Contents
EVが本当に環境にやさしいかどうかを測る指標
EV(電気自動車)は走行時にCO2(二酸化炭素)を排出しないため、直接的な排出がないという点で環境負荷が低いとされている。排気ガスが出ないEVは確かにクリーンだが、本当にクリーンかどうかは、EVに充電される電力を生み出す過程でどれだけのCO2排出が抑えられているかが鍵となる。ここで重要になるのが「エネルギーミックス」という概念である。
<エネルギーミックスとは?>
エネルギーミックスとは、一国の電力供給において、石炭火力、天然ガス、原子力、水力、太陽光、風力、地熱などの各種発電方法がどのような割合で構成されているかを示すものである。それぞれのエネルギー源には、コストや安定性、環境負荷といった特徴があり、国ごとに最適なバランスを模索している。
日本では、福島原発事故以降、原子力の比率が低下し、かわりに天然ガスや再生可能エネルギーの割合が増加している。一方、フランスは原子力の比率が非常に高く、ドイツは石炭や再生可能エネルギーを組み合わせ、足りないぶんは他国から輸入している。このように、エネルギーミックスは国ごとに大きく異なる。
エネルギーミックスは、電力の安定供給や経済性、そして環境負荷の観点からも重要だ。再生可能エネルギーはCO2排出量が少ないが、天候や季節による変動が大きい。そのため、安定供給のためには、火力や原子力などのベースロード電源との組み合わせが不可欠である。さらに、エネルギーミックスは、国際的なエネルギー政策や地政学的な要因にも影響される。たとえば、資源の豊富さや輸入依存度、環境規制の厳しさなどが、エネルギーミックスの構成に反映される。
資源エネルギー庁が2025年4月に公表した『2023年度エネルギー需給実績(確報)』によると、日本では2023年時点で火力発電が約69%(石炭:約28%、天然ガス:約33%、石油など:約7%)、原子力が約8.5%、再生可能エネルギーが約23%程度となっている。一方、ノルウェーでは水力発電が90%以上を占め、フランスでは原子力が約70%を占めるなど、国によってその構成は大きく異なる。
この違いが重要なのは、発電方法によってCO2排出量が大きく変わるためである。石炭火力発電は1kWhあたり約820gのCO2を排出するのに対し、天然ガスは約470g、太陽光や風力、水力発電はほぼゼロである。つまり、同じ電力を使ってEVを充電しても、その電力がどう作られたかによって環境負荷は大きく異なってくるのだ。
























































