クルマに使われるバッテリーにはいくつかの種類がある
バッテリーに充電した電力が、これといって電気を使っていないのに時間の経過とともに減ってしまうことを自己放電という。バッテリー自らが放電してしまうという意味だ。
バッテリーに充電した電力は、バッテリーの電極と電解質によって化学的に貯められていて、倉庫に物を収めたというような物理的保管とは異なる。したがって、バッテリー内に生じた化学反応や、バッテリーが置かれている環境としての気温や湿度の違いにより、電力が徐々にではあるが自然に減ってしまう。
クルマの補器用バッテリーとして長年使われてきた12ボルト(V)の鉛酸バッテリーは、ひと月で4~8%ほど自己放電するといわれる。しばらくクルマに乗らずにいると、バッテリー上がりをするひとつの要因といえる。ただし、バッテリー上がりは鉛酸バッテリーの自己放電だけでなく、近年のクルマはキーを差し込まなくてもボタン操作で錠を開閉できるオートロック機能がついていたり、盗難防止の装置が働いていたりというように、待機電力といえる電気がずっと使われているので、そうした機能が電力を消費してもいる。
電気自動車(EV)の駆動用として用いられるリチウムイオンバッテリーはどうか?
リチウムイオンバッテリーも自己放電するが、それはひと月に1~5%ほどであるという。鉛酸バッテリーと比べかなり小さな値だ。しかも、車載バッテリーは容量が大きいので、自己放電で充電が空になってしまい、動かなくなるというようなバッテリー上がりの懸念はないに等しいのではないか。
では、EVで補器用として使われる鉛酸の12Vバッテリーは、どうなのか?
もちろん、鉛酸バッテリーとしての特性に変わりはない。とはいえ、そもそもEVには駆動用リチウムイオンバッテリーに大容量の電力が貯めてあるので、電気そのものは存在するのだから、そこから鉛酸バッテリーへ充電を行うことで、エンジン車で起こりがちなバッテリー上がりで始動できない懸念は減るだろう。
ただし、自動車メーカーによっては、駆動用リチウムイオンバッテリーから駐車中でも鉛酸バッテリーへ電力を提供し、バッテリー上がりを防ぐ機能を備えていない例もあるようだ。この場合は、EVといえども、長期間駐車したままにしておくと、そもそも鉛酸バッテリーの電力がないことにより、起動しなくなる恐れはある
ハイブリッド車で多く使われてきたニッケル水素バッテリーは、自己放電が多いといわれる。ひと月で30%に及ぶこともあるようだ。EVにニッケル水素バッテリーが使われない理由がそこにありそうだ。もちろん、EVの開発初期段階では、鉛酸バッテリーより容量が大きいのでニッケル水素を搭載し、一充電走行距離を伸ばしてきた経緯がある。
しかし、ニッケル水素バッテリーの多くがハイブリッド車(HV)で用いられてきた背景にあるのは、基本的にエンジンで発電したり、走行中の回生により充電したりすることでクルマは走り、充電による大容量の電力への依存度が低いことが、ニッケル水素バッテリーの特性に適していたといえるからではないか。