マイクロEVは大きくふたつにわけられる
ひとくちに「EV(電気自動車)」といっても、じつにさまざまなモデルが存在している。大柄なボディに、大容量バッテリーを搭載して、一充電で500kmをラクに超える航続距離を誇るモデルもあれば、小さなボディで街乗りメインといえるスペックのEVもある。
そうしたなかで、もっともコンパクトなボディをもつのがマイクロEVと呼ばれるカテゴリーのモデルだ。最近ではユーチューバーが開発するモデルとしてKGモーターズ・ミボットが話題となっているが、このモデルはマイクロEVの代表格といえる。
全長2490mm・全幅1130mm・全高1465mmという軽自動車より小さなボディの4輪車であるミボットの乗車定員は1名。ひと昔前の軽自動車並みの12インチタイヤを履いていることを考えると、ひとり乗りでなくとも走りの面では成立しそうな気もするが、そこには道路交通法上の理由がある。
ミボットは、いわゆる「ミニカー」カテゴリーで開発されている。ミニカーというのは「3輪以上の原動機付自転車」を指す通称。道路交通法のレギュレーションでは定格出力600W以下のモーターを積んでいることや、乗車定員1名であること、さらに3輪以上であることなどが定められている。
つまり、ミニカー・カテゴリーである限り、1名乗車のマイクロEVしか生まれようがないのだ。ただし、原動機付自転車の4輪版といっても法定速度は60km/hであり、二段階右折も不要。そのため、公道で運転するには原付免許ではなく、四輪免許が必要となる。
「マイクロEVなのに3人乗りの電動トライク(3輪車)を見かけるけど、あれはミニカーじゃないの?」と思った方は鋭い。マイクロEV=ミニカーとはいい切れない。
現実的に、バイクのようなバーハンドルで3名乗車のマイクロEVも多数存在している。「電動トゥクトゥク」と呼ばれるようなモデルだ。これらはミニカーではなく、「側車付き軽二輪」に分類されるモビリティだ。つまり、サイドカーのついた二輪車の電動バージョンといえる。そのため乗車定員3名が可能となっているのだ。
サイドカー付きバイクといっても二輪免許は不要。こちらも四輪免許で運転することができる。軽二輪(250cc以下)と同じ扱いになるので車検が不要なのもメリットだ。なお、原動機付自転車の四輪版であるミニカーも当然ながら車検は必要ない。
また、側車付き軽二輪において定格出力1000W超のモーターを積んでいれば、250cc相当になるため、法律上は高速道路を走行することも可能となる。ただし、現時点で入手できるEVトライクの多くは、性能的に高速道路を走るのに十分な性能を有していないモデルが多い点は気を付けたい。それでも、自動車専用道路となるバイパスなどを通行できるのは、ケースバイケースではメリットとなるだろう。
まとめると、マイクロEVといっても4輪の原動機付自転車であるミニカーと、側車付き軽二輪に分類されるトライクのふたつに大別される。いずれも運転するのに四輪免許が必要な点は共通であるし、法的に車両なので自賠責保険への加入は必須だ。いずれもヘルメットの着用義務はない点も共通している。
維持費に関わる違いとして覚えておきたいのは、任意保険の扱いが異なること。すでに加入している四輪車の任意保険に「ファミリーバイク特約」をつければミニカーにも対応するが、側車付き軽二輪は原付ではないので、専用に任意保険に加入する必要がある。この違いについては留意しておきたい。