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TEXT:加納亨介
EVオーナー114人の本音と実態。「フリーコメント集(前編)」アンケート 結果発表(第6回)

THE EV TIMESで行ったEVオーナーアンケート。選択式項目の集計結果は別ページにまとめられているが、ここでは記述式項目のコメントを集めてみた。前編のテーマは「充電事情」。予想通り、オーナーの不満は小さくなかった。 【アンケート概要】 調査対象:EVオーナー 調査方法:インターネット 調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日 アンケート回収状況:114件 EV普及への最大のネックは、言わずもがなの充電事情である。質問16「充電環境にご意見があれば教えてください」に何らかの記述をくださった91名のうち、はっきりと「不満なし」を表明しているのは3名のみだった。 公共的な充電設備がガソリンスタンドに比べて著しく少ない現状では、自宅に充電設備がないとICE(内燃機関、ガソリン車やディーゼル車)のようには使えないと思われ、実際、約8割の方がその設備を備えていた。自宅充電の出来ない2割の方のうち約8割は集合住宅にお住まいで、つまり自らの意思で充電設備を設置できないと想像できる方々であった。「充電環境にご意見があれば教えてください」「EV購入を検討している人にアドバイス」といった記述式項目からコメントを拾っていく。 「商業施設や集合住宅に普通充電器を普及させるのが急務だと思う。自宅充電可能で1日の走行距離が100km以下だと迷わず購入して問題無いと思います」(大阪府:テスラ・モデル3) 「いまのところZESP3(編集部注:日産の充電サービス)でまかなっていますが、やはり自宅充電環境がほしい。集合住宅でも導入できるようなソリューションが広がることを期待しています」(静岡県:ヒョンデ・アイオニック5) 「現状は自宅充電が必須です」(北海道:テスラ・モデルX) 「自宅で充電環境を整えられる人は買って問題ないです。逆に無理なら積極的にお勧めしません。でも急速充電器だけでも運用は可能です」(福岡県:ヒョンデ・アイオニック5) 「既設マンションへの6kW充電器普及を法律・条例で推めてほしい」(愛知県:テスラ・モデル3) など、充電拠点増加への期待が窺われる。むろん国や自治体のバックアップも必要になるだろう。 充電設備そのものへの意見としては、 「現状のチャデモの低性能さやUX(ユーザー・エクスペリエンス)の低さをなんとかして欲しい」(神奈川県:テスラ・モデル3) 「チャデモ充電器が使い辛い。20kWは実用的ではない、50kWは必要」(兵庫県:テスラ・モデル3) 「UI/UXはテスラが最も優れていると思うので真似して欲しい」(神奈川県:フォルクスワーゲン・ID4) など、急速充電への意見が目立つ一方で 「日常の行動範囲に普通充電器が普及すれば急速充電はそれほど必要なくなる」(神奈川県:テスラ・モデルY) と、普通充電への期待もあった。急速充電はバッテリー保護のため“満タン”には事実上できないため、ショッピングや宿泊など出先での時間を使って普通充電できれば、その方がむしろ便利とも言える。 「充電器の使用順を決めるシステムが必要。整理券を出して欲しい。終わっても帰ってこない場合テスラのような罰金を」(不明:日産・リーフ) 「充電量に応じた金額にして欲しい。2口の急速充電は課題の解決にはならない」(福岡県:プジョー・e-2008) 「24H使用できる普通充電がほぼない」(神奈川県:日産・サクラ) 「支払い方式の互換性の完全確立」(大阪府:プジョー・e-2008) あたりは、EVの周辺環境がまだまだ過渡期の混乱の中にあることを示している。 ちなみに、自宅充電設備を持たない方の中で、その必要性を感じないという意見は「集合住宅でも都内は十分に運用可能です」(東京都:テスラ・モデルY)の1名のみであった。都内も23区内に限れば使用範囲も広くなく、走行距離も伸びないはずだから、ICEと同レベルの運用をしやすいかもしれない。 わずかだが充電設備の故障についての言及もあった。確かに「ガソリンスタンドが故障して給油できなかった」という話は聞かない。たとえ故障していたとしても、ある程度人口のまとまった地域ならさほど走らずとも別のガソリンスタンドがあるだろう。 「急速充電器の故障が事前に分かる仕組みが必要」(兵庫県:テスラ・モデル3) 充電器故障情報は、今のところWEB上の口コミに頼るしかないようだ。機器に内包された故障検知システムが必要と思われる。また、新規で設置時は補助金が出るが、修理には補助金がでないことも充電器の故障を修理しづらい原因となっているようなので、修理やメインテナンスにも補助金が出るといいのかもしれない。 充電環境に関するまとめとして、フォルクスワーゲン・ID4オーナーのコメントを紹介させていただく。 「経路充電(急速充電器)の充実と目的地充電(普通充電器)の充実を希望」(神奈川県:フォルクスワーゲン・ID4) この方は自宅に3kWの普通充電設備をお持ちだ。自宅で満充電して出発、目的地での滞在時間中に普通充電、足りなければルート上で急速充電、というのが理想であろう。というよりこれがEV社会の当たり前の姿だと思われる。果たしていつ頃実現されるだろうか。今のところ、日本は他の先進国から大きく後れを取りそうな気配だ。 フリーコメント集(前編)は以上です。後編では「EVの良いところ/悪いところ」についてお伝えします。

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TEXT:栁 蒼太
IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向は?EVオーナーアンケート 結果発表(第5回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ2月末まで実施していたEVオーナーアンケートに114もの回答を頂いた。本稿は、前編と後編を分けて紹介する、上位3車種比較記事の後編にあたる。前編では車両自体の比較、本後編では、車両を所有するにあたっての利用形態や所有にまつわる調査をまとめている。 モデル3はアーバンモデル? 続いて、オーナーの利用の本拠を見ていきたい。どの車種も一戸建てユーザーが多い。一方で、モデル3は、集合住宅のユーザーも一定数みられる。これに関連して、自宅設置の充電器の有無を見てみると、本拠の形態に相応していることがわかる。 これらの傾向の一因には、都心中心に設置されているテスラのスーパーチャージャーが影響している。テスラオーナーは、スーパーチャージャーや都心部に充実している充電環境を利用することを念頭に充電設備を持たない本拠を構える場合が多いのかもしれない。 動力性能・静粛性に満足、税金関連の期待も どの車種のオーナーも動力性能や静粛性能に満足を示している。一方で、「環境に優しいイメージ」の強いEVでありながら、意外にも、環境性能への思い入れは少ない。デビュー年が早いリーフと発売されて間もないアイオニックユーザーで差異があるので、所有をしていくうちに、それらの意識に変化が生まれるのかもしれない。ただ、これらの要素を踏まえても、実用的に優れており、走行性能に気に入っているからこそ、EVを選んでいる場合が多いことがわかる。 加えて、「税金などの維持費が安いところ」を気に入っているオーナーが多い。EVは「グリーン化特例」「エコカー減税」などの優遇を受けられる故、所有してからのケアの負担が軽くなっている。ところで、モデル3オーナーが、この項目を特に気に入っているとしているのは、実に興味深い。 気になる補助金 前項でコスト関連の話題が上がった。それに関連して、補助金に目を向けたい。 EVの購入に際して、補助金の有無は大きな要素となっているようだ。アイオニック5は、補助金が決め手というオーナーが多いが、それは次に示す、受け取った補助金額をみると一目瞭然だ。 国や自治体からの補助金として、50万円から100万円の補助金を受け取る場合が多い。特にアイオニック5オーナーは、75万円以上100万未満の大きなサポートを受けとったようで、購入検討の大きな判断材料になったのだろう。 まとめ 上位3車種を比べて 今回取り上げたIONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)は、多くのオーナーに愛されているが、それぞれのお気に入りポイント、走行シーンや利用形態には差異が見られた。車両単体としてEVを選ぶのも非常に重要であるが、様々な観点で車を選んでいく上で、これらのデータは参考になるかもしれない。 なお、後編では、車両を所有するにあたり、気になるポイントに注目をした。購入した時期によって補助金の額が異なるなど、同じ車であっても、多様な結果が得られたのは、見どころなのではないだろうか。 今回のような調査は、今後も行われる予定であるため、今後の動向の変化にも注目だ。

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TEXT:栁 蒼太
IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向は?EVオーナーアンケート 結果発表(第4回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ2月末まで実施していたEVオーナーアンケートに114もの回答を頂いた。 今回は、そのアンケート結果にて、所有している車種の上位の3車種である、IONIQ 5(ヒョンデ)、モデル3(テスラ)、リーフ(日産)の利用傾向を分析してみたい。前編と後編に分けて紹介をする。前編では、アンケートの概要、3車種の用途などに触れている。後編では、3車種のオーナーの特性や補助金について述べている。 EVオーナーは首都圏、主要都市に在住 【アンケート概要】 調査対象:EVオーナー 調査方法:インターネット 調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日 アンケート回収状況:114件 EVオーナーに限定した今回のアンケートの回答者の職業別にみてみると、回答者の57.8%が会社員、17.4%が経営者・役員、12.8%が自営業・自由業という結果となった。また、住んでいる都道府県をたずねたところ東京都は17.3%、神奈川県は11.8%、埼玉県9.1%、千葉県8.2%と、首都圏の1都3県で全体の半分を占める結果となった。 なお、大阪府、愛知県においても8.2%、6.4%の結果が出ており、主要都市でもEVオーナーが多いことがわかる。特筆すべきなのは、東北地方北部の寒冷な場所では、EVオーナーが少ない傾向がみられることだ。これは、EVのバッテリーの特性上、気温が低い条件下ではエネルギー効率が低下してしまうことが課題となるからだろう。 また、世帯人数についても尋ねたところ、9割以上が一般世帯で利用されていることがわかる。2020年の国勢調査によれば、日本の総世帯に占める単身世帯の割合は38%と、多くの単身者がいるにも関わらず、EVユーザーの多くが一般世帯であるというのは、特徴的な傾向かもしれない。 上位3車種の様子 アンケートの有効回答件数は114件。一つ目の質問では、どのEVに乗っているのかを調査した。圧倒的な割合を占めた上位3車種の結果は、 リーフ(日産)23件 モデル3(テスラ)33件 IONIQ 5(ヒョンデ)19件 であった。 アンケート結果分析の第1回では以下、これらの3車種で利用方法の傾向に共通点・相違点があるかを見出していきたい。 なお、本アンケート結果には、回答者層の偏りがあることが考えられる。これから示す結果が全てのEVにおける傾向を必ずしも完全に示すわけではないことを断っておく。 メインは「通勤」、モデル3は「レジャー・旅行」にも大活躍 どの車種にも共通して、利用シーンが多いのは「通勤」だ。また、リーフ、IONIQ5に見られるように、「買い物」でも活発に利用されているようだ。これらは、習慣的な利用のため、EVの充電サイクルが一定であることが一因であると考えられる。一方で、モデル3は、「レジャー・旅行」にも大活躍のようだ。モデル3はロングレンジモデルの場合、689km(WLTCモード)を誇り、安心して遠出できることが結果として表れている。 リーフ 450km(60kWhバッテリー搭載車) 322km(40kWhバッテリー搭載車) モデル3 605km(パフォーマンス) 689km(ロングレンジ) 565km(RWD) IONIQ 5 577km(IONIQ 5 Lounge AWD) 618km(IONIQ 5 Lounge) 618km(IONIQ 5 Voyage) 498km(IONIQ 5) 走行可能距離に関わらず走行距離に大差出ず どの車種もおおよそ、月間に1000km以下の走行をしている。ただ、長距離にも対応した車種の場合、1000km以上の走行ケースも多く見られる。車の年間平均走行距離の目安は1万km(月間、900km弱)と言われているため、EVのユーザーもその傾向にフィットしているようだ。 使い方も、用途も、お好みに合わせて カタログ上で見る、航続可能距離や基本的なスペックを超えて、実際のオーナーからの声は、実に興味深い。前編では、車両自体の特性にフォーカスを当てているが、後編では、車両を保有することに注目した記事となっている。後編にも注目だ。

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TEXT:加納亨介
EVオーナー114人の本音と実態。「次もまたEV買いますか?」アンケート 結果発表(第3回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ本年2月末まで実施していたEVオーナーアンケート。114名の皆様から回答をいただきました。誠にありがとうございました。 結果報告の第3回目は「V2Hと並行所有車」についてです。 【アンケート概要】 調査対象:EVオーナー 調査方法:インターネット 調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日 アンケート回収状況:114件   第3回テーマ:V2Hと並行所有車 「ご自宅にV2H機器はありますか」 ・普及はまだ先か? 「ない」が圧倒的だった。V2H機器は高価で、補助金を得た上でなお50万円ほどかかる。補助金の2023年度予算もEVの700億円に対し50億円と少なく、すぐ上限に達してしまいそうで、爆発的な普及はまだ見えてこない。 「EV以外に所有しているクルマはありますか(複数回答可)」 ・並行所有ありが4割強 並行所有なしが最多だが、4割強の方は他にもクルマをお持ちだ。最多はICEで、ハイブリッド系を大きく引き離す結果となった。ただ、現在の新車販売比率を勘案すればICEが駆逐されていくことは間違いないと思われる。メーカー別ではトヨタと日産が11台で並んだ。日産はアンケートの主題である現所有EVでもテスラに次いで多かったから、EV購入以前からのディーラーとのつながりが影響しているのかもしれない。 「EVと入れ替えで手放した前の所有車種を教えてください」 ・回答数98のうち、EVからの買い替えが8名 フリーコメント形式の質問。メーカー別で集計するとトップはトヨタで20、日産14、マツダ10、BMW7と続いた。EVからEVへの買い替えという方も8名いらっしゃった。グレードを書いていない回答もあるからはっきりとは言えないが、HEVやPHEVからの買い替えを含めると17名にのぼる。 「次もまたEVを買いますか」 ・一度乗ったらやめられない!? 次もEVという方が圧倒的多数を占めた。経済性や快適性、リニアなドライブフィールに対する好評価と言えるだろう。「買わない」より「どちらとも言えない」が多いあたりは、充電をはじめとする未来のEV環境の不透明さを窺わせる。 「買うと答えたの方で検討中の車種があれば、車種名を教えてください」 ・BYD見参 フリーコメント形式の質問。次もEVを買うとお答えの101名のうち、車名を示してくれた方は71名であった。メーカー別のトップはテスラで37、次いで日産17、大きく離れてBYD 4と続いた。当アンケートではテスラにお乗りの方が4割近くを占めるから、その影響も大きいだろう。実際、テスラにお乗りの方はテスラを、日産にお乗りの方は日産を挙げる方が多かった。買い替えの際の第一候補として現所有車のメーカーは強いのだ。その点、日産以外の国産メーカーは小さくないハンデを負っていると言わざるを得ない。トヨタはレクサスと合わせてもやっと4票で、BYDと同数にとどまった。 第3回目は以上です。次回は「EV所有台数上位3車種の利用傾向」についてお伝えします。  

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TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第8回:電気自動車の中身と型式のバリエーション

バッテリーEVと燃料電池車 電気自動車は、永年「EV」と呼ばれてきた。しかし近年になって「BEV」との言い方が広がってきている。EVはエレクトリック・ヴィークルのアルファベット表記で、意味はまさしく電気自動車だ。BEVはバッテリー・エレクトリック・ヴィークルのアルファベット表記であり、電気自動車が車載のバッテリーでモーターを駆動していることを、改めて明確にした言い回しだ。 背景にあるのは、1990年代から燃料電池車が登場し、2015年にはトヨタから、翌年にはホンダから発売されるようになり、欧州ではメルセデス・ベンツが発売したことがある。韓国のヒョンデも販売しており、国内市場にNEXO(ネッソ)が導入されている。 燃料電池車は、FCV(フューエル・セル・ヴィークル)とアルファベット表記されるほか、FCEV(フューエル・セル・エレクトリック・ヴィークル)と表記される場合があり、この場合は燃料電池電気自動車の意味になる。 すなわち、EVという表記の付く車種が、バッテリーを車載する形態と、燃料電池を車載する形態の2通りとなって、どちらを指しているかをより明確にするため、これまでのEVをBEVといい、FCVやFCEVと区別する状況になっている。 BEVは、言葉通り車載のバッテリーにあらかじめ充電しておき、その電力でモーターを駆動して走る。その誕生は、19世紀末のガソリンエンジン車登場前といわれ、EVといえばBEVであることが当然とされてきた。 ちなみに、オーストリア・ハンガリー帝国生まれのフェルディナント・ポルシェ博士が最初に自分で設計したのは、1900年のローナー・ポルシェというEVだった。世界で最初に時速100kmを達成したのは、ベルギーのカミーユ・ジェナッツィが製作したラ・ジャメ・コンタントというEVで、1899年に記録している。EVは、エンジン車より先に高性能化の道を拓いた。 2009年の三菱i-MiEV発売以降、日産リーフや、BMW i3など、比較的小型のEVが発売されたが、今日ではメルセデス・ベンツEQSのような最上級高級車や、テスラ・モデルXやY、ジャガーI-PACE、BMW iXなどSUV(スポーツ多目的車)も加わり、BEVの選択肢は広がりつつある。 水素を利用するFCEV FCEVで電力をモーターへ供給するのは燃料電池だ。この装置に水素と酸素を注入することで発電し、その電力でモーターを駆動して走る。あらかじめ充電する手間がない。ただし、ガソリンを給油するように、水素タンクに高圧水素ガスを充填する必要がある。水素ステーションへ出向き、高圧水素ガスを充填する手間は、ガソリン給油と同様の行動になる。 ちなみにFCEVも、ある程度の容量のバッテリーを車載している例が多い。理由は、燃料電池から供給される電力を一時的に貯めておくバッファー機能とともに、急加速などの際に、燃料電池での発電だけでは電力が不足する場面があるかもしれず、それを補うため、バッテリーに充電した電力を活用する。充電は走行中に減速するときの回生によるため、BEVのように駐車中にあらかじめ充電する必要はない。 以上のように、モーター駆動で走行するところは同じだが、モーターに供給する電力をどう確保するかで、BEVとFCEVは異なる。 FCEVは2015年にトヨタ・ミライが発売され、現在はその2代目へモデルチェンジしている。ホンダ・クラリティ・フューエルセルは2016年に発売されたが、2021年に販売を終えた。韓国のヒョンデNEXO(ネッソ)は、2018年に韓国で発売された。

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TEXT:加納亨介
EVオーナー114人の本音と実態を探る。補助金は? 利用シーンは? アンケート 結果発表(第2回)

THE EV TIMESのオープンに合わせ本年2月末まで実施していたEVオーナーアンケート。114名の皆様から回答をいただきました。誠にありがとうございました。 結果報告の第2回目は「補助金とEV利用シーン」についてです。 【アンケート概要】 調査対象:EVオーナー 調査方法:インターネット 調査実施期間:2023年1月12日〜2023年2月28日 アンケート回収状況:114件   第2回テーマ:補助金と利用シーン 「EV購入時に補助金をいくら受け取りましたか」 ・意外に多い「もらっていない」 金額のばらつきは車両価格や購入のタイミング、またはお住まいの地域によるものだろう。補助金は新車/中古車いずれの場合でも支給されるはずだが、16.7%の方はもらっていなかった。もらわない理由についてのコメントは見当たらなかったが、補助金をもらうと4年間は買い換えられない(買い換えると返金の手続きが必要)いわゆる”4年縛り”の影響と思われる。また「補助金についてご意見があれば教えてください」としてフリーコメントを聞いている。高評価が多いのは当然ながら、一方で「地方自治体により差があるのはおかしい」「支給までに時間がかかる」「輸入車と差をつけるべき」「4年縛りは無くしてほしい」「車両補助金を減らしてでも充電器設置へ向けた補助金を増やしてほしい」「補助金よりも税金等の負担減を」などの声があった。 「補助金がなければEVを買いませんでしたか」 ・EV普及に補助金は関係ない? 過半数の方が補助金などなくともEVを買うという勇ましい結果になった。経済面ばかりでなく、スムーズなドライブフィールや静粛性、重い車重による重厚な乗り心地などEVならではの乗り味に対する期待が窺われる。 「普段最もよくEVを使うシーンを教えてください」 ・毎日乗る方が多い模様 おそらく毎日であろう「通勤」が、毎日ではないであろう「レジャー・旅行」を退けてトップに立った。充電器のある職場はまだ稀なはずなので、自宅充電が必須と思われる。実際、今回のアンケートでは78.1%の方が自宅に充電環境を整えていた。ドライブなど明らかに仕事絡みではないと思われる回答は2名に過ぎなかった。 「月間の平均走行距離を教えてください」 ・ICEと変わらない ICEとハイブリッド車が調査対象の95%以上を占めるソニー損保の「全国カーライフ実態調査」によれば、日本の自動車ユーザーの年間走行距離は平均で6,727km。月にして約560kmとなっている。我々のアンケートと照らし合わせると、走行距離の少ないユーザーがEVを選んでいるわけではないことがわかる。 「EVで一番の遠出をした際の片道の距離を教えてください」 ・長距離を厭わない姿勢 選択肢の中で最も長い「400km以上」が最多得票となった。EVの航続距離は日進月歩だが、これはほとんどのEVにとって満充電出発でも厳しい距離と思われる。事前に公共充電施設の場所を調べ、行程を決定しておくというICEでは必要ない準備が必要だろう。2位の「100〜200km」でも目的地充電を勘案しなければならない。公共充電施設の拡充は急務といえる。 第2回目は以上です。次回は「V2Hと並行所有車」についてお伝えします。  

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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第10回:e-208GTは、身のこなしがいい!

プジョーe-208GTの立ち振る舞いに、岡崎さんは日々感心しているそう。ルックスも、身のこなしも良いから、毎日連れ出したくなっています。 馴染みのお店に行くのには、ぴったりのサイズ感 プジョー e-208GTのルックスが気に入っていることは繰り返し書いた。だが、同時に、Bセグメントの5ドア HBという「サイズ感と使い勝手のよさ」も気に入っている。 わが家は昔からコンパクト系が好きで、数多い車歴の9割以上をコンパクト系が占める。 かつては2ドア/3ドアを好んだのだが、高齢になると、家内と共に4ドア/5ドアを好むようになった。理由は簡単。その方が、ドア幅は小さく重量も軽いので、乗り降りが楽だからだ。 男の僕は、それなりに筋力はあるが、家内の筋力はかなり落ちている。日常的なあれこれをみていても、ときに「えーっ!?」と思うくらい落ちている。 若い時はなにも感じなかったことが、年齢を重ねると重荷になってくる……、残念ながら、最近、そう感じることが多い。 もちろん駐車も楽。老舗のホテルや百貨店等には、昔ながらの幅の狭い駐車場も少なくない。旧いタワーパーキングも同様だ。そんなところに、昔から通っている馴染みの店がけっこうある。 ステアリングとメーターのレイアウト、そして身のこなしは具合がいい e-208GTのステアリングは異形小径で、少し低めに位置する。ステアリングの上からメーターを見る独特のレイアウトに、初めは違和感を覚えた。でも、慣れるととても具合がいい。 また、ステアリングは軽くて、応答が良くて、正確。e-208GTの身のこなしはキビキビしている。それでいて、滑らかだし、軽々しいところはない。というか、腰が座っている。 重いバッテリーを適正にフロアに配置したことで、低い重心と優れた前後重量配分を獲得しているからだろう。 楽しくて気持ちがよくて……、それでいて安心感もある。走り込むほどに好きになる身のこなし……といっていい。 四つ角を曲がった時などの、ステアリングが手の中を滑る感触を含めた戻り感……スルスル感?の気持ちよさもお気に入りだ。 不満なのは、ロードノイズが高めなことと、強めの不整でのリアのリアクションがイマイチなことだが、「まぁ、我慢できるレベルだろ?」と自らに言い聞かせている。

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TEXT:福田 雅敏
日本の新興ブランド「エイム」も新型スポーツEVを公開……写真で見るオートモビルカウンシルのEV時代[THE視点]

4月14日(金)〜16日(日)まで幕張メッセ(千葉県千葉市)にて開催された「オートモビルカウンシル2023」。ヘリテイジカーを中心に展示する本イベントだが、今回はEVの出展も目立っていた。 今回の目玉はマツダの「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」の日本初公開だが、それ以外にも多数のEVの出展が見られたので、写真とともにイベントの雰囲気をお伝えしたい。 元日産のエンジニアによるスポーツEV「エイム EV SPORTS 01 コンセプト」が初公開 「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」以外にもEVの出展が目立った。AIM(エイム)社が開発した「EV SPORTS 01 コンセプト」は本イベントが初公開の舞台となった。 車両デザインは、元日産のデザイナー中村史郎氏によるもの。自社製の駆動モーター「APM200」をリアに2基搭載する後輪駆動だ。このクルマはイベント後に英国に送られ、7月に開催される「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で走らせるという。 BYDのブースには、1月に発売されたばかりの「ATTO3」(アット3)と今年の末頃発売予定の「SEAL」(シール)の2台が展示されていたほか、さらに試乗車として「ATTO3」が2台用意されていた。今回試乗車を用意していたのはBYDだけだった。オートモービルカウンシルで試乗が出来るのは、筆者が知る限りBYDが初めて。BYDの意気込みが感じられた。 開発に携わった三菱のパイクスピークマシンに再会 三菱自動車のブースには、EV・PHEV合わせて5台が展示されていた。中でも注目を集めていたのは、2014年にアメリカの「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム・レース」に参戦し電気自動車改造クラスで優勝した「ミーブ・エボリューションⅢ」だ。 この「ミーブ・エボリューションⅢ」は、実は筆者も開発に参加した。そのおかげで、実際にパイクスピークにも行くことが出来たのだ。筆者にとって久し振りのご対面だった。EVではこのほか、量産EVの「eKクロスEV」が展示されていた。 日産自動車のブースには、中央に桜色の「サクラ」が展示されており、その横には、昨年レストアで話題となった俳優伊藤かずえさん所有の「シーマ」が提示されていた。トークショーも賑わっていた。 新旧のクルマの展示会となったオートモービルカウンシル、今回も2台のEVの発表の場となっただけに、今後もEVの展示は増えるのではないだろうか。新旧のクルマと触れ合う場所として大変興味深いイベントに感じた。

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TEXT:福田 雅敏
「マツダ MX-30 e-SKYACTIV R-EV」日本初公開……現役EV開発エンジニアが「オートモビルカウンシル2023」で見た旧技術と新技術の行き先[THE視点]

「クルマを超えて、クルマを愉しむ」展示会、「AUTOMOBILE COUNCIL 2023(オートモビル カウンシル 2023)」 (主催:AUTOMOBILE COUNCIL 実行委員会)が4月14日~16日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された。 今回はその中でも、異色と思われるEVにフォーカスしレポートをお届けする。オートモービルカウンシルと言うと、ヘリテイジカーなどがメインのイベントに思えるが、今年は少し様子が異なっていた。EVの展示も多かったのだ。 旧世代技術の内燃機と新世代技術の電機を融合したロータリーエンジン車の未来型 その中でひときわ目立っていたのが、日本初公開となった新開発のロータリーエンジン搭載のマツダ「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」だ。展示車は、1月13日のブリュッセルモーターショー(ベルギー)で初公開された欧州仕様(左ハンドル)の特別限定車「MX-30 e-SKYACTIV R-EV Edition R」である。 先に発売されている「MX-30 EV」との違いについてマツダは、「MX-30の基本的な提供価値はそのままに、バッテリーEVとしての使い方を拡張した」と説明した。

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TEXT:栁 蒼太
日本IBM、自動車業界のエグゼクティブに対するEV意識調査を発表

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、EVに関する最新の調査レポートの日本語版、「持続可能なモビリティー社会の実現を目指して:EVシフトが加速する」を発表した。本調査は、IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value (IBV)が、世界9カ国1,501人の自動車業界のエグゼクティブへの調査と7カ国12,663人を対象とした消費者調査とを並行して実施された。 エグゼクティブの厳しい予想 本調査によると、調査対象の消費者の50%が今後3年以内にEVの購入を検討していることが明らかになった。一方で、消費者のEVの需要は高まっているものの、2030年までに自国のEV充電インフラが整うと予想したエグゼクティブはわずか13%で、EVへの移行にはまだ障壁があることも明らかになった。充電設備の利用可能性、信頼性、EVとエネルギーのコストといった主要な要因が、EV導入に影響を与えている。消費者の需要の高まりとインフラの必要性に応えるため、企業や政府は早急な対応が求められているようだ。 エグゼクティブ視点でのEV業界の展望 調査の主な要点は以下の通りだ。 【EVとICE車の逆転】 エグゼクティブは、2030年までにEVへの支出は61%増加し、販売シェアは40%になると予測している。また、2030年までに内燃機関(ICE: Internal Combustion Engine)車への支出は半減し、2041年までにその販売が終了するだろうと予測している。 【開発者と利用者の意識のギャップ】 EV購入の意思決定に関わる要因について、エグゼクティブと消費者の間では見解に相違がある。エグゼクティブは、顧客のEV購入の動機として、充電設備への容易なアクセス(67%)、環境に対する配慮(66%)、自宅で充電が可能(63%)などを想定している一方、消費者は自宅で充電が可能(63%)、維持費が少なくて済む(62%)、燃料費が少なくて済む(60%)を挙げた。 【充電設備不足が最大の懸念】 関心と需要が高まる一方で、消費者の57%が、公共の充電設備の不足を最大の懸念事項として挙げている。家庭での充電が主な充電手段になると予測する消費者は約半数(53%)に過ぎないため、EVの普及に伴い、職場や買い物先、旅行先などの目的地の充電スポット、自宅近くの共有型充電設備、走行途中に急速充電できる設備などバランスよく整備される必要がある。消費者の意欲と、政府や企業がより持続可能な交通手段を整備する力との間には、大きなギャップがある。 【止まる開発者のEVに対する意識】 EVプラットフォームなどの車両ITシステムが、EV事業で新たなコア領域だと考える従来の自動車メーカーのエグゼクティブの割合は30%に満たない。バッテリーをコア事業と捉える回答者も約40%にとどまったが、自動車バリュー・チェーン全体にわたる事業モデルの刷新は進行中。 結果から導く、これからの道筋 調査結果から、EVシフトに向けた自動車メーカーの短期プランニングに向けた具体的なステップを以下のように提示している。 EVに対する顧客のニーズを把握し、現在と今後のニーズとをどうすれば満たせるかを検討する。例えば、ターゲットとする市場のインサイトを検証し、ヒアリングなどを行い、顧客を理解する。 EV化へスムーズに移行できるよう、ターゲット経営モデルを精緻化し、ロードマップを詳細に描く。ロードマップに応じてリソースの配分を計画し、コストを管理しながらパートナーのリソースも活用する。 エコシステムのプレーヤーと協力して電動化に取り組む。例えば、消費者や業界の利害関係者に対し革新的な価値提案を行い、各関係者が充電ネットワークで果たすべき役割を明確にする。 やや抽象度の高いネクストアクションがまとめられているが、エグゼクティブの視点は、自動車業界を支える人のみならず、公共の充電スポットを設営する自治体や各種団体などの数多くのステイクホルダーにも重要な道標を示していると言えるだろう。

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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