1000馬力超えがゴロゴロしているEVスポーツカーの世界
ポルシェのタイカンは、ターボGTバイザッハパッケージの場合、その最高出力は760kWに達する。エンジンでいう馬力に換算すると、約1034馬力となる。タイカンの基準車種では、最高出力が300kWで、馬力換算では408馬力であり、これでも十分高性能だ。基準車種のタイカンの0-100km/h加速は4.8秒で、最高速度は230km/hに達する。ターボGTバイザッハパッケージに至っては、0-100km/hがわずか2.2秒で、最高速度は305km/hだ。そのぶん、車両価格も1453~3144万円の幅がある。
電気自動車(EV)であっても、ここまで速いというスポーツカーメーカーならではの姿(実力)がそこに示されている。
ちなみに、エンジン車の911で最高の性能はターボSで、711馬力、0-100km/h加速は2.5秒で、最高速度は322km/hとなる。
高級車はどうか。メルセデス・ベンツEQSは、後輪駆動のモーターの最高出力が265kWで、馬力に換算すると360馬力になる。タイカンの基準車種に近い性能を備えているといえるかもしれない。そのうえで、WLTCによる一充電走行距離は759kmだ。ほかに、AMGの4輪駆動も選べるが、いずれもその最高速度は200km/h以上を確保している。ドイツでアウトバーンを走ることを思えば、200km/h以上出せればまずまずであろう。
ただし、エンジン車かEVかを問わず、速度と空気抵抗の関係は速度の2乗で効いてくるので、100km/hから200km/hへ速度を2倍高めると、空気抵抗は4倍に膨れ上がる。ドイツでは、アウトバーンがあるおかげで、速度で時間を稼ぎ出す発想があるが、EVになるとそれは充電時間との競争にもなり、ドイツを中心に欧州で超急速充電器を求める背景となっている。
一方で、メルセデス・ベンツといえどもEVになると最高速度を200km/hプラス程度に抑える方向にあるようで、エンジン車の時代のように単に最高速度を高めることが正義ではないという考え方が出はじめている。つまり、馬力競争ではなく効率の追求とほどよい移動時間の提供、それによる時間の活かし方・使い方の発想だ。
背景にあるのは気候変動抑制であり、EVでもエンジン車と同様に200km/h以上で走り続けられなければ価値がないという考え方への疑問や懸念だ。それを続ければ、EVであっても電力消費という意味での効率の追求が必ずしも正義でない領域に踏み込み、いくら再生可能エネルギーを使うとしても足りなくなり、結局、原子力発電に依存しなければ、200km/hでの移動を実現しきれなくなるという警告だ。ちなみにドイツは、脱原発である。
とはいえ、長距離移動をクルマに依存する間はなかなか答えを出しにくい時代が続く可能性がある。なぜなら、空気抵抗だけでなく、高速走行しながらカーブを曲がるという総合性能を高めるためにはタイヤのグリップを高める必要があり、それにはゴムの性質だけでなく、より偏平な寸法のタイヤが求められ、それがまた空気抵抗に悪影響を及ぼすという、際限のない悪循環に入り込みかねない。もちろん、グリップのよいタイヤのゴム(コンパウンド)は、抵抗が大きいため、電力消費を悪化させる。







































































