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TEXT:烏山 大輔
EV充電インフラ「Terra Charge」が、ホテルとゴルフ場に採用。EVユーザーの利便性向上へ

EVをより身近にすることを目指してEV充電インフラ「Terra Charge(テラチャージ)」を提供するTerra Motors(テラモーターズ)は、全国144棟の宿泊施設を管理・運営する「マイステイズ・ホテル・マネジメント」が運営する90ホテルにおいて、EV充電インフラ「テラチャージ」の採用が決定したことを発表した。 さらに国内最多のゴルフ場運営施設数を誇る「アコーディア・ゴルフ」のゴルフ場およびゴルフ練習場において、「テラチャージ」の導入が決定したことも明らかにした。 国内でもEV(電気自動車)化の機運が高まっている。EVを利用するには、充電インフラが身近にあることが必要不可欠だ。テラモーターズは、特にマンション(基礎充電)やお出かけ先(目的地充電)といった、導入が困難な場所におけるEV充電インフラ網の拡充に取り組んでいる。 EVユーザーに選ばれるホテルへ 宿泊施設は長距離移動先となることが多く、滞在時間が長いという特徴がある。EV化が注目される中、EVユーザーにとっても利用しやすい施設であることが重要になる。EVは自宅のような場所で日常的に充電することを基本としているが、旅行など長距離移動が必要な場合は、充電ができる環境が必要不可欠だ。 ホテルなどの宿泊施設は、宿泊中の駐車時間をEV充電に充てることができるため、EVユーザーにとって大切な補給ポイントとなる。将来的には「EV充電設備があるかどうか」が、ホテルを選ぶ基準のひとつになることが予想され、宿泊施設でもEV充電設備の導入検討が活発になっている。 マイステイズ・ホテル・マネジメントは、全国で144棟20,885室(2023年4月1日時点)とトップクラスの客室数を誇るホテルチェーンである。EV充電設備の導入検討も進めており、今回テラモーターズのEV充電インフラ「テラチャージ」を90ホテル、156基に導入することを決定した。順次全国のホテルに導入を進め、ホテル利用者の利便性向上と環境保護に取り組んでいく。   環境保護に取り組むゴルフ場 ゴルフ場も都市部から離れた場所にあることが多い。ゴルフクラブなどの道具を持ち運ぶ必要があり、車で長距離移動することが多く、滞在時間も長くなるという特徴がある。またゴルフ場を利用する人たちは、高級車や輸入車、EVなどを所有している傾向があり、充電設備があるかどうかを重視するようになっている。アコーディア・ゴルフはESG経営(企業が環境(Environment)、社会(Social)、およびガバナンス(Governance)の観点から責任ある経営を行うこと)の観点からも環境保護に力を入れており、EV充電インフラの導入を積極的に検討している。 同社は、日本国内で最も多くのゴルフコースを運営している企業であり、環境保護のために幅広い取り組みを行っており、その一環として、LED化の促進やオール電化など、環境保護に関する施策を進めてきた。EVにも配慮することは、環境保護に力を入れるアコーディア・ゴルフにとって重要な要素のひとつである。 アコーディア・ゴルフは、テラモーターズのEV充電インフラ「テラチャージ」を151ヵ所(ゴルフ場144ヵ所、ゴルフ練習場7ヵ所)で導入することを計画している。日本製の「テラチャージ」は、部品供給やアフターメインテナンスにおける懸念が少なく、長期間の稼働が前提となるインフラとして最適であると評価された。順次導入を進め、2023年中にEV充電インフラの整備を目指していく予定だ。  

TAG: #テラモーターズ #充電
TEXT:加納亨介
「EV整備ネットワーク」の構築へ。ナルネットコミュニケーションズと日本自動車車体補修協会が新興EVメーカーをフォロー、EV特化型のメインテナンスパックも開発

自動車整備受託のリーディングカンパニーと、行政公官庁とのパイプを持つ社団法人とのタッグ ナルネットコミュニケーションズは、日本自動車車体補修協会(JARWA)と共同でEVメインテナンスに対応できる整備工場のネットワーク構築に乗り出す。 同社はオートリース会社などから自動車の整備・管理を受託する企業で、この分野のリーディングカンパニー。国内で約10,500ヶ所の整備工場ネットワークを持ち、部品交換時期などの整備情報をデータベース化して一元的に管理している。 一方の日本自動車車体補修協会は「自動車車体補修における信頼性の確保」を目的とする一般社団法人で、国内自動車メーカー8社や溶接機メーカーなどのほか、内外の新興EVメーカーも多く加盟している。近年はスキャンツールを使用した自動運転関連整備(エーミング)や、新興メーカーのアフターサービス網構築支援で存在感を増すなど、変革期の自動車整備に独自のノウハウを持つ。 この両者が手を取り合うことで、EVのメインテナンスに長けた整備工場ネットワークを作り上げる。具体的には、専用工具を使ったEV整備ノウハウや高電圧の扱いなどの技術情報、車種ごとの固有情報などを提供し、整備工場のEV対応を促進させる。構築されたネットワークは、新興EVメーカー相乗りの整備ネットワークとして利用されることを想定している。 同時に、EVに特化したメインテナンスパックの開発も進める。行政公官庁と連携し、ICE車とは視点の異なる点検・整備項目を設定する。新興EVメーカーとも協調し、多様な駆動システムを持つさまざまなEVに対して普遍的なメインテナンスパックを全国一律で提供する。 EV整備ネットワークとEV特化型メインテナンスパック。どちらも来るべきEV時代に欠かせない社会資本的存在といえ、EVユーザーの利便性向上に貢献するはずだ。 EV普及の足枷は充電環境だけじゃない 承知の通り、日本は先進諸国と比較してEVの普及が遅れている。原因としてよく挙げられるのは充電拠点数の少なさだが、ユーザーにとっては購入後のメインテナンス体制も同じくらい気になるところなのである。   EVが当たり前になる時代ももうすぐと思われ、それにともないHWエレクトロ、フォロフライ、EVモーターズジャパンなど、これまでクルマを作ったことのないEV専門新興メーカーの参入も増えてきた。正規ディーラーネットワークを構築済みの既存自動車メーカーと異なり、これら新興EVメーカーの多くは自前の整備ネットワークを持たない場合が多いことから、アフターサービス網作りへのフォローが待たれていた。   ナルネットコミュニケーションズと日本自動車車体補修協会が行う「EV整備ネットワーク」構築への取り組みは、この問題の解消に向けた大きな一歩といえる。

TAG: #自動車整備
TEXT:TET 編集部
680馬力のファーストクラスEV。メルセデス・マイバッハが「EQS SUV」を発表

独メルセデス・ベンツは4月17日(現地時間)、最高級ブランド「メルセデス・マイバッハ」初の完全電動モデル「メルセデス・マイバッハEQS SUV」を発表した。マイバッハ・ブランドに相応しく超豪華に仕上げられたe-SUVの内容を紹介したい。 最大トルク950Nm 、最高速は210km/h達成 メルセデスのEVサブブランド「EQ」が、フラッグシップSUV「EQS SUV」を発表したのが昨年4月。それからちょうど1年で、専用の内外装を奢り、パワートレインをさらに強化したマイバッハ・バージョンが登場した。 メルセデスのEQS SUVが「EQS 450+ SUV」、「EQS 450 4MATIC SUV」、「EQS 580 4MATIC SUV」という3グレード構成なのに対し、マイバッハ版は「EQS 680 SUV」のモノグレード。数字が示すように、ツインモーターパワートレインはEQS 580 4MATIC SUVよりおよそ114ps/90Nm増となる658ps(484kW)/950Nmにまで強化され、0ー100km/h加速は4.4秒、最高速度は210km/hに達する。 バッテリーに関しては最大200kWの急速充電に対応し、15分で220km(WLTPモード)分の充電が可能。ただし、航続距離は最大600kmと発表されており、豪華装備の代償としてメルセデス版より若干短くなっているようだ。 足回りは、連続減衰力調整機能付きAIRMATICエアサスペンションが標準装備され、最低地上高を最大35mm引き上げることができる。EQS 680 SUVで悪路に踏み込むオーナーがいるのかわからないが、走破性は相当高い水準が期待できそうだ。そして、最大10度のステアリング角を持つリアアクスルステアリングも標準装備され、全長5125mm×全幅2034mm×全高1721mmという巨体にも関わらず、最大回転直径はコンパクトカー並みの11mを達成している。 エクステリアでは、EQSシリーズの特徴であるブラックグリルに、クロームメッキを施した縦長のストリップを追加。クロームはエアインテーク、ロワーバンパー、さらにはサイドピラーなどにも加えられ、ボディ全体からリッチな雰囲気を放つマイバッハらしいデザインに変更されている。 また、足元にも21インチまたは22インチの専用鍛造アロイホイールが奢られ、ホイールキャップには「MAYBACH」のレタリングが施される。リアコンビネーションライトは2つの部分からなる螺旋状の連続した形状とされ、ラグジュアリーなキャラクターを強調。さらに、このライトは全幅に渡ってアニメーション化されている。ボディカラーにマイバッハだけの2トーンカラーが5つ設定されているのも大きな魅力だ。 >>> 次ページ セレブリティをもてなす超豪華な後席

TAG: #EQS #SUV #メルセデスマイバッハ
TEXT:烏山 大輔
ホンダ、上海モーターショーでBEVの「e:N」シリーズ3車種を世界初公開。中国でのBEV100%目標も5年前倒し

2023年4月18日、ホンダは上海モーターショーで、電気自動車(BEV)「e:N(イーエヌ)」シリーズの第2弾となる「e:NP2 Prototype(イーエヌピーツー プロトタイプ)・e:NS2 Prototype(イーエヌエスツー プロトタイプ)」と、e:Nシリーズ第3弾となるコンセプトモデル「e:N SUV 序(xù)」を世界初公開した。「序」は中国語で「プロローグ」を表し、e:Nシリーズとして新世代の幕開けを迎えるという意味合いを込めている。中国市場において、今後これらのモデルを投入しe:Nシリーズを拡充することで、「2035年までにEVの販売比率100%」の達成を目指していく。 写真は左からe:N SUV 序、e:NS2 Prototype、e:NP2 Prototype 、e:N GT Concept(2021年に発表された2026年までの発売を予定しているコンセプトカー)。 目標を5年前倒し、「2035年までにEVの販売比率100%」 ホンダは、グローバルでの目標である「2050年にホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」を掲げ、中国においては2027年までに10機種のホンダブランドEVの投入を予定している。 今回発表されたe:NP2 Prototypeとe:NS2 Prototypeは、ホンダが提案する新しい価値を持ったEVとして開発が進められており、e:Nシリーズ第2弾として2024年初頭に発売される予定だ。 またe:Nシリーズ第3弾となるe:N SUV 序については、SUVらしいワイルドさと近未来的な知性を兼ね備えた新世代のe:Nシリーズとして開発が進められている。今回発表されたコンセプトモデルをベースにした量産モデルは、2024年内に発売される予定である。 ホンダはこれらのEVモデルの投入により、中国における電動化を加速し、「2040年までにEV・FCEVの販売比率100%」の目標を前倒しして、「2035年までにEVの販売比率100%」の達成を目指す。

TAG: #BEV #e:N #コンセプトカー #上海モーターショー
TEXT:栁 蒼太
VWグループのElli、欧州での充電ポイントが50万カ所に

欧州の大手充電ネットワークプロバイダーであるElliは、その管轄下にある充電ステーションが50万基に到達したことを発表した。Elliは、自動車ブランドに関係なく、欧州28ヵ国の約950のプロバイダーでEVの充電が可能だ。 魅力あふれる急拡大 充電ステーション数が50万基を達成したのは、2022年12月に発表した40万ポイントの達成からわずか約4ヵ月後のことだ。現に「ヨーロッパ最大かつ最も急速に成長している充電ネットワーク」を提供するとフォルクスワーゲン(以下、VW)は声明の中で述べている。 なお、50万台の充電ポイントのうち、大半は普通充電ステーションだが、正確な数はプレスリリースに明記されていない。一方、Elliは、33,000のHPC(high power charging stationと呼ばれる急速充電ステーション)へのアクセスが、独自の充電ネットワークを通じて可能になったとしている。また、約5,000の充電ポイントでは、充電カードやアプリ、RFIDチップ(情報の読み取りや書き換えをするシステムのためのチップ)を使わずに充電プロセスを自動的に開始・決済するPlug&Chargeをすでに導入している。 充電ネットワークの拡大にあたって、Elliは、エネル(Enel)やイベルドローラ(Iberdrola)などのエネルギー事業者、鉱物油会社のBP、イオニティ(Ionity)など、数多くの協力関係やパートナーシップを活用している。 ただ、12月以降急速的に10万台を拡大したものの、VWはどのパートナーとどの地域に10万台の充電ポイントが追加統合されたかは明らかにしていない。 巨大グループならではの盤石なネットワーク Elliの充電ネットワークは、主に多数のVWブランドの充電サービスの基盤となっている。VWの「We Charge」、スペインのセアト(Seat)とクプラ(Cupra)の「Easy Charging」、チェコのシュコダ(Skoda)の「Powerpass」、そして「Audi Charging」も、1月からElli充電ネットワークを使用している。この50万基の充電ポイントは、現在、これらすべてのサービスで利用することができる。 今回は、ドイツ内での取り組みを取り上げたが、日本国内でもアウディ、ポルシェ、VWがプレミアム チャージング アライアンス(PCA)を拡大している。これによって、オーナーは各ブランドの展開する急速充電器を利用できるようになる。ブランド独自の充電ステーションの拡大は、該当するブランドにとっては非常に有効になるだろう。一方、社会インフラとしての、どの車でも歓迎という姿勢ではないため、どのようにネットワークが広がり、ユーザーに受け入れられるのか、今後の展開が気になる。

TEXT:曽宮 岳大
新生ランチア発動。新型EVコンセプト「ピューラHPE」を世界初披露

ランチアは4月15日、新しいコンセプトカー「Pu+Ra HPE(ピューラHPE)」を初披露した。いくつかのティザー(登場予告)を経て公開された同モデルは、ランチアが今後進む方向性を示したデザインスタディだ。ランチアでは、エクステリアデザイン、くつろげるインテリア、持続可能性、電動化、快適技術の5つをブランドの重要なキーワードとして掲げ、今後登場する市販モデルも、これらの要素を踏まえたモデルになりそうだ。さっそくピューラHPEの中身を見ていこう。 ヘリテージと前衛的デザインの融合 全体のプロポーションは、未来的な流線型フォルムを取り入れており、かなり攻めたデザインといえる。直線的なラインと曲面を組み合わせ、随所に歴代モデルに通ずるディテールを取り入れたものとなっている。ちなみに車名の「HPE」とは、1970年代に「ランチア・ベータ」で初めて使われたネーミングで、“ハイパフォーマンス・エステート”の頭文字をとったもの。ルーフエンドをドライバー頭上よりはるかに後方に位置させたフォルムは、なるほどエステート風だが、ルーフをリアエンドまで延長せず、リアエンドに向けてなだらかな傾斜を持たせることで、クーペ調のデザイン要素も併せ持つ。捻りを加え、他のどのモデルにも似ていない個性を放つところはランチアらしさを感じさせる。 ディテールには随所に歴代モデルのモチーフを見ることができる。フロント中央から3方向へと広がるYの字ラインも、歴代モデルと見比べてみると、ヘリテージを受け継いだものであることがわかる。またこのデザイン要素は2022年に発表されたデザインコンセプト「Pu+Raゼロ」でも提案されていた。 また左右のリアコンビネーションランプの間にLANCIAの文字を配したそのデザインは、「ストラトス」を彷彿とさせるもの。リアウインドウは「ランチア ベータHPE」を思い起こさせる形状とした。なお、ランチアのロゴやバッジも新デザインに変更されている。 インテリアは、イタリアの高級家具メーカー、カッシーナとのコラボレーションにより仕上げられたもの。フロントシートは、ヴィコ・マジストレッティの手になるカッシーナの高級ソファ「マラルンガ」に着想を得ている。リビングのソファのようにお尻を優しく包み込む形状で、上質な素材や明るい色彩もイタリアらしい仕上がりだ。 ちなみにピューラHPEはリアにも独立した2座を備え、ナイトテーブルのようなスタイリッシュなテーブルを備えている。このほかオーディオや空調、照明などを集中管理し、ボタンやボイスコマンドで操作できる機能など最新技術も取り入れている。

TAG: #コンセプトカー #デザイン
TEXT:烏山 大輔
トヨタ、上海国際モーターショーでbZシリーズのコンセプトカー2台をワールドプレミア。来年中国に導入予定

2023年4月18日、トヨタは上海国際モーターショーにて、バッテリーEV(BEV)のコンセプトカー「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」を世界初披露した。 これらのコンセプトカーは、BEV専用ブランドであるTOYOTA bZシリーズとして開発が進められており、2026年までにトヨタが発売する予定のBEV10モデルのうちの2モデルとして、2024年に中国市場に導入される予定である。 新たな2台のコンセプトカー 「bZ Sport Crossover Concept」は、トヨタと、トヨタが中国の比亜迪股份有限公司と合弁で設立したBYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー有限会社(BTET)、一汽トヨタ自動車有限会社、豊田汽車研究開発センター(中国)有限公司が共同開発した。 アクティブで個性的なクロスオーバータイプのBEVで、一汽トヨタより生産・販売される予定である。クルマで移動する時に気分転換ができるように「Reboot」というコンセプトを採用している。Z世代に向けたパーソナルな空間として機能するように、運転支援や自動駐車などの知能化機能も含まれており、オーナーが常に最新のクルマを五感で楽しめるように開発されている。 「bZ FlexSpace Concept」は、トヨタと広州汽車集団有限公司(GAC)、広汽トヨタ自動車有限会社が共同開発した、実用性を重視したファミリー向けのSUVタイプのBEVで、広汽トヨタより生産・販売される予定だ。 家族が安心・快適・自由に使える「COZY HOME」というコンセプトを採用し、大空間と扱いやすさ、高度な安全性、安心の航続距離を実現させ、知能化機能も搭載されている。家族や友人、カップルなどに寄り添い、より生活を楽しめるクルマを目指して開発されている。 トヨタは、BEV(電気自動車)専用プラットフォームを基盤として、TOYOTA bZシリーズを導入し、このシリーズにおいて次の4つの目標を掲げている。 1.You & Others ヒトとヒト 快適な移動空間を提供すると同時に、大切な家族や仲間と過ごすかけがえのない時間を提供することで、新しいライフスタイルを提供する。 2.You & Your Car ヒトとクルマ BEVならではの運転の楽しさや、可能性を期待させるワクワク感を提供することで、オーナーとクルマとの関係を深める。 3.You & the Environment ヒトと地球 CO2排出量などのマイナスを減らすだけでなく、プラスを生み出すことで、環境問題へ貢献する。 4.You & Society ヒトと社会 安心・安全な社会づくりに貢献することで、社会的責任を果たすことを目指す。

TAG: #BEV #bZ #EV #コンセプトカー #上海モーターショー
TEXT:栁 蒼太
ボッシュ、欧州初のバッテリー放電処理装置を開発

ボッシュは4月5日、蓄電池リサイクル施設向けに、使用済み蓄電池の放電・破砕処理およびそれらを制御するソフトウェアを納品すると発表した。 今こそチャンスだ、リサイクルシステム 電気自動車の増加、リサイクルに対する法的規制の増加などの背景から、直に寿命を迎えるバッテリーのリサイクルシステムが必要となっている。なお、フラウンホーファーシステム・イノベーション研究所によると、リサイクルに必要な技術システムは、ヨーロッパだけでも2040年までに60億ユーロ以上の投資が必要とされている。 その中で、ボッシュは、2030年までに欧州で新規登録される乗用車の約70パーセントが電気自動車になり、バッテリーに含まれるリチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料のリサイクルに対する需要が高まると予測し、放電処理装置を開発した。 ボッシュに全ておまかせ ボッシュが開発した設備・システムを初めて導入するのは、バッテリー・ライフサイクル・カンパニー(Battery Lifecycle Company)が、新設する蓄電池リサイクル工場だ。その工場にボッシュ子会社のボッシュ・レックスロス(Bosch Rexroth)が設備とソフトウエアを納める予定だ。 また、同工場では、フレキシブルなモジュール式搬送システムやctrlX AUTOMATIONコントロールプラットフォームなど、実績のあるボッシュの産業技術を使用して、現地でバッテリー生産も行う予定だ。工場の稼動は2023年夏を見込んでおり、最大で年間15,000トンのバッテリー材料をリサイクルする見込み。 ※バッテリー・ライフサイクル・カンパニーは、水道・環境サービス大手レモンディス(REMONDIS)傘下のTSRリサイクリング(TSR Recycling)と物流大手レイノス(Rhenus)の自動車物流部門レイノス・オートモーティブ(Rhenus Automotive)が4月に設立した合弁会社だ。 効率も安全も譲らない リサイクルによって、電池の化学元素を最大95%回収し、電池の製造工程に再利用することができる。なお、ボッシュが開発したシステムは、EVに搭載するリチウムイオン蓄電池8個を全自動で15分以内に同時に放電処理できる。通常の放電処理は最大24時間を要するとされ、リサイクルのスピードが大幅に向上することができる。さらに、蓄電池の種類によって異なる構造を認識できるため、電気ショートや発火を抑えられる。 作るだけでは、作れない、エレクトロモビリティ エレクトロモビリティは、電池の生産に必要な原料が十分に確保されてこそ、長期的に確立されるものだ。そのためにも、リサイクルが必要であり、使用したものを再利用、原材料を回収することが求められている。蓄電池の二次的なマーケットが成熟することが見込まれるだろう。 なお、ボッシュは世界最大級の産業見本市であるハノーバー・メッセ(2023年4月17日~21日開催)にて、バッテリーリサイクルの産業技術を出展する。  

TAG: #ボッシュ #リサイクル
TEXT:烏山 大輔
ホンダ、ヤマト運輸と発売前の軽商用EVで集配業務の実用性を検証

本田技研工業株式会社とヤマト運輸株式会社は、ホンダが2024年春に発売を予定しているN-VAN(エヌバン)をベースとした、新型軽商用EVの集配業務における実用性の検証を2023年6月から8月まで実施する。近年、EC市場の拡大に伴い物流の需要が高まる一方で、温室効果ガス排出量の削減など、サステナブルな物流の実現に向けた取り組みが必要とされているためである。 2050年までのカーボンニュートラルを目指す両社の取り組み ホンダは2050年までにホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指す取り組みを進めており、日本市場においては、2024年春に発売予定の新型軽商用EVを含め、身近な車種である軽自動車からEVの普及に向けた取り組みを進めている。 また、ヤマトグループは、「2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)」という目標を掲げ、2030年までにEV20,000台の導入(2020年1月より500台のストリートスクーターを首都圏に順次導入)を含む様々な取り組みを進めている。 そして今回ホンダとヤマトグループは、ホンダが2024年春に発売予定の新型軽商用EVを活用し、環境負荷軽減効果、集配業務における実用性や車両性能などを検証するために協力することを発表した。さらに、充電オペレーションやエネルギーマネジメントに関する各種データを取得し、より実用性の高いEVの運用に役立てることも目的である。 新型軽商用EVは、大容量でフラットな荷室空間を持つ軽商用バン「エヌバン」をベースに開発された。ヤマトグループは、小型モバイル冷凍機「D-mobico(ディーモビコ)」を2台搭載し、冷蔵・冷凍品の配送にも対応する予定だ。このディーモビコは、モバイルバッテリーで駆動し、ドライアイスを使用しないため、より環境に配慮した配送が可能である。 全国3ヵ所での実証実験、寒冷地での検証も実施 実証実験は2023年6月1日から8月31日までの3ヵ月間に車両3台を使い実施する。この実験は、ヤマト運輸の中野営業所(東京都杉並区)、宇都宮清原営業所(栃木県宇都宮市)、神戸須磨営業所(兵庫県神戸市)の3ヵ所で行われる。 実証実験では次の3点を検証する。 まず、EVを導入した際の環境負荷軽減効果について検証する。EVの導入により、CO2排出量の削減などの環境負荷軽減効果が期待されるが、この効果について、実際の配送業務におけるデータを取得し、詳細に検証する。 次に、集配業務における実用性や車両性能について検証する。車両の使い勝手や航続可能距離などのEV独自の実用性に加えて、ドアの開け閉めや乗り降りが多い集配業務を通じた車両の耐久性、さまざまな特徴を持つエリアでの車両性能などを検証する。具体的には、配送荷物が多く乗り降りの機会が多い東京23区エリア、1度の配送における走行距離が比較的長い栃木エリア、坂が多くアップダウンのある兵庫エリアで、それぞれの状況におけるEVの性能を検証する。 最後に、EV運用における各種基礎データの取得・検証を行う。日々の集配業務における車速、アクセルやブレーキなどドライバーの運転操作や、空調による電力消費量、走行後の充電量や充電時間帯などの各種基礎データを取得し、複数台のEV車の運用を想定した充電オペレーションとエネルギーマネジメントの検証を行う。 また、今回の実用性の検証にとどまらず、冬季の集配業務を想定した、外気温が氷点下になる寒冷地での充電・走行テストなど、様々な環境下での検証を行っていく。今後も、さまざまな環境下での検証を通じて、商用EVとしての実用性を高め、顧客ニーズに応える軽商用EVの開発・普及を目指す。

TAG: #商用EV
TEXT:栁 蒼太
アバルト、「500e」の擬似エンジン音の開発に6,000時間以上を投入と公表

電気自動車をいくつか試していくと、加速にともなうサウンドが微妙に異なることがわかる。モーター自体の音は変わらないので、これはメーカーが加えた演出によるものだ。 スポーツカー・ブランドであるアバルトが、新型の電気自動車「アバルト500e」に擬似エンジン音を採用するために、専門のサウンドデザインチームと共に約2年間のプロジェクトを進め、その過程で6,000時間以上を費やしたことを公表した。このプロジェクトでは、NVH(Noise Vibration and Harshness)部門でサウンドデザインの開発、統合が行われ、アバルトの歴史的なエキゾーストシステム、レコルトモンザのサウンドを検証した。 また、ドライビング体験のあらゆる場面でアバルトのガソリンエンジンが発するサウンドを録音し、高度化された仮想マトリックスに新しい音色を作り出した。さらに、マトリックスに追加のサウンドを取り入れることで、アバルトの歴史的なサウンドと新型アバルト500eの未来感をブレンドし、ドライバーに最高の没入感をもたらすことを実現した。 開発にあたり、オリジナルに限りなく近いサウンドを目指すべく、加速、減速、ブレーキング、高速コーナリング時におけるアバルトのガソリンエンジンの音を録音した。さらには、サウンドキャリブレーション(補正)も実施。録音された音は、専用の技術ツールとプロセスによって慎重に分析され、アバルトのDNAともいえる特徴的な周波数をすべて抽出し、追加音によって新しい音色が作られた。 また、ソフトウェアによって、録音されたサウンドをさまざまなコンポーネントに適応させ、ドライバーが車を操る楽しさをより感じられるようになっている。アバルトの歴史的なサウンドとNew Abarth 500eの未来感をブレンドしたサウンドとなっている。 なお、これらのサウンドシステムは、停車中にドライバーが設定のオンとオフを選ぶことができる。アバルト・モデルはいつも、小さな車体から勇ましいサウンドが聞こえて驚かされるが、その驚きがEVになってもなくならないのは実に嬉しいものだ。

TAG: #500e #アバルト
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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