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TEXT:高橋 優
突如発表された6人乗りのテスラ「モデルY L」! めちゃくちゃ売れそうな中身をじっくりチェック

テスラ新型モデルは待望の6人乗りSUV! テスラが中国市場において新型モデルとなるモデルY Lを世界初公開しました。ホイールベースを3000mm超へと引き延ばして6人乗り仕様を実現。さらに、モデル3にロングレンジRWDグレードが追加設定される見込みなど、テスラの最新動向を取り上げます。 まず、突如として発表されたモデルY Lについて、全長4976mm、全高1668mm、ホイールベースが3040mmと、通常のモデルYの全長4797mm、全高1624mm、ホイールベース2890mmよりもひとまわり大きくした、いわばロングホイールベースバージョンとなります。よって3列シート搭載が可能となり、さらに2列目シートはキャプテンシートが採用されることで6人乗り仕様となりました。 この表は、今回正式発表されたモデルY Lと、通常のモデルY、およびモデルXのEV性能を比較したものです。まず、車両サイズについて、これまでテスラ車でホイールベースが3000mmを超えていたのはサイバートラックのみであり、モデルXですらホイールベースは2965mmに留まっていました。今回のモデルY Lは、全長に占めるホイールベースの長さが最大化されているのです。 また、気になるのが3列目よりも2列目のキャプテンシートの完成度でしょう。現在の中国市場は6人乗りの大型電動SUVがレッドオーシャンと化しており、2列目のキャプテンシートの快適性が重要視されています。たとえばモデルXの場合、2列目のキャプテンシートは4方向電動調整とシートヒーターが搭載されているものの、競合の6人乗り電動SUVの場合、シートクーラーやシートマッサージ、ゼログラビティシート、冷温庫、大型ディスプレイなどが完備されています。モデルY Lのキャプテンシートにどのような機能が実装されるのかは注目動向といえるでしょう。 また、現時点で確定しているのは以下のとおりです。 ・韓国LGエナジーソリューション製(LGES)の三元系バッテリーを搭載 ・フロントに3D3のインダクションモーター、リヤに3D7の永久磁石同期モーターを搭載 ・AWDグレードの最高出力は340kW ・最高速は201km/h ・ホイールには新たなデザインを採用 ・フロントタイヤに255/45R19、リヤタイヤに275/45R19という異型サイズを装着 ・車両重量は2088kgと通常のモデルYロングレンジAWDの1992kgと比較しても100kgほど重くなっている おそらく発売開始時にはRWDグレードもラインアップされると推測可能です。いずれにしても、通常のモデルYと比較して電費悪化をどれほど最小限に留めることができているのかには注目です。 そして、今回のモデルY LのさらなるEV性能を推測する上で重要な情報が、電池容量増量の可能性です。じつは欧州市場において、モデル3とモデルYの新たな車両情報が登録されており、LGES製としてLG5Mと名付けられた84kWh級の新型バッテリーが登録されました。このLG5Mによって、テスラモデル3ロングレンジRWDグレードは、これまでの702kmから750kmにまで航続距離を延長。モデルYロングレンジグレードにも同様のバッテリーが搭載見込みなのです。 そして、モデルY Lは秋から発売がスタートされるとアナウンス。よって、モデルY Lに搭載されるバッテリーはLG5Mの84kWhとなる可能性が極めて濃厚です。電費が悪化するロングホイールベースバージョンの発売に合わせて、電池容量を引き上げてくるというのも合理的に見えます。

TAG: #3列シート #テスラ #輸入車
TEXT:山本晋也
クルマのエンジンルームは水洗い可能……だったらEVのボンネット内もOK?→基本水をかけるのはNGだった!

雨などでモータールームが濡れることは織り込み済み 洗車の極意は見えないメカまできれいにすることにあり……という格言は、筆者が思いついたものだが(笑)、愛車を大事にするオーナーや洗車マニアであれば、ボンネットを開けてエンジンルームを洗うという行為もけっして珍しくはない。 エンジンに洗剤をかけて汚れを浮かし、高圧洗浄でシャーっときれいにしている映像を、SNSや動画サイトで見かけると、真似したくなるものだ。 EVを愛してやまないオーナー諸氏であれば、エンジン車と同様に、EVのボンネットを開けてエンジンルームを洗いたいと思うだろう。 いや、EVにはエンジンが搭載されていない。フロント駆動であれば、ボンネット下は「モータールーム」と呼ぶのが適切だ。 それはさておき、一般論でいえば、高電圧・大電流の流れる電気部品に水はご法度……ではあるが、EVの場合は雨のなかで充電器につなぐこともあれば、少々の水たまりを走ることもありえる。当然ながら、自動車メーカーはそうした状況も想定して設計している。 日産リーフの冠水路試験といった映像や画像を見かけることもあるが、多少濡れたくらいでモーターやインバーターが壊れてしまったり、バッテリーから漏電したりするようなことはない。モータールーム内を濡らすことが厳禁というほどではない。 しかしながら、モータールームをエンジン同様に高圧洗浄していいのかといえば、自動車メーカーの公式見解としては「No」となっている。それは、高圧の水は細かい部分まで侵入するなど想定外といえるからだ。

TAG: #モータールーム #洗車
TEXT:渡辺陽一郎
補助金ありきでEVを買うなら要注意! タイミング次第では「もらえない」こともある!!

EVの補助金は誰でももらえるわけではない 電気自動車を購入した場合、申請を行うと、国からCEV(クリーンエネルギービークル)補助金の交付を受けられる。その交付対象は新車のみだ。なぜかというと、補助金の申請要件に「申請車両は、初度登録された車両で、製造事業者の新車保証が付いているものであること」という記載があるからだ。 中古車は、登録済み未使用中古車(軽自動車は届出済み未使用中古車)を含めて、少なくとも一度は登録や届け出を受けている。申請要件の「初度登録(届出)」ではないから、中古車は国が交付する補助金の対象に含まれない。また「自家用であること」という要件もあるため、事業用車の場合は、新車でも補助金の交付を受けられない。 そして申請書類の提出期限(消印有効)は、車両の新規登録(届け出)日までに支払い手続きが完了している場合、登録(届け出)日から1カ月後だ。提出期限に遅れないよう注意したい。 また、ユーザーと販売店やメーカーの間でトラブルが生じやすいのは、車両の納期遅延だ。納期が遅れて購入年度の補助金を使い切ると、そこで補助金が終了する。登録(届け出)日から1カ月という期限があるから、今年度に新車登録を行い、翌年度の補助金に申請することもできない。 そこで補助金が先に終了した場合、車両がメーカーから届いても登録や届け出を行わず、販売店が預かって翌年度に登録して補助金の申請を行うこともあった。ただしこれでは、販売会社が数カ月にわたって車両を預かるため、保管コストも高まってしまう。今はこのようなサービスを基本的に行っていない。 そして都道府県や市町村などの自治体も、国とは別に、電気自動車などに関して補助金を交付する場合がある。その申請期限は、国と異なり、こちらは初度登録(届け出)日から1年以内というケースもある。 また中古で購入した電気自動車やプラグインハイブリッドについて、災害時の電力供給に協力することを条件に、補助金を交付している自治体もある。このように自治体の補助金事業は、足並みがそろっておらず、それぞれ対応が異なる。電気自動車やプラグインハイブリッドの購入を検討しているなら、自身の属する自治体の補助金事業を調べておきたい。

TAG: #EV #新車 #補助金
TEXT:桃田健史
日産のチャンピオンで話題のフォーミュラEはシャシーもバッテリーも基本は同じってマジ!? 参戦メーカーによる違いはドコに生まれるのか?

日産も2030年まで参戦を表明 うれしいニュースが飛び込んできた。ABB FIAフォーミュラE世界選手権シーズン11(2024/2025)で、日産フォーミュラEチームから参戦しているオリバー・ローランド選手が世界チャンピオンに輝いた。 フォーミュラEは、「EVのF1」とも称される世界最高峰のEVレース。歴史は2014年からと浅いが、近年は若い世代を中心にテレビ視聴率や観客動員数が着実に増加しており、次世代モータースポーツとして注目されている。日産はシーズン5(2018/2019)から参戦しており、今シーズンは前半戦から好調で、5月に開催された東京E-Prixでもダブルヘッダーの日曜決勝でローランド選手が優勝している。 現時点で、日産は経営立て直しで極めて厳しい状況にあるが、次世代事業の柱になるEVについては、量産車開発へのフィードバックやグローバルにおけるEV関連プロモーションのため、2030年までフォーミュラE参戦を続けると表明している。 では、フォーミュラEとはどんなマシンなのか? 2014年にGEN1(第一世代)として始まり、今シーズンは第三世代の改良版であるGEN3EVOを採用している。ボディ寸法は、全長5020mm×全幅1023.4mm×全高1700mm、ホイールベースは2970.5mm。車両重量はドライバーを含めて859kg。最大出力は350kWで、最大回生エネルギーは600kWの四輪駆動。最高速度は時速322kmで、加速性能は停止状態から時速60マイル(96km)が1.82秒だ。 四輪駆動は予選の一部、決勝スタート、そしてフォーミュラE独特のルールであるアタックモードで作動する。それ以外はリヤ駆動(最大出力300kW)となる。 基本的にシャシーと駆動用バッテリーはワンメイク。その上で、モーター、制御システム、さらにこうしたパワートレインの搭載に関係するリヤサスペンションの一部などをチーム独自に開発できる。パワートレインのサプライヤーは6社。日産、ドイツのポルシェ、英国のジャガー、米欧の合弁ブランドをもつステランティス、インドのマヒンドラ、そして米日独が融合しているローラ・ヤマハである。 また、フォーミュラE主催者によれば、次の次のシリーズとなるシリーズ13(2026/2027)から第四世代・GEN4を投入することが確定している。GEN4はボディサイズがGEN3EVOと比べてひとまわり大きくなり、またプラクティスから決勝まで常に四輪駆動となる。パフォーマンス全般は、F1とF2(スーパーフォーミュラ)の中間程度を狙う。 さらに高性能化するフォーミュラE。ぜひとも日本人選手にレギュラー参戦してほしいものだ。

TAG: #フォーミュラカー #モータースポーツ
TEXT:御堀直嗣
エコな鉄を使ったエコカーには補助金5万円ってマジか! そもそもエコな鉄「グリーンスチール」ってなに?

最大5万円を補助金に加算 2025年4月からのクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金、通称エコカー補助金)で、グリーンスチールを採用した車種には、5万円の増額がなされることになった。 具体的には、登録車の電気自動車(EV)で最大85万円、軽EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)は最大で55万円、燃料電池車(FCV)は最大255万円と定められているエコカー補助金額に、5万円分が追加されることになる。 では、グリーンスチールとは何か? 製鉄では二酸化炭素(CO2)の排出が不可欠の状況にある。 理由は、鉄鉱石から鉄をつくるには高熱が必要で、それに石炭を基にするコークスが使われるからだ。地下資源のなかでも、石油や天然ガスに比べCO2の排出量が多くなる石炭を必要とすることが、製鉄業の脱二酸化炭素に大きな負担をもたらしている。 影響の大きさは、日本国内におけるCO2排出量の最大の割合を占めるのが製造業であり、36%に及ぶ。ちなみにクルマが関わる輸送部門はその半分の18%でしかない。それでも、走行中の燃費改善はもとより、EVをはじめとするエコカーの導入が提唱されている。 さらに、製造業のうち、鉄鋼の生産はCO2の排出割合が35%を占め、2番手の化学関連の16%の2倍以上だ。ちなみに、アルミニウムなどの非鉄金属は4%でしかない。 まとめれば、鉄を使うことがいかにCO2排出量を増大させ、気候変動に大きな影響を及ぼしているかという深刻さなのである。もちろん、クルマでは車体をはじめサスペンションなどシャシー関係はいうに及ばず、鉄が各所に使われている。 また、クルマに限らず、あらゆる商品に鉄は幅広く使われている。その鉄が、気候変動を深刻化させていると語られることは少なかった。 そこで、製鉄におけるCO2排出量を大幅に減らした鉄鋼を使うことを推進しようという動きが出はじめ、そうしてつくられた鉄鋼をグリーンスチールと呼ぶ。ほかに、ゼロカーボンスチールとか、脱炭素鉄、低炭素鉄などの呼称がある。 ところが、そもそも製鉄には石炭が不可欠なのだ。理由は、高熱が得られるためである。石炭からつくられるコークスを使うことをやめ、ほかの燃料で高温を得るのは、じつは容易でない。 一気に脱二酸化炭素を実現させようと、水素を使って熱を得る考えがあり、研究・開発を行っているが、大量の水素が必要になる。なおかつ、コークスと同等の原価=燃料代でなければ採算があわない。そこにもうひとつの課題がある。

TAG: #グリーンスチール #補助金
TEXT:高橋 優
アメリカの関税で苦しみ中国市場で困難極まるマツダはどうなる? EVの欧州展開で活路は見いだせるか

マツダは新モデル投入で中国市場での大逆転を狙う 中国市場における生き残りを賭けた最後の戦いとして、マツダがミッドサイズSUVであるEZ-60を9月までにローンチしながら、EZ-6の海外展開の最新動向を含めて解説します。 まず、中国市場におけるマツダについて、このグラフは2025年6月までの車種別、および全体の販売台数の変遷を示したものです。2025年上半期の販売台数は2万7646台と、前年同月比ー24.8%という大幅な販売落ち込みを記録しています。とくに6月単体の販売台数の変遷を見ると、2020年6月の1.25万台から毎年販売台数が減少。2025年6月は5000台を割り込み、販売規模は半減以下という状況です。とくに、Changanマツダの車両生産工場の稼働率は低迷しているはずであることから、収益性を含めて、マツダが中国市場でノックアウト寸前である様子が見て取れるのです。 車種別の内訳を見ると、とくに売れ筋モデルだったマツダ3の低迷が著しいです。これはコンパクトセグメントに、BYDドルフィンやシーガル、ジーリーXingyuanなどという超強力なEVが矢継ぎ早に投入されてしまったことが要因でしょう。その一方で、CX-5は月間2000〜3000台級ともち堪えているようにも見えます。 そしてマツダは、新型EVを矢継ぎ早に投入する方針を表明。まず、2024年11月から納車がスタートしているのがEZ-6というミッドサイズセダンです。合弁先のChanganのEV専門ブランドDeepalから発売されている、SL03というミッドサイズセダンEVのOEM供給車として設計開発されています。EZ-6で注目するべきはBEVとともに需要が増えているEREVを両方ラインアップしてきたという点です。 他方で、このグラフはマツダのEV販売台数の変遷を示したものです。コンプライアンスカーだったCX-30 EVと比較すると一定の販売台数を達成しているものの、直近の6月単体の販売台数はたったの678台と、発売開始1年未満にもかかわらず落ち目を迎えています。 そして、このマツダに関する新たな動向として、EZ-6を欧州市場をはじめとする海外マーケットに輸出するという点が挙げられます。すでに6月から欧州の主要マーケットでは受注受付がスタートしています。欧州市場ではマツダ6eと名付けられ、全長4921mm、全幅1890mm、全高1485mm、ホイールベースが2895mmというミッドサイズセダンです。 6eは、後輪側にモーターを搭載するRWDグレードのみをラインアップしながら、68.8kWhと80kWhという2種類のバッテリー容量をラインアップ。TAKUMIグレードとともに、ナッパレザーシートや開閉式サンルーフなどを搭載した上級グレードのTAKUMI+をそれぞれラインアップしています。航続距離は欧州WLTCモードにおいて最長552kmを確保。たとえば日本国内でも発売されている日産アリアB9が536kmであることから、アリアB9よりも長く走行できるとイメージしてみると、実用的な航続距離を確保しているといえます。 そして、今回注目するべきは急速充電性能です。航続距離552kmを確保する80kWhバッテリー搭載グレードの場合、最大90kWにしか対応せず、SOC10-80%で47分という充電時間を要します。その一方で、68.8kWhバッテリーでは、最大165kWという充電出力に対応、SOC80%まで24分で充電可能と、充電性能がまったく異なるのです。68.8kWhバッテリーはSL03にも採用されているLFPバッテリーであり急速充電性能が最適化されているものの、80kWhのほうは三元系バッテリーで充電スピードに対して非常に保守的です。とくに80kWhバッテリーは中国市場で採用されておらず、最適化という詰めが甘いように感じます。 また、ヒートポンプシステムやソニー製の14スピーカーシステム、64色のアンビエントライト、14.6インチのセンターディスプレイ、空力性能の最適化のための電動リヤウイングなどは標準搭載されています。

TAG: #EZ #MAZDA
TEXT:井元貴幸
EV路線バスは中国のBYDが全盛! 国産メーカーもあるのになぜBYDが選ばれるのか?

車両価格の差が大きい 国産各メーカーもさまざまなEVがリリースされている昨今、自家用車でEVをチョイスするユーザーが着々と増えている。しかし、充電環境や航続距離、使用するシーンが多様な個人ユースでは、EVへ買い換えたいユーザーでも足かせになってしまっているケースもあるのが実情だ。 しかし、公共交通機関である路線バスなら、決められたルートを決められた時間に走行するため、自家用車と比較するとバッテリーの消費などが事前に想定できるため、圧倒的に導入しやすい。また、オイル交換が不要になるなど、EVならではのメリットでもあるランニングコストの低減に加え、営業所などに充電ステーションを設置できることから、充電時間に縛られたり、スポットを探したりする手間などもなく、EVとの相性はいい。 最近では首都圏を中心にEVバスを導入する事業者も増えてきており、街なかで目にしたことがある人も多いのではないのだろうか。 国産メーカーではいすゞ自動車がエルガEVを、日野自動車がポンチョEVを生産しているが、導入されているのは中国製のBYD(比亜迪)が多い。なぜ国産ではなくBYDのバスが選ばれるのか? まずBYDは圧倒的に車両価格が安い。小型のJ6は1950万円、大型のK8でも3850万円と、国産のディーゼルバスとほぼ同価格で販売している。ちなみに国産の場合は大型の路線バスタイプのEVで6000万~1億円とも言われており、その差は歴然だ。それでも国内ユースでは、市場を知り尽くした国産メーカーの方が強いイメージがあるが、BYDのJ7は、日本向けにドアや座席数の変更が可能となっており、地域や事業者に合わせてカスタマイズが可能だ。 実際、路線バスはEVに限らず事業者により座席レイアウトをはじめさまざまな仕様があり、オーダーメイドの状態となっているのが国内路線バスの特徴でもある。その点BYDは、輸入車でありながらそうしたニーズにも応えている。 そして、導入の際にネックとなる営業所への充電ステーションの設置は、BYDの場合だとバスの導入と同時に行えるパッケージも用意されている点も、導入のハードルを下げている。 路線バスの世界では、EVはまだまだ都市部の導入にとどまり、主力はディーゼル車だ。もちろん都市部でも国産車が多く、ディーゼルハイブリッドやFCVといったモデルも混在している状況。しかし、ディーゼル車と同等の価格でEVバスを導入できるとなると、地方路線でも海外製のEVバスが走る日も近いのかもしれない。

TAG: #バス #路線バス
TEXT:山本晋也
ガソリン代 vs 電気代! ハイブリッド車とEVでどっちが安いのか比べてみた

FIAT600のEVとマイルドハイブリッドで比較 EVとエンジン車のランニングコストはどれほど違うのだろうか? これまでEVを所有したことがなく、EVへの乗り換えを検討しているユーザーにとっては気になるだろう。 EVが走るために使う電気には、ガソリン税のように自動車ユーザーを狙い撃つ税金がかかっていない。そのぶんだけEVユーザーの負担が少なくなる。それに対して、エンジン推しのユーザーからは、「ハイブリッドカーの効率は優れているから、ガソリン税を抜くとエンジン車のランニングコストが低くなるはず」という批判的な意見もあるようだ。 はたして、EVとエンジン車のランニングコストはまったく違うレベルなのか、それともガソリン税を考慮するとEVが有利になるのか。同じ車体でEVとエンジン車(マイルドハイブリッド)をラインアップするFIAT600から18インチタイヤを履く「ラ プリマ」グレードをサンプルにして、カタログスペックで比べてみよう。 まずは同じ距離を走るのに必要なコストから計算してみたい。 EVであるFIAT600eのバッテリー総電力量は54.06kWhで、WLTCモードでの一充電走行距離は493km。そしてWLTCモード電費は126Wh/kmとなっている。 ご存じのようにWLTCモード電費は、バッテリーを充電するのに消費した電力をベースに計算している。充電時のロスぶんだけ消費量は大きくなるが、ランニングコストとしてはこちらで計算するのが妥当だ。 一方、FIAT600 HYBRID(マイルドハイブリッド)のWLTCモード燃費は23.2km/L。燃料タンク容量は44リットルで、使用燃料はハイオクガソリンとなっている。 126Wh/kmと23.2km/Lでは、距離と消費したエネルギー(電気やガソリン)の関係が真逆の単位となっているので、燃費のほうをkmが分母にくるような単位に変えて比べてみるとわかりやすい。そして燃費の単位を逆さにすると、23.2km/Lは0.0431L/kmとなる。 つまり、FIAT600のEVとマイルドハイブリッドで比較したとき、それぞれ1kmを走るのに必要な電力は126Wh、燃料は0.0431リッターということだ。これをベースに、それぞれ燃料単価をかければ、日常的なランニングコスト差は明らかになるわけだ。 電気料金は、契約形態などによって変わるが、平均的には1kWhで31円として計算してみよう。ハイオクガソリンの価格も地域や店舗によって異なるが、ここでは1リッター180円という全国平均に近い数値を使いたい。

TAG: #エンジン車 #ランニングコスト
TEXT:琴條孝詩
充電したあと休憩できない! トイレが遠すぎる!! SA・PAの急速充電場所が不便すぎる問題はナゼ起こる?

出口付近に充電器を配置するSA・PAが多い 高速道路を利用するEVドライバーなら一度は経験があるのではないだろうか。充電のためにサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)に立ち寄ったとき、急速充電器の場所を探して右往左往することを。そして多くの場合、充電器は高速道路への出口付近、つまりSA・PA敷地のもっとも端っこに設置されている。 しかも、多くのSA・PAで充電器エリアから施設の建物まで歩いて3〜5分程度かかることも珍しくない。充電時間は通常30分だが、この間にトイレや食事、買い物を済ませたくても、充電器の場所次第ではまったく時間が足りず、中途半端に急がなければいけない。2025年度末までに急速充電器の充電口数を約1100口まで大幅に増設する計画が進行中だが、その配置場所についてはまだ改善の余地が大きいというのが現状である。 <出口付近配置がもたらす利用者の困惑> この配置の問題は、単に歩く距離が長いということだけではない。もっとも深刻なのは、充電エリアが満車の場合の対応である。多くのSA・PAでは、充電エリアへの進入路が一方通行になっており、一度入ってしまうと充電できない場合でもUターンして戻ることができない構造になっている。そのため、充電待ちができない場合、高速道路本線にそのまま戻るしかなく、トイレ休憩や食事のためにSA・PA内の一般駐車場を利用することができなくなってしまう。 とくに週末や連休のときには、充電器の数に対してEVの台数が多く、30分以上の待ち時間が発生することも珍しくない。このような状況で、充電もできず休憩もできずに次のSA・PAまで走り続けなければならないのは、ドライバーにとって大きなストレスとなっている。また、充電できたとしても、とくに高齢者や小さな子ども連れの家族にとっては、施設までの往復を考えると負担が大きい。

TAG: #SA・PA #充電器 #急速充電器
TEXT:御堀直嗣
どう考えてもエンジン車より高額なEV! 高い理由はバッテリーにあるってマジ?

バッテリーの原価は1kWhあたり1万6000円ほど 電気自動車(EV)の値段が高いのは、バッテリー原価のせいだといわれている。それはいまなお続いている。 では、いつになったらエンジン車と同等の価格に落ち着くのか? 米国の総合情報サービス会社であるブルームバーグの数値などを参考にすれば、初代リーフが発売された2010年当時、リチウムイオンバッテリーの原価は1kWh(キロ・ワット・アワー)あたり1000ドルといわれていた。円換算は、その時代の為替相場に負うため、日本円でいくらになるかを正確には表現しがたいが、当時は80円台から90円前後であったので、90円で計算すると、1kWhあたり約9万円になる。 初代リーフは、24 kWhのバッテリーを搭載したので、それだけで216万円になる。また、2009年に発売された三菱i-MiEVは、バッテリー容量16kWhの軽EVでありながら438万円(消費税抜き)と値付けされたが、それくらいの価格でないと採算が取れなかったであろう。 では、現在はというと、2024年の数字で1kWhあたり111ドルであり、現在の円相場は145円弱なので、1万6000円ほどだ。現行の2代目リーフの標準車は40kWhを搭載するので、64.3万円がバッテリーぶんと考えられる。 バッテリーの原価だけを見れば、15年を経て83%も値下がった一方、バッテリー搭載量が1.6倍に増えたことにより、車載のバッテリー原価の点では、70%減になる。 以上は、ざっくりとした試算であり、全体像を掴むうえでの数字を考えておいてほしい。 リチウムイオンバッテリーの価格は、初代リーフが発売されたころに比べ、大幅に安くなっている。 安くなった要因のひとつは、電極の材料価格が下がったことによる。ただし、ここは資源の話なので、需要と供給の様子によって一方的に下がっていくということにはならず、状況に応じて上下する可能性がある。 それから、バッテリーパック内にいかに効率よくセルを詰め込めるかというパッケージング技術の改善や向上も、バッテリー原価の低減に効いてくる。 そのうえで、いかに減価償却費を下げるかであり、それには大量生産という昔ながらの手法が求められる。それが、ギガファクトリーと呼ばれるような大規模工場の建設につながる。ただし、ただ工場を大型化すればよいわけではなく、その稼働率をいかに100%へもっていくか、采配が問われる。 あるバッテリー専門家によれば、「稼働率がバッテリーの値下げに不可欠だ」という。つまり、売れるEVを開発し、それを計画どおり売り切る販売戦略があってはじめて、バッテリー工場の稼働率を100%へもっていけるのである。

TAG: #リチウムイオンバッテリー #価格
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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