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スズキ初のEV「eビターラ」はぶっちゃけ売れる? 日本のスズキファンが買うかどうかは「価格」次第


TEXT:渡辺陽一郎 PHOTO:小林 健
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クルマとしてはよくできているスズキ初のBEVだが……

スズキは最初の量販電気自動車となるeビターラを2025年度中(2026年3月まで)に国内で発売する。フロンクスと同様、インドの工場で生産される輸入車で、ボディサイズは全長が4275mm、全幅は1800mm、全高は1640mmだ。カテゴリーはコンパクトSUVで、全長と全幅はマツダCX-3などに近い。

エンジンを搭載しない電気自動車だから、駆動用リチウムイオン電池の容量は比較的大きい。49kWhと61kWhが用意され、1回の充電で走れる距離は、49kWhの2WDが400km以上、61kWhの2WDは500km以上(4WDは450km以上)とされる。

スズキeビターラの充電口

ボディはコンパクトだが車内は意外に広く、身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は握りこぶしふたつぶんだ。4名で乗車できる居住性が備わり、1回の充電で400km以上を走れるから、電気自動車としては実用性も高い。

はたしてeビターラは売れるのか。販売面では決して有利なクルマではない。いまの乗用車の需要は、約80%が従来型や同じメーカーの車両からの乗り替えに基づく。それなのにeビターラは、日本では初代モデルだから、先代型からの乗り替え需要もない。すべてが新規ユーザーだ。

スズキeビターラのフロントスタイリング

しかもスズキは、いままで電気自動車を扱った経験がない。加えて2024年度は、国内で新車として販売されたスズキ車の81%が軽自動車だった。残りの小型/普通車も、売れ筋は5ナンバー車のソリオとスイフトだ。eビターラは、国内におけるスズキのブランドイメージに合っていない。

eビターラの売れ行きを決定付けるのが価格だ。2025年7月中旬時点では未定だが、リチウムイオン電池の容量などが似ているリーフの価格を参考にできる。eビターラは装備を相応に充実させるから、49kWhのリチウムイオン電池を搭載したもっとも安価なグレードは、リーフに40kWhの電池を搭載したX・Vセレクションの431万8600円に近いと予想される。

スズキeビターラのインテリア

仮にeビターラのもっとも安価なグレードが430万円なら、国から交付される約80万円の補助金を差し引いて、実質価格は約350万円だ。スズキのブランドイメージを考えると、車両価格を370万円に抑えて、補助金を差し引いた実質価格を290万円としたいが実際は難しい。

そして、先に挙げた車両価格が430万円/補助金を差し引いて350万円という予想価格を超えてしまうと、順調に販売するのは困難だ。eビターラは難しいビジネスだが、将来に向けた環境対応を考えると、避けられない一種の試練になる。

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