コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:御堀直嗣
EVって最高速度が低いのはなぜ? 答えは「できないじゃなくあえて低く設定している」だった

EVの速度は電費に影響する 電気自動車(EV)は、最高速度を抑える傾向がある。それは、なぜか? モーター駆動だからという意見もあるかもしれないが、そうではではない。たとえば、世界で最初に時速100kmを達成したのはEVだった。それは、1899年のことだ。今日では、たとえばポルシェ・タイカンのターボGTウィズ・バイザッハ・パッケージの最高速度は、時速305kmといわれる。 一方、メルセデス・ベンツが最初に市場導入したEQCは、最高速度を時速180kmに留めた。理由は、一充電走行距離の確保にある。 EVであるかエンジン車であるかを問わず、高速走行したときに燃費(EVなら電力消費=電費)に影響を強く及ぼすのは、空気抵抗だ。空気抵抗は、速度の2乗に比例して増加する。 たとえば、時速100kmから時速200kmへ速度を2倍引き上げれば、空気抵抗は4倍に増えてしまう。国内での日常的な速度感覚で例をあげると、時速80kmから時速100kmへ、わずか時速20km速度を高めただけで、空気抵抗は1.5倍、すなわち50%も増えてしまう。これが電費に大きく影響する。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWhでしかないが、それで長い距離を移動しようとする場合、時速100kmで走って経路充電に30分要するか、時速80kmで走ることで経路充電なしに目的地に到着できるかを考えることになる。結論は、巡航速度を時速80kmに抑えても、経路充電しないほうが目的地に早く到着できる。 たとえば、東名高速道路の東京都側の瀬田の入り口から御殿場インターチェンジを目指す際、東京料金所の手前に、所要時間が表示されている。渋滞などの支障がなければ、瀬田インターチェンジから御殿場インターチェンジまでの所要時間は、70分だ。この区間を時速80kmで走っても、ほぼ70分で到着できる。 東名高速道路は時速100kmで走れるが、それでも経路充電を避けるため、時速80kmに抑えて走っても、それほど多くの時間を移動に要するわけではない。

TAG: #最高速 #速度
TEXT:琴條孝詩
エンジン車と同じでもコト足りるのになぜ? EVのインテリアデザインを先進的にする理由

EVは外観だけでなく内装も先進的 電気自動車(EV)の普及が進むなか、EVではフロントグリルがないなどエクステリアのデザインが大きく変化している。しかし、外観のみならずインテリアデザインも従来のエンジン車などの内燃機関(ICE)車と大きく異なることに気がついた方も多いだろう。 多くのEVではミニマルなデザイン、大型ディスプレイの採用、物理ボタンの削減などが特徴となっている。これがときに「冷たい」「未来的すぎる」といった印象を与えることがある。一方、従来のエンジン車は比較的親しみやすいインテリアデザインを継続している。この違いはどこから生まれているのだろうか。EVのインテリアデザインに込められた意図と戦略について探っていく。 <EVメーカーが目指す「新時代」の視覚化> EVのインテリアデザインが独特である最大の理由は、メーカーが意図的に「先進的な乗りもの」というイメージを視覚化しようとしているからだ。ICE車では、排気量の増大や、気筒数の増加、ターボチャージャーの追加などで他社のクルマと差別化ができた。しかしEVでは、モーターやバッテリーの仕様に違いがあっても、感覚的に差別化しにくい。 したがって、他社との差別化をひと目で認識してもらうためには、自ずとコクピット、つまり車内で実現するしかない。そこでモビリティの概念を根本から変える可能性を秘めているEVという特性をインテリアで「見える化」しているわけだ。そのため、デザイナーたちは従来の自動車デザイン言語から意図的に脱却し、新しいアイデンティティを確立しようとしている。 そこには最新の技術も関係している。「プリンテッド・フレキシブル・エレクトロニクス(印刷型柔軟電子技術)」といわれるものもそれに寄与している。これは物理的なボタンを配置するのではなく、基板を印刷して、ハンドル、シート、アームレストやセンターコンソールなどに貼り付けるように内蔵するものだ。熱源としてヒーターも組み込むことができるので、ハンドルやシートなどに組み込んでエアコンを使用することなくドライバーが暖かい状態を維持できる。これは電気消費量に敏感なEVにとって実利的だ。また、これらによってスマートなインテリアにすることもできる。 たとえば、三菱のeKクロスEVのインテリアは、基本的にICE車のeKクロスと共通のデザインを採用している。しかし、EV版は軽自動車であるにもかかわらず「軽自動車を超えた質感」を追求し、7インチサイズの液晶メーターと9インチナビという専用装備を標準採用。ベースモデルのeKワゴンよりも上質なインテリアとなっており、「電気自動車ならではの先進性」を表現している。 また、多くのEVのインテリアでは直線的なラインや幾何学的なパターンが採用され、未来志向のイメージを強調している。これは消費者に「環境に優しい次世代技術」という価値観を視覚的に伝える効果的な方法でもある。インテリアデザインは単なる美的要素ではなく、EVというカテゴリー自体のブランディングに直結しているのだ。

TAG: #インテリア #デザイン #内装
TEXT:山本晋也
これってカタログ詐欺? EVのカタログ値と実際の航続距離が大きく異なるワケ

一充電走行距離と航続可能距離は異なる概念 EVに対する批判のひとつとして「カタログ値と実際の走行可能距離にあまりにも差が出過ぎだろ! なんでこんなにも航続距離に差が出るのか納得できない」というものがある。 たしかにカタログに記載されている一充電走行距離(WLTCモード)とメーター表示の航続可能距離は、それなりに乖離している印象もある。下に示すのは筆者が所有している電気自動車のフィアット500e(チンクエチェントイー)のメーター画面だが、ここに表示されている数字だけでもいくつかの違和感を覚えるのではないだろうか。 たとえば、フィアット500eの一充電走行距離(カタログ値)は335kmとなっている。しかし、左側の表示をみると充電率88%に対して、航続可能距離は223kmにとどまっている。もし満充電時に335kmなのであれば88%時に295km程度でなければならないのにだ。 ご存じのように、航続可能距離というのは直近の運転状況にしたがって計算されている。そのため、カタログスペックどおりにはいかないものだ。電費に悪い乗り方をしていればカタログスペックより短い航続可能距離になることはおかしくない。むしろ、カタログスペックで単純計算するより、リアルな運転に合わせて計算するほうが親切といえる。 ただし、上で示したメーター画面の中央付近に表示されているように、直近50.8kmの平均電費は10.4km/kWhとなっている。フィアット500eのバッテリー総電力量は42kWhとなっており、これらの数字をもとにすると、航続可能距離は以下の計算式で導かれるはずだ。 10.4km/kWh×42kWh×0.88≒384km つまり、メーター表示の航続可能距離は計算で導かれる航続性能の6掛けとなっているのだ。 こんなにアバウトな計算では役に立たない……と思ってしまうかもしれないが、一充電走行距離と航続可能距離というのは根本的に異なる概念であって、それぞれを関連付けて性能を判断するのは適切ではないのも事実だ。 WLTCモードでの一充電走行距離については、エアコンなどを使わず、規定された走行モードで走行不能になるまで走ったときの航続距離と理解すればいい。

TAG: #一充電走行距離 #航続可能距離
TEXT:桃田健史
特別感がないのが逆に強みか? ヒョンデのフラッグシップSUV「IONIQ 9」にチョイ乗りした

ロサンゼルスでワールドプレミア! 韓国の現代自動車グループ(以下、ヒョンデ)の最上級EV。それが「IONIQ 9(アイオニックナイン)」だ。量産モデルがワールドプレミアされたのは、昨年11月の米ロサンゼルスオートショーだった。つまり、ヒョンデとしてはEV市場としての将来性があるアメリカでの需要を優先する構えだ。 アメリカでは2025年に入り、第二次トランプ政権が発足し、いわゆるトランプ関税によって日本を含めた世界各国や地域がアメリカとの政治・経済における「ディール(取引き)」に頭を悩ませているところだ。 そうしたなかでも、中長期的にはアメリカでもEVシフトが進むというのが、ヒョンデを含めた世界自動車産業界の見立てだ。 韓国では4月からIONIQ 9の先行予約が開始されている。同月3日に開幕したソウルモビリティショー2025では、会場に隣接する駐車場を拠点にユーザー向けの公道試乗会が行われたが、家族連れやカップル、そして熟年夫婦など多様なユーザーがIONIQ 9の走りを味わっていた。 この試乗会に筆者も参加することができた。ヒョンデ本社と韓国自動車ジャーナリスト協会のサポートによるものだ。 まず外観だが、この前日に近隣にあるヒョンデ独自のブランド発信拠点「ヒョンデ・モビリティスタジオ」で見たときよりも、屋外ではさらに大きく見える。 ボディ寸法は、全長5060mmx全幅1980mmx全高1790mm、ホイールベースが3130mmである。アメリカ市場でいえば、フルサイズSUVというよりは、近年ますます大柄化しているミッドサイズSUV級の大きさだ。 サイドビューに特徴があり、SUVというよりは、大きなステーションワゴンといった雰囲気すらある。 インテリアは水平基調のダッシュボードで、デジタルサイドミラーのモニターを除けば、一般的な上級SUVという印象だ。IONIQ 5のインテリアが特徴的であるため、それと比較するとIONIQ 9のインテリア造形は正統派といえるだろう。 パワートレインは、RWD(リヤ駆動)をベースとしたAWD。モーターの最高出力は、リヤが160kW、フロントが70kW。電池容量は110.3kWhとかなり大きい。 では、走り出そう。今回は市街地と高速道路で約6kmを走行したが、思ったよりもドッシリ感が強くない。 これだけ大きな電池を床部に搭載していても、過度にドッシリ・ズッシリという乗り味ではない。一般的な米ミッドサイズSUVと同じような感覚で乗れる。 ただし、重量が大きいことは否めず、回生ブレーキは終始レベル2を維持する必要があるように感じた。 いまのところ、日本での発売計画はないが、大型EV・SUVとしてグローバル市場におけるベンチマークになることは間違いない。

TAG: #IONIQ 9 #SUV
TEXT:高橋 優
中国勢が次に目を付けたのはトルコ! いまトルコはEV激戦区になっていた

トルコはEUと関税協定を結んでいる 欧州の玄関口として近年注目を集めているトルコ市場でEV販売が急加速中です。とくに中国勢がシェアを大きく伸ばしながら、現地工場を建設して関税を回避しようとする動きも確認されています。 まず、今回取り上げていきたいトルコ市場は、人口約8750万人、国土面積は78.35平方キロメートルと、日本の2倍強の国土を有します。また、2023年シーズンにおける自動車販売台数はおよそ129万台と世界第14位であり、ロシアやオーストラリアと同等という規模感です。自動車生産も年間で147万台と、フランスと同等の生産規模であり、自動車産業が国の主力産業のひとつにもなっています。 このトルコについて重要なポイントは、欧州連合には加盟していないにもかかわらず、EUとトルコは独自の関税協定を結んでおり関税がかからないという点です。さらに、20カ国以上の国と自由貿易協定も締結しています。また、欧州各国と比較しても人件費が比較的安いことから、欧州の自動車メーカーが生産コストを下げるために、関税のかからないトルコを自動車工場に選んでいます。トルコは海に面していることから、自動車の輸出という観点でも地理的に強みを持っています。 なによりもエルドアン大統領はEVに注力する方針をかねてより示しており、実際に国策として自国の自動車メーカーを立ち上げに成功。Toggと名付けられたEVメーカーはすでにEVを発売中であり、トルコ国内で人気を博しています。 そして、トルコに目をつけたのが中国勢の存在です。まず、BYDがBEVとPHEVの生産工場などの設立のために10億ドルを投資中です。年間生産能力は15万台であり、おもに欧州市場向けに出荷されます。さらにCheryも黒海の面するサムスンにおいて、年産15万台となるEV生産工場の建設を正式に発表しています。 このようにして、Toggをはじめとする国内のEVメーカーやサプライチェーンに投資しながら、さらに国内に中国勢などの生産工場を誘致することによって、欧州向けのEV生産拠点の構築を目指そうとしているのです。 それでは、このトルコ市場最新のEV販売動向や人気のEVランキングを俯瞰しましょう。まず3月単体のBEVの販売台数は約1万2800台と、前年同月比+113.5%であり、急速にBEVシフトが進んでいる様子が見て取れます。 次に新車販売全体に占めるBEVの販売シェア率は10.94%と、前年同月の5.46%と比較しても倍増。すでにトルコ国内で販売されている10台に1台以上がBEVに置き換わっているとイメージしてみれば、驚きのペースであるとイメージできるはずです。 さらに、PHEVとEREVの販売台数も着実に上昇しており、3月単体では3600台以上が売れています。よって、PHEVも含めたNEVシェア率は史上最高水準となる14.25%に到達。2025年末にNEVシェア率25%達成にも期待可能でしょう。 ちなみにこのグラフは、日本やオーストラリアと比較してどれほどBEVシフトが進んでいるのかを比較したものです。この通りトルコは日本市場と比較すると、10倍以上という圧倒的な差をつけてEVシフトを進めている様子が確認できます。

TAG: #トルコ #普及 #販売
TEXT:小鮒康一
まだ誰もEVに注目してない時代から日産は頑張ってた! 1980年代に登場した「EVガイド」「EVリゾート」がエモい!!

イベント後は構内専用車として活躍! 現在、リーフやサクラ、アリアといった電気自動車を複数台ラインアップし、今後は次期型リーフに加えてマイクラEVやジュークEVが欧州へ投入されることがアナウンスされている日産自動車は、電気自動車の先駆者として知られている。 そもそものちに日産と合併するプリンス自動車工業の前身である東京電気自動車は、1947年に世界初の量産電気自動車として「たま電気自動車」をリリースしており、戦後の石油不足のなか、タクシーとして重宝されるモデルとして愛されていた過去がある。 そんな日産は、1960年代からさらなる電気自動車の開発を進めており、1985年の第26回東京モーターショーに「EVガイド/EVリゾート」なるコンセプトカーを出展している。 これは公道走行用のモデルというよりは、電気自動車ならではのクリーンさを活かして工場見学に訪れた人たちを案内するためや、高原のリゾートホテルにおけるホテルとコテージ間の移動をするために供給されることを想定していたものとなっており、EVガイドはルーフレス、EVリゾートはルーフを備えたスタイルだった。 このような使用用途を想定していたこともあって、最高速度は16km/hとなっており、満充電での航続距離は60km(最高速走行時)となっていた。なお、パワートレインはすでに実績のあるバッテリーフォークリフト用のものが転用されている。 なお、ルーフレスのEVガイドはモーターショー後にルーフが装着され、EVガイドIIとして、実際に工場見学に訪れた皇族や国賓を案内するガイドカーとして、長年にわたり大役を務めたほか、EVリゾートは10人乗り仕様としたものが、ヤクルト本社の富士裾野工場の構内車として5台納入された実績が残っているようだ。 写真で見ると背高スタイルで非常に大柄なようにも見えるEVリゾートではあるが、実際のボディサイズは全長4140mm×全幅1660mm×全高1870mmとじつはかなりコンパクトサイズ。これもエンジンなどを搭載しない電気自動車であるという点と、衝突安全性能がそこまで重要視されない構内専用車だったことも影響しているのは間違いない。 まだ当時としては公道で実用に供することができるスペックをもつ電気自動車を量産するのは難しい時代だったと思うが、それなら構内専用車にしてしまえという逆転の発想には感心してしまうほかないだろう。

TAG: #EVガイド #EVリゾート #日産
TEXT:御堀直嗣
充電ついでに洗車やタイヤの点検みたいな場所があれば……ガソスタみたいなEV専用施設が今後は登場するか?

EVは200Vの基礎充電が基本 ガソリンスタンド(GS)では、給油のほかに、洗車やタイヤの空気圧の点検と補充填、あるいはオイル交換をしてくれたり、定期点検や車検の更新も頼めたりといった、クルマ全般のサービスが提供される。 それに比べ、電気自動車(EV)の急速充電では、そうしたクルマがらみのサービスを提供する拠点はあまり見当たらない。あるとすれば、新車販売店に急速充電器がある場合だ。 ほかに、GSで急速充電器を設置している店であれば、給油と同じようにほかのサービスも依頼できる。ただし、あらゆるGSに急速充電器が設置されているわけではない。GSの経営では、燃料を売ることが第一の稼ぎであり、ガソリンや軽油、灯油などに比べ、電気料金は儲けにつながりにくいためだ。 これまで何度も述べてきたが、充電の基本は、自宅や勤め先などで行う200ボルト(V)での基礎充電だ。 GSのサービスと重なってみえる急速充電では、ついでに洗車やタイヤの点検もできれば好都合といった希望もあるだろう。それは事実だ。 ことに、集合住宅や月極駐車場などで普通充電が当たり前にできずに来たため、急速充電に依存せざるを得ないEV利用者が多い。そうした現状が、GSのようにいろいろ用事を済ませられればとの思いにさせる。 ならば、サービス工場のある新車販売店と同じように、町の自動車整備工場内や、洗車場、あるいはそれらの近隣に急速充電器が設置されれば、GSと同様の用事をあまり移動せずできるようになるのではないか。ところがそうした事業者が、まだEVに目が向いていないため、利便性を満たしていない可能性がある。 EVに目が向きにくい理由は、GSと同じように急速充電器を設置しても、電気料金での儲けが出にくいことがあるだろう。また、充電のためにクルマを止めておく場所が確保しにくいといった狭さに起因する場所の制約があるかもしれない。 さらに、オイル交換がなく、定期的な交換部品の頻度も下がるかもしれないEVは、商売にならないと考える整備工場もあるのではないか。それは事実だろう。

TAG: #サービス #急速充電器
TEXT:桃田健史
クルマの「エンジン」は注目されるのにEVの「モーター」がほぼ語られないのはナゼ?

トランスアクスル全体の設計思想が重要 新型EVが登場すると、ユーザーやメディアが注目するのは航続距離や価格だ。 基本的に、航続距離は搭載する電池容量に比例するため、電池容量や電池の種類などについて各種メディアが記事化をすることが少なくない。 一方で、モーターの技術については、最大出力と最大トルクを気にするユーザーもいるが、メーカー側がモーター技術を深堀りすることは少ない。その理由としては、モーター自体は電気関連企業が開発・製造する場合が多いからという解釈もあるだろう。 むろん、自動車メーカー側にもモーターの設計部門があるが、製造を含めてどこまで内製化されているのかなど、詳細については外部に情報がなかなか出てこない。 これは、ハイブリッド車でも同じだ。 たとえば、スバルが「クロストレック」と「フォレスター」に採用する「ストロングハイブリッド」で搭載するモーターとジェネレーターを、「トヨタを介して導入したもの」とスバルは説明するが、モーターの詳細については触れない。 それよりも、モーター、ジェネレーター、インバーター、そして減速機などを融合した「トランスアクスル」の存在を強調するのだ。ストロングハイブリッドにおける技術進化は、モーターなど単品の性能ではなくトランスアクスル全体の設計思想が重要だという。 こうしたトランスアクスル重視の考え方は、国内メーカーでは長年にわたりEV市場を牽引してきた日産も同じだ。 日産では近年、「X-in-1」という設計概念を次世代電動パワートレインに対して用いている。「X-in-1」はEVのみならず、シリーズハイブリッドであるe-POWERでも適合する。 日産によれば、「X-in-1」によってEVとe-POWERでモーターやインバーターなどの主要部品を共有することが可能で、量産効果によって電動車の部品コストと生産コストの削減につながるとしている。 具体的には、EV用「X-in-1」では、モーター、インバーター、減速機の3つをモジュール化。また、e-POWER用「X-in-1」は、モーター、インバーター、減速機、発電用の発電機と増速機のあわせて5つをモジュール化している。 一方、モーターの進化については、あまり機会は多くないものの、日産は定常的に技術的な説明を行っている。 たとえば、昨年夏に横浜工場で実施された全固体電池の製造スペース公開の際も、モーター内部の部品を新規設定することでコストが高い金属の使用量を減らす工夫などについて説明を受けた。 今後、EVが本格普及期となると予想される2030年代に入ると、EV性能の差別化要因として改めてモーターに注目が集まるのかもしれない。

TAG: #トランスアクスル #モーター
TEXT:小鮒康一
EV乗りは日産に敬礼! 日本での電気自動車普及の裏には日産ディーラーの充電設備が欠かせなかった

日産ディーラーはEVオーナーにとって心強い存在 量産型の電気自動車の先駆けともいえる初代リーフを2010年に発売した日産は、現在はクロスオーバーSUVのアリアや軽自動車のサクラなど電気自動車の拡充を進めており、先駆者であるリーフは今秋にも3代目モデルが登場する予定となっている。 そんな日産は、初代リーフを市場に投入したタイミングと同時に自社の充電網を一気に整備したことでも知られている。とくに首都圏ではその傾向が強く、主要な大型ディーラーの多くに急速充電器が設置されていった。 その数は、当時約2200店あった日産ディーラーの約1割に当たる200店とされており、地域差はあるものの、電気自動車ユーザーにとっては心強い存在であったに違いない。 また、多くの販売店では、ディーラーの定休日や営業時間外でも急速充電器が使用できるようになっており、夜遅くに帰宅したとしても充電することができる恩恵に預かった人も少なくないのではないだろうか。 そして、この日産ディーラーにある急速充電器は他メーカーの電気自動車であってもほぼ使用することができたため、当時から他メーカーの車両が日産ディーラーで急速充電をしている姿をみることができたのだ。 電気自動車がどんなに優れた乗り物であったとしても、インフラが整っていなければ万人に受け入れられることはなかったワケで、そういった点で考えると日産の戦略には頭の下がる思いといえるだろう。 また、日産としても、2016年12月から月額定額払いで日産の急速充電器が使い放題になるというプランを引っ提げてリーフの拡販に臨んでいるので、ディーラーに急速充電器がないとお話にならないという裏側もあったのかもしれないが、いずれにしても電気自動車普及の手助けになったことは間違いない。 なお、現在は200店だった急速充電器設置ディーラーも2000店に迫る数値となっており(2021年時点のデータ)、リーフ登場とともに設置された急速充電器は耐用年数が迫って、より高出力なものに置き換えられつつあるので、今後も電気自動車ユーザーが日産ディーラーにお世話になることは多そうだ。

TAG: #ディーラー #急速充電器
TEXT:高橋 優
頼みの綱の日産サクラも大幅減! 日本のEV販売動向は世界と逆の動きで縮小していた

2025年3月の販売台数は約1万1220台 日本国内における最直近の3月のEV販売動向が速報され、テスラの販売が絶好調だったものの、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いている状況が判明しました。 まずこのグラフは、2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。最直近2025年3月の販売台数はおよそ1万1220台と、前年同月比でマイナス成長に留まってしまいました。2カ月連続で販売台数が前年割れという状況です。 ちなみに、商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-Van e:の販売台数は4月末にならないと判明しないため、若干販売台数とシェア率は増加する見込みです。確定版となる2025年2月の販売実績は8400台となったものの、前年比マイナス21.1%という苦しい状況は変わりません。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の3月は速報値で2.45%と、前年同月に記録した3.17%と比較してもシェア率は大きく低下しています。数値が確定した2月度のEVシェア率は2.21%であり、前年同月の3.32%から急落している状況でもあります。 次に、そのなかでもとくにBEVの販売動向を詳細に確認していきましょう。このグラフは普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけて示したものです。白で示された輸入EVは3303台と、前年同月比で17.8%もの増加を記録。その一方で、ピンクで示された日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数はたったの707台と、前年同月比でマイナス36.7%という落ち込み具合です。 また、すでにシェア率が確定している2月は1.42%というBEVシェア率でした。2024年2月が1.88%だったことを踏まえると、BEVシフトが後退している様子が見て取れます。 ちなみに、現在の日本のBEVの販売シェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認すると、日本はデータが確定した直近の2月において1.42%と低迷しています。その一方で、2月の世界全体のシェア率は13%に到達。2024年2月の世界全体のBEVシェア率は8%だったことから、世界のBEVシフトは着実に成長していることがわかります。 それでは、この日本国内においてどのようなEVが人気であるのかを確認していきたいと思います。まず初めに、2025年累計での主要自動車メーカー別のBEV販売台数の変遷を見てみると、やはり日産が頭ひとつ抜けた存在感を見せています。 日産は3カ月で7800台以上を発売したものの、2025年シーズンは2月と3月連続して前年比で販売台数を落としてしまっています。リーフやアリアだけでなくサクラも前年割れと低迷しており、2025年中のモデルチェンジに期待が集まります。もちろん年末までに発売される新型リーフがどれほどのコスト競争力を実現して、どれほど販売台数を復活させることができるのかにも注目です。

TAG: #日本 #普及 #販売
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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