走れる距離は、49kWhの2WDが400km以上、61kWhの2WDは500km以上(4WDは450km以上)とされる。 ボディはコンパクトだが車内は意外に広く、身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は握りこぶしふたつぶんだ。4名で乗車できる居住性が備わり、1回の充電で400km以上を走れるから、電気自動車としては実用性も高い。 はたしてeビターラは売れるのか。販売面では決して有利なクルマではない。いまの乗用車の需要は、約80%が従来型や同じメーカーの車両からの乗り替えに基づく。それなのにeビターラは、日本では初代モデルだから、先代型からの乗り替え需要もない。すべてが新規ユーザーだ。 しかもスズキは、いままで電気自動車を扱った経験がない。加えて2024年度は、国内で新車として販売されたスズキ車の81%が軽自動車だった。残りの小型/普通車も、売れ筋は5ナンバー車のソリオとスイフトだ。eビターラは、国内におけるスズキのブランドイメージに合っていない。 eビターラの売れ行きを決定付けるのが価格だ。2025年7月中旬時点では未定だが、リチウムイオン電池の容量などが似ているリーフの価格を参考にできる。eビターラは装備を相応に充実させるから、49kWhのリチウムイオン電池を搭載したもっとも安価なグレードは、リーフに40kWhの電池を搭載したX・Vセレクションの431万8600円に近いと予想される。 仮にeビターラのもっとも安価なグレードが430万円なら、国から交付される約80万円の補助金を差し引いて、実質価格は約350万円だ。スズキのブランドイメージを考えると、車両価格を370万円に抑えて、補助金を差し引いた実質価格を290万円としたいが実際は難しい。 そして、先に挙げた車両価格が430万円/補助金を差し引いて350万円という予想価格を超えてしまうと、順調に販売するのは困難だ。eビターラは難しいビジネスだが、将来に向けた環境対応を考えると、避けられない一種の試練になる。

TAG: #SUV #セールス #国産車
TEXT:橋本洋平
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗

スズキ初のBEVはSUVで登場 そもそもはスズキ・エスクードの海外名だったビターラ。その車名が、スズキ初の電気自動車SUVとして日本に登場することになった。正式名称はeVITARA。英語のvitality(活力)が由来。製造はインド・グジャラート工場で行われ、欧州、インド、日本などに展開される世界戦略車だ。このほか、トヨタへのOEM供給も行われることが決定している。 プラットフォームはEV専用に開発を行なったHEARTECT-eを採用しており、これまでのエスクードとの共通点はなにもない。ショートオーバーハング、広い室内を得ているところがポイントで、フロア下のバッテリー容量を最大化することを目的とし、メインフロア下メンバーを廃止。おかげで室内には凹凸がほとんどなくフラットに保たれている。 対して、車両の両サイドはかなり強固な造り込みが行われることで高電圧を保護。1180Mpa級の高ハイテン材の使用率を従来の2倍とすることで軽量に仕立てている。 全長×全幅×全高は4275×1800×1640mmで、ホイールベースは2700mm。日本でも使いやすいサイズ感だが、それを後押しするのが最小回転半径5.2mを達成していることだ。モーターとインバーターを一体化したフロントに搭載されるeアクスルが高効率かつコンパクトに設計されたことや、専用プラットフォームの採用により、タイヤハウスのスペースをしっかりと取り、切れ角をしっかりと確保したことがEVらしいポイントだ。 eビターラの最大の特徴といえるのが、ALLGRIP-eと名付けられた4WDグレードを準備していることだ。都市部だけを考えればFFの2WDでも十分というのが最近のSUVの定番だが、エスクードの生まれ変わりであるのなら4WDは必須アイテムだったのだろう。 これからライバルとなりそうな日産リーフは、先の説明会において4WDを準備する予定はないと公言していた。ならばeビターラにとっての4WDはかなりのアドバンテージとなりそうだ。 悪路走破性に拘るスズキらしく、前後駆動力配分を自動で行うオートモードのほかに、空転したタイヤにブレーキをかけ、グリップが高いタイヤに駆動力を配分するトレイルモードも搭載。登坂性能は2WDの1.4倍となる26.8°(一旦停止して発進できる傾斜)を達成。これを48kWのモーターで補っている。

TAG: #SUV #国産車 #新車試乗記
TEXT:伊達軍曹
もっとも長く走れるモデルは東京から青森までノンストップ! いま日本で買える航続距離が長い電気自動車TOP10

最新EVは1回の充電でメッチャ走れる! 2010年12月にデビューした最初期の日産リーフの航続距離は、現代の水準から考えればきわめて短いといえる「200km」でしかありませんでした(しかもWLTCではなくJC08モードで)。しかしその後はさまざまな技術革新に伴い、日産リーフを含む多くのEVが、その一充電走行距離を大幅に延ばしています。 ならばいま、「もっとも一充電走行距離が長いEV」はどれになるのでしょうか? 各モデルが搭載するバッテリー容量の違いなどについてはとりあえず無視し、シンプルなWLTCモード値順による「正規販売車の航続距離ランキング」を見てみましょう。 1位|テスラ・モデル3ロングレンジ:706km 75kWhのバッテリーを搭載し、デュアルモーターの最高出力はフロント158馬力/リヤ208馬力となるテスラ・モデル3ロングレンジ。その一充電走行距離は、2024年11月上旬時点においては正規輸入車中ナンバーワンの706km。WLTCモード値=実際の走行可能距離ではありませんが、もしも706km走れるとしたら、東京から青森県までノンストップで走ることができます。 2位|メルセデス・ベンツ EQS 450+:700km テスラ・モデル3ロングレンジとほぼ同等の航続距離を誇るのが、メルセデス・ベンツの EQS 450+。こちらはリヤにシステム最高出力333馬力のモーターを搭載するRWD車で、リチウムイオンバッテリーの容量は107.8kWh。かなり大きなバッテリーであるため充電には時間がかかりますが、一度満充電にすれば、相当の距離を一気に走ることが可能です。 3位|ポルシェ・タイカン:678km(※WLTPモード値) 2024年2月に予約受注が始まった改良型ポルシェ・タイカンは、先代モデルの出力を最大108馬力上まわる新型リヤアクスルモーターをすべての仕様に搭載。さらに、ソフトウェアを最適化した改良型パルスインバーターや、より強力なバッテリー、サーマルマネジメントの改良、次世代ヒートポンプの搭載、改良型回生システムなど、広範囲な改良が施された結果、一充電走行距離は従来型比で175km増加した最大678km(WLTP値)が実現されています。 4位|BMW i7 eDrive50:652km BMW i7は、BMW 7シリーズのBEVグレード。そのうちeDrive50は、最高出力455馬力/最大トルク650Nmのモーターで後輪を駆動する2WDモデルで、WLTCモードによる一充電走行距離は652kmを実現。仮にWLTCモード値どおりに走るとしたら、途中充電なしで東京から岡山県まで直行可能です。

TAG: #国産車 #航続距離 #輸入車 #電気自動車

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EVらしさをなるべく廃したスタイリングで乗り換えを自然に! スズキが軽EVコンセプトカー「Vision e-Sky」で考えたのはEVであることを気づかれないことだった【ジャパンモビリティショー2025】
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